参院経済産業委員会は17日、ラピダスなどの半導体企業に10兆円以上の公的支援を行うラピダス・半導体産業支援法案の参考人質疑を行い、日本共産党から岩渕友議員が質問しました。
岩渕氏は、参考人の小池淳義ラピダス社長のインタビューを交えたルポを示し、同社設立(2022年)にあたって、当時無名の同社への700億円の税金投入に「国民の理解」を得るため、経済産業省側から「日本を代表する大手企業から出資を募ってはどうかというアイデア」が提案され、その後、同社にはトヨタ自動車など大手企業8社から計73億円が出資されたと紹介。経産省の提案は事実かとただすと、小池氏は「はっきりわからない」と言葉を濁しました。
ルポによると、小池氏は21年に自民党半導体議連で「27年までに7兆円必要」と説明しています。
岩渕氏が「7兆円」の根拠をただすと小池氏は、一般的な数字だと述べ、根拠を示しませんでした。岩渕氏は、小池氏がインタビューで述べた「量産ラインの立ち上げに必要な3兆円の半分は民間から集めたい」との考えは変わらないかとも質問。小池氏は「半分近く集めなければならないのは事実」と認めましたが、どうやって集めるかは答えませんでした。
岩渕氏はラピダス社製半導体の軍事利用についても追及。武藤容治経産相の「ラピダス社から、現時点では軍事への利用は想定していないと聞いている」との国会答弁を挙げ、「『現時点』ということは将来的にあり得るのか」と質問しました。小池氏は「答えはノーだ」と強弁しましたが、同社の東哲郎会長が「重要な部分は国防の領域」「まずはアメリカに届ける」と軍事利用を否定していないことを示すと「詳しいいきさつはよくわからない」などと答弁を避けました。
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217-参-経済産業委員会-004号 2025年04月17日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
三人の参考人の皆さん、本日はありがとうございます。
初めに、小池参考人に幾つかお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、参考人のインタビューも掲載をされている、ラピダス、日本製造業の復活へ最後の勝負というルポがあるんですね。これを見ますと、ラピダスの設立に当たって経済産業省から一つの提案があったというくだりがあるんですよ。
どういう提案かというと、ラピダスという無名の会社に七百億円もの税金が投入されることになった場合、国民の理解を得ることが重要になるので、産業界から広く支持を集めている企業とするために日本を代表する大手企業から出資を募ってはどうかというアイデアだったというふうにあるんですね。
これを受けて、いわゆる七十三億円の出資集まるということになっていると思うんですけれども、この日本を代表する大手企業から出資を募ってはどうかというアイデアが経済産業省から提案されたというのは事実でしょうか。
○参考人(小池淳義君) 岩渕先生、ありがとうございます。
いろんなうわさが飛んでいるんですけれども、私どもとしては、先ほども述べましたように、この会社をつくろうというふうに決めたのは、先ほど言った十四人でこれをつくるということを決めさせていただきました。このためにいろんな研究を、先ほど言いましたように、何回も何回も議論して、まさに夜の八時から十二時あるいは一時、二時までやっていたというお話させていただきました。これをベースにして、取りあえずこの会社をつくろうという形を決めたわけでございます。
当然、そのときの資金というのは余り大きな額ではなかったです、個人のやっぱりその出資でやっておりますから。それにおいて、やっぱりこれだけでは駄目だから、いろんな企業にお願いしようという形で進めてまいりました。それを、先ほどおっしゃったように、国が決めたとかMETIさんが決めたということではなくて、もちろん我々はこういうことをやっていく上においてはいろんな企業の支援が必要だ、ラピダスって無名ですから、確かに、先ほどありましたように。ですから、だけど、やっぱりいろいろ我々内部で議論したときに、それなりの企業の方に出資をいただくということは有効な手段だというふうに考えておりましたので。
あと、もちろん、そのときにどういうふうに進めたらいいかどうかというので御相談したことはあると思います。ですけれども、やっぱり我々自身としては、そういう企業としっかりと出資をしていただくという形のお願いをして回ったわけです。実際に八社とですね、もう本当に大変だったんです、僅か二か月間でこれを交渉するわけでしたから。私自ら全部資料を持って、何回も何回も私の考え方あるいはその方針を御説明して、最後は納得していただいて八社の方に出資をいただいたという形であります。
○岩渕友君 そうしますと、経産省からアイデアが提案されたというのは事実ではないということでよろしいですか。
○参考人(小池淳義君) 岩渕先生、ありがとうございます。
それは正確には私はっきりしないところもあるんですが、私どもが考えていたのは、これは先ほど説明したとおりでございます。そして、経済産業省さんが、確かに、国のプロジェクトとしてこういうことをやるんだったら、そういうことの議論をした方がいいということも考えておられたのかもしれません。だけど、これは、我々自身としては、やっぱりこの八社の方にきちんと説明して御支援をいただこうという形で進めておりましたから、それがちょっとどっちが先かどうかというのは私ははっきり分かりませんけれども、ただ、私どもとしては、間違いなく日本を代表する八社にこの支援をしてもらうということを確信してやっておりましたから、これは私の方は事実でございます。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて小池参考人に伺うんですけど、先ほどの紹介したルポの中で、自民党の半導体の議連に小池参考人と東会長が招待をされて、小池参考人が経営計画をプレゼンしたというくだりがあるんですね。そのときに、この新ファウンドリーが本格的にビジネスを始める二七年までに資金は幾ら必要なのか、七兆円という試算を発表すると、会場がどよめいたというところがあるんですよ。
それで、研究開発と試作に二兆円、量産化に三兆円だというふうに理解をしていたんですけれども、この七兆円というのはどういう金額なのか、内訳がどうなっているのかということが一つと、そのルポの中で、小池参考人がインタビューに答えて、量産ラインの立ち上げに必要な三兆円の半分は、つまり一・五兆円ということだと思うんですけど、民間から集めたいというふうに述べていらっしゃるんですね。この考えは今も変わらないのかと、どういうふうに集める計画かというのを教えてください。
○参考人(小池淳義君) 岩渕先生、ありがとうございます。
これは、まず第一に言いたいことは、半デジ会議、私も途中から参加させていただいているんですけれども、これは、その各社の報告をしたりとか考え方を述べるという場ではなくて、あるいは決定をする、その場でいろんなことを決定する場ではございません。いろんな皆さんと意見交換をして、そして日本の半導体をどのようにすれば発展していくかという場でございます。ですから、そこにおいて私がそういう報告をするということは、参考例としてそういうお話をすることはあるんですけれども、決して私どもの会社がこうするんだとかああするんだとかいうことに関する審議をする場ではないんですね。
ですから、そういう形において、私は、一例として、一般的にこの半導体がどれぐらい資金が必要なのかというお話はしたことがあるかもしれません。それに関しては、例えば、一般的にこの先端半導体と言われていますのは、研究開発費に二兆円ぐらい掛かるだろう、そして実際に事業を行っていくためには三兆円ぐらいの額が掛かるというのは、これは一般的ですけれども、それぐらいの資金が掛かるというふうに業界では言われております。その数字を言ったという形でありまして。
あと、その中で、多分、一般的に三兆円の事業を実際に行うとなると、自己資金、あるいは自分のその出資をしていただける企業を半分近く集めなきゃいけないというのはこれは事実でありまして、そういうことをやっていかないと世界の半導体メーカーは存続しませんのですから、そういう形の御意見をというか提案を、皆さんに議論をしていくという意味において提案したということはあると思います。
○岩渕友君 ありがとうございます。
〔委員長退席、理事古賀之士君着席〕
続けて小池参考人に伺うんですけれども、IBMとアメリカの国防総省との関係などから見て、そのラピダスの半導体が、デュアルユースですよね、を含めて軍事利用されるんじゃないかという懸念持っているんですね。
武藤大臣は国会の答弁の中で、ラピダス社から現時点では軍事への利用は想定していないと聞いているというふうに答弁しているんですよ。さらに、大臣は、政府が将来の販売先について制限を課すことは慎重であるべきだというふうにも言っているんですけれども、この現時点ということは、将来的にはあり得るということなのか、いかがでしょうか。
○参考人(小池淳義君) 岩渕先生、ありがとうございます。
この間もちょっと私述べさせていただきましたけれども、全く今はそういう、武器とかそういうことを使うということは考えておりません。やっぱり一番大事なのは、日本を守るということは自信ありますが、だけど、今のところにおいては、私どもはそういう、兵器を造るとか、それのための半導体を作るということは考えておりません。
○岩渕友君 現時点ではということなので、将来的にはもしかしたら考えることがあるかもしれないという理解でよろしいんでしょうか。
○参考人(小池淳義君) ありがとうございます。
基本的に、私が言いましたのは、我々の会社の理念は、いかに人々を幸せに、そして幸福にするということを述べました。その時点において、永遠にそういう形に関する答えはノーです。
○岩渕友君 実は、東会長が二〇二三年十月の講演で、重要な部分は国防の領域だと、そういう半導体を我々はまずアメリカのお客さんに届けることをやっていかなければならないというふうに述べているんですね。この発言は御存じだというふうに思うんですけれども、この発言はどんなふうに理解をされていらっしゃるでしょうか。
○参考人(小池淳義君) ありがとうございます。
ちょっと私、その詳しいいきさつはよく分かりませんけれども、我々がやっぱり考えているのは、あくまで原則として私が述べたことで会社は進めているという形において間違いはございません。
○岩渕友君 ということは、小池参考人としては軍事利用はないと思っているということでよろしいですか。
○参考人(小池淳義君) はい、そのとおりでございます。
○岩渕友君 じゃ、続けてちょっと小池参考人に伺うんですけど、昨日の日経新聞で、「半導体 国際分業に転機」という記事が掲載されていたんですね。トランプ政権が米国への半導体投資を促す下で、今各国が半導体の内製化に力を入れているというような内容で、ラピダスにとって顧客獲得は一層難しくなるというように書いてあったんですね。四月二日付けの日経新聞にもいろいろ書いてあって、TSMCがアメリカに三つの先端ロジック半導体の工場を追加するということを紹介していて、日本にしか拠点がないラピダスに半導体の生産を委託する優先度は下がりかねないというふうに書いているんです。
非常に逆風の状況かなというふうにも思うんですけれども、こうした中で顧客が見込めるかということについてどうお考えでしょうか。
○参考人(小池淳義君) 岩渕先生、ありがとうございます。
確かに、そういうふうにアメリカの方で考えていることはあるかもしれません。ですけれども、私どもとしましては、これはやっぱり友好国におけるグローバルなエコシステムを形成していくということが一番になっております。ですから、アメリカにおいて、確かにTSMCが、シーシー・ウェイがトランプに約束しましたように、アメリカに前工程を三つ造る、後工程を二つ造る、研究開発を一つ造るというようなお話をされたという話を聞いております。これ、確かに、いろんなバランスを考えてTSMCのシーシー・ウェイ会長も、CEOもそういう御発言をなさったんだと思いますけれども、将来は分かりません。可能性はいっぱいあると思います。
ただし、私が言いたいことは、この先端半導体を作るために必要なことは、もちろん研究開発は世界中の国がやっております。だけど、これをしっかりと量産して作り切れるという企業はそれほど多くはないと思っております。ですから、TSMCはすごい企業です、今の台湾においてこれを進めていく上においては必ずできるでしょう。だけれども、先ほど言いましたように、将来のいろいろなバランスを考えていた点においてはよく分かりません、それに関しましては。もうこれはいろんなバランスがありますから、お分かりのように、アメリカの方で必ずしも物づくりが得意でない、ある程度の環境がそろわないと作れないということもあると思います。
ただし、我々がはっきり言えることは、日本においては優秀な技術者あるいは物づくりの得意なエンジニアがいるということが必ずこの先端半導体を物にするという自信を持っておりますので、そこのところは、これからのアメリカあるいは日本、友好国との関係において我々の持っているポジションは極めて重要になっていくというふうに考えております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、黒田参考人に伺いたいんですけれども、三月十一日付けの朝日新聞に、機械振興協会の井上特任研究員という方が、インタビュー記事が掲載されているんですけれども、これからも微細化が進むとする想定が、半導体ですよね、古いんじゃないかと、最先端の微細化半導体を作るよりも、ICチップを高度化する集積化技術に重点を置くべきじゃないのかと、この分野は製造装置や材料など日本メーカーが強いので、産業政策上、産業育成の効果が見込めるというふうに述べているんですね。
日本の強み生かすということは重要だというふうに思うんですけれども、こうした考えについて参考人がどんなふうにお考えになられているか教えてください。
〔理事古賀之士君退席、委員長着席〕
○参考人(黒田忠広君) 岩渕先生、どうもありがとうございます。
私、その記事をもう一度読み返してみたいと思いますが、恐らく私が申し上げたことは今日申し上げたことと変わらず、微細化を進めることは今後も非常に重要であると同時に、いわゆるチップレットという時代に入りますので、様々なチップを組み立てる、特に3Dに実装するという技術は日本に強みがあるし、投資効果も高いので、今後はそこに投資するということも同様に重要になるという趣旨の発言をしたんだろうと思います。
私からは以上です。
○岩渕友君 ありがとうございます。
最後に、今井参考人に、時間がなくてあれなんですけれども、先ほど参考人が紹介されていたトロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授なんですけれども、AIが人間のコントロールを超えるおそれについて注意を払う必要があると度々警告を発しています。
EUではちゃんと法整備されているんですけど、日本では事業者の自主性に委ねられていると。日本にどんなルールが必要だというふうにお考えでしょうか、お聞かせください。
○参考人(今井翔太君) ありがとうございます。
法整備は少し僕の専門分野とずれますので難しいところもございますけれども、まず、冒頭のヒントン教授の、将来人間をコントロール、人工知能が結構危ないところに行ってしまうかもしれないというのは、これはおおむね事実かと思います。
ただ、EUとかの現在の法制度がそこまで極端なところを考えて整備されているかというと、そうではない部分もある。むしろ、どちらかというと、もう少し下の、下の方と言うと言い方あれですけれども、人工知能によって著作権とか侵害されるおそれのある、そういう人たちとか、データを持っていかれると少し困るかもしれないという、そういう人たちに対する法整備とかは恐らく進んでいると私は理解しております。
それはちょっと我々研究開発事業者からするとなかなか難しいところでして、一長一短、もちろん国民から見ると少し違うところがあるかもしれませんけれども、人工知能技術、今後非常にあらゆる分野を左右するところにおいて、やはり制限を掛けるとほかの国に後れを取ってしまうというところで、バランスというところがかなり難しい。
日本というのは、ある程度緩い方と言われています。ただ、私自身、研究者としていろんな意見、特にクリエーターの方たちから意見受け取っていますので、特にそういう直接的に人工知能の被害を受ける可能性のあるクリエーターの意見を取り入れた法整備というのは重要なのではないかなというふうに思います。
○岩渕友君 ありがとうございました。
