日本共産党の岩渕友議員は24日の参院経済産業委員会で、政府が掲げる石炭火力発電削減計画を実行せず、実用化の見込みのない技術を根拠に石炭火発を存続させていることを批判、「2024年の平均気温は1・55度上昇しており、待ったなしだ」と石炭火発の廃止を迫りました。
政府の第7次エネルギー基本計画は、40年度の電源構成を火力3~4割としています。岩渕氏が「30年度の見通しから減っていない」と追及すると、武藤容治経産相は効率や技術の向上で二酸化炭素の排出を削減すると強弁。一方で、石炭火発存続の理由となる、二酸化炭素排出が少ないとする水素・アンモニアの混焼やCCS(二酸化炭素回収・貯留)などの新技術については、「40年度の供給体制やコストは見通せない」と明らかにしました。
昨年の主要7カ国の共同声明は、「30年代前半に、排出削減対策が取られていない既存の石炭火発を段階的に廃止する」としています。
政府は非効率な石炭火発を「段階的減少」としていましたが、実行されていません。環境団体の集計によると、非効率な石炭火発の廃止は9基(設備容量1087メガワット)で全体の4%にとどまっています。
岩渕氏は、「非効率」に分類される北陸電力の「富山新港石炭火発1号機」が廃止を2度延期し、代替の液化天然ガス(LNG)火発の稼働後も運転していることを指摘。「電力の安定供給確保のため」と言い訳する武藤経産相に対し、「自らの約束さえ守っていない」と批判。見通しが立たない技術より再エネ普及への支援を求めました。
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217-参-経済産業委員会-002号 2025年03月24日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
まず、岩手県大船渡市で発生した林野火災について聞きます。
市の面積の約九%に当たる二千九百ヘクタールが焼失をして、非常に深刻な被害が発生をしています。十六日に現地に伺って渕上市長や漁協の方々ともお会いをし、被害の実態と要望をお聞きしてきました。
中小・小規模事業者の被害について、現在把握している被害と対策について簡潔に教えてください。
○政府参考人(岡田智裕君) お答え申し上げます。
大船渡市の中小企業の被害状況につきましては、岩手県から一部の事業者の施設や設備に焼失や破損等の被害があったと報告を受けているところでございます。
詳細な被害状況につきましては、引き続き県あるいは商工団体等と連携し把握に努めてまいりたいと、このように考えております。
○岩渕友君 実情をよくつかんでいただいて、実態に合った支援を求めていきたいと思います。もう既に災害救助法が適用となっているので、それに合わせた支援の対策はされているというふうに思うので、更に支援是非求めておきたいというふうに思います。
この火災の発生が二月二十六日で、三月九日に鎮圧宣言がされています。これ、確定申告の時期と重なっているわけですね。この申告期限の延長を、個別指定ではなくて地域指定にするようにということで政府に求めてきました。地域指定するべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(斎須朋之君) お答え申し上げます。
申告期限等につきましては、被災された納税者の方は期限の延長が可能となっているところでございます。この延長の方法につきましては、地域指定を行う場合には、災害等により申告等をその期限までに行えない者が広範囲に生じているのか等、被災状況の実態等を総合的に勘案して期限の延長を行ってきているところでございます。
今般の林野火災につきましては、本人申請をベースとする個別指定による対応を行う旨をいち早く避難所等にも掲示を行って周知を行ったところでございまして、被災された納税者にきめ細やかな対応を既に行っているところでございます。
いずれにいたしましても、引き続き被災の実態ですとか被災地のニーズ等に応じて丁寧な対応をしていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 相談であるとかこの申告期限の延長を含めて、今答弁ありましたけれども、実情に応じて丁寧な対応お願いしたいなというふうに思います。
それで、渕上市長や事業者の方々からは、避難指示によって暮らしとなりわいに影響が出ていると、直接被害に遭った方々だけではなくて、被災者を広く捉えて国の支援をお願いしたいんだというふうに求められたんですね。これ、大事なことだというふうに思うんです。
先週の予算委員会の中で、防災大臣から柔軟に対応するというふうな答弁がありました。大臣にお聞きするんですけれども、東日本大震災津波の被害からの再建の途上で今回の林野火災ということになりました。事業者に寄り添った柔軟な支援、必要ではないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) 今般の山林火災によりまして、水産加工業における施設ですとか設備の焼失などの被害のほか、避難指示等の影響により飲食・宿泊業では急なキャンセルによる営業損失も生じているところは、様々な面で中小企業者に影響が出ていることは承知をしているところであります。
防災大臣の方からもそういう答弁あったと思いますけれども、事業者のよく声を聞きながら、岩手県また大船渡市等とも連携をしながら、相談窓口での丁寧な対応など事業者の不安に寄り添いつつ、また日本公庫による貸付け等の支援もありますので、確実に実施してまいりたいというふうに思っております。
○岩渕友君 改めて、被災事業者に寄り添った支援、これ強く求めておきたいというふうに思います。
次に、石炭火力発電について質問をしていきます。
世界気象機関は、二〇二四年の気温上昇幅が産業革命前と比べて一・五五度に達したとする報告書を発表しました。パリ協定で決めた一・五度を単年で初めて超過したことを受けて、国連のグテーレス事務総長は、地球は救難信号を発していると危機感を表明しています。温室効果ガスの排出削減対策は待ったなしとなっています。
ところが、第七次エネルギー基本計画で示された二〇四〇年度の電源構成で火力は三割から四割というふうにしています。第六次のエネルギー基本計画では、二〇三〇年度の電源構成で火力は、LNG二〇%、石炭は一九%というふうにしています。
脱炭素化は国際合意であるにもかかわらず、十年たってもほとんど変わらないということではないんでしょうか。また、なぜこの内訳を示さなかったのでしょうか。大臣、いかがですか。
○国務大臣(武藤容治君) 火力発電の脱炭素化につきまして、水素、アンモニアやCCUS等を活用して進めていくが、二〇四〇年度のエネルギー需給見通しを議論する審議会でも議論をいただきましたところで、現時点で、こうした技術に関する二〇四〇年度におけるサプライチェーンですとか、技術開発、コスト等の動向を確度高く見通すことは難しいという議論の結果、今先生がおっしゃられたように、六次のエネルギーと七期のエネルギー計画での表示の仕方は変わったところであります。
また、脱炭素化に当たって重要視すべきは、LNGや石炭といった燃料の種類ではなく排出されるCO2をいかに減らせるかであって、技術進歩によりCO2の排出削減や回収が可能となっていく中、現時点で火力発電の内訳をお示しすることで、かえって将来の技術選択の幅を狭めてしまう事態を避ける必要があるのではないかということだろうと思います。
こうした点を踏まえて、火力発電比率につきまして、脱炭素化した火力発電を含め約三割から四割とするが、その内容はお示ししないとの結論となったものと認識をしているところです。
いずれにしましても、石炭火力を含めた火力発電の脱炭素化に向けて、引き続き非効率な石炭火力のフェードアウトを促進するとともに、水素、アンモニアやCCUS等を活用した脱炭素化と火力への置き換えを推進してまいりたいと思っております。
○岩渕友君 今答弁の中で、水素やアンモニアなど、その二〇四〇年度にサプライチェーン見通せるか分からないと、確度高く見通すことができないんじゃないかというような答弁ありました。
これ、今後の実施状況を見通すことができない水素やアンモニアでは、緊急になっている温室効果ガスの排出削減に間に合わないということだと思うんですよね。しかも、脱炭素火力だというふうに言っても、温室効果ガスは排出、結局されるわけですから。
先日の予算委員会の中で、武藤大臣ともやり取りしましたけれども、そのときに、エネルギーをめぐる困難な状況ということで、火力発電への依存ということを挙げておられました。この依存から脱却しなくてはならないわけですね。
第七次エネルギー基本計画では、非効率な石炭火力のフェードアウトを着実に推進していくことが喫緊の課題だというふうにしていますけれども、この非効率な石炭火力のフェードアウト、どこまで進んでいるのでしょうか。
○政府参考人(久米孝君) お答え申し上げます。
大臣からただいま御答弁申し上げましたとおり、脱炭素化に当たって重要視すべきは、排出されるCO2をいかに減らすかということでございます。非効率な石炭火力のフェードアウトに向けては、発電所の休廃止のみならず、発電電力量の減少、アンモニアやバイオマス燃料の活用といった様々なアプローチが考えられます。
その中でも発電電力量に着目いたしますと、大手石炭火力発電事業者を対象として実施した調査によりますと、比較的非効率である超臨界圧発電以下の石炭火力の年間発電電力量は、二〇一九年度から二〇二二年度にかけての三年間で千百六十一億キロワットアワーから千三十億キロワットアワーまで百三十億キロワットアワー以上減少してございます。
○岩渕友君 さらに、二〇三〇年度に向けて六百億キロワットアワー以上の減少を見込んでいるということだったというふうに思うんですよね。
排出量を減らすんだと、発電電力量を減らすんだと言うんですけれども、そもそも国際合意ではもう全廃が求められているので、発電電力量が多少減ればいいということにはならないということだと思うんです。
それで、資料を見ていただきたいんですけれども、資料は石炭火力発電所の設備容量の推移ということで、グラフにしたものを出しております。これを見ていただければ分かるように、実際に廃止となっているところ、赤いところですよね、ここはごくごく僅かなんですよね。
エネルギー基本計画の中でも、十分に進んでいないんだということあるわけですよ。認めているわけなんですよね。
それで、具体的に見ていきたいというふうに思うんですけれども、北陸電力は、富山新港石炭火力発電所の一号機について、今年度をめどとしていた廃止時期を二〇二八年をめどに延期するんだというふうに発表をいたしました。そもそも、運転開始から五十年余りが経過をした老朽の石炭火力発電所なわけですけれども、これをLNGを燃料とする発電設備に建て替えるんだと、その代わりに二〇一八年度に廃止を決めていたものなんですよね。このLNGは既に稼働をしているわけですけれども、石炭火力一号機は廃止してないんですよね。
これ、大臣に伺うんですけれども、自ら行った約束を守ることもできない、こんな状況では、非効率な石炭火力のフェードアウトさえ進まないんじゃないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) 北陸電力富山新港火力発電所の石炭一号機についての御質問ですけれども、将来的な電力需要の増加見通しでありますとか、能登半島地震によって発電設備に被害が生じたこと、また北陸エリアにおける供給力の確保状況などを踏まえて、現状において廃止することは極めて困難であること、北陸電力が判断したと承知をしているところです。
一方で、北陸電力は、石炭一号機の二〇二八年度への廃止延期の公表に合わせて、同社が保有する石炭火力のうち比較的非効率的な二基の計画的な稼働抑制などにも取り組むことを表明しているとも承知をしているところであります。
経済産業省といたしましては、非効率的な石炭火力については、電力の安定供給の確保ということを大前提にしつつ、二〇三〇年に向けてフェードアウトを着実に進めていかなくてはならない、こういうことを進めていくこととしており、北陸電力の計画、現在の政府の方針とも整合的と考えているところであります。
引き続き、省エネ法における発電効率目標の設定などの措置を活用しながら、事業者による非効率的な、非効率な石炭火力のフェードアウトを促進してまいりたいというふうに思っております。
○岩渕友君 今、能登半島地震の話もあったんですけど、北陸電力は、能登半島地震で七尾大田火力発電所が停止したことを理由として挙げているんですけれども、これ既に稼働しているんですよね。これ、理由になっていないと思うんですよ。原発再稼働に過度に期待をして、廃止されるべき石炭火力発電所さえ延命されているというのが実態です。二〇三五年までに非効率な石炭火力発電を段階的に廃止しようというG7での合意から見ても、国際的にも通用をしないということです。
大臣、これ期限までにとても間に合わないんじゃないでしょうか。
○国務大臣(武藤容治君) G7では、各国のネットゼロの道筋に沿って、二〇三〇年代前半、又は気温上昇を一・五度に抑えることを射程に入れている、入れ続けることと整合的なタイムラインで、排出削減対策が講じられていない既存の石炭火力発電を段階的に廃止することということに合意をしていると承知をしているところです。
日本としては、第七次エネルギー基本計画において、安定供給の確保を大前提に、非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていく方針を定めているところであります。
○岩渕友君 電気事業連合会の会長が、設備の廃止には慎重になるべきだというふうに言って、三〇年までの削減に例外を設けるよう求める発言をしているんですね。
日本の温室効果ガスの約四分の一は石炭火力からの排出で、最大の排出源になっています。世界で初めて石炭火力発電を建設したイギリスでは、昨年、石炭火力を全廃したわけですよね。一方、日本は、G7の中で唯一石炭火力発電の廃止期限決めていないわけですよ。これ、廃止を決断して、アンモニア混焼とかCCSにつぎ込んでいる巨額の予算を省エネや再エネに振り向けること、非効率かどうかにかかわらず石炭火力からの計画的な撤退を進めることを求めて、質問を終わります。
