2019年11月26日(火) 参議院 経済産業委員会「情報処理促進法改正案」参考人質疑
参院経済産業委員会は26日、情報処理促進法の改定案について参考人質疑を行い、日本共産党の岩渕友議員が質問に立ちました。
改定案では、政府調達によるクラウドサービス(インターネット経由のデータサービス事業)導入とその安全性評価の仕組みが盛り込まれています。
岩渕氏は、梶山弘志経産相が同サービスの採用基準として「データセンターの国内設置が一律に求められるようなことにはならない」と答弁(13日、衆院経産委)したことに関し、業界最大手アマゾンのクラウドサービス「AWS」を利用していた米大手銀行から約1億人分の個人情報が漏えいした問題を示し、「安全性を高めるために国内にデータセンターを設置する必要がある」と強調しました。
参考人は「原則からいえば国内の方が望ましい」(青山幹雄南山大学教授)「安全保障とデータの置き場所という観点でいえば国内にある方が安全だ」(藤田哲雄日本総合研究所調査部上席主任研究員)と応じました。
岩渕氏は、6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」で、同改定案で推進する新たなデジタル技術などの活用により、金融機関の貸付審査の個人情報保護などの分野で「規制の見直しを検討」するとしていることを示し、「既存の規制を飛び越えて、消費者保護や安全確認分野などを置き去りに、もうけ優先になるのではないか」と懸念を表明しました。
青山幹雄参考人 意見陳述
藤田哲雄参考人 意見陳述
小脇一朗参考人 意見陳述
岩渕友 参考人質疑
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南山大学理工学部ソフトウェア工学科教授・青山幹雄参考人 意見陳述
○参考人(青山幹雄君) それではまず、DXが我が国の産業並びに社会全体に及ぼす影響と今般の法律の改正について意見陳述をさせていただきたいと思います。
お手元資料の二枚目を御覧くださいませ。今日申し上げたいことは、まず三点ございます。
一つは、DXは、これはデジタル変革というふうに日本語では言っていますけれども、世界的に非常に今大きな勢いを持っております。これによって産業構造が大きく変わるというふうに考えられております。この変革に我々も推進をしなければ、我が国の経済の競争力並びに社会の安全性とか、あるいはセキュリティーを維持できないのではないかというふうに考えられております。
二点目は、このDXに対して幾つかの成功事例が現れてきております。それらの成功事例を私どもで分析した結果によりますと、経営者のリーダーシップあるいは認識が非常に重要であるというふうに理解しております。さらには、これは企業変革でございますから、業務部門あるいはIT部門が、三位一体という言い方をしておりますけれども、変革を行わないといけないという状況にございます。
一方では、この変革を実は進めるのはなかなか今、日本では困難な状況にございます。特に、技術負債という言い方を申し上げていますけれども、レガシーと呼ばれる一九七〇年代頃につくられたシステムが依然として例えば六〇%使われているという状況がございます。これは極めて構造的な問題だと思っています。こういった構造的な問題をいかに解決するかというのは、やはり国の制度的に、あるいはその改革は必要ではないかと思っています。
さらに、それに伴って、経営者の認識とかあるいはリーダーシップを変えていただきたいというのが今回のDXの大きな問題を解決する一つの解であると思っています。そのためには、今回の法律の改正は是非お願いできればというふうに考えております。
少し内容の方に入っていきたいと思いますけれども、お手元の三ページですね。そもそもデジタル変革とは何かということを、よく御存じかと思いますけれども、改めて理解を共有させていただきたいと思っています。
一つは、従来のITあるいはICTと違うところは、例えば機械学習、AIとかあるいはIoTを使うことによって、大量のデータに基づいて従来とは違う、予測とか、あるいは人間の判断と同じような技術のことができるようになったということですね。これは極めて大きな違いでございます。これに基づいて、企業経営そのものも今変わってきている。つまり、競争の軸が変わってきているということに大きな変革のポイントがございます。
これによって、例えば産業構造の変化、あるいは新しい事業の創出と併せて、社会の例えばセキュリティーであるとか防災であるとか、あるいは高齢化、人手不足の解消に資するんではないかというふうに考えてございます。
その絵を見ますと、従来のITは企業内の効率化ということが中心でした。それに対して、現在のこのDXで求めているものは、社会全体にIT、技術が行き渡ることによって社会全体を良くしていくというふうなことが可能になってきたというふうに理解しております。
次に、その次のページ、四ページ目でございますけれども、こういうふうな大きな変革にあるにもかかわらず、そこにありますように、多くの我々の国内の企業は、技術負債と呼びますけれども、レガシーという古いシステムをいまだに維持をしてきているというふうな状況がございます。
こういった問題を共有していただく、あるいは危機感を喚起するために、昨年、レポートですね、二〇二五年の崖という言葉を使わせていただいています。これによって、多くの経営者の方が最近は問題を御理解いただくようになってきてはいるとは思っています。
しかしながら、次の五ページ目にありますように、実はそのDXは、最近国内では理解が進んだかと思いますけれども、おおむね十年近く前から、特にヨーロッパを中心に研究あるいは検討が始まっています。
例えば、インダストリー四・〇が二〇一一年に策定されまして、その後、アメリカでも、インダストリアル・インターネット・コンソーシアムという大きな国レベルあるいは業界全体を巻き込んだ運動が、活動が進んでおります。これらの運動では、企業全体の包括的な変革を進めていると。例えば、アメリカのIICというコンソーシアムは、最近はインダストリーIoTというふうなことで、IoTを全産業に進めていくというふうなことを進めております。これに対しては、我が国ではソサエティー五・〇が作成され、昨年、DXレポートというものを発行をいたしました。
中ほどにビジネスという欄がございますけれども、特に二〇一〇年前後に出てきた、皆様よく御承知の新しいベンチャーは、これまでのいわゆるGAFAと呼ばれている技術志向のベンチャーとは異なって、社会問題解決型のベンチャーでございます。社会の様々な問題を、従来できなかったものをデジタルを使うことによって解決する。多くの社会問題は、人と人、あるいは人と物とか、物と物を結び付ける、いわゆる仲介することが多いわけですね。こういうことを、これまでできなかったような、デジタル技術を用いることによって可能になってきたということが大きな違いでございます。これが新しい事業を生んで、世界的にも大きな変革を起こしているというふうなビジネス面的な側面であると思っております。
これができるようになったのは、最も大きいのは、恐らくスマートフォンです。皆様方御自身の行動が直接企業に分析できるようになったとか、あるいはIoTによって物と物を、あるいは工場の状況とか、あるいは農場の状況が分かるようになってきた。これは非常に大きな技術的な違いがここに現れております。
さらに、こういった状況に対して、多くの事例がありますけれども、我が国ではまだまだちょっと立ち遅れているという現状があるかと思っています。
次の六ページ目に示しているのは、幾つかの先進事例を私どもで分析をいたしました結果、やはりその経営戦略というところですね、企業のトップ、経営者のリーダーシップあるいはその認識が非常に重要であるというふうに考えてございます。
国内でも、一番下に、これ愛知県の自動車部品メーカーでございますけれども、年商百五十億の会社が、こういったことを社長が中心になって進められている事例もございます。ただし、まだまだこれはある意味では少数にとどまっているというのが現状でございます。
例えば、具体的な例といたしまして、次の七ページに、これは和歌山県にある有田ミカンの農業生産法人の例でございます。
この法人では、もう五年ぐらい前から圃場にセンサーを取り付けて、いわゆるIoTの先進的な事例かと思いますけれども、それをクラウドに持ってきて分析をするということを続けておられます。それによってミカンの糖度を上げるということを、さらにはその収穫期を広げる、わせとわせわせをですね、更においしくするということを実際にやられてきています。それによって、世界十か国に輸出されて、年商十億ぐらいですね。今までのミカンと、恐らく十倍ぐらいの値段で販売されている。非常に高付加価値の、高い収益を上げる農業の構造に転換されているというふうに理解しております。さらには、若者が入ってきて、この会社の平均年齢は三十五歳、六歳というふうに聞いております。
こういったふうに、従来型の農業、あるいは林業とかあるいは畜産でも、こういったデジタル技術を使うことによって構造変革をして、より収益の高い、あるいは若者を引き付けるような産業へ転換していくことは可能であるという事例がございます。
こういった事例を見ますと、やはり先ほど申し上げました経営者、あるいは業務部門、デジタル部門が三位一体となることと同時に、やっぱり経営者のリーダーシップが一番大事だと思っています。あわせて、IT産業そのものが、現在、恐らくは、大体日本では今一%程度の成長だと言われていますけれども、アメリカですと六%以上、あるいは先進企業では一〇%以上の成長をしています。もっともっと成長できる余地があるのではないかというふうに理解しております。
最後に、こういった問題を阻害する、いわゆるレガシーというものがございます。これは、今まではIT部門の個別的な問題であるというふうに捉えられがちだったわけですけれども、現在は企業全体のいわゆる経営問題になっております。
これは、アメリカの研究所の例ですと、今、百万行といいますけれども、あの単位のソフトウエアは大体四億ぐらいの負債になっていると。国内でもいろんな統計データはございます。これがやっぱり経営の下押しになって変革を妨げているという状況にあるというふうに理解しております。
これをこのまま放置いたしますと、ますます生産性を落とす、あるいは新しいところへ人材を振り向けることができない、多くの人材がレガシーの保守に回ってしまっていると。そうしますと、新しい技術を学ぶとか、新しい領域に人を割り当てるということができない、で、最終的には人手不足というふうになってしまっているというふうな、ある意味では悪循環がここに発生しているというふうに思います。したがって、特に経営者の認識とリーダーシップを喚起しないといけないというふうに私は考えております。
さらに、最後に、こういったことに鑑みまして、今般の法律案の改正に関して言いますと、先ほどの成功事例から見ますと、やはり経営者の認識とリーダーシップを喚起すべきであるというふうに考えてございます。そのための施策として、今回の法律は資するものであるというふうに理解しております。
さらに、今回、指針とかあるいはその認定を通して経営者の背中の後押しをするということも可能ではないかというふうに思っています。
それから、これに基づきます措置内容が幾つか提案されているかと思いますけれども、特にDXの実態とか知見を集約してそれをフィードバックするということで、構造的に良い循環を起こすということで産業構造の転換と、さらにはその成長を促すというふうなことが可能ではないかというふうに思います。
全体といたしましては、やはり企業の競争力強化並びに国全体の、あるいは社会の安心、安全も含めて、こういったDXを推進をしていかないといけないというふうに思います。
最後に、まとめでございます。
DXの現状としては、やはり世界的にこれはもう競争の主軸となって展開されているわけでございますけれども、残念ながらまだ我が国は少し立ち遅れているという状況にあるというふうに理解しております。これまでの知見からいえば、やはり経営者の認識とリーダーシップが非常に重要で、かつそれは、現在ではレガシーのシステムによって残念ながら経営の足かせになっている、あるいはDXの足かせとなっているという状況がございます。
こういった構造的問題を正すためには、やはり構造的なアプローチ、つまり国によって制度なりあるいは仕組みを変えていただかないとなかなか難しい、個別企業ではなかなか難しいというふうに理解しております。今般の法律の改正によって、こういった問題が解決の非常に大きな助けになるのではないかというふうに私は考えております。こういった法律の非常に重要性というのを御理解いただきたいというふうに思います。
以上でございます。ありがとうございます。
株式会社日本総合研究所調査部上席主任研究員・藤田哲雄参考人 意見陳述
○参考人(藤田哲雄君) それでは申し上げます。
資料の一枚めくっていただきまして、我が国の企業のDXの取組が遅れているというところからお話し申し上げたいと思います。
先ほど青山参考人から、DXがどのような意義があるかと、その中で、世界の中で日本がどのような状況に置かれているかということについては御説明いただきましたけれども、実態といたしまして、我が国の企業の取組は極めて遅れているというふうに言わざるを得ないかと思います。
我が国政府は、先ほど御紹介ございましたように、ソサエティー五・〇というビジョンを掲げて、経済発展と社会的課題の解決の両立を図ろうとしてございます。このビジョン自体は、他国に比べましても非常に大きなものでございまして、全てを包括するようなすばらしい内容になっている反面、それが、全体が大き過ぎまして各企業に落とし込まれていないというその隙間がございまして、企業はなかなか、どこから取り組んだらいいのかということについて、そのビジョンだけではなかなか手掛かりを得られないというような状況にあるということかと思います。
そうはいいましても、今そのDXがバズワードになってございまして、そのはやりに後れを取らまいということで、POC、概念実証という実験のようなものを盛んにやってございます。そういう取組は、年間、大企業ですと何十個も同時並行してやっているわけですけれども、それが実験に終わっていまして、それから新しい事業部を立ち上げて新しい産業が興ったということは、ほぼ寡聞にして聞かないというような状況になってございます。
次でございますけれども、三ページでございます。
じゃ、なぜこういうふうに日本でDXが進まないのかということでございますけれども、先ほども少しお話ございましたけれども、これは、経営者がこのDXに対する認識というものにつきまして余り深くまだ理解されていないということに加えまして、それに対応した企業の体制が整っていないということが一番大きな原因ではないかというふうに考えてございます。
よく聞く例でございますと、ある企業の社長が、AIということが最近世間ではやっている、で、これが新しい競争の種になりそうだから、それを活用して当社でも何かやってみたらどうかということで、先ほど申し上げましたPOCということが取り組まれるわけでございますけれども、その一事業部にそれが下りてきますが、それがいろんな部署と本当は連携しなくてはいけないところ、その事業部の中だけで解決しようとして、それがうまく展開していけないということでございます。企業の中にもシステムを取り扱う人材、部署がございますけれども、大抵のそういう企業のそういうシステムを取り扱う部署では、その根本的な経営戦略に関わってこなかったということが多いかと思います。
と申しますのは、これまでのシステムというのは、経営層で決めました経営戦略を、それをシステムとして鏡のように映していくというような作業をずっとしていたわけですけれども、最近のこのDXというのは、いろんな取組を進めながら、戦略を常に走りながら考えていくというようなアジャイルという開発方法が主体になってございまして、従来のそういう上から下りてくるウオーターフォール式のシステムの開発のやり方では、到底これでは対応できないということになってございます。
それに加えまして、このDXが進まないということにつきましては、もう一つ、投資の判断の基準ということがございます。
最近のデジタルの世界の価値創造といいますのは、データを中心に価値をつくっていくということなんでございますけれども、これがすぐさま金銭的な価値に転換されるということはなかなか難しく、一旦はこの知識の習得ですとか、それからユーザーの心理的な満足とか、そういったことにかなりその価値が分散されているということがございます。したがいまして、その従来の経済的価値だけで投資の是非を判断するには、ちょっとなかなかすぐうまくいかないということでございます。
翻って考えてみますと、例えば、アメリカの大手のアマゾンとかそういった、こういうDXの最先端を行くような企業はどんどん投資をしているわけですけれども、すぐにもうかったということではなくて、長い間こういうこと、DXを推進していろんな知識を蓄積して初めてその成果が出てきているということを考え合わせますと、短期的な利益でDXを進めていくということはなかなか難しいということでございます。
それから、日本のITの位置付けですね、これが非常に、企業におけるITの位置付けがアメリカとはかなり異なっているということが四ページにございます。
対照的でございますので少し申し上げますと、アメリカでは戦略をITで具現化するという考え方から、ITを主軸として戦略を考えるパラダイムへ転換しております。経営層にはITに精通した担当役員、例えば、チーフ・デジタル・オフィサーですとかチーフ・イノベーション・オフィサー、チーフ・インフォメーション・オフィサー、あるいはチーフ・テクノロジー・オフィサーなどを置くことが多いということでございます。加えて、多くのアメリカのユーザー企業は自社内にそのITを自分で開発できる人材を多く抱えてございます。それゆえに、素早く戦略をITで実装できるという仕組み、構造になっているということでございます。
それに対しまして、我が国では、システムの開発の主な目的が業務効率化の追求に置かれていたということがございましたので、システムの企画に経営層が直接関与することが少ない、ユーザー企業の既存業務部門が中心となって行うということが長く行われてきました。そこでは、既定の経営戦略や既存サービスを前提として、それを実現する手段としてITが位置付けられて利便性、効率性が追求されてきたという、この流れをずっと今も引きずっているということでございます。
次に、五ページめくっていただきまして、このDXを進めるためには、やっぱり経営層によるデジタル戦略の策定が必要だということでございます。
既存の業務を前提として自動化とか省力化を推進する従来のIT化ではなくて、新たに価値創造を行うデジタル戦略が必要になっているということでございます。その価値創造の源泉がデータへと移行しつつある中、データを中心に企業の価値創造の仕組みを再構築する必要があるということでございます。
こういう価値創造の仕組みを再構築するためには、一部署だけではこれは解決できませんで、社長以下、その企業全体がそういうことに取り組まなければいけないということでございます。したがって、経営戦略とデジタル戦略を一体として考える必要があるということかと思います。
それを図式的に六ページに示しましたけれども、これ、従来の日本の企業のITのつくり方、発想の仕方というのは上の方でございます。
企業は、経営層から何かその経営戦略を指示をして、システム部門に何かこれをシステムで実装してくれというふうに指令が出ると、そうすると、そのシステム企画の部署がその中で企画を考えて、それを外部のシステム開発業者に委託して開発をするということで、ここには三つのその部門がそれぞれ分かれてしまっているということでございます。これでは経営層が、最後のつくっているところということの現場が非常に遠くて、何が起こっているのか、どういうことができるのかということについてはほとんど関知していないという、こういう状況になっております。
ところが、最近のそういう新しいデジタルトランスフォーメーションの現場で成功しているところはどうなっているかというのがこの下の方でございます。
ユーザー企業におきましては、CDOと言われるそのデジタル戦略を所管する役員等が、システム開発人材と密に連絡を取りながら、そこで併せてその戦略とシステムの企画を練っていると。それから、システム開発の方につきましても、ITベンダーがそのユーザー企業と対話をしながらその実装をしていくと、こういった形になってございます。やはりデジタルトランスフォーメーションを進めていくためには、こういった形にしていきませんとなかなかうまくいかないということでございます。
七ページでございますけれども、こういった経営者のデジタル戦略を担保するためには、やはりこのデジタルガバナンスということが重要かと思います。
企業の成長に向けたそのビジョンの構築それから共有、それから、先ほど申し上げましたように、新しい価値創造の仕組みを実現するような体制の構築、それから経営資源の適正配分、それからリスクコントロール等ですね、このデジタル化に対応した観点からガバナンスを確立して普及させていくことが有効かと思います。
ただ、この戦略の中身は個々の企業の経営的判断に委ねなければいけないと思いますけれども、何を整備しなければいけないかと、何をしなければいけないかということについて多くの企業はまだよく分かっていないというような状況でございますので、そのガイダンスとして指針を示すということには大きな意味があるかと思います。
さらに、そういう情報が公開されることによって、市場の力を活用する、あるいはそのステークホルダーとの対話が活性化するという意味におきまして、これは企業のDXの推進に向けて強く後押しする力になり得るものと理解してございます。
それから最後に、アーキテクチャーについて一言申し上げます。
本法案では、もう一つの柱といたしまして、このアーキテクチャーという共通の設計仕様につきまして、IPAを中心にこれを広めていこうというような観点が盛り込まれてございます。
先ほどのDXの話でございますけれども、DXはデータの組織横断的活用が重要であるというにしても、既存のシステムはそのような連携を想定してこなかったということが実態としてございます。個々のシステムを都度接続する方法もありますけれども、それはずっとやり続けるとシステムが複雑化するというような弊害がございます。
ここで、共通の技術仕様は公共財として利用する方がよいということなんですけれども、我が国はそれの担い手になる機関がなかなかなかったということでありまして、これがIPAとしてそういう役割を持たせるということが適切かと思います。
九ページでございますけれども、IPAをプラットフォームとして、専門家、業界関係者の意見を集約して、分野ごとにアーキテクチャーを設計するということは、これは非常に、その協調領域を早く固めることによって無駄なそういうアーキテクチャーの争いというようなことがなくなって、DXが社会全体として早く前に進むという意味で有益かと思います。
ただし、その設計をするときに様々な意見が反映されるような仕組み、あるいは事後的にどのような議論があったのか検証できる仕組みが必要かと思います。
以上でございます。
一般社団法人情報サービス産業協会副会長兼専務理事・小脇一朗参考人 意見陳述
○参考人(小脇一朗君) 情報サービス産業協会の小脇でございます。
まずもって、本日はこうした意見を述べる機会をいただきまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。
資料に沿って御報告を申し上げます。
まず、開けていただきますと、二ページでございますが、私ども情報サービス産業は、情報システムをつくる、あるいはソフトウエアの開発を行う、そういう事業者で構成をされております。まずもって、情報サービス産業の現況を御報告申し上げますとともに、私どもから見た環境認識、さらには、情報サービス産業がDX時代どういう方向を目指しているのか、それについて御報告を申し上げた上で法律案についての意見を申し述べたい、このように思っております。
次の三ページが、まず、私ども情報サービス産業の現状でございます。
この業界はちょうど五十年が経過をいたしました。日本には、百年を超える企業、業界も多数存在をいたしておりまして、我が業界もまだ道半ばという状況にございます。百年産業に向け邁進しているというのが現状でございます。この五十年の間、リーマン・ショック等々、規模が縮小した時期もございましたけれども、現在では、ここにございますとおり、売上高で二十四兆円、従業員数で百八万人と、日本の基幹産業の一角を占めるに至っているところでございます。
次の四ページが最近の業況でございます。
経済産業省の月次の調査でございますけれども、このグラフを見てお分かりのとおり、昨年の十月以降、一年連続して売上高は前年同月を上回って推移をいたしております。それまではプラスとマイナスが入り交じり、ほぼ前年並みということで推移をしておりましたけれども、昨年の秋から、伸び率、それも五%程度と高い伸びとなっているところでございます。目下、足下のシステム需要は大変旺盛というのが現状でございます。
ただ、他方で、来年、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピック以降後退してくるのではないかと、あるいはさらには、経産省のDX研究会のレポート、青山先生が座長を務められましたけれども、そこで言う二〇二五年の崖、これも顕在化してくるのではないかと、そういう懸念も一方で持っているというのが現状でございます。
五ページは、私ども協会が四半期ごとに行っているDI調査、景況感を見たものでございます。
左側の売上げの将来見通し、さきの経産省の調査と同様、上昇すると見る向きが極めて高い水準で推移をいたしております。右側は雇用判断でございますけれども、従業員の不足感は過去最高の水準にあるということで、過剰と見る割合はほぼゼロという状況でございます。業界はかつてない人手不足の状態にあると、こういうところでございます。
六ページが私どもの環境認識でございます。
変化の潮流として、ITでいろいろな課題、とりわけ社会課題を解決していこうと、こういう考えが重要だとの認識が広がってきております。申すまでもなく、デジタル技術あるいはデータの活用は世界的潮流でございます。そういう中で、我が国においてもこのDXの機運が高まってきたということであるというふうに私ども感じております。
他方で、二〇二五年の崖の懸念もあるところでございますけれども、DXの考えが浸透しつつありまして、私どもの先端のお客様、先端ユーザーは、AIを使ったり、あるいはIoT、ビッグデータの活用、さらにはフィンテックといった革新的な取組を開始しておるところがございます。そしてまた、好況期の今こそDXに向け手を打たなければならないというのが多くのユーザーの共通認識でございます。
ただ、ユーザーの多くは、ここに挙げておきましたとおり、DX推進力の不足を懸念されておられまして、DXといっても何をどうすればいいのか分からないと悩んでいる企業も多数あるところでございます。私どもベンダーに積極的な提案を求める、そういう姿勢も鮮明になっているところでございます。さらには、ユーザー企業自ら人材を採用する向きというのも出てきているところでございます。
そして、技術、サービス、これも大変大きく変化をしております。そして、変化のスピードも増しているということで、最近我が業界でのキーワードはCAMBRICということでございます。ここにありますとおり、クラウド、AI、モビリティー等々、その頭文字を取ったものでございますけれども、こうした先端技術あるいはサービスへの対応、これが大変重要な課題になっているというのが現状でございます。
そして、人材面でございますけれども、先ほど述べましたとおり、人手不足、新卒の採用も深刻化しておりますし、さらには、このDX人材と申しましょうか、デジタル技術とデザイン思考を持つIT人材、これが求められておりまして、それへの対応が大変急務となっております。さらに、世界で通用するトップガンの輩出、あるいはシニア人材が活躍できる仕組みづくり等々、我が業界、人材面では課題山積というのが現状でございます。
次に、七ページ。私ども情報サービス産業がどういう方向を目指しているのかという点について御報告を申し上げたいと思います。
私ども情報サービス産業協会では、ちょうど四年前になりますけれども、この資料の真ん中にございますJISAスピリットという業界宣言を制定、公表をいたしました。ソフトウエアで革命をというのがそのキャッチフレーズでございまして、ともすれば、日本の社会、ハードウエア中心の社会でございまして、ソフトウエアの重要性が十分認識されていないというふうに私ども考えております。そういった中で、ソフトウエアは全ての産業の基盤であると、その重要性を私ども訴えつつ、自ら先頭に立ってソフトウエアで世の中を変えていこうと強い意思表明を行ったところでございます。
私どもは、このJISAスピリット、これを全ての活動の基点といたしておりまして、社会課題の解決、そして、JISAドリームと申しましょうか、強い思いと夢を持って新たな価値創造に向け行動を起こしていくということが私どもの基本方針でございます。とりわけ、このDXの時代、新たな価値創造ということが極めて重要でございまして、情報サービス産業がお客様に新たなサービスあるいは新たな価値を提供できるか、これが大きく問われている、そういう時代であるというふうに強く認識をしているところでございます。
今までは、私どもは、受託開発と申しましょうか、お客様の要望どおりにシステムをきちんとつくり上げるというのが基本的ミッションでございましたけれども、今や、今後、DXの時代は、お客様と一緒になって、一緒に考え、そしてお互いの強みを融合させて新たな価値を創造していくと、そういう時代になったと認識しているところでございまして、私どものビジネスモデルも、このDXの時代、大きな変革が求められているというのが現状でございます。
そして、具体的に、八ページ目になりますけれども、情報サービス産業自体がDXに対応するため具体的に何をやっているのか。一言で申し上げますれば、ここにございますとおり、人材、技術、そして経営と、三位一体での革新、これが重要であると考えております。その中でも鍵を握るのは人材、人でございまして、私ども、人材革新に注力をして、技術、経営もそれを支えるためにどうすべきかと、そういうスタンスでアクションを起こしているところでございます。とりわけ、経営者も自らの発想とマインドを変える必要がある、こういうのが共通認識でございます。
そして、その人材革新でございますけれども、九ページでございます。一言で申しますと、私ども、ITエンジニアからITアスリートと申しましょうか、プロのエンジニアに転換をしていこうという考えでございます。ITエンジニアを現在の既存の情報システムの開発、運用からプロの技術者、提案型の技術者に転換させていこうと、こういう考えでございます。御案内のとおり、今、スポーツ界では多くの若いアスリートが世界で活躍をされています。ITの分野でも、このITアスリートとも呼ぶべき、そういうプロの意識を持って世界で活躍できる、そういう人材を育てることが大変重要だと思っております。
ただ、大変難しい課題でございます。私ども、業界百万人のIT人材、これを徐々にこのDXの担い手に移行させていくということが重要であると考えております。私ども協会では、来月から新しい技術者研修、マインドシフト研修と申しますか、そういう新しい研修もスタートさせる予定でございます。
そして、十ページ。幸い人材面では、私どもにとって大変明るい材料がございます。これはソニー生命の調査ですけれども、男子高校生の将来なりたい職業の第一位はITエンジニア、プログラマーということでございます。さらに、三位にはユーチューバー、四位にはゲームクリエーターと、IT関連産業への思いが非常に強いと、こういう調査結果が出ております。
実に、この率を足し上げますと、男子高校生の四六%、半分近くがIT産業を目指していると、こういう現状があるところでございまして、こうした若者の皆さんにどのような道筋をつくって情報サービス産業で活躍してもらうか、輝いてもらうか、もっと大きく言えば、情報サービス産業をより魅力ある産業にどうしていくか、私どもにとっての最大のミッションであると、このように思っているところでございます。
十一ページ、最後になりますけれども、法案への意見を申し述べたいと思います。
御報告申し上げましたとおり、ITあるいはデジタルで課題を解決していこうというDXの考えが浸透しつつございます。そういう中で、この法律案は大変時宜を得たものというふうに考えております。具体的に申し上げれば、この法案はDXの推進を加速する、言わばDX加速法であると私どもは考えております。
DX、デジタルを使ってビジネスを変えていこうということでございますけれども、DXは、技術的側面もございますけれども、本質的には経営課題、経営問題でございます。経営者の判断、リーダーシップが極めて重要でございます。この法案は、とりわけ指針の策定あるいは優良企業の認定というのが盛り込まれておりますけれども、経営者に刺激と申しますか気付きを与え、経営者を後押ししてDXを加速するものと大変大いに期待をしているところでございます。
具体的に申し上げますれば、DXというのは世界の潮流だ、経営の根幹だという点、そして他方で、日本においては二〇二五年の崖が迫っている、この二点を経営者に気付いてもらう、そして行動に移してもらう、そういうのに大変効果的な法案であると、このように思っております。
この法改正を機に、私どもシステム企業あるいはソフトウエア企業もDXを自ら推進しますとともに、ユーザー企業と一緒になって、協業と申しましょうか、互いの強みを融合させて新たな価値創造につなげたいと、このように強く思っているところでございます。
そしてまた、DXに積極的な企業の認定は、優良な人材の確保、あるいは市場から評価されて投資の拡大にもつながるものと大変期待をしているところでございます。
さらに、組織を超えてのデータの活用でございますけれども、個々の企業は多くのデータを持っておりますけれども、それが統合化、共通化されていないという現状にございます。これを打破し、新たな価値創造につなげていくということを期待しているところでございます。
さらには、安全性の確保、クラウドでございますけれども、クラウドサービスはもう今やDXを実現する重要な構成要素になっておりまして、この面でも大変評価できる、そういう法案と考えております。
以上、私どもの現状と課題、さらに法案に対する意見を申し述べました。ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
三人の参考人の皆様、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
本法案が、データやデジタル技術を活用した新しいビジネスモデルが海外企業で誕生している、その一方で、多くの日本企業では事業基盤となるITシステムがレガシー化していて経営の足かせとなるリスクがある、いわゆる二〇二五年の崖問題があるんだということで、先ほども御説明をいただきました。これを避けるためにデジタルトランスフォーメーションを推進するんだというふうにしています。
そこで、三人の参考人にお聞きをいたします。
本法案は、データを組織横断的に活用する技術の社会実装に向けて、アーキテクチャーの設計を行う機能をIPAに追加するというふうにしています。アメリカではNIST、国立標準技術研究所がこれを設計をしていて、日本もこれに倣うんだというふうに聞いております。
産構審の総会に提出をされた経産省の資料を見てみますと、最新のデジタル技術に合わせて規制もアップデートが必要だというふうにしていて、制度については、関係省庁と連携をして、同一の効果を有する行為には同一の規制を適用するなど、業種ごとに定められた既存の規制体系を超えた横串の規制体系の導入を検討するということが具体的な取組として挙げられております。
今年の六月に閣議決定をされた成長戦略のフォローアップでは、アーキテクチャーを活用した検討を行って、与信等に関する消費者保護や安全確保などの分野において二〇一九年度内に規制の見直しを検討するとか、パーソナルデータの円滑な流通の実現に向けてアーキテクチャーを取りまとめるんだというふうにしています。
このアーキテクチャーによって、既存の規制を飛び越えて、消費者保護とか安全確認分野などが置き去りにされたまま、もうけ優先になるんじゃないのかという懸念を持っているんですけれども、参考人の皆様どのようにお考えでしょうか。
○参考人(青山幹雄君) まず、アーキテクチャーというものは、これは今、情報システムそのものの話もありますけれども、例えば業務そのものもアーキテクチャーがございます。アーキテクチャーという意味は、全体の構造なわけですね。したがって、これは社会の構造もアーキテクチャーでございます。
特に、デジタル世界では、アーキテクチャーというのは事業横断的あるいは企業横断的な側面がございます。これはほかの産業とは極めて違うところで、データというのは複数の事業体を横断して使われる傾向がございます。これが非常に重要なことですね。
したがって、ここを押さえないと、例えば重要なことは、セキュリティーの問題がございます。セキュリティーはどこかの一つ、一か所破られると全部破れちゃう。一番弱いところで決まってしまいます。だから、サプライチェーンの中でどれかの企業がセキュリティーを守らないとサプライチェーン全体が破綻してしまうという問題がございます。
こういった固有の性質がございますので、デジタル技術に関しては、やっぱり産業横断的なある意味での枠組みが必要であるというふうに理解をしています。これによって社会の安全とか安心が更にある意味で保障する。最近は特にセキュリティー面では非常にリスクが高まっているというふうに理解していますので、非常に重要かなというふうに思っています。
以上でございます。
○参考人(藤田哲雄君) ただいま御指摘のありました点でございますけれども、アーキテクチャーが広がることによって横串の規制が導入される、それによって従来の個別にやった規制を乗り越えて、それがないがしろにされる、そういう懸念はないかという、そういう趣旨の御質問であったかと理解しておりますが、先ほど青山参考人からございましたように、そのアーキテクチャーというのをネットワーク全体にかぶせていく、その横串の規制が必要だという、そういう趣旨でございまして、個別の、例えば消費者保護とかプライバシー保護とか、そういった点につきまして、それを、このシステムの構造がこうなったからそれはもうやらなくていいということには決してならないというふうに理解しております。
○参考人(小脇一朗君) アーキテクチャーの御質問でございますけれども、アーキテクチャー、私どもにとりましてはまさにDX世界の見取図だというふうに考えておりまして、ただ、この設計には大変高度な知識、経験が必要でございますので、日本の総力を結集してつくっていくということが必要かと思いますので、そういった意味で、IPAが設計をされるということは大変時宜を得た方向かなと思っております。
他方、規制のお話がございました。DXの時代はデータがどんどんつながる時代でございますので、従前のように、定期検査と申しますか、何年に一回検査員が行ってチェックをするというよりは、日々つながっているデータをチェックしていくということが大変効率的、効果的ではないかというふうなことで、そういう方向になっていくのではなかろうかなと、こう思っているところでございます。
以上でございます。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次も三人の参考人にお聞きします。
衆議院のこの法案の質疑の中で我が党の笠井亮議員が、本法案は政府調達におけるクラウドサービスの安全性評価を行う機能をIPAに追加するものなんだけれども、そのクラウド導入に向けた採用基準としてデータセンターを国内に設けることも条件にすることが当然じゃないのかというふうに質問を行ったところ、大臣から、データセンターの国内設置は一律に求められるようなことにはならないと考えているという答弁があったんですね。
クラウド業界のトップのアマゾンのAWSというクラウドサービスがありますけれども、これを利用していたアメリカの大手銀行のキャピタルワンから約一億人分の個人情報が漏えいをしたということが大問題になっています。アマゾンのように海外にクラウドサービスを提供する企業を日本政府が使うような場合に、その安全性を高めるという観点から、やっぱり国内にデータセンターを設置する必要があるんだというふうに思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
○参考人(青山幹雄君) まず、原則から言えば、望ましいとは思います、国内の方がですね、大きく言うとですね。
ただ、アマゾンのポリシーとしては、私はアマゾンは非常に高い技術力を持っている会社であると思っています。したがって、その技術力を生かすためにはある意味ではアマゾンとのうまく調整も必要かと思いますので、絶対にないといけないという議論はなかなか難しいのではないかというふうに思っています。
ただ、望ましいのはやはり国内ではないかというふうには個人的に思います。
○参考人(藤田哲雄君) 御指摘のとおり、安全保障とこのデータの置き場所という観点で申し上げますと、国内にある方が安全だということになろうかと思います。
ただ、その全てのデータが同じように安全保障的な見地から守らなければいけないというわけでもなくて、非常に重要なデータと、それが万が一外国にあって何かの障害が起きたときでも何らかの対応ができるという場合があるかもしれませんので、一律に国内ということにはならないかと思います。
○参考人(小脇一朗君) 先生御指摘のとおり、そのクラウドサービスはまさにDXを実現する大変重要な構成要素になっておりまして、多くの会社がこのサービスを提供しておりますけれども、御指摘のアマゾン等々海外企業、巨額な投資を続けている会社もあるところでございます。クラウドは便利ではありますけれども、他方で、安全性確保というのは非常に重要な要素でございます。
今回の法改正でクラウドの安全性評価を政府がおやりになるということになったわけでございますけれども、専門的立場からデータセンターの位置も含めて御判断されると、このように私どもは理解しております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次も三人の参考人にお聞きをしたいんですけれども、IPAが発行している二〇一九年の情報セキュリティ白書の中に、国外の情報セキュリティ政策の状況についてというところがあって、アメリカでは、昨年九月にトランプ大統領が国家サイバー戦略を発表し、敵対的国家として四つの国を名指しをして、これらの国は米国とその同盟者、パートナーに対してサイバー空間でしばしば向こう見ずな挑戦をするなどと非難をして、対決姿勢を前面に出していると、こういう記述があるんですよね。
今年の四月の日米安全保障協議委員会が、サイバー攻撃が日米安保条約で言う武力攻撃に当たり得るということを確認をして、当時の防衛大臣が、自衛隊による武力行使があり得ると国会で明言をしています。IPAがNISC、内閣サイバーセキュリティセンターと一体的に政府機関の監視活動を行っています。さらに、昨年から日米サイバー共同演習に関与をしています。
IPAに新たな機能を付与するということで、アメリカのサイバー戦略に巻き込まれるんじゃないかという懸念があるんですけれども、どのようにお考えでしょうか。
○参考人(青山幹雄君) まず、結論から言いますと、それは多分私は余り当たらないかなという感じがしますけど、正確に私が答える立場には恐らくないんではないかと思います、一つはですね。
ただし、今重要なことは、やっぱりサイバー攻撃の技術がどんどん上がってきているわけですよね。これは、国もそうですし、民間企業もそうでございます。被害に遭うリスクは高くなっています。したがって、この技術を少なくとも高める必要が我々はあるかと思います。ですから、個々の企業に、全部開発するというのはかなり難しいものでありますので、かつ、やっぱりデータが集まらないとどこで何が起こっているかよく分からないという状況がございます。
そういう面では、データを収集して、状況を把握して、それを共有できるようないわゆる中立的な立場の国レベルの組織は、これはもう必須ではないかと思います。
以上でございます。
○参考人(藤田哲雄君) 御指摘のとおり、このセキュリティー、このサイバー攻撃というのが現代の一つの戦争のような国家間の形になりつつあるという指摘も聞いております。その意味でも、セキュリティーに対して国を挙げて、技術の粋を集めてこれを防衛するということは必要かと思います。
IPAがアメリカのその戦略に巻き込まれるかどうかというのは、これはIPAの機能そのものとは関係なくて、それは政府のまた別の御判断かと考えております。
○参考人(小脇一朗君) セキュリティーの問題は大変重要な問題でございまして、まさにDXの進展によって利便性は高まりますけれども、他方で、それに伴って新たなセキュリティーリスクが出てくるということであります。
とりわけ、インターネットを介していろんなものがつながりますので、思わぬ脆弱性を生み出すおそれがある。さらには、先ほど御指摘のサイバーセキュリティーの問題があるわけでございまして、リスクコントロールは大変重要だと考えております。
ただ、国レベルでの具体的なサイバーセキュリティーの戦略は国の責任でお決めになるものだと、私ども承知しているところでございます。
○岩渕友君 ありがとうございました。
最後に、もう一つお聞きしたいんですけれども、先ほど来出ているように、そのDXといっても、やっぱり中小企業が対応できるのかということが心配なんですよね。中小企業のデジタル化の遅れに対する具体策というのがやっぱりどうしても必要だというふうに思うんですけれども、先ほどお答えいただいたことに更に加えて、支援をどうやって進めていくのか、政府にどのような施策が求められるのかということで、付け加えることがあればお三方からお聞かせください。
○参考人(青山幹雄君) 一つは、先ほどから出ています、税制を含めた、いわゆるそのDXを推進するような財務的な御支援が可能かと思います。
もう一つ、先ほどの技術と人材の側面でいいますと、例えばそのIPA内に、そういう共通プラットフォームによって、例えば製造業の金属加工とか、それを共通につくることによって、例えば今まで一千万掛かったシステムが半額で済むとか、そういうメリットが出てきますので、そういった技術等、それから人材を含めて、何か提供できるようなことを推進していただくと有り難いなと思っております。
○参考人(藤田哲雄君) 中小企業の場合は、この導入のところがやはり非常に大きな壁になるかと思います。そこをどうやって乗り越えていくかというところが一番のこのポイントかと思いますけれども、一つのやり方としまして、その商工会議所等々が、そういう人材も含めて、その啓蒙に注力すると。
具体的に申しますと、そういうシステムコンサルタントをあっせんして、それの費用も一部そういうところが負担するというようなことも考えられるのではないかと思います。
○参考人(小脇一朗君) 先ほどのお答えに付け加えるならば、まさに成功事例の情報提供と申しますか、見える化が大変重要だと考えております。
先ほども青山先生から成功事例の御紹介がありましたけれども、ああいったものをどんどんどんどん情報提供をしていただくということによって中小企業でのIT化も進むものと、このように考えております。
以上でございます。
○岩渕友君 ありがとうございました。