2020年4月6日(月) 参議院 決算委員会
「2018年度決算ほか2件」省庁別審査①
資金支援 不利な扱い
日本共産党の岩渕友議員は6日の参院決算委員会で、新型コロナウイルス感染症に伴う自粛要請などの影響で倒産・廃業の危機にある中小企業に対し、「自粛要請と補償はセットで」と支援を求めました。
岩渕氏は、資金繰り支援の際に既にある債務の条件変更を行った業者に対し、格付け変更など不利な扱いがされていると指摘し、金融機関への要請を強めるよう要求しました。麻生太郎財務相は「迅速かつ柔軟な対応を要請した」と答弁。岩渕氏は「1カ月たっても要請通りでない実態がある」と述べ、強力な要請を求めました。
岩渕氏は、収入がなくても家賃や税金など固定費がかかっているとし、「固定費の減額・免除、法人税や消費税、社会保険料などの減免などを行うべきだ」と要請しました。
石炭火力 融資やめよ
日本共産党の岩渕友議員は6日の参院決算委員会で、国が100%出資する国際協力銀行(JBIC)が融資するインドネシア・チレボン県の石炭火力発電所2号機建設にかかる贈収賄疑惑をとりあげ、「融資はやめるべきだ」と政府に迫りました。
「気候危機」のもと脱石炭に進む世界の流れに逆行し、日本はCO2排出量が多い石炭火発の海外輸出を公的資金で進めています。
岩渕氏は、チレボン県の石炭火発では生業(なりわい)や環境への被害などに対する住民の反対や、47カ国280団体から融資に抗議する要請があったことを指摘。さらに、拡張計画をめぐり建設業者の現代建設(韓国)幹部が前チレボン県知事に不正資金を提供し、昨年10、11月に両者が容疑者認定されているとして「融資を引き揚げるべきだ」とただしました。
JBICの前田匡史総裁は「注視していく」と述べるにとどまりました。麻生太郎財務相も「JBICが融資契約に基づいて適切に対応している」と強弁しました。
岩渕氏は、石炭火発への世界の厳しい目に加え「贈収賄疑惑のある案件に融資を継続すれば日本政府そのものが海外から信頼を失う」と融資の中止を強く要請。「気候変動対策の観点のみならず、途上国支援の観点からも脱石炭支援を行うことが妥当だ。インフラシステム輸出戦略の見直しを行い、石炭火発の輸出支援をやめること求める」と訴えました。
(赤字部分のリンクから別ウィンドウで開きます)
質問資料① パリ協定以降の石炭火力輸出に対する公的支援案件【PDF版】【画像版】
質問資料② JBICが融資・保証を行った石炭火発案件(2003-2019)【PDF版】【画像版】
質問資料③ G20各国の海外石炭火発及び再エネ事業への公的金融機関支援額(2013-2016計)【PDF版】【画像版】
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
初めに、新型コロナウイルス対策、中小・小規模事業者への支援についてお聞きをいたします。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、緊急融資に関する中小企業から政府系金融機関への相談件数が一か月で四十倍に急増をしたことが、二日、中小企業庁の集計で分かりました。信用保証制度に関わって、中小企業が自治体の窓口に殺到をして、東京都の港区では二か月近く予約が埋まっている状況だということです。三月以降、飲食、小売業からの相談が急増しているということで、政府、自治体による自粛要請によって、多くの事業者が廃業の危機に追い込まれています。日々の売上げがなければ営業が立ち行かない、今月末にも資金繰りがショートするなど、中小零細事業者や個人営業の方から次々と訴えが届いております。この状況が続けば、大量の雇用が失われることにもなりかねません。
自粛要請と補償はセットで、この声が今大きく広がっておりますけれども、国が責任を持って、休むことができる条件を一刻も早く整備をすることが必要です。飲食、小売業だけではなくて、多くの中小・小規模事業者が倒産、廃業に追い込まれる切迫した事態となっています。政府は、一社も潰さない、この決意で思い切った大規模な経済対策をすぐにでも行うということを強く求めるものです。この間、中小企業家同友会全国協議会から第二次となる緊急要望・提言を、そして全国商工団体連合会からも要望を受けました。
それでお聞きをするんですけれども、既往債務の条件変更を行った事業者に対して格付変更など不利な扱いをされているという声が寄せられております。こういったことがないように、金融機関への要請を更に強める必要があると思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) これは、事業者の方々から資金繰りに対する不安というものに対しましてはよく寄せられているということを踏まえまして、去る三月の六日、官民の金融機関に対して、既往債務の返済猶予などの、いわゆる手形がジャンプさせるとかいろんな話ですよね、そういった条件の変更について迅速かつ柔軟に対応するなど、事業者の資金繰りの応援について要請を行わさせていただいたところで、おたくの大門先生も、この間の決算委員会だったかな、何か、誰が作ったか知らないけど、紙書いて、読んでおられましたけど、あれがそうです、あれ一部ですけれども。
こうした条件変更を行った場合の貸出債権につきましては、これは事業者の実情を踏まえた金融機関の判断というものをこれはもう尊重することを、これを要請文に明示をさせていただいた上で、金融機関には、これを踏まえて事業者に対する積極的な支援に取り組んでくださいということで、少なくとも全く知らない人が金借りに来ているんじゃないんだから、今までの付き合いのあるというので、こちら側の方も転勤はしばらくの間止めさせて、いわゆる、同じ人が来れば、あっ、この人分かっていますからといって、西田さんなら貸さないけど、まあ麻生さんなら貸すとか、分かりやすいじゃないですか、その方が。貸す方も分かっているんだから、どんな、信用できない人とかできる人とか分かりますから。
そういったことで、速やかにやらないと、これ時間のちょっと競争になりますので、通常ですと二週間ぐらい掛かるところを今回は半分ぐらいまでに今なっていると思いますけれども、一週間ぐらいまで縮めることまでに来ているとは思っておりますけど、いずれにいたしましてもここが大事なところだと思っております。
○岩渕友君 格付変更など不利な扱いをされているという声が寄せられていると。この点についてはどうですか。
○国務大臣(麻生太郎君) この話もいろいろ来ておりますけれども、私どもとしては、そういったようなものに対しては、今度、一連のそういったものに対して、どういう銀行が、どこではどういうことがあったかというのを全部我々レポートを取ることにしておりますので、それはきちんと後で整理した上で出しますよというところまで言ってありますので、その意味するところはみんな分かっておられると思います。
○岩渕友君 先ほどもこの議論あったと思うんですけれども、レポートの結果出るのはまだ先だということがあると。
それで、要請から一か月たっているわけですけれども、現場では要請どおりになっていないという実態も、今日いろいろ議論もありましたけど、あるわけなんですよね。中小事業者が商売続けられるかどうかという本当にぎりぎりのところに皆さんいるので、本当に不安が広がる中で、強力に要請をしていただきたいということを求めたいというふうに思います。
大手企業による下請代金の支払を、手形ではなくて現金でやってほしいと。中には六か月のものもあるし、ある自動車関連では七割が手形というところもあると。お金が回らなくなればやめるしかない、できるだけ早く現金に切り替えるように指導してほしいという要望も寄せられております。
手形払いの現金化の取組、これ進めていると思うんですけれども、下請事業者の資金繰りがこれ相当厳しくなっていますので、大手の企業に対して現金化をすぐにでも強く要請してほしいと思うんですけど、いかがでしょうか。
○大臣政務官(宮本周司君) お答えをいたします。
今回の新型コロナウイルス感染症拡大の影響によりまして、まさに下請中小企業にとりましては資金繰りが最大の課題となっている、これは強く認識をしておるところでございます。そして、今御意見がございましたこのいわゆる支払の現金化、また支払条件の改善、これも徹底をしていくべきだと思っております。
平成二十八年度に、当時五十年ぶりに手形通達を改正をいたしまして、当時は世耕プランとも言われましたが、この下請取引に関しまして抜本的な改善を試みました。そのことによって、手形の支払を現金化する、また支払のサイトを短くする、こういったことを十分に盛り込みまして、各下請のサプライチェーン、業界団体ごとに自主行動計画も作っていただき、それを着実に実行するように要請もしてまいりましたし、その間、大企業と中小企業の共存共栄を図るための取引条件の改善に関しましても、まさに政府を挙げて取り組んだところでございます。
今般のこの感染拡大が更に影響を大きくしておる中で、三月十日に経済産業大臣及び各業種の所管大臣の連名によりまして、全国千百四十二の業界団体等を通じまして各業界のいわゆる親事業者の方に、経営基盤が脆弱なこの下請中小企業に対して速やかに代金の支払をする、若しくは前払などを一層御配慮いただく、こういったしわ寄せが発生をしないように強く要請をしてきたところであります。
ただ、要請しただけで実行されなければ意味がございませんので、今全国に四百七十四名の下請Gメンがおりますので、しっかりと現場現場を監視しながら、この下請代金の支払状況の変化、また、この特にコロナ感染症が拡大してからのいわゆる取引の実態、その影響、これをしっかりと監視もしながら、現金化が速やかになされるように、対応がしっかりと浸透するように、これからも徹底してまいります。
○岩渕友君 速やかに行われるように、引き続き強く求めていただきたいと思います。
中小・小規模事業者や個人事業主などが収入がなくても、家賃だとかリース料だとか税金や社会保険料など固定費が掛かるわけですよね。様々な負担に対して、出血多量の瀕死の状態という声も上がっております。固定費への補助や負担の減額、免除というのが本当に切実な願いになっております。法人税や消費税、社会保険料などの減免、そして延滞料の、延滞税の免除、これを行うべきではないでしょうか、大臣。
○国務大臣(麻生太郎君) このコロナの影響によって資金繰りの観点から納税が困難になった方々のお話なんだと思うんですけれども、これは、税務当局において、納税者の置かれた状況はそれぞれ皆違いますので、そういったことを配慮しつつ、猶予の申請とか審査については、これは極力簡素化してやらぬとどうにもなりませんので、簡素化した上、原則一年猶予をすると、これを迅速かつ柔軟な対応を行うこととして、まずはこうした方針を着実に実行していってもらう、実施していくということが重要なんだと考えております。その上で、今、我々としては、現下の厳しい状況を踏まえまして、財政、金融に限らず、この税制も総動員した緊急経済対策の策定へ向けた作業を今進めさせていただいております。
この納税の猶予というのは、これはよく考えましたら、これ、簡単に言えば財政の投入とほぼ同じことですから。商売しておられたら、商売しておられるのか、あなただったら、商売しているなら分かるんだろうけど、金を納税しないで済むということは、その分だけその金使えますから。この三月末一千万納税するはずを使わなくて済むなら、それ、そのまま資金繰りへ回せますので、そういった意味で銀行から金を借りなくていいということになりますので、これ、納税を延期してやるというのは財政の投入とほぼ同じことと。外国では、これみんな納税、全部財政の支出にこれみんな充てておりますので、計算しておりますので。
そういった意味では、議論をいろいろ踏まえて必要な体制をさせていただきたいと思っておりますが、今言われましたように、この納税猶予というのは、今は、そうですね、中小の経営者の方からは最も感謝の声が上がるのはこれだと思っております。
○岩渕友君 猶予から更に一歩踏み込んで、減額、免除、そして延滞税も含めて是非検討をいただきたいと思うんです。固定資産税なども含めてその減免を行う必要があるんだということも併せて述べておきたいと思います。
中小・小規模事業者は、雇用を守って、そして地域経済を守る本当になくてはならない存在です。海外では申請してすぐに給付金が振り込まれるというところもあるんだというふうに聞いています。日本でも、融資だけではなくて、給付は本当に切実に求められていると思います。
先ほど、大臣の答弁の中にも、中小・小規模事業者、そして個人事業主への給付金制度を今検討中だというお話ありましたけれども、これ、一刻も早く、そして一度だけではなくて十分な支援を、そして思い切った大規模な経済対策を重ねて強く求めておきたいというふうに思います。
次に、石炭火力発電の海外輸出を公的資金で進めている問題について質問をいたします。
近年、世界各地での異常気象などの激化などによって、気候危機と言われる事態になっています。石炭火力をめぐっては、パリ協定合意の前後から、二度目標の達成のためには埋蔵化石燃料の八割は燃やせないこと、一・五度目標と整合させるためには世界のどの地域も例外なく二〇二〇年を発電量のピークとして速やかに減少させる必要があり、二〇三〇年には世界全体の石炭火力発電量を二〇一〇年比で八割減、二〇四〇年にはゼロにしなくてはならないというふうに試算をされています。
石炭火力の利用を続けることはパリ協定と整合しないということは明らかである。国連のグテーレス事務総長は、昨年のCOP25に当たって、全ての国に、二〇三〇年に温室効果ガスを四五から五〇%削減、二〇五〇年には実質ゼロと整合する計画の準備を呼びかけて、新規石炭火力は二〇二〇年に廃止することを求めました。各国で石炭火力発電所の廃止が加速、金融機関、投資家の脱石炭の流れも加速をしています。
こうした国際的な流れの下で、日本政府が一〇〇%出資をしている公的金融機関、国際協力銀行、JBICが融資をしているインドネシアのチレボン石炭火力発電所の拡張計画、二号機建設についてお聞きをしたいと思います。
この間、国際環境NGOのFoEJapanや現地の住民の方々、環境団体の方々が来日の際に直接訴えをお聞きもしてまいりました。
インドネシア西ジャワ州チレボン県において二〇〇七年から建設を開始した一号機は、二〇一二年七月から商業運転を開始しています。二号機の規模、事業額、JBICの融資額はそれぞれどうなっているでしょうか。
○参考人(前田匡史君) お答え申し上げます。
今委員御指摘のチレボン石炭火力発電所拡張プロジェクト、いわゆる二号機でございますが、発電容量は一千メガワット、これ一基であります、の超超臨界圧の石炭火力発電所を建設、所有し、長期にわたって操業するものでございまして、総事業費は二十一億七千五百万米ドル、私ども国際協力銀行の融資承諾額は約七億三千百万ドルでございます。
○岩渕友君 この事業をめぐっては、一号機の建設のときから現地の住民の方々の反対運動が続けられています。二〇一六年四月と九月に現地の住民グループからJBICに懸念と要請が伝えられておりますけれども、どのような内容だったか、御紹介ください。
○参考人(前田匡史君) 二〇一六年四月の書簡、これは第一号機に関してでございますけれども、この要点は、エビなどの漁獲量の減少、塩田における塩の汚染、灰の飛散といった問題があって、生計手段が失われたり環境破壊や健康被害が生じているという内容でございました。
二〇一六年九月の書簡でございます。これは二号機の件でございますけれども、事業用地の取得プロセスに問題があって、土地の所有をめぐる紛争が生じておると。チレボン石炭火力発電所拡張プロジェクト二号機は、チレボン県の空間計画に違反しているという内容でございます。
○岩渕友君 今紹介をいただいたような懸念が住民の皆さんから伝えられているということなんですね。
その後、住民の方々は、二〇一六年の十二月に、二号機の案件に係る環境許認可の取消しを求めて西ジャワ州の政府を提訴いたしました。その結果、二〇一七年の四月十九日、地裁は住民の訴えを認めて、環境許認可の取消し判決を行いました。ところが、何とその判決の前日に銀行団が融資契約に調印をするということになったんですよね。
しかも、その直前の財政金融委員会の中で我が党の大門実紀史議員がこの問題を取り上げて、JBICのガイドラインには相手国の法令の遵守は規定されている、今回訴訟が起きているけれど、判決によって環境許認可が無効というようなことになればガイドラインに反することになる、結果が確定しないうちに融資を決定するということがあってはならないと、こういうふうにただしたのに対して、当時の近藤総裁が、訴訟の判決が出ればどう対応するかということだ、その内容をガイドラインに基づいて精査をし、適切に対応していきたいと、こういう答弁を行ったんですね。こういう答弁を行ったその直後に、判決も出ていないのに融資決定行ったということなんですよ。
国会の委員会における質疑、答弁に反して融資決定が行われた、このことをJBICはどう考えているのでしょうか。
○参考人(前田匡史君) 時系列の問題は、今委員が御指摘のあったとおりでございまして、四月十八日にこれは、十九日です、済みません、第一審の判決出たわけでございますけど、その前日の十八日に融資契約を締結したわけでございますけれども、そのときの答弁の内容も今委員がおっしゃったとおりでありますが、私どもの趣旨としては、判決が出るまでは融資決定はしないといった意味ではなくて、訴訟の判決が出た場合には、その内容を環境ガイドラインに基づいて精査し、適切に対応していくという答弁だったと思います。
なお、二〇一七年の四月十九日に、今回の地裁の裁判の争訟とは別に、インドネシアの地方行政裁判所が、西ジャワ州の政府の発行した環境許認可、これ無効になったわけでありますけれども、二〇一七年の七月十七日に、西ジャワ州政府はこれに基づいた新たな環境許認可を発行したわけでございます。
JBICといたしましては、環境社会ガイドラインに基づきまして、この新たな環境許認可の内容を精査いたしました。その結果、同ガイドラインへの適用は確認できたということで、二〇一七年の十一月十四日に初回の融資実行を行ったということでございます。
○岩渕友君 判決が出ていないから融資決定しないという趣旨の答弁ではなかったということを最初におっしゃられたわけなんですけれども、これ、答弁の受け止めの違いという問題ではありません。国会軽視であり、とんでもないことだということを厳しく指摘しておきたいと思いますね。
二〇一七年の三月二十三日と二〇一八年の五月十八日に、安倍首相を始め関係大臣、団体に対して、日本政府はインドネシア西ジャワ州のチレボン及びインドラマユ石炭火力発電所への融資を含めて拒否するべきだという抗議の要望書が提出をされています。この要請書は、パリ協定後の世界の流れに反する日本の方針を憂慮する、そういう中身になっているわけなんですけれども、この内容について簡潔に説明をしてください。
○政府参考人(岡村健司君) お答え申し上げます。
御指摘の要請書、二〇一七年三月二十三日と二〇一八年五月十八日に出されておりますが、インドネシアの石炭火力発電事業につきまして、パリ協定に沿って世界が劇的な炭素排出削減を行っている努力をないがしろにするものであること、また環境許認可に法的な不備が存在すること、また地元の漁民などへの収入機会の回復が適切になされていないことなどを指摘いたしまして、この事業への融資の停止を要請するものであったというふうに理解をいたしております。
○岩渕友君 先ほど答弁でも出してもらったような一号機の案件に対するなりわいが奪われたことや健康被害なども含めての指摘もあって、更に言うと、今言っていただいたように、パリ協定の実現に対して世界が行っている努力をないがしろにするものだと、こういう厳しい指摘が行われているということなんですよね。
それで、この二〇一七年の要請書というのは四十七か国の二百八十団体が名前を連ねている、そういった要請書なんです。これだけの団体が名前を連ねている、このパリ協定に反しているんじゃないのかという懸念を伝えてきていると。こうした国際的な批判も聞かずに融資決定が強行されたということでもあるんです。
さらに、この案件をめぐっては今新たな問題が起きています。今年の一月七日に現地の住民グループがJBICに対して、チレボン石炭火力発電所二号機への貸付実行を早急に停止するよう要請する文書、これを出しています。その理由について説明をしてください。
○参考人(前田匡史君) お答え申し上げます。
現地住民グループからの書簡というのは、このチレボン石炭火力発電所の二号機につきまして、これは借入人ではなくて、EPCコントラクターである韓国の現代建設の元社員が前チレボン県知事に対して賄賂を供与したという疑惑があるということでございまして、これを背景にして貸付停止の要請を行っているものと理解しております。
○岩渕友君 今説明をいただいたように、EPC契約者の一つである現代建設が前チレボン県知事に対して多額の不正資金を供与したという贈収賄疑惑が持ち上がっているということなんですよね。こうした贈収賄疑惑がある案件に融資を継続するなどあってはならないと、こういう趣旨の要請です。
JBICの融資事業に関わって、贈収賄事件がこうやって公に明らかになっているわけですけれども、この問題はこれまでとは状況が違うと、こういう認識をJBICは持っていますか。
○参考人(前田匡史君) 本件につきましては、二〇一九年の十一月に、インドネシアの汚職撲滅委員会というのがございまして、こちらの方から、先ほど答弁申し上げました現代建設の元社員を容疑者として認定したという、そういう発表がございまして、現在も捜査が継続中という認識をしております。
私どもといたしましては、この問題に関して事実関係の確認を継続し、動向を引き続き注視してまいりたいと思います。
○岩渕友君 事実関係を確認しながら事態を注視して見守るということなんですけれども、贈収賄事件の疑惑ということなので、これまでの内容とは明らかに違う、そういう事態に今なっているということだと思うんですね。
それで、JBICの融資対象の企業に関わって、贈収賄に関与したことが判明した場合の取扱い、これが今一体どうなっているでしょうか。
○参考人(前田匡史君) 私どもは、公的輸出信用と贈賄に関するOECD理事会というのがございまして、こちらの理事会が勧告を出しております。これ、いわゆるブライバリー勧告と言われておりますが、これを踏まえながら、事実関係に応じまして、融資契約に基づいて適切に対処をいたしたいと考えております。
○岩渕友君 もうちょっと中身詳しく説明いただければよかったんですけど、支援対象となる契約に関して、贈賄の事実が支援承認前に明らかになった場合には当該支援を行わないことや、支援承認の後に明らかになった場合は貸出しの停止や融資未実行残高の取消し又は借入人の期限の利益を喪失させるなどの適切な措置をとると、こういうことが書かれているわけなんですよね。
それで、先ほども紹介いただいたように、汚職撲滅委員会は、二〇一九年十月には前チレボン県知事を容疑者認定していると。そして、十一月には現代建設の幹部を容疑者認定しているんですね。こういう状況の中で、今後の貸付実行は当然あってはならないし、これ融資を引き揚げるべきではありませんか。
○参考人(前田匡史君) 私どもの対応については、今委員御指摘のOECDにおけるブライバリー勧告に基づいてと申し上げましたけれども、その内容については今委員がお示しいただいたものと理解しておりますけれども、いずれにいたしましても、この融資契約がございますので、これに基づいて適切に対応するということで、個別案件、これ具体的に本件に適用するかどうかということは、実際の決定が出た後、対応したいということで、この段階ではちょっとお答えすることは控えさせていただきたいと思います。
○岩渕友君 個別の案件については答えられないということなんですけれども、先ほども言ったように、実際にその前チレボン県知事も、そして現代建設の幹部も容疑者認定されていると、こういう状況に今なっているんですよね。個別の案件だから答えられないということでは済まされない問題、そういう状況に今なっていると思います。
大臣にお聞きをするんですけれども、この石炭火力発電に対しては世界から非常に厳しい目が向けられている、そのことに加えて、今やり取りがあったように、贈収賄疑惑のある案件に融資を継続するということになれば、日本政府そのものが海外からの信頼を失うことになりかねないと、こういうふうに思うんですよ。これ、融資をやめさせるべきではないでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 私どもとしては、これはJBICが融資契約に基づいて適切に対応しているんだと、今、前田総裁の方から答弁があったとおりですけれども、財務省といたしましても引き続き注視はしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 JBICは一〇〇%政府が出資をしているということなんですよね。だからこそ、石炭火力のことも含めて、今世界の厳しい目が向けられている状況だということです。
この銀行団に加わっていたフランスの大手銀行のクレディ・アグリコルは、自分のその銀行の気候変動に対する方針転換を理由にして、融資契約が締結をされる前に撤退を決定するということが行われているんですね。これが今は世界の流れ、国際的な流れになっています。融資はきっぱりとやめるべきだということを強く申し上げたいと思います。
石炭火力発電への融資から撤退する国際的な流れがあるその一方で、じゃ、日本はどうなっているのかということで、資料の一を御覧いただきたいんです。これはパリ協定以降の石炭火力輸出に対する公的支援案件と今後も支援が見込まれるものの表なんですけれども、建設中のものは八件、計画中のものが二件あるんですけれども、そのほとんどにJBIC関わっているんですよね。今こういう状況だということです。
そして、資料の二も御覧をいただきたいと思います。これは、JBICが融資、保証を行った石炭火力発電の案件ということで、二〇〇三年から二〇一九年度までの融資・保証金額、件数、そしてプロジェクトの所在国についてまとめたものになっています。
そして、資料の三を御覧いただきたいんですけれども、これはG20各国の海外石炭火力発電及び再生可能エネルギー事業への公的金融機関の支援額ということで表にしたものなんですけれども、海外の石炭火力発電所への支援額は中国に次いで日本、二番目に多くなっているんですね。その大きな部分をJBICが占めているということなんですよ。
COP25の中では、国連のグテーレス事務総長から石炭中毒と日本が名指しをされるなど、国際的な批判を浴びています。小泉環境大臣は、日本の官民が投融資をする形で建設を進めているベトナムのブンアン2石炭火力発電事業について、インフラシステム輸出戦略における石炭火力輸出に関する四要件から見て問題があると、こういうふうに発言をしています。
そこで、四要件について確認をいたします。
○政府参考人(岡田江平君) お答え申し上げます。
令和元年六月六日に改訂されました現行のインフラシステム輸出戦略は、石炭火力発電の輸出方針について次のように定めております。読み上げます。
パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズに応じ、再生可能エネルギーや水素等も含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、低炭素型インフラ輸出を積極的に推進。その中で、エネルギー安全保障及び経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限り、相手国から我が国の高効率石炭火力発電への要請があった場合には、OECDルールも踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動政策と整合的な形で、原則、世界最新鋭である超超臨界圧、USC以上の発電設備について導入を支援すると、このように記載をされております。
以上です。
○岩渕友君 今読み上げていただいたように、四要件というのは後半の部分に当たるわけなんですよ。石炭をエネルギー源として選択せざるを得ないような国に限ると。相手国から要請があった場合で、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で、世界最新鋭である超超臨界圧以上の発電設備について導入支援するんだというんですね。けれども、国内からだって当然懸念の声が出ているという事態です。
このブンアン2の案件ですけれども、今言っていただいた四要件に合致していると、こういう認識でしょうか。
○大臣政務官(宮本周司君) 今ほど、いわゆる石炭火力輸出の四要件に関しての御指摘ございましたが、このベトナムのブンアン2石炭火力発電案件に関しましては、関係省庁の方でしっかりと協議をした結果、また、我が国とベトナムとの間におきましても、日越首脳会談共同声明で協力を確認している、こういったことも踏まえまして、この四要件に関しましては合致しているものと判断をしております。
○岩渕友君 これ実際、プラントはアメリカのGEというところで、据付けは中国が行うわけなんですよね。事前に聞いたらば、オペレーションは日本だと、だからこれは全く問題ないんだという話があったり、実際、先ほどパリ協定のお話もありましたけれども、パリ協定の整合性という観点から考えても、やっぱりこの石炭火力を進めるということは、とても整合性取れているとは言えないと、そういう状況になっているんだというふうに思うんですね。
ブンアン2については、JBICは、その環境アセスメントをウエブ上でもう既に公開をしているんです。つまり、これ何を意味しているかというと、支援の検討を始めているということなんですね。このブンアン2のこの間の国内のいろんな議論を見て、実際には合致しているという認識だということを受けて、支援の検討をもう既に始めているということなんです。けれども、この案件に関わっている三菱商事と合弁を組んでいた香港の企業は、脱石炭方針を発表をして、この事業から撤退をしているんですね。融資団に参加をしていたイギリス、シンガポールの銀行も相次いで撤退をするということになっていて、今この融資を検討しているのは、現状では日本の公的及び民間銀行だけになっていると見られるんだということを環境NGOの団体も指摘をするというような状況になっているんですね。こういう状況の中で、本当に融資を続けていいのかどうかということが当然国際的にも問われる状況に今なっているんだというふうに思うんです。
それで、JBICにお聞きをしますけれども、このブンアン2への融資はやめるべきではないでしょうか。
○参考人(前田匡史君) 先ほど経産政務官の方からもお話がありましたように、本件については、政府方針として先ほどの四要件に合致しているという判断がなされたということ、それから、相手国のエネルギー政策との整合性というのがございますが、ベトナムは、その四要件にも書いてあるように、他に取り得る手段がない場合とか、非常に限定して対応していくということで、このブンアンについては、最新鋭のUSC、超超臨界圧以上であるということをもちまして、政策金融機関としては、その後のパリ協定に関する様々な動きも当然にらみつつでありますが、適切な対応を行っていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 引き続きこの案件を検討していくということが今の答弁だったわけですけれども、これ、JBICだけでは当然決められないことでもあるんですよ。
それで、大臣にお聞きをするんですけれども、このブンアン2へのJBICの融資ですけれども、やめさせるべきではないでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) これ御存じなんだと思いますけれども、関係省庁の議論の結果、このブンアンの石炭火力発電所については、これは首脳会談しておられますよね、たしか。その共同声明で協力を確認をしておるんだと、私どもの理解ではそうなっておりますので、公的支援を実施する方針となったという背景は、この日ベトナムの首脳会談による共同声明なんだと思っております。
石炭火力発電の輸出支援に係る政府の方針というのは、これはもう御存じのように、エネルギー基本計画で定められておりますいわゆる四要件でありますが、現在、四要件の見直し等々について関係省庁間で議論が行われているところなんだと理解しております。
○岩渕友君 先ほどから何度も首脳会談で合意されているというふうに言っているんですけれども、やっぱり石炭火力発電自身が非常に国際的な批判を浴びていると、そういう状況の中で本当に見直ししなくていいのかということが問われているんだと思うんです。そして、今大臣自身が、エネ基の見直しが行われようとしていると、今後、という話がありましたけれども、今後、エネ基の見直し、もちろんなんですけれども、その前にこのインフラシステム輸出戦略の見直しが行われるということで、今言っていただいた関係省庁の中には当然財務省も含まれているんですけれども、この四要件について見直しを行う関係者の会議、なされるというふうに聞いています。
この石炭火力発電の輸出をそもそもやめるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(麻生太郎君) 今の段階で、まだ話は進行中の話ですので、細目詳しいわけではありませんので、答弁は控えさせていただきます。
○岩渕友君 ブンアン2の案件への融資もやめるべきですし、今後見直しをしていく中で石炭火力発電への融資もこれきっぱりやめるべきだということを言っておきたいと思います。
途上国には石炭火力を選ばざるを得ない国もあるんだというふうに言うんですけれども、再生可能エネルギーの急激なコストの低下や途上国を含めた今後の気候変動対策の強化の潮流、流れを踏まえれば、石炭火力の経済的な優位性というのは多くの国で今失われつつあります。
そして、実際、ベトナムにおいても、先ほど、まあこれしかないというような話もあったんですけど、二〇二〇年代の前半には太陽光発電であるとか風力、陸上風力の発電の建設コストが石炭火力発電のコストを下回ると、こういうふうに予測もされているんですね。それはチレボンのあるインドネシアでも同じで、太陽光は二〇二〇年代の前半、風力発電は後半にはそれぞれ石炭火力発電の建設コストを下回ると、こういうふうに予測をされています。
インドネシアのジャワ・バリ電力系統、これチレボンに関わるところですけれども、日本の支援がこの地域の電力供給過剰を深刻化させているという状況なんですね。
石炭火力発電所は、一回建設すれば三十年といった長期間の運転が想定をされます。大量のCO2排出が長期間にわたって固定化をされるということにもなるので、途上国にとって将来の気候変動対策の選択肢を大きく狭めてしまうということにもなるんですよね。この気候変動対策の観点のみならず、途上国経済の観点からも脱石炭支援を行うことが妥当だと言えると。
石炭火力発電の輸出支援をやめるということを重ねて強く求めて、質問を終わります。