2020年11月30日(月) 参議院 行政監視委員会(国と地方の行政の役割分担に関する小委員会)
一般質疑
財政難の自治体誘導
北海道寿都町と神恵内村が調査費の交付を目的に高レベル放射性廃棄物の最終処分場建設の調査を受け入れたことに関し、日本共産党の岩渕友議員は30日の参院行政監視小委員会で「財政難の自治体を交付金で誘導してはならない」と強調しました。
岩渕氏は、神恵内村は隣村の泊原発にかかわる原発交付金が支給され、「消防士などの人件費や小中学校の改修費に充てている」と述べ、「財政規模が約20億円の村に2年間最大20億円が調査で交付される。いかに破格か」と指摘しました。
自治体の財政難について武田良太総務相が「市町村が自ら考えること。国がどうこう言うべきでない」と述べたのに対し、岩渕氏は「自治体に交付金で国策を押し付けるやり方は原発マネーに依存する状況をつくる」と主張しました。
また、神恵内村の人口がこの5年間で100人以上減ったことについて、「原発マネーは人口減少などの問題を解決していない」と指摘。2019年までの45年間に全国で4兆円以上の原発などの立地交付金・補助金が配られたことを挙げ、「巨額の交付金で最終処分場に応募させるやり方は許されない」と批判しました。
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質問資料 電源立地対策としての交付金・補助金の総額(1974-2019)【PDF版】【画像版】
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2020年11月30日(月) 参議院 行政監視委員会(国と地方の行政の役割分担に関する小委員会)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
今日は、高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみの最終処分場をめぐる問題についてお聞きをいたします。
北海道の寿都町と神恵内村で最終処分場選定の第一段階となる文献調査が始まりました。九月上旬、畠山和也前衆議院議員と寿都町に伺って住民の皆さんとの懇談を行ってきました。町長が文献調査への応募検討を示した直後のことになります。
その懇談の中では、東京に住む孫から、最終処分場が造られたらもう遊びに行かないと言われてショックを受けたとか、子供や孫、そのずっと先の世代まで十万年も最終処分場を残すことは許されないなど、不安や怒りの声が参加された方から次々と寄せられました。同時に、懇談会に参加をしたいんだけれども周りの目があって参加できないと、こういうふうに言われたなど、町民に分断が持ち込まれる、そういう事態にもなっています。
立地調査の流れの中には、住民の意見を聞く場はありません。町民の意見が分かれて納得は得られていないにもかかわらず文献調査への応募が行われて、認可されたことに怒りの声が上がっています。周辺自治体はもちろん道内の自治体からは、一次産業や観光への影響を心配する声、北海道には特定放射性物質を受け入れ難いとする条例があり、その考えを遵守すべきとか、文献調査は当該市町村の判断だけで受け入れることが可能なのは問題だなどの意見も出されて、道漁連が断固反対と知事に求めるなど、市民団体なども含めて反対、慎重な検討を求める声が上がって、それは今も広がり続けています。道内の世論調査では、両町村での文献調査の実施に反対、どちらかといえば反対と答えた方が七割近くにも上る状況となっています。
文献調査は、期間を二年として、二十億円を限度に電源立地地域対策交付金が交付をされます。寿都町は、文献調査を受け入れる理由の一つにコロナ不況、町財政の逼迫を挙げています。神恵内村は、泊原発が立地をしている泊村に隣接をしていて、一九八四年から原発交付金を受け取ってきました。
十一月十一日、北海道議会の決算特別委員会で我が党の真下紀子道議が、一九八四年から昨年までの三十六年間にこの神恵内村が受け取った原発交付金の額を確認をしました。そうしたところ、約五十六億円というふうな答弁がありました。神恵内村ではこの電源立地地域対策交付金を活用してどんな事業が行われているのか、その事業の概要を見てみますと、毎年のように消防士とか保育士、保健師の人件費に充てられているんです。ほかには、小中学校の改修工事などが行われています。原発交付金のない自治体は、同じ事業に地方交付税を充てているわけですよね。
神恵内村が電源立地地域対策交付金を活用して行った事業費がどのぐらいになるのかお聞きしたいんですけれども、二〇〇七年度から二〇一九年度までの総事業費の合計は幾らになるでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
行政文書を通じて確認できる範囲でお答えすることになるものですから、その範囲で申し上げますと、二〇一四年度から二〇一九年度まで、これが文書保存期間でございます、この期間において神恵内村が電源立地地域対策交付金を活用して実施した事業の事業費について申し上げます。総額約六億円、うち交付金充当額は約五・八億円であったというふうに認識してございます。
○岩渕友君 こちらでは調べて、二〇〇七年度から二〇一九年度までの総事業費の合計というのは十六億二千九百四十七万四千三百七十六円になるんですね。これに対して、十五億円以上の交付金が充当をされています。
二〇〇七年度から一九年度の十三年間でこれだけの額というのは多いなというふうに思うんですね。というのも、神恵内村というのは財政規模が年間約二十億とか二十一億円なんです。文献調査は僅か二年で最大二十億円が交付をされるということになりますので、この二十億という額がいかに破格の額かということが分かると思います。
人口減少に苦しんでいる自治体は全国でも多いと思うんですね。そうした自治体が巨額の交付金に頼らざるを得ないという状況になっていることを示しているんだと思うんです。これは自治体の財政をゆがめることになって、これで本当にいいのかなという思いがあるんです。
大臣は、これまでの話や実態を聞いてどのように感じられたでしょうか。
○国務大臣(武田良太君) コロナ禍でなくても、地方の財政状況というのは全国的に厳しいのは先生御承知だと思います。その中において、我々は財政の調整そしてまた保障機能というものをしっかりと充実させるために取り組んでいるわけでありますけれども、その上において、それぞれの市町村は自らの財政を立て直すための事業計画というのを独自に立ててもらう、これは健全な姿だと私は考えているんです。それは様々な分野があるんでしょうけれども。
先生御指摘の神恵内村の皆さん方は、それは、地方自治体として自ら考え、自らのビジョンの下でそうした施策に講じているものと承知しておりますので、これに対して国がどうこうということを地方自治に対して言うべきものではないと考えております。
○岩渕友君 財政難に苦しんでいる自治体に交付金で国策を押し付けるというやり方が自治体も住民も苦しめているという実態があるんですよね。核のごみの最終処分場をめぐって、真下道議が、金銭的手段によって誘導するような最終処分場の決定というのは問題があると思うけれどもどう受け止めているかと質問をしたのに対して、道は、科学的特性マップの合意形成を図ろうとする印象があると答弁をしています。交付金を前面にして合意形成を図ろうとする国のやり方は、原発マネーに依存をせざるを得ないような状況をつくることになります。
これ、東京電力福島第一原発もまさにそうだったんですね。原発事故後、避難を強いられた住民の方々は、こんなことになるんだったら原発なんてない方がよかったと、こういうふうに口々に語っていたことを忘れられません。
神恵内村は、人口約八百二十人の村なんです。直近五年間で百人を超える方が減少をしています。原発マネーがあれば、人口減少など地域の抱える問題を解決できるということにはなっていないんですよね。
電源立地対策に係る交付金、補助金がこれまでどれだけ交付をされてきたか。いわゆる電源三法が制定をされた一九七四年度から二〇一九年度の総額は幾らになるでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
こちら、様々なちょっと交付金ございますものですから、財務省のホームページで公表されております特別会計決算参照書によりますと、一九七四年度から二〇一九年度までにおける電源立地対策のうち、本日配付されております資料に記載されました十の交付金及び補助金について申し上げますと、その総額は約四兆円であったというふうに認識してございます。
○岩渕友君 資料を御覧ください。四兆円を超える額が既に電源立地対策として配られています。
東日本大震災で被災をした東北電力の女川原発二号機は、六割から七割の県民の反対があるにもかかわらず、知事と立地首長が再稼働に同意をしました。その女川町も、十一月二十五日付けの毎日新聞で原発マネーが町の歳入の一割超を占めているというふうに報道をされました。
日本学術会議は、内閣府原子力委員会から高レベル放射性廃棄物の処分に関する取組について審議依頼を受けて、原子力発電をめぐる大局的政策についての合意形成に十分取り組まないまま高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定という個別的課題について合意形成を求めるのは、手続的に逆転しており手順として適切ではないとして、核のごみを一定以上増やさない総量管理や独立した第三者による公正な政策討論の場などを提言をしました。
核のごみの処分方法が定まらないままに原発を進めてきたツケを自治体に押し付けるやり方、自治体の財政難に付け入って巨額の交付金で最終処分場に応募させるというやり方は許されません。核のごみをめぐる処分政策は転換するべきだ、このことを強く求めて、質問を終わります。