2019年5月9日(木) 参議院経済産業委員会 特許法等改正案
「町工場の小型風力開発と、特許・意匠の審査体制について」
日本共産党の岩渕友議員は9日の参院経済産業委員会で、再生可能エネルギーの拡大に向け、町工場による超小型風力発電機の開発を補助金等で後押しするよう求めました。
岩渕氏は、東京都大田区蒲田で十数社の町工場が共同開発する超小型風力発電機を紹介し、「出力30~100ワットで一般家庭のベランダや屋上にも設置でき、公共施設では災害時の活躍が見込める」と強調。開発にあたり資金面で困難が生じている実態を語りました。
また、昨年7月の改定エネルギー基本計画では2030年度の電源構成比率で風力は1.7%にすぎないとし、「基本計画で再エネの『主力電源化』をうたうなら、あらゆる施策を総動員すべきだ」と指摘。福島沖の大型洋上風力発電の実証事業には1機に150億円超の国費が投入されているとして、「蒲田のような超小型を含む小型風力発電機の開発にも補助金などの後押しが必要だ」と訴えました。世耕弘成経産相は「新しい産業の創出に資する。小型風力も応援したい」と述べました。
岩渕氏は、洋上風力発電の重要性に触れつつ、「沿岸から3キロもないところへの設置計画もあり、住民の不安が高まっている」と指摘。設置のための協議会など地元住民の意思を尊重するよう求めました。世耕経産相は「必要な地元関係者も参加できる」と答えました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
特許法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。
ここ十年、世界の特許出願件数は約一八〇%と高い伸び率を示している一方で、日本の出願件数はマイナス二〇%と減少傾向にあります。中でも中小企業の出願件数の割合は一五%にとどまっていて、米国の二六%、中国の七〇%と比べても大きく水を空けられています。
日本の物づくり技術は世界に誇る技術であり、中小企業の優れた技術に支えられています。けれども、労力やコストを掛けて特許を取得しても、侵害が容易で、立証が困難、侵害を抑止しにくいことに加えて、訴訟の費用が損害賠償額を上回る可能性が高いということで、中小企業団体からもそういった問題点が指摘をされてきました。
今回、特許法の改正で創設をされる査証制度によって証拠収集手続が強化されるということは、特許権者の権利の保護と悪質な特許侵害行為の抑止につながるものです。損害賠償額の算定について、これまで認定をされなかった権利者の生産販売能力を超える部分の損害についてライセンス料相当の損害賠償額が認められることになりましたけれども、これは中小企業やベンチャー企業の損害賠償額の引上げにつながるものです。
現在、米中貿易摩擦との関係でも、知的財産、技術貿易が重要なテーマになっています。
資料の一を見ていただきたいんですけれども、これ、主な国の技術貿易収支の推移のグラフです。これ見ていただければ分かるように、日本は、九〇年代以降右肩上がりに上がっていて、アメリカに迫る勢いになっています。
じゃ、この実態がどうなっているかということで、資料の二を見ていただきたいんですけれども、例えば二〇一五年度を見てみると、親子会社間での技術貿易の輸出額が全体の約七五%にも上っていると。これは、この間、主に海外に生産そして開発の拠点を移転をしている日系多国籍企業のグループ内での取引が大部分を占めているんだということを示しています。親子会社の定義が幅広く取られているアメリカでさえも、その割合がおよそ半分程度であることと比較をしても、この日本の大企業の特質だと言えます。
昨年、我が党の笠井亮衆議院議員、そして辰巳孝太郎参議院議員と物づくりの町である東京都大田区の蒲田に伺って話をお聞きしてきました。大田区の産業集積は、バブル崩壊後、リーマン・ショックを経て深刻な状態が続いていると。さらに、東日本大震災で下請企業の絞り込みと海外移転が進行をしている、メーカーが中国で生産をするようになって、大田の町工場から金型、図面、職人を持っていかれた、メーカーは現地のサムソンやLGの下請に仕事を教えろと言ってきたと、こういう話を聞いたんですね。この方は勇気を持ってそれはできないということで断ったそうなんですけれども、誰でも断れるというわけではありません。さらに、大田区の町工場では、納品書の前で首をつるだとか車中での自死が起きていると。大田区内の製造業は五〇%以上が貸し工場、大田区内で年間百八十件ぐらいが廃業をしていて、日本から中国に二万三千社が出ていって、雇用が一千万人分失われたと言われている、こういうお話をお聞きしたんですね。
それで、大臣にお聞きするんですけれども、企業が海外進出することによって町工場の技術が海外に持っていかれて、言わば産業技術の空洞化が起きている、それに伴って雇用が減って工場がどんどん廃業する、こういう在り方でいいのか、大臣の認識をお聞きします。
○国務大臣(世耕弘成君) やはり経済はグローバル化をしてグローバル競争が激化をしているという面が、これはもう避けて通れない。しかも、日本は人口減少で国内のマーケットが縮小しているわけでありますから、そういう環境の中で日本の製造業が生き残りを懸けて海外を含む最適地で生産を行って海外マーケットを獲得をしていくということは、これはある程度必要な経営判断ではないかというふうに思っています。
実際に、日本の製造業の海外生産比率は過去二十年弱で二倍以上となるなど増加傾向を続けていますけれども、多くの企業では、一方で技術の空洞化ということを生まないように、競争力の源泉である技術力、例えばマザー工場や基幹部品生産などは国内に残しながら海外展開を続けてきたというふうに認識をしています。
一方で、海外へ展開をする企業の大きな原因がやはり円高と高い法人税率、これがあったわけであります。こういう環境ではやはり海外に行かざるを得ないという面もあったと思います。これはまさにアベノミクスの効果もあって、円高、高い法人税率というのは今解消されつつあります。また、新興国における人件費の上昇ということもありまして、最近では、逆に生産を国内に戻している企業も一割程度出てきているところであります。
また、今お話のあったいわゆる中小企業の工場が廃業しているということについては、これは経営者が高齢化しているとか業績の悪化など様々な要因がありまして、必ずしも大手の製造業が海外展開したからそれが原因で廃業ということになるわけではないのではないかというふうに思っています。
いずれにしても、引き続き、日本の製造業の動向を注視しながら、必要であれば必要な施策を講じてまいりたいと思います。
○岩渕友君 物づくりの現場をしっかり守っていく、中小・小規模事業者を守っていくということは非常に重要なことだということなんです。
蒲田では、小型風力発電機の開発現場も見せていただいたんです。リーマン・ショックの後、仕事量が激減をしたということを受けて、経営を継続していくためには仕事おこしをしなくちゃいけないということで、町工場の仲間の皆さんが十数社集まって小型風力発電機の開発をずっと進めてきているんですね。この小型風力発電機は、出力が三十ワットから百ワット級の発電機ということで、小型の中でも超小型と言えるぐらいとりわけ小さいものなんです。一般家庭向けでベランダに置くとか屋上に設置する、こういうことが検討されていて、中小企業であるとか、あと公共施設の補助電源としても活用できるんじゃないかということで、災害時にも活躍するということが想定されています。
風力発電機ですけれども、約一万点から二万点という多岐にわたる部品から構成されているということがあって、その部品点数は自動車であるとか家電製品並みだと言われていますけれども、この部品点数が多いということが町工場の仕事おこしにつながりやすくなっています。そして、物づくりの技術的基盤を守って、さらに自然エネルギーの活用の新産業を生み出すことにもつながるものになっています。この取組の中で、廃業すると言っていた方も、もう少し頑張ろうじゃないかというふうに気持ちが変化してきているというお話も聞きました。
それで、また大臣にお聞きするんですけれども、大臣はこの大田の町工場というのは行かれたことはあるでしょうか。下請というだけじゃなくて、今紹介をしたように自力で開発まで行う、こういう取組を応援する必要があると思うんですけれども、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 残念ながら大田の町工場は行ったことないですけど、墨田の町工場とか東大阪の町工場は行ったことがあります。和歌山の町工場も行ったことがあります。
ただ、今おっしゃるように、いわゆる下請に甘んじ続けるのではなくて、自ら創意工夫を生かして、新しい製品とか今後成長が望まれる分野に進出をして自ら直接販路開拓をしていくということ、この取組は極めて私は重要だと思いますし、日本の経済活力維持強化の観点からも重要だと思っています。
私も何人か、地域未来牽引企業などの中で、経営者で、そういうマインドで、もう大企業に納めなくて直接海外と自分たちが、自分の地域で作った製品を海外に展開していきたいんだというような志を持った経営者、多数知っておりますし、また、ものづくり補助金などを利用してこういった取組をしっかりと応援をしてきたところでもあります。今、例えば、ものづくり補助金を受けた十人規模の金属加工の会社が、単なる下請の金属加工だけではなくて、災害のときに運搬器具として使える看板を製造、販売してうまくいっているというような事例も出てきているわけであります。
こうした取組を引き続きしっかりと応援をしてまいりたいというふうに思っております。
○岩渕友君 大田にも是非足を運んでいただければなというふうに思います。
一方、大型の風力発電施設の建設が陸上でも洋上でも進められています。昨年、福島県沖で行われている浮体式の洋上風力の発電システムの実証研究事業の調査に行ってきました。海外では着床式の洋上風力発電施設が主流ですけれども、日本では遠浅の海域が少ないということで、浮体式の開発が進められています。福島県沖の風力発電施設は全て浮体式で、沿岸部から約二十キロ離れた沖合に出力二メガワット、五メガワット、七メガワットの三基の風力発電施設がありました。現場に行ったときはちょうど台風通過の直後だったので波が非常に高い状態だったんですけれども、発電施設がほとんど揺れていなくて、全く揺れていなくて非常に驚きました。
この福島沖の浮体式の洋上風力発電システムの特許の出願、取得状況がどうなっているか、特許の取得件数が何件か、そしてどのような特許があるのか、紹介をしてください。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
現在、将来的な浮体式洋上風力を日本に導入を進めていくための実証事業を福島沖で行っておりまして、今委員の方からございましたように、三種類の浮体、二メガ、五メガ、七メガの風車を建てまして現在実証事業を行っているところでございます。
御質問ございましたこの特許の関係でございますけれども、事業に参画する企業から、PCTに基づき複数か国の特許庁に一括して出願をする国際特許の出願が三件、我が国特許庁を含みます個別国への出願が二十三件ございます。そのうち既に、国内が十四件、国外で十四件、合計二十八件の特許を取得している状況になっていると承知してございます。
この特許の発明の内容でございますけれども、浮体式の風力発電の装置及びその組立て方式や管理システムに関するもの、また洋上風力用の浮体構造物及びその設置や係留、制御に関するもの、さらには、この洋上風力用の海中のケーブルですね、このケーブル及びその保護や接続に関するものといったものがその内容となっていると承知してございます。
○岩渕友君 今紹介いただいたように、新たな技術が生み出されているということなんですよね。
この七メガワットのふくしま新風は撤去されることになりました。これ、なぜ撤去されることになったのでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
福島の事業について申し上げますと、三種類の浮体、従来行っておりました二メガワットの風車に加えまして、将来の大型化に向けて今までになかった技術、すなわちダウンウインドの五メガワット、そして油圧式の七メガワットという風車についての新しい技術の実証に取り組んできたところでございます。
特に、今御質問ございました七メガワットの風車について申し上げますと、洋上風力の風車がだんだん世界的に大型化を世界が競争して挑戦している中で、従来のギア、歯車の形での風車ではどうしても故障が増加していく可能性がある、また、洋上で部品交換がなかなか難しいものですから、油圧式という新しい技術に挑戦するという観点から、これを採用して実証研究を行ってきたところでございます。
これは世界で初めての技術、先駆けた実証研究であったわけでございますが、事業を実施していく中で、油圧式のコアな部品の構造的な課題、これはオリフィスという部品の部分なんでございますが、ここの課題が顕在化いたしまして、関係技術者の中で改善策を検討したわけでございますが、十分な効果を持つ対策が短期的に見付かることがなかなか難しいということで、昨年八月に専門家による第三者委員会の中で検討いただき、実用化に向けた開発の継続が困難であると、こうしたことで、高額な運転維持費の中で、撤去の準備を進めるのが妥当という提言をいただいたところでございまして、この評価を踏まえて、経産省として、七メガワット風車の発電を停止し、安全かつ低コストな撤去方法の検討を十分に行った上で可能な限り早期に撤去することを目指しているという、こういう状況でございます。
○岩渕友君 二〇一五年七月の長期エネルギー需給見通しでは、二〇三〇年度の再生可能エネルギーの電源構成比率は二二から二四%、その多くが太陽光と水力で、風力は僅か一・七%です。
昨年七月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーを主力電源としました。再生可能エネルギーの導入拡大を進める鍵の一つが洋上風力発電です。同時に、主力電源化というのであれば、あらゆる施策を総動員する必要があります。
このふくしま新風の建設費用、維持管理費、どのぐらい掛かったかというと、建設費用は百五十二・一億円、維持管理費が平成二十九年は二・五億円、三十年は〇・六六億円となっているんですね。さらに、銚子沖と北九州沖でもNEDOの事業として洋上風力発電があるんですが、このNEDOを通じて銚子沖には三十九・六億円、北九州沖には二十五・七億円ということで、大型の洋上風力発電にはこれだけの国費が投入をされているということになっているんですね。
一方、先ほど紹介をした蒲田の小型風力発電ですけれども、財源がなくて材料費を自己負担しながら試作の一号機を作製したと。二号機の作製には大田区の補助金を活用したんですけれども、三号機の開発費は却下をされたということでした。
そこで、大臣にお聞きするんですが、この大型の風力発電だけじゃなくて、蒲田のように超小型のものも含めた小型風力発電機の開発に補助金などの後押しが必要じゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) まず、大型風力は、やはりこの日本の地形その他を考えたときに、特に洋上風力はかなり有望な分野でありますので、ここにはしっかり注力をしていきたいと思っていますが、一方で、例えば中小企業やベンチャー企業がチャレンジをする小型風力も我々はしっかり応援はしていきたいというふうに思っております。
特に、中小企業やベンチャー企業が再エネの低コスト化に貢献できる技術シーズを持っているというケースはたくさんあるわけであります。これらを幅広く発掘をして、関連技術の開発、実用化が促進をされ、再エネの導入拡大、さらには新しい産業の創出にも資するんではないかというふうに思っています。
経産省では、これは、いわゆるものづくり補助金によって中小企業による製品開発のための設備投資支援などを行ってきているわけでありますし、それに加えて、戦略的基盤技術高度化支援事業、いわゆるサポイン事業によって中小企業による産学官連携の研究開発も支援をしています。さらに、再エネ関連の技術開発に特化したものとして、社会課題解決のための先進的な技術シーズを中小企業、ベンチャー企業が発掘、事業化することを支援するための事業も存在をしておりまして、実際に小型風力発電関連の採択事例も存在をしているわけであります。
引き続き、こういった取組で中小・ベンチャー企業による再エネ関連のチャレンジも支援してまいりたいと考えています。
○岩渕友君 蒲田では、小型風力発電設備の作製に当たって品質や安全性を証明するようなものが欲しいんだという話も聞いてきました。
特許庁が出している二〇一〇年度の風力発電特許出願技術動向調査報告書には、ラベリングのような簡易な認証制度などを設けつつあると書いてあるんですけれども、その後どうなっているでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
今委員から御指摘ございました二〇一〇年度の報告書の中にございます小型風力発電の性能や安全性を担保するためのラベリングのような簡易認証制度でございますけれども、この報告書が公表された後に、その年の十一月に、業界団体、日本小形風力発電協会によりまして、国際規格を参考としつつ日本の事情に応じた日本独自の規格が策定されてございます。
これに併せまして、その年の十二月に、今度は一般社団法人日本海事協会によりましてこの規格に関する認証制度が導入されてございます。すなわち、この業界規格及びISO、JISの標準規格といったものを、あっ、済みません、先ほど申し上げました日本海事協会は財団法人でございました。失礼しました、訂正いたします。財団法人日本海事協会によりまして、業界規格及びISO等の標準規格を満たしているかどうかを証明する認証制度が導入されております。
これによりまして、小型風車の型式認証制度、これをクラスNK型式認証というようでございますけれども、が開始されまして、これにより、より分かりやすい形で簡易にその性能と安全性が確認できるような仕組みが導入されてございます。
また、現在、FIT制度を通じて導入の促進が図られているわけでございますが、この法律の制度の中でも、認定を行おうとする設備が安定かつ効率的に発電を行うために適切な構造であるかどうかを見ることになってございまして、この制度の当初から二十キロワット未満の小型風車に関しては当該型式認証の取得が求められているところでございまして、こういうことを通じまして、認証制度の活用により、性能、安全性の確保、これが確保できているかどうかということが分かりやすく見れるような仕組みが既に導入されているところでございます。
○岩渕友君 超小型のものも含めて品質を保証することが必要で、それが後押しになるということです。
この洋上風力発電をめぐっては、四月から海域利用法が施行をされて、海域での長期占用が可能となりました。全国には、沿岸から三キロも離れていないところへの設置計画もあって、住民の不安が高まっています。
今、基本方針案に対するパブコメが終わって、今後基本方針が出されると思います。方針案では、協議会での合意形成の方法について、地域、利害関係者などの意見は特に尊重することとして、連携、十分な意思の疎通、丁寧な協議などが重要だというふうにしています。地域、利害関係者などの中には地域住民も含まれるということでいいでしょうか。大臣に。
○国務大臣(世耕弘成君) 洋上風力発電を含めて、再エネを主力電源にしていくためには、日本のエネルギー供給の一翼を担う長期安定的な電源に育てていくことが重要でありまして、地元住民の御理解をいただきながら、息の長い発電事業を進めていくことが必要だというふうに思っています。
二〇一七年四月施行の改正FIT法では、再エネ事業者に対して地元住民と適切なコミュニケーションを図ることを努力義務として新たに求めています。このコミュニケーションを怠っていると認める場合は、事業者に対して住民理解が得られるよう話合いを進めるべきと指導を行ってきているところであります。
これに加えて、洋上風力については、二〇一九年四月施行の再エネ海域利用法において地元住民の意向が十分に反映される仕組みが用意をされています。
具体的には、洋上風力の促進区域指定に当たっては、当該区域を公開し、地元住民を含め広く意見書の提出を受け付けるとともに、区域指定や発電事業について議論するため、経産大臣、国交大臣と知事を主要構成員として、必要な地元関係者も参加できる協議会を設けることとしておりまして、こうしたプロセスを通じて地元住民の意向はしっかり反映されるものと考えております。
○岩渕友君 今、必要と認める者が入ることができるという話があったんですけれども、例えば自治会の区長さんであるとか、直接影響を受ける住民が認められれば入ることができるということでいいでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) それは案件ごとによって、地域事情いろいろあると思いますから、地域住民の声をどういう形で聞き取る、集約するのがいいかというのはケース・バイ・ケースではないかというふうに思います。
○岩渕友君 先ほど大臣も言ったように、住民の理解であるとか合意であるとか、そういったことが非常に重要だと思いますので、そこを大切に進めていくことが必要だということを述べておきたいと思います。
次に、意匠についてお聞きするんですけれども、今回の改正では、意匠制度がこれまで物品に限っていた保護対象をウエブ画面上のデザインや投影された画像、建築物の外観や内装デザインなどに拡大することになります。それに伴って出願登録件数が増えると思うんですけれども、どれぐらい増えることを見込んでいるんでしょうか。
○政府参考人(宗像直子君) 今般の改正案、ユーザーニーズに応えた内容でありまして、したがいまして、この対象を拡充した後は、出願を増やしたいというユーザーのお声もありますので、件数は一定増加していくということが見込まれるわけでありますけれども、一方で、出願は出願人の経営判断に基づくものでありまして、企業の中でも知財分の予算が固まっているとか、なかなか制度が変わったからこれだけを増やすというふうにもいかない部分もあるようでございまして、具体的にどのぐらい増えるかという水準を予測するのはなかなか難しいかなと思っているところでございます。
○岩渕友君 予測するのは難しいということですけれども、増えるということは明らかなのかなと思うんですね。
では、審査体制がどうなっているのかということで、資料の三を見ていただきたいんですけれども、日本の意匠登録出願件数は年間約三万件で今推移していると。それに対して、意匠の審査官が二〇一七年度で四十八人ですよね。一人の審査官の負担が大きいと思います。
資料の四も御覧ください。特許審査官は、じゃ、どうなっているかというと、これ日米欧中韓の特許審査官数の推移なんですけれども、日本は横ばいのまま推移をしているんですね。
次に、資料の五も見ていただきたいんですが、これ、日米欧の特許庁の審査官一人当たりの一次処理件数です。日本は任期付審査官を含めても一人当たりの処理件数が圧倒的に多くなっています。
政府は、特許審査期間の迅速化だと、世界最速、最高品質の特許審査の実現ということを目標に掲げているわけですけれども、ちょっと審査官の負担が余りにも重いのではないかと。現場の審査官の奮闘に支えられているのが実態だと思います。
特許審査官そして意匠審査官、増やすべきではないでしょうか、大臣。
○国務大臣(世耕弘成君) こうやって数字を見ると、改めて日本の特許審査官、またこれから意匠審査官も範囲が広がるわけでありますから、なかなか負担が重いというのは、これはもう現実だというふうに思います。
ただ一方で、すぐ人数が増やせればいいんですけれども、なかなかそういうわけにもいきませんので、例えばITのフル活用とか、あるいは一部業務を外注するということも含めた改革はしっかりやっていきたいというふうに思います。その上で、更に必要ということであれば、審査官の確保にもしっかり努力をしていきたいというふうに思います。
○岩渕友君 特許の専門性があると。審査官には高い知識と経験が求められていますので、現場の声をよく聞いて、早く審査官を増やしていただく、そして経験豊かな審査官を育てていくことが必要だということを述べておきたいと思います。
最後に、秘密特許に関わって質問をします。
日本の特許制度は公開を基本としています。けれども、日米防衛特許協定に基づく協定出願によって秘密特許が存在をしています。これ極めて重大なことです。協定出願の秘密解除が行われて公表されたものが何件あるかとお聞きをしたら、九十九件だというふうに聞きました。
秘密特許があるということは、例えば、多額の研究開発費を投入して開発した商品が、売り出そうと思ったら既に特許が出願されていて売り出すことができないということが起こり得るのではないかと思うんですね。実際、秘密解除で公表されたものを見てみると、マイクロ波装置、こういったものがあって、マイクロ波は電子レンジでも使われているものですよね。
特許制度は、公開することで投資が重複することを防止して、科学技術や産業の発展を促進する役割を果たしてきたと。秘密特許は、この産業の発展や事業の促進とは根本的に矛盾をするものだということです。日本の特許制度に穴を空けて日本の企業に莫大な損失をもたらすやり方をこのままにしておくということは、産業の発展を妨げるということになります。
ところが、防衛省の二〇一四年の防衛生産・技術基盤戦略では、新たに秘密特許制度を検討していくというふうにあります。
大臣にお聞きするんですが、防衛省から検討要請はあったのか。どのように対応しているんでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 検討要請はありませんということでございます。
○岩渕友君 秘密特許は、産業の発展や事業の促進とは根本的に矛盾をするものです。秘密特許制度の検討はやめるべきだということを述べて、質問を終わります。
○委員長(浜野喜史君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
特許法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(浜野喜史君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、浜口君から発言を求められておりますので、これを許します。浜口誠君。
○浜口誠君 私は、ただいま可決されました特許法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主党・民友会・希望の会、国民民主党・新緑風会、公明党及び日本維新の会・希望の党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 我が国産業の国際競争力強化やイノベーション創出等の重要性に鑑み、特許法等の知的財産制度が有効に機能し、その役割が十分に果たされるよう、諸外国における制度改革の進展に適切に対応しつつ、制度の不断の見直しを行うとともに、制度運用の実効性を注視していくこと。
二 新たに創設される査証制度については、営業秘密等の保護に留意しつつ、必要な査証が適切に実施され、実効的な権利保護が図られるよう、その運用について適宜検証し、必要な見直しの検討を行うこと。
三 いわゆる「懲罰的賠償制度」及び「二段階訴訟制度」の導入については、諸外国の動向も注視しつつ、引き続き検討すること。
四 意匠権の保護対象の拡充に当たっては、クリアランス負担の軽減や十分な審査体制の確保に努めること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(浜野喜史君) ただいま浜口君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(浜野喜史君) 全会一致と認めます。よって、浜口君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、世耕経済産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。世耕経済産業大臣。
○国務大臣(世耕弘成君) ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。