2025.03.12 参議院 議院運営委員会
「公正取引委員会委員長の所信に対する質疑」(茶谷栄治氏)
質問テーマは「巨大IT企業への規制/大手電力カルテル問題/JERAによる相場操縦問題」です。
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217-参-議院運営委員会-007号 2025年03月12日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。茶谷参考人、よろしくお願いいたします。
初めに、巨大IT企業への規制について伺います。
日本で初めてとなるデジタルプラットフォームをめぐる法律ということで、二〇二〇年に取引透明化法が成立をしました。そして、先ほど話がありましたけれども、昨年、スマートフォンソフトウェア競争促進法が成立をして、年内に施行されるということになっています。
経済産業委員会の中でいずれの審議も行ってきたんですけれども、ソフトウェアはアップルとグーグルの寡占構造となっていて、スマホソフトウェア促進法で禁止行為を定め、事前規制を行うということは必要だということで、賛成をしています。日本はEUを参考に法規制を行っていますけれども、そのEUでは、昨年の三月からデジタル市場法の本格的な運用が始まっています。日本はアップルとグーグルを事実上の規制対象としているわけですけれども、デジタル市場法では規制対象が更に広くなっているわけですね。また、デジタル市場法の約四割しか対象になっていないなど、法案審議では規制が不十分じゃないかということを指摘しました。
参考人は、このEUと比べて規制が極めて不十分だという認識があるでしょうか。伺いたいと思います。
○参考人(茶谷栄治君) まさに先生今おっしゃったとおり、EUのデジタル市場法、DMAですか、これでは、ウェブサイトからアプリを直接ダウンロードできるようにすることを求めていると。一方、スマホソフトウェア競争促進法ではそこまで求めていないとか、こういう違いがあるというのはよく承知しております。
元々このような相違が生まれました背景というのは、スマホソフトウェア競争促進法というのを検討しているときに、これまで公正取引委員会が行ったモバイルOS等に関する実態調査や、あるいは政府のデジタル市場競争会議が行ったモバイル・エコシステムに関する競争評価等を踏まえて、我が国の特有の状況を踏まえて、特にスマートフォンというのが国民生活の中で極めて重要で、かつ様々な競争政策上の問題を起こしているから、これについて対処しようということでスマホソフトウェア競争促進法の成立に至ったわけですから、そういう経緯で来たものですから、今、欧州のデジタル市場法と規制対象が異なるのは、そういう経緯があったものですから、それ自体は基本的にそういうものだという認識になりますが、当然、じゃ、そのスマホソフトウェア以外は別に何でもいいかといったら、それはそうではございませんで、当然、独禁法でもきちっと、独禁法の網も掛かってまいりますし、まずは、とにかく国民生活で一番浸透しているスマートフォンという世界でこういう競争促進法を制定しましたが、今後これが年内には全面施行していくと。
その施行の様子を見ながら、あるいはEUとかのそれぞれ状況を見ながら、それ以外の世界というのは独禁法でやっていくとして、本当、それだけでいいのかどうかという、この法体系の在り方というのは、これ一般論として常に考えていく必要があろうかと、こういうように考えております。
○岩渕友君 続けて伺うんですけれども、このスマホソフトウェア促進法では、指定事業者は毎年度、公正取引委員会に遵守報告書を提出するということになります。取引透明化法で既に報告書の提出が行われているので、その中身を見てみると、例えば苦情件数について、二〇二一年度の報告では、アップルは三件、グーグルは四千六百三十七件、二〇二二年度について見ると、アップルは四件、グーグルは六千二百六件というふうになっているんですね。何でこのカウント数にこれだけの違いが出てくるのかというと、事業者の自主性に任されているからなんですね。
公正取引委員会は、事業者と継続的なコミュニケーションを行っていくということで、事業者の自主的改善に期待する対応というふうになっています。ただ、これに対して、各国のデジタル分野の規制を研究しているアメリカのコロンビア大学のアニュ・ブラッドフォードさんという教授がいるんですけれども、昨年六月十四日付けの日経新聞のインタビューに対して、日本の規制は多くの場合、企業の自主性を重んじている、しかし、ビッグテックが日本政府のお願いにどこまで従うだろうか、ガイダンスを守らない企業にはより拘束力の強い規制を課すなど、実態に合わせた運用を探る必要があるというふうに答えているんですね。
これ、そのとおりだというふうに考えるんですけど、その事業者の自主性任せでいいのか、参考人の見解を伺います。
○参考人(茶谷栄治君) 先生おっしゃるとおり、例えばデジタルプラットフォーム取引透明化法では、これでは、企業の自主的な手続とか体制整備というのを求めた上で、企業がそれについてその取組状況を報告して、それを学識経験者や業界団体を交えたモニタリングを行うと、多分そういうような規制方式にプラットフォーム透明化法なっていると思いますが、スマホソフトウェア促進法の方は、これは、指定事業者にこれをやったら駄目だという禁止事項とか遵守事項ということをきちっと定めた上で、それに反する行為があるかどうかというのをそこは公正取引委員会として見張っていって、必要に応じて命令等も出せるような方向、立て付けになっているものですから、そこは単に自主的なあれから一歩進んだ形にはなっているかと思います。
○岩渕友君 次に、電力カルテルや相場操縦などをめぐって伺いたいと思うんですけど、二〇一七年の秋頃以降、関西電力が、中部電力、中国電力、九州電力管内でカルテルを持ちかけたという問題について国会で質問をしてきました。公正取引委員会は、二〇二三年の三月に、課徴金としては過去最高額となる一千十億円の納付を命じましたけれども、関西電力はリニエンシー制度を使って公正取引委員会に最初にカルテルを申告したということによって、残る三社が課徴金を納付するということになりました。首謀をした関西電力は、顧客情報の不正閲覧も行っていたんですけれども、何の処分も受けていないわけですよね。
また、国内最大の発電会社であるJERAが、卸電力市場の相場操縦によって意図的に電力価格をつり上げて、最大で一日一億円を超す不当な利益を得ていたということもありました。けれども、現状では業務改善勧告が出ているだけという状況になっているんですね。
欧米では、電力市場を監視する機関は刑事罰や罰金を科す強い権限を持っていて、EUでは、相場操縦をした違反者に数十億円の罰金を科した例もあるんです。
欧米に比べて日本の対応甘過ぎるというふうに思うんですけれども、参考人の認識をお聞かせください。
○参考人(茶谷栄治君) 公正取引委員会、今先生がおっしゃったとおり、国民生活に影響の大きい分野、社会的に大きい分野に特にこの限られたリソースを使っていくということで電力会社のカルテル問題に対応しましたし、それ以外に、例えば損害保険大手の問題とかというのをそれぞれ対応して、一応社会的なインパクトのあることというのはやってきていると思いますが、今、この電力に関しましては、今申し上げたとおり、カルテル事件というのはきちっと対応しましたが、他方、JERAの相場操縦になりますと、これは電気事業法の世界になるものですから、それ自体が独禁法に違法になるかどうかというのはこれはちょっとお答えなかなかできないところでございますが、ただ、先生おっしゃるとおり、そもそも電力というのは一応企業活動とか国民生活の一番基礎でございまして、特に新電力等の小売事業者にとっては、卸売、卸電力市場というのが電力のまさに調達手段の一定の役割を果たしているわけですから、そこで相場操縦のような行為というのが行われるというのは、それ自体が、今度は低廉な電力を受けるというそれ自体を妨げることになりますので、これはきちっと対応していく必要があろうかと思いますが、これは、政府の中の部局としたら、ちょっと公正取引委員会のことかというと、そこはちょっとなかなか私も今答えられない状況ではございます。ただ、先生のおっしゃること、問題意識というのはよく理解しているところでございます。
○岩渕友君 以上で質問を終わります。
