電力大手は、地域の再エネ事業者が発電した電気を買い取り、市場に卸しています。電力大手による出力抑制は政府の「優先給電ルール」に基づき無制限・無補償で行われ、再エネの電気を無駄に捨てています。
岩渕氏の質問に、資源エネルギー庁の井上博雄新エネルギー・省エネルギー部長は、23年4月~24年1月には東京電力の管轄地域を除く9社の管轄地域で出力抑制が実施されたと答弁。抑制量は前年同時期と比べて約7倍に急増し、増加幅が最も大きかった中国電力の地域は15.7倍でした。抑制量の最多は九州電力の地域でした。24年度については、合計24億2000万キロワット時(750億円分)の見込みだとしました。
政府の原発推進政策のもと、電力大手は原発の出力を抑制した実績がありません。中国電力は24年度に抑制量が急増する原因として島根原発の再稼働があるとしています。岩渕氏の質問に対し、原発再稼働が再エネ普及の障害であると認めた形です。
火発の出力抑制については、政府の対策は出力を50%から30%に引き下げる「お願い」にとどめています。既存の発電所には「技術的に(抑制は)困難だ」(斎藤健経済産業相)と開き直っています。東電と関西電力の両地域では火発の出力が50%を超過した発電所が多く、効果は見込めていません。
電力大手は今後も再エネの出力抑制を増加する方針です。北海道電力と東北電力の両地域では有効な対策を取らなければ30年に抑制率が50%を超える見通しです。岩渕氏は再エネ事業者が見通しを持てないとして、営農型太陽光発電に取り組む福島県農民連では出力抑制による損失金額が23年に50万円を超えたと告発。「原発事故の被害が続くもとでも復興に尽力してきたのに」と怒りの声を紹介し、出力抑制への補償を求めましたが、斎藤経産相は「国民負担は妥当ではない」と背を向けました。
深刻化する気候危機への対策は急務です。各国は再エネの主力電源化を進め、30年の電源構成目標に再エネが占める割合を80%(ドイツ)、72%(イタリア)と高めています。日本の目標は36~38%の低水準です。「再エネの最大限導入、原発ゼロ、石炭火力発電の廃止と化石燃料依存からの脱却が必要です」(岩渕氏)
2024年4月2日(火) 参議院 経済産業委員会
「齋藤健・経産大臣の所信表明演説を受けての質疑」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
前回の委員会の冒頭で、再生可能エネルギーの主力電源化にふさわしい導入率と目標の引上げが求められているというふうに指摘をいたしました。
資料の一を御覧いただきたいんですけれども、これは再生可能エネルギー発電比率の国際比較です。再エネの導入率と目標を引き上げることが必要だというのは国際的に見ても明らかになっています。COP28で日本も賛同をした再エネ設備3倍化のために予算と政策を総動員するべきだ、このことを重ねて求めたいというふうに思います。
今日は、前回の質疑に続いて、再エネ導入の障害になっている問題ということで、出力抑制について質問をしていきます。
昨年の12月7日の当委員会でも、この再エネの出力抑制について質問をしています。その際、23年度の実態を10月末まで確認をしています。その後の出力抑制量の実態はどうなっているのかということを確認します。
23年の4月から公表をされている最新の月までの合計は幾らになっているでしょうか。あわせて、22年度の出力抑制量の合計についても紹介をしてください。
○政府参考人(井上博雄君) お答え申し上げます。
需給制約による再エネの出力制御量の実績でございますけれども、本年三月の集計時点におきまして、御下問の2023年度、四月から一月末までで15億7841万キロワットアワーとなっております。また、もう一つ御下問の2022年度でございますが、こちらは5億7325万キロワットアワーとなっております。
○岩渕友君 資料の二を御覧ください。
23年の11月から24年の1月末までの3か月間で7000万キロワットアワー以上も実は増えているんですよね。23年度は10か月分でもこの22年度を大きく上回っているわけですけれども、この前年同期比で全体で約7倍、最も多い中国エリアでは15.7倍に急増をしているんですね。
昨年のその12月の質問のときに、当時の西村大臣は、これまでの対策を更に深掘りした出力制御対策パッケージを年内にまとめる予定だというふうに答弁をされました。その対策パッケージの進捗状況について確認をしたいと思うんです。特に、火力発電の最低出力の引下げについて、実施状況がどのようになっているでしょうか。
○政府参考人(久米孝君) お答え申し上げます。
昨年末に取りまとめた出力制御対策パッケージの供給面での対策として、新設火力の最低出力につきまして現行の50%から30%まで引き下げるとともに、既設火力についても同等の引下げを求めることとしております。既設火力につきましては、一般送配電事業者と発電事業者の民間事業者間の契約を超えた対応も必要になるなど、各社の協力に基づくものとなります。
こうした中、現在、技術的な制約等も踏まえながら各社における対応を進めており、例えば、一般送配電事業者と出力の変動に関する契約のない電源Ⅲという電源につきましては、出力制御未実施の東京エリアを除きまして、2022年度末から本年3月時点にかけて5つの発電所で50%以下への引下げが行われております。
また、更なる引下げに向けて、資源エネルギー庁の審議会で状況のフォローアップを行うとともに、出力制御実施時に稼働している火力電源等を公表するといった対応を進めております。
○岩渕友君 50%を超える発電所が多く存在するエリアもあるということなんですけれども、これはどのエリアでしょうか。
○政府参考人(久米孝君) 50%を超えている発電所が特に多いエリアでございますけれども、本年3月時点で、東京エリアで42の発電所、関西エリアで28の発電所となっております。
なお、東京エリアにつきましては、現在、電力の供給が需要を上回ることで発生する需給制約の出力制御は発生しておりません。
○岩渕友君 この東京エリアは出力抑制発生していないということでしたけれども、東京エリアそして関西エリアにも当然この最低出力の引下げを求めているということでいいかどうか、ちょっと確認をします。
○政府参考人(久米孝君) 御指摘のとおり、求めてございます。
○岩渕友君 前回もこの問題指摘しているんですけれども、この火力の最低出力の引下げというのは、結局は協力のお願いにすぎないという実態があるんですね。東京エリアも関西エリアも電力の多消費地であって、消費量が少ないエリアから電力の余った分の融通を受けるということを考えれば、火力の最低出力の引下げが不十分だというのは通用しないということなんですよね。
これ、更なる引下げが期待をされるということで、先ほど答弁もありましたけれども、火力の最低出力の引下げによって、全体としてどの程度の低減効果を見込んでいるのでしょうか。
○政府参考人(久米孝君) 再エネの出力制御は、供給が需要を上回ると見込まれるときに電力システム全体の安定供給を支えるべく、需給バランスを保つために行っております。このため、出力の制御量は需要と供給面の様々な要因で決まるため、火力発電の最低出力の引下げの効果を定量的にお示しするということは困難でありますけれども、中国や四国、九州など出力制御が行われるエリアでは、制御時の火力発電の出力が50%以下となっておるものが大半であります。
経産省としては、いずれにしましても、出力制御対策パッケージに基づいて、火力の最低出力の引下げを徹底していくということに加えまして、デマンドレスポンス推進のための電気料金メニューの多様化といった需要面の対策や地域間連系線の整備といった包括的な対策を進め、出力制御の最大限の抑制を図ってまいります。
○岩渕友君 自家発電や製鉄、あと化学などは製造プロセスで活用している発電所もあるということで、今、数値化は難しいというような御答弁だったというふうに思うんですけれども、この製造プロセスで使用をしている化石燃料はエネルギー転換を図っていく必要があります。そして、石炭火力発電所、まあ技術的に困難だというようなこともあるんですけれども、廃止をして再生可能エネルギーに転換をするべきだということですよね。
世界は今、石炭火力発電を全廃する方向に進んでいます。昨年開催されたCOP28の期間中に、脱石炭国際連盟、PPCAにはアメリカやアラブ首長国連邦などが新たに加盟をしたんですよね。こうしたことで、G7の中で加盟をしていない国は日本だけということになりました。
そこで大臣に伺うんですけれども、化石燃料から脱却をしていく決定的に重要な十年に行動を加速させていく、このことが合意をされた下で、国際的にも石炭火力発電所は廃止をする方向になっています。石炭火力発電にしがみついて化石燃料に依存する日本の姿勢というのは、国際的に通用しないのではないでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) エネルギーをめぐる状況というのはもう各国様々で、我が国がいかにエネルギー安定供給に向けて厳しい状況にあるかということは委員も御存じだと思います。各国の状況を踏まえたエネルギー政策がそれぞれ講じられていくものであろうかと思います。
ドイツやイギリスでも水素やCCSの活用を念頭にガス火力を新設する方針も示されておりまして、欧米諸国も火力発電そのものを廃止する方針ではありません。彼らも彼らなりの事情に応じてエネルギー政策を展開しているんだろうと思います。
我々のように資源が乏しく周囲を海で囲まれた国におきましては、Sプラス3Eの原則の下であらゆる選択肢を確保して、安全性、安定供給、経済効率性、環境適合を踏まえたベストミックスというものを考えていかねばならないと思います。
こうした状況の中で、電源構成の約七割を占めている火力発電につきまして直ちに急激な抑制策を講じるということになれば、電力の安定供給に我々として責任を果たすことはできないと思っています。このため、再エネや原子力などの脱炭素電源を最大限活用すると同時に、非効率な石炭火力のフェードアウトを進めながら、水素、アンモニアやCCUS等を活用した火力の脱炭素化を引き続き推進をしていきたいというふうに考えています。
○岩渕友君 化石燃料に依存をしているということで、日本は世界から厳しく批判をされているわけですね。これは国際的にも通用しないし、経済発展にもつながらないということです。
先ほど答弁の中に、電力の安定供給必要だと、だから火力が必要だということで、この間の答弁の中でも火力は安定供給のための調整力だというふうに答弁ずっとしてきているんですけれども、海外では再エネで調整を行っているんですよね。日本でもこの再エネによる調整は可能で、このことは審議会の中にも書かれていること、だから、審議会の中でも言われていることなんですよね。
それでは、24年度の各エリアの出力抑制の見通しがどうなっているのかを確認したいと思います。
○政府参考人(井上博雄君) お答え申し上げます。
2024年度において、需給制約の出力制御でございますけれども、東京を除く九エリアで実施される見通しとなっておりまして、合計で24.2億キロワットアワーと見込まれております。
なお、個別の送電線の容量の制約によって発生する系統混雑の出力抑制というものにつきましては、2024年度に東京エリアの一部の系統で1.7万キロワットアワー程度発生することが見込まれております。
○岩渕友君 資料二をもう一度見ていただきたいんですけれども、24年度の見通しは23年度の出力抑制量の約1.4倍になります。22年度と比較をすると4.2倍にも上るんですね。中国エリアは、23年度の1.6倍の見通しとなっていて、22年度比では14.3倍にも上るんですね。もう急速に増えているという状況です。
2024年度に見込まれる出力抑制量がどのぐらいになるかというと、58万世帯分の年間消費量になって、家庭の平均電力料金で試算をすると750億円分の損失になるんですよね。これだけの損失になってしまうということなんです。
この資料にあるように中国エリアの出力抑制量が急増をしていますけれども、この増加の要因は何でしょうか。
○政府参考人(井上博雄君) お答え申し上げます。
出力制御の見通しでございますけれども、需要と供給面の様々な要因で決まりますが、2024年度見通しにおきまして御指摘の中国エリアで制御量が上昇する要因は、再エネの連系量の増加や需要の減少、あるいは複数のエリアで同時に出力制御が行われることによる連系線を活用した域外送電量の減少、それから揚水発電の補修計画による作業停止、あるいは島根原子力発電所第二号機の営業運転再開などが挙げられます。
○岩渕友君 今答弁にあったように、出力抑制の要因として、中国エリアでいえば島根原発の運転再開が挙げられています。
昨年12月に質問をしたときに、原発の出力抑制の実績はないということを答弁で確認をしています。政府は、昨年議論をしたGX電源法で、再稼働であるとか運転延長など、原発を強力に推進するということを宣言したわけですよね。これでは再エネの出力抑制が続くということになっていきます。
最新のIEAの文献には、コストの面から見ても、原発の運転延長より再エネの新設の方がはるかに安いというデータがあるんですね。出力抑制している場合じゃないということなんですよ。今ある再エネ設備を生かすべきです。
そこで大臣に伺いますが、まず資料の三を御覧いただきたいんです。これ、2030年頃のということなんですが、長期見通しです。
これを見て、私すごく驚いたんですね。何と北海道と東北では50%を超えるという見通しなんです。無制限、無補償の出力抑制が5割を超えるということになれば、もう事業を続けることができない、事業の見通しも持てないということになるんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(齋藤健君) 再エネの出力制御は、電力の安定供給を維持しつつ再エネの最大限の導入を進めるということでいえば必要な措置ですが、これにより再エネ導入の妨げになってはならないともちろん考えています。
委員御指摘の再エネ出力制御の2030年頃の長期見通しは、この需要供給面で様々な仮定を置いた上で提示したものであります。この中で、北海道、東北エリアでは、対策がない場合の一部の事業者の制御率が50%を超えるといった試算が示されている一方で、系統対策により一から10%程度まで低減することも併せて提示をさせていただいています。
こうした中、昨年末に取りまとめた出力制御対策パッケージでは、中長期的な系統対策として、北海道と本州を結ぶ海底直流送電線の整備、これも盛り込んでおりまして、3月末にはこの整備に係る基本的な要件を決定をいたしました。今後、整備に向けた対応を進めていきたいと思います。
また、足下で実施している対策といたしまして、火力の最低出力の引下げに加えまして、蓄電池の導入支援を実施をしています。さらに、ディマンドレスポンスを推進し、昼間の太陽光発電を最大限活用するため、昼間の電力料金単価を割安とするといった電気料金メニューの多様化などの需要面の対策も実施をしているところであります。
引き続き、再エネ出力制御の抑制に向けた対策を徹底をしていきたいと考えています。
○岩渕友君 系統対策というふうに言うんですけれども、連系線の工事や活用状況でも変わりますし、東北電力では系統対策をしても50%分活用では出力制御率二七%にもなるんですね。しかも、エネ庁の資料には、一般送配電事業者が上限として保証するものではないというふうにもあるんです。もっと増える可能性もあるということなんですね。これでは再エネ増やすことできないわけです。
営農型の太陽光発電に取り組んでいる福島県農民連から話を伺いました。2023年の出力抑制金額は50万円を超えているんです。東京電力福島第一原発事故後、自分たちで使う電気は自分たちでつくろうということで太陽光発電事業に取り組んで、約10年間順調に発電し、建設費の返済を続け、不可欠な事業の柱にもなっているのに、出力抑制によって今後の収支計画が見通せなくなるのではないか、女川原発の再稼働が予定される下で更に抑制が進むのではないか心配だ、原発事故の被害が続く下で復興のために力を尽くしてきたのに出力抑制などとんでもないことだ、原発より再エネにこそ予算を振り向けるべきだと怒りを、訴えをされています。
大臣、これ再エネの出力抑制について補償するべきではないでしょうか。
○国務大臣(齋藤健君) 再エネの出力制御に当たりましては、まずは地域間連系線を活用した市場取引、この市場取引を通じて余剰再エネを広域的に最大限活用すると。その上で、地域内の蓄電池や揚水により余剰電力を有効活用し、また地域内の火力の出力を最大限制御するとともに、地域間連系線を通じて余剰電力を他地域に送電し、それでもなお供給が需要を上回る場合に再エネを出力制御するというものであります。
上記のような工夫してもなおエリア全体で電気の余剰が発生している場合、追加的に電力を供給することができなくなるわけでありますので、電力市場においてその追加的な電力の供給には経済的価値が付かない状況になります。これを国民負担により補償するということになると、私はそれは妥当ではないと考えています。また、発電事業者と一般送配電事業者の系統接続時の契約に基づきまして、出力の制御により生じた損害は補償しないということになっています。
一方、再エネの更なる導入拡大に向けましては、出力制御量を可能な限り抑制するということが重要でありますので、出力制御対策パッケージに基づいて対策を徹底していく、これが大事ではないかと考えています。
○岩渕友君 もう時間が来ているので終わりますが、元々FIT制度は、再エネ事業者の内部収益率を一定にするという原則に基づいて買取り価格や買取り期間を定めた制度です。出力抑制に対する補償がなければその前提が崩れてしまうということになりますよね。
原発や化石燃料の産業界から繰り返し、事業予見性持てない、政府の支援をと要望されて、それに政府は応えてきました。再エネの事業予見性こそ持てるようにするべきだということを求めて、質問を終わります。
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