2021年4月21日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通じたテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「生活基盤の安定に向けた課題」について 参考人質疑
参院国民生活・経済に関する調査会は4月21日、「困難を抱える人々への対応(生活基盤の安定に向けた課題)」について参考人質疑を行い、日本共産党の岩渕友議員が質問に立ちました。
岩渕氏は養育費を公的に位置づける意味について質問。早稲田大学の棚村政行教授は、「子どもは未来を担う重要な宝だ」として、公的な支援の必要性を訴えました。
岩渕氏は、医科大学入試での女性への差別的取り扱い事例に触れ、背景を質問。日本女子大学現代女性キャリア研究所の大沢真知子特任研究員は「(見えない差別など)間接的な差別に対する法律が日本では非常に狭い」と指摘、「雇用機会均等法を強化して、差別がないように徹底する必要がある」と応じました。
また岩渕氏は、コロナ禍での若い世代の自殺増加について、子どもたち一人ひとりに向き合えるように教員や養護教諭を増やすことが必要だと主張。自殺対策支援センター・ライフリンクの清水康之代表は、「先生の負担を減らし教員を増やすことは、子どもが育つ環境づくりという意味で極めて重要だ」と答えました。
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2021年4月21日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通じたテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「生活基盤の安定に向けた課題」について 参考人質疑
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早稲田大学法学学術院教授・棚村政行参考人 意見陳述
○参考人(棚村政行君) ありがとうございます。本日は、参議院の国民生活・経済に関する調査会にお呼びいただきまして、本当に光栄に存じます。
私、民法を専攻しておりまして、特に家族法を研究をしております。その立場から、今日は子供の養育費の不払の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
時間限られていますので、資料としまして、一応簡単に用意をさせていただきました。一つが養育費をめぐる問題で、私自身が、やはりこの点は改めたり検討しなきゃいけないというところを、ポイントを絞って御提案させていただきたいと思います。ちょっと声がかれていますので、済みません、聞き取りにくいかもしれませんが、それがレジュメのような資料になっております。それで、別添ということで、私自身が、養育費の取決めを促進し、履行をどうやって確実にするかという法案のようなものを少し、何というんですか、作成してみました。先生方の御参考になればということで、若干後で御説明をさせていただきたいと思います。
じゃ、早速お話をさせていただきます。
まず、養育費の不払の問題については、厚労省の二〇一六年の全国ひとり親世帯調査というのがございます。それを見てもお分かりだと思いますけど、取決めをしている母子世帯が四割ちょっとというようなことになっています。それから、受け取っている、養育費を受け取っているところが二四・三%というので、五年前より少し良くはなったんですけれども、かなり厳しい水準になっています。
今、一人親で、例えばしんぐるまざあず・ふぉーらむなんかの調査の結果を見ましても、それからひとり親の支援協会というような形のところの調査結果を見ても、コロナ禍でもってかなり厳しい、収入が減少したり、入ってこなくなるとか、それから、せっかくもらったひとり親の特別給付金みたいなものも電気、ガス、水道とかいろんな生活費で消えちゃったというのが多くなっています。要するに、どうにもならない状況が、更に厳しい状況増しているというのは先生方も一致するところだというふうに思っています。
私、民法の立場から、こういうふうに、一のところでは、そもそも養育費とか扶養料とかというものが民法、法律の中できちっと明確にされていないのがやはり今の日本の現状です。ここに書いてあるように、生活保持義務とか扶助義務とかって、先生方も法律の概念で分かりにくいかもしれませんけど、要するに、自分が例えばビーフステーキ食べていたら、子供や妻もやっぱり同じものを食べなきゃいけないというぐらい重い、自分と同程度の生活を守りましょうという重い義務になっています。それから、余力があればそれを振り向ければいいと、自分がおなかがいっぱいになったら余ったものを分ければいいというのは扶助義務という言い方をしています。
ただ、親子というのは、離れて暮らそうが離婚した後であろうが、やっぱり子供たちは親の助けが必要です。経済的にも非常に支援が必要ですけれども、それについてきちっと明文でもって定めているところは、何せ、明治民法というのは、当時はすばらしかったんですけれども、百二十年以上の前の規定が根本的なやはり下地になっています。その辺りのところをやっぱりきちっと、未成熟の子供を誰がやっぱり、お金の面だけではなくて、面倒を見ていくんだということが必要です。
それからもう一つ、同居している親と別居する親というんですかね、あるいは親権を取った親とそうでない親とかっていろんな分け方があるんですけれども、これも請求をするときにいろいろと根拠規定があります。別れた夫婦、別れても離婚前の夫婦として、婚姻費用の分担という形で子供の教育費、養育費取るというときもありますし、それから監護費用というんで、これは二〇一一年の民法の改正でようやく入った規定なんですけれども、そこのところでやはり扶養の、八百七十七条という親族一般の面倒見の扶養のところの規定、どれも使えなくはないんですけれども、やはりきちっとそこでの基準とかルールとか方法とかっていうのが定められていません。この辺りも、子供の生きる権利とか健やかに成長、発達する権利、それから教育を受ける権利、学習する権利とかっていろんなやっぱり子供の権利を実現をして、子供たちが本当に笑顔で、年寄りのために何か未来を背負わされるという、そういう話じゃなくて、むしろ生き生きとできるということへの、民法上もきちっとルール、規律、置いてほしいと。
それから三番目のところですけど、これも時間が余りないかもしれませんけれども、養育費については大分紛争があって、これは別居したときの生活費の請求、婚姻費用の請求もそうなんですけれども、非常に争いが多くなってきましたので、算定表っていう一応目安を示しましょうというのが裁判所で行われました。
ただ、これも二〇〇三年ということで、大分時間がたって、生活実態とか物価とか経済状況、こういうものを反映していないんじゃないかということですので、是非、先生方も含めまして、ほかの国は、要するに、裁判所が紛争解決のためにルールを、あるいは基準を示すんではなくて、内閣府とか関係する厚労省、文科省、それから経産省とか、要するにいろんなところが知恵を絞り合って、厚労省もそうですけれども、ガイドラインとか、そういう算定表とか、それから、今回提案するのは、やっぱり自動計算ツールみたいな形で、目安としてこれくらいあれば生きていける、それから文化的な最低限のものはもちろんできる、そして、できれば本当にゆとりを持って生活できる金額って幾らなのかということを先生方も含めてきちっと考えていただいて、それをある意味では全国で困っている人たちに対して示していくと。そうすると、紛争が起こっても、変えなきゃいけない事情があるかとか、それをやっぱり上げた方がいいのか減らした方がいいのかという議論も、家庭裁判所もやっぱり国民みんなの総意でもって決められたものだから払ってくださいとか言いやすくなると思うんですね。この辺りもきちっとやってほしいと。
それから、養育費でもめるのは、やっぱり幾ら払ったら妥当かという問題もあるんですけど、決めた後にやっぱり事情が変わってくるということは結構多いわけですね。再婚したとか、養子縁組をされたとか、一番大きいのは、今、事件では、やっぱりリストラされちゃったとか、お金が、給料が減らされちゃったと、それで変更してほしいというんだけど、変えてくれと言われている方もきついわけですよね。だから、その辺りのところも、どういう事情があれば変えられるんだということをやっぱり明確にしていく必要があります。
それから、この債務名義というところで、二のところで書かせていただきましたけれども、これもやっぱり、調停の調書とか審判とか、あるいは判決とか和解調書とか、こういう、それから公正証書というのが債務名義ということで、これがあれば強制執行ができますというものです。ただ、これについても、やはり先ほど言ったように取決めしているのが六割と。それから、父子世帯は必要もないという人もいるのかもしれませんけれども、八割近く取決めもしていないと。協議離婚が九〇%弱ですので、どんなふうに取決めをして、どんなふうに離婚した後の責任を負っているのかというのは分かりませんでした。
今、法務省で全国のウエブ調査を幾つかさせてもらって、法律以外のいろんな分野の先生とも協力して、統計データが出てました。それで、今後、ちょっといろいろとそういうデータに応じて、必要な制度、やるべきこと、明らかにしていきたいんですけれども、やっぱり身近な自治体で、離婚届だとかそういうものを配付したり受け付けたりする段階ですね、せっかく来たときに、やっぱりそういうことについての相談支援の体制ができるようにしてはどうかと。
それから、これ取決めの義務化というのは一方では重いことになるので、DVだとかいろんなことを抱えてもう早く別れたいという方にとっては負担になる可能性もあります。ただ、これについてはやっぱり少し考えなきゃいけない。
それから、養育費について、先ほど言いましたけれども、何らかの形でこの債務名義にするのを、裁判所か公証人か使わなければ駄目だということになると、結構皆さん敷居が高いんですよね。ですから、この辺りのところも少し検討してはどうかと。
特に、身近な自治体での支援というところは、ここに書いてありましたけれども、簡単に済ませますけれども、やっぱり相談支援体制、それから情報提供、それから親ガイダンスとか、こういうようなことについても少し教育、啓発みたいなことを、意識を少し変えてもらうとか、そんなことがやっぱり必要になってくる。
それから、協議離婚制度については、先ほども言いましたけれども、養育計画とか、それから親ガイダンスとかいろんなものをやりながら、お子さんのことについての取決めをうまく促進する、あるいは話合いができない人たちは、例外的に話合いをしなくても要するに決められる、あるいは家裁の方に誘導して早く解決できるとか、少し工夫が必要だと思います。
いずれにしても、ここに、ちょっと三ページのところはもう駆け足で行きますけれども、一番やっぱり大事なのは、今の調査結果を見ても、裁判所も弁護士さんも幾ら掛かるか分からないとか、敷居が高いことはもう間違いないんですよね。そうすると、むしろ行政とかそういうところが、きちっと養育費についての取決めとか、あるいは決まったことをちゃんと守らせるということで、専門部署みたいなものをやっぱり置いていってはどうなのかなというようなことをちょっと考えます。後でちょっとお話しします。
それから、そのほかの民事法の立場からすると、やっぱり別居ということが起こって、大体相談を見ると、問題が起こって、別居中の紛争というのが七割ぐらいかなり深刻なんですね。離婚した後の紛争というのも三割ぐらい深刻になっていくんですが、五年とか時間が少したってくるとまあ落ち着いてくるという傾向があります。そうすると、やっぱり法定別居制度みたいなものを少し検討して、別居している間の紛争の解決、あるいは社会的な手当てとか、それから公的給付との、私的な養育費とか債権との相互の関係を少し整理をした方がいいのかなと。そういう意味では、法定別居制度みたいなものは検討してはどうか。
それから、できる範囲のところなんですけど、やはり住所が、養育費相談支援センターとかいろんなところへ行きますと、やっぱり住所が分からない、それから、強制執行だとかいろんな手だて、どんな書類を集めたらいいか分からないとか、そういうかなり入口のところとかやり方の問題でかなり悩まれています。ですから、その辺りも非常に、今ある制度をもう少し工夫してはというのがこの提案です。
それから、履行勧告、履行命令制度ももうちょっと実効性を高める必要があると。
四のところで書いたのは、一番最後の方なんですけど、養育費の不払に対してどういうふうに日本は取り組んでいったらいいだろうかというときに、北欧の国々は、ある意味では、立替払制度というんで、子供の問題は社会や国で責任を負おうと。教育だって無償ですしって、手厚いんですね。ただ、あそこは、やっぱり国の規模が小さいのと、高福祉高負担というんで国民のコンセンサスがかなりできているところなので、社会保障の一環としてこの問題を解決しちゃいましょうということは比較的やりやすいと思うんですね。
ところが、アメリカとかイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、英米の国々ですと、基本的には個人や家族、これが取れるものはやはり是非取って、その取る取り方とか決め方を応援しましょうと。これはかなり強力にやりますので、居どころを探して取決めをさせて、決まったことを払わなければ刑務所に入れると、犯罪としてですね。それぐらい徹底しているわけです。
お隣の韓国は、実は二〇一五年までは養育費の取立て、受領率は日本より悪い一七%しかなかった。ところが、この問題は非常に深刻であると、一人親だけではなくて子供の貧困の問題を解決しないといけないというので、養育費履行管理院というのと、かなり英米型の強制徴収強化型というのを導入して、それでもつなぎで足りないときには一時的な養育費緊急支援サービスと、こういうのを導入しました。額は、残念ながら月二万円ぐらいですごい安いんですね。だけれども、日本なんかは、是非、一生懸命取ろうと思って頑張っても取れない人たちのために、立替払型か緊急支援型か分かりませんけれども、是非そういうものをつくってもらいたいと、こういうことです。
私の私案のところを簡単に説明します、もう二分しかありませんので。
先生方に、法律家なので、法律の条文を作るとか構想するのは結構できるんですが、ただ、やっぱり子供の問題は実はもう本当に最優先課題であって、今日出ているテーマ、全て非常に重要なテーマだと思いますけれども、これをやっぱり国としてもしっかりと実現していかなければいけないと。こういうことで、国の責務、地方公共団体の責務、それから父母も責務を負っていただいて、国民全体も負ってというので、ガイドラインを作ったり、あるいは、僕は養育費相談支援機構とかという独立行政法人を考えたんですけど、今度こども庁ができますので、是非、こども庁というところを通して縦割りの行政の弊害を横串を刺す、それから、独立行政法人みたいなところで、せっかく国がお金を用意して予算を付けるんですから、その配分をきちっとできるようにする、そして、ある意味では、養育費の問題だけではなくて、場合によっては面会交流とかお子さんの問題について、虐待とかいじめとか、そういうところも総合的にワンストップサービスでいろいろ応援ができるというようなことをつくってはどうかなということで、提案をさせていただきました。
これは、いろいろまだまだ足りないところいっぱいあると思いますけれども、お隣の韓国がこれだけ頑張って、今養育費の受給率は三五%に上がっています。運転免許とかパスポートの停止の制度も法律で入れました。さっき言ったのでは、裁判所じゃなくて養育費履行管理院でADRをやって、そこで合意を形成させて債務名義にしようと。ただ、大法院というか最高裁が韓国でも大反対して、それは通らなかったと。
ただ、今喫緊の課題を抱えていますので、まさに政治家の先生たちが声を上げて動いてくださると、もしかすると子供たちに本当に養育費が届いていく、あるいは、払えない人には国の方で責任を負っていくというシステムができればということで、済みません、時間超過したかもしれませんが、私の意見を述べさせていただきました。
ありがとうございます。
2021年4月21日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通じたテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「生活基盤の安定に向けた課題」について 参考人質疑
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日本女子大学 現代女性キャリア研究所特任研究員・大沢真知子参考人 意見陳述
○参考人(大沢真知子君) ありがとうございます。
国民生活・経済に関する調査会にお呼びいただきまして、ありがとうございます。
私の方にいただいた質問ですけれど、四つ質問にお答えしたいと思います。
まず一つは、リカレント教育を通じた就業支援の現状について少しお話ししたいと思います。その次が、それに対してどういう解決すべき課題があるのかということについてお答えし、そして次に、新型コロナウイルス、ちょっと話題が変わりますが、感染拡大によって女性労働者、どのような問題に直面しているのかお話しし、最後に、女性に対する職業教育訓練の機会拡大のための方策についてお話しすると、この四つのアウトラインに従ってお話を進めていきたいと思います。
ちょっとスライドがまだ準備されていないのですが、私の方から、まず、配付資料もございますので、それを見ながらお話をしていきたいと思います。(資料映写)
まず最初の点としては、もうリカレント教育課程の普及というのが日本にとって非常に重要であるという指摘が一つです。特に、社会人になってから学び直した人、そういう人がOECD諸国最低の水準になっていまして、日本で最近になって少しその割合が増えてきているというものの、非常に低い水準にとどまっている。他方、少子高齢化を考えると、やはり人生百年の中で学び直しをしながら自分のキャリアを形成していく時代になっていく中で、やはりリカレント教育が果たす役割というのは非常に重要になってきていると思っております。
次ですが、私たちの大学の研究所で、高学歴の女性たちのキャリアパターンというのがどういうふうになっているのかということを調べましたところ、かなり多様になっているということが分かりました。通常、女性は、まず新卒で、大卒の場合は正社員で働いて、結婚して辞めて、その後パートで戻ると、そういったライフサイクルでの女性の働き方を基に政策あるいは就労支援がされてきたわけですけれど、私たち、特に氷河期世代以降を見ますと、ここでいいます二番目、現在仕事に就いているがこれまでに一年未満の離職期間があった、つまり、かなり早いうちに正社員を辞めている女性がいるということなんですね。もちろん、仕事就いて一年以上離職している女性もいますが、そういった女性の多様性をもう少し見て支援をする必要があるというふうに思います。
これは、ちょっと図にしたものなんですけれど、ブルーが継続就業している女性、オレンジが転職型という、先ほど申しました一年未満の離職期間の後に再就職していると、これは多分雇用保険を使っていろいろな訓練を受けながら再就職をしている女性、この割合がかなり今高まっております。ですので、決して結婚した後に再就職をする女性だけではない、離職、転職を繰り返してキャリアを形成する女性たちが増えている。もう一つは、再就職の女性たち、やはり年齢が高くなると増えていく傾向があります。
こういった多様な女性たちと、プラス、元々一九九〇年代、大卒女性は正社員で働く割合高かったんですけれど、これがだんだん、氷河期世代以降、正社員ではなく非正社員で働く高学歴女性も増えてきています。その転換点がどこら辺だったのかというと、多分氷河期世代。それ以前のバブル崩壊以前の世代では、結婚、出産で辞める女性が非常に多い。これ、オレンジが結婚、出産で辞めた女性、そしてブルーが仕事関連で辞めた女性。そういった意味において、仕事に希望が持てない、自分の好きな仕事ではない仕事をしているという女性が辞めやすい傾向になっています。
また、そういった女性たちはキャリア志向も強いというようなことが分かっておりまして、ですので、リカレント教育課程のような、そういった教育を通じてスキル形成をしていく、あるいは非正規で入った女性がリカレント教育課程を通じて新しいキャリアを形成していく、そういう多様なニーズにリカレント教育課程が今応えようとしているところです。
私は、このリカレント教育課程、日本女子大学で二〇〇八年に導入されました。その当時にその導入過程でいろいろと一緒に仕事をしてきまして、そうはいっても、なかなか一旦離職した女性が就職するのは難しいだろう、そういう女性たちを採る企業は少ないんじゃないかというふうにおっしゃられる方が多かったんですが、しかし、少しずつ、何でしょう、そういったリカレント教育課程の修了生に期待する企業は増えています。ただ、課題があるということは後ほど申し上げたいと思います。
ちょっとここで、もう皆さんはよく御存じのことかもしれないのですけれど、高学歴の女性の離職理由の日米比較ということで、よく女性労働の話をすると、まあそうはいっても女性はやっぱり結婚、育児で辞めてしまうので使いにくいということをおっしゃる方が多いのですけれど、実際には、日本の女性の方が、育児を理由として辞めているわけではなくて、仕事関連で辞めているという。例えば、日本では六五%の高学歴女性が仕事への不満、あるいは四八%、行き詰まり感で辞めているのに対して、アメリカでは七四%が育児、三〇%が介護の理由で辞めているということで、今後、女性の継続就業を支えていくためにも、あるいはスキル形成を支えていくためにも、やはり女性にもっと期待するというか、仕事を与え、もっとチャレンジングな仕事を与え、キャリアが継続できるような仕事を与えていく、そういったことも非常に重要になっているということを申し上げたいと思います。
先ほど申しましたが、リカレント教育について申し上げますと、二〇〇七年に文科省の社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムに選定され、そして初めてリカレント教育課程が日本女子大に誕生いたしました。その後、二〇一五年には、厚労省の専門実践教育訓練講座と連携して、雇用保険の給付金の対象講座などにもなりまして、費用負担の面でも少し楽になった。ここら辺から受講生が増えてくるという傾向が見られるようになっております。二〇一六年からは、履修証明プログラムの修了が百二十時間から六十時間に短縮され、また、二〇一九年には、最初は七大学によるリカレント教育推進協議会が発足しました。現在は十一大学で教育推進協議会になっております。
ということで、当初、私どもの大学でリカレント教育課程が誕生したときには、これはうまくいかないのではないかということが言われたんですけれど、私たちも大丈夫かと思いましたが、予想以上に就職は決まっています。
しかし、やはり問題はまだございまして、こういったリカレント教育課程への認知度が低い、それから、非常に優秀な女性が入学してくるのですけれど、やはり企業は出産退職で辞めた女性に対しての偏見もあると思います。やはり、子供を優先して仕事を従としてしまうのではないかと。他方、女性たちは両方を充実させたいということで、必ずしもどちらかを選んでいるわけではない。そういったことについても、社会全体での偏見をなくしていくような取組というのを是非国全体でやっていただきたいというふうに思います。
そしてもう一つは、受講料負担の問題ですけれど、最近、ドイツでインターンシップの導入をして、これは大学生のケースですけれど、大学生が授業を受けながら同時にインターンシップをして、その間は有償であるという、そういうプログラムも導入されております。
これはリカレント教育課程でも福岡でそれが実践されているというふうに聞いておりますが、アメリカでもこういったインターンシッププログラムの拡大が進んでおります。こういったところを進めていくことでリカレント教育生への偏見を正していく、そして履修の費用を下げていくような、こういったこともリカレント教育を進めていく上では重要ではないかと思います。
あとは、この後でお話があるかもしれませんけれども、長時間労働の解消、これは一旦辞めた女性ではないですけれど、やっぱりそういった、リカレント教育課程では今年の六月から、必ずしも仕事を辞めた女性だけではなくて、現在働いている女性に対しても夜の講座を開いております。そういった講座に行くことでスキルのキャリアアップを図るということもできますので、そういった意味で、労働時間の管理、あるいはオンライン授業などを広げていくことも重要になっていくのかなというふうに思います。
以上が、リカレント教育課程について御質問いただいたことに対する私のお答えになっております。
もう一つは、新型コロナウイルス感染に伴って女性たちがどういう問題に直面しているのかという御質問でございました。
もう既に皆様方御承知のように、女性というよりは、むしろ非正規女性に非常に深刻な影響が出ているということは御存じだと思います。ちょっとこれからデータを示したいと思います。そして、テレワークというのは女性が仕事と家庭を両立しやすい働き方として期待されたわけですけれど、実際にはそれが実現されていない、そういった実態についてお話ししたいと思います。
今日は、私の専門ではないですけれど、テレワークを通じて、一方で家庭の関係が良くなったという回答者が三割ぐらいいるのと同時に、非常に家族間の関係が悪くなったという人が一割程度いるということで、コロナを通じて日本社会が持つ問題というのが、社会問題というのが今新たに浮かび上がってきた、そういうことにどう対応していったらいいのかということも考える必要があると思います。
これ、ちょっと時間が五十二分までなので飛ばしていきますが、そうですね、ちょっとこれは、女性と男性で企業規模別に、テレワークを実施した企業に勤めている男女別の比率なんですけれど、やはり大手企業ほどテレワークの推進が進んだということと、そういった大手企業において男女差が大きいということが分かりました。
また同時に、この男女差というのがどういう要因によって生じるのかというのを正規、非正規別に、男女別に見たものなんですが、結論から申しますと、男女差が生じている主な理由というのは、雇用形態の違い、そして、それから企業の業種、女性が多い業種に今回影響が非常に大きかったということが関連しています。そして、従業員規模という、この三つによって関連が明らかになっております。
こういったことを通じて一体何が分かったのかということですが、日本はやはり、正規、非正規の労働市場の二重構造論という、二重構造になっていて、その核の労働市場ではテレワークが導入され、そこでは男性が多いわけですが、特に女性の場合には、キャリアの進展がない、人的資本の賃金の見返りの少ない労働市場に女性が多くいるという、この問題というのが更に女性の貧困の問題、そして子供の貧困の問題に関わってくるわけですけれど、この二重労働市場の中での女性の存在、これをどういうふうに解決したらいいのかというのが今回のコロナ禍で非常に重要な問題として浮かび上がってきたように思います。
最後の、職業訓練機会についてどのように考えたらいいのかという、非常に難しい問題を投げかけていただいたように思います。
今回、改めて国の職業訓練制度を見ると、充実して、特に二〇一五年以降非常に充実して、雇用保険制度に加入していれば基礎講座や専門講座のいろいろな制度が受けられる、そして、雇用保険に受給していなければ求職者支援制度みたいなもので訓練が受けられるというところは非常に進化したと思う反面、やはり女性のその働き方というところでいうと、やはり子供を持ってトレーニングを受けて、そして働く、多様な働き方が本当にできているのかというのもありますし、それから、そういう制度を知らない人が多い。
実際に、ですから、その制度をつくることが大切なのと同時に、それを周知していき、必要な人にその制度を周知し、実際に一緒になってその人を助け、生活を支援していく、そういった、社会全体が、受援力といいますか、援助して、一緒になって、助けてと言っている人の声を聞いて、一緒に助けてもらえるようにその方法を考えていく、そういった機能というのがまだまだ日本の中にない。
ですので、職業訓練機会の拡大だけではなくて、そういった機会にどうやって必要な人がアクセスして自立して生きるようになるのか、そういったNPOの存在も含めて、社会全体でやはり貧困の問題、失業の問題についてもっともっと私たちが手を携えて問題を解決する必要があるというふうに思います。
もう最後になってしまったのですが、そういったもので、もちろん長時間労働の是正ということを申しましたが、もう一つ、今回のテーマではないんですけれど、社会保障制度の見直しとセーフティーネットの拡充、これは非常に重要な問題になっていて、この問題が解決しないと女性の非正規の問題は解決しないのではないかというふうに思っております。
私が準備した内容は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
2021年4月21日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通じたテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「生活基盤の安定に向けた課題」について 参考人質疑
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NPO法人 自殺対策支援センターライフリンク代表・清水康之参考人 意見陳述
○参考人(大沢真知子君) ありがとうございます。
国民生活・経済に関する調査会にお呼びいただきまして、ありがとうございます。
私の方にいただいた質問ですけれど、四つ質問にお答えしたいと思います。
まず一つは、リカレント教育を通じた就業支援の現状について少しお話ししたいと思います。その次が、それに対してどういう解決すべき課題があるのかということについてお答えし、そして次に、新型コロナウイルス、ちょっと話題が変わりますが、感染拡大によって女性労働者、どのような問題に直面しているのかお話しし、最後に、女性に対する職業教育訓練の機会拡大のための方策についてお話しすると、この四つのアウトラインに従ってお話を進めていきたいと思います。
ちょっとスライドがまだ準備されていないのですが、私の方から、まず、配付資料もございますので、それを見ながらお話をしていきたいと思います。(資料映写)
まず最初の点としては、もうリカレント教育課程の普及というのが日本にとって非常に重要であるという指摘が一つです。特に、社会人になってから学び直した人、そういう人がOECD諸国最低の水準になっていまして、日本で最近になって少しその割合が増えてきているというものの、非常に低い水準にとどまっている。他方、少子高齢化を考えると、やはり人生百年の中で学び直しをしながら自分のキャリアを形成していく時代になっていく中で、やはりリカレント教育が果たす役割というのは非常に重要になってきていると思っております。
次ですが、私たちの大学の研究所で、高学歴の女性たちのキャリアパターンというのがどういうふうになっているのかということを調べましたところ、かなり多様になっているということが分かりました。通常、女性は、まず新卒で、大卒の場合は正社員で働いて、結婚して辞めて、その後パートで戻ると、そういったライフサイクルでの女性の働き方を基に政策あるいは就労支援がされてきたわけですけれど、私たち、特に氷河期世代以降を見ますと、ここでいいます二番目、現在仕事に就いているがこれまでに一年未満の離職期間があった、つまり、かなり早いうちに正社員を辞めている女性がいるということなんですね。もちろん、仕事就いて一年以上離職している女性もいますが、そういった女性の多様性をもう少し見て支援をする必要があるというふうに思います。
これは、ちょっと図にしたものなんですけれど、ブルーが継続就業している女性、オレンジが転職型という、先ほど申しました一年未満の離職期間の後に再就職していると、これは多分雇用保険を使っていろいろな訓練を受けながら再就職をしている女性、この割合がかなり今高まっております。ですので、決して結婚した後に再就職をする女性だけではない、離職、転職を繰り返してキャリアを形成する女性たちが増えている。もう一つは、再就職の女性たち、やはり年齢が高くなると増えていく傾向があります。
こういった多様な女性たちと、プラス、元々一九九〇年代、大卒女性は正社員で働く割合高かったんですけれど、これがだんだん、氷河期世代以降、正社員ではなく非正社員で働く高学歴女性も増えてきています。その転換点がどこら辺だったのかというと、多分氷河期世代。それ以前のバブル崩壊以前の世代では、結婚、出産で辞める女性が非常に多い。これ、オレンジが結婚、出産で辞めた女性、そしてブルーが仕事関連で辞めた女性。そういった意味において、仕事に希望が持てない、自分の好きな仕事ではない仕事をしているという女性が辞めやすい傾向になっています。
また、そういった女性たちはキャリア志向も強いというようなことが分かっておりまして、ですので、リカレント教育課程のような、そういった教育を通じてスキル形成をしていく、あるいは非正規で入った女性がリカレント教育課程を通じて新しいキャリアを形成していく、そういう多様なニーズにリカレント教育課程が今応えようとしているところです。
私は、このリカレント教育課程、日本女子大学で二〇〇八年に導入されました。その当時にその導入過程でいろいろと一緒に仕事をしてきまして、そうはいっても、なかなか一旦離職した女性が就職するのは難しいだろう、そういう女性たちを採る企業は少ないんじゃないかというふうにおっしゃられる方が多かったんですが、しかし、少しずつ、何でしょう、そういったリカレント教育課程の修了生に期待する企業は増えています。ただ、課題があるということは後ほど申し上げたいと思います。
ちょっとここで、もう皆さんはよく御存じのことかもしれないのですけれど、高学歴の女性の離職理由の日米比較ということで、よく女性労働の話をすると、まあそうはいっても女性はやっぱり結婚、育児で辞めてしまうので使いにくいということをおっしゃる方が多いのですけれど、実際には、日本の女性の方が、育児を理由として辞めているわけではなくて、仕事関連で辞めているという。例えば、日本では六五%の高学歴女性が仕事への不満、あるいは四八%、行き詰まり感で辞めているのに対して、アメリカでは七四%が育児、三〇%が介護の理由で辞めているということで、今後、女性の継続就業を支えていくためにも、あるいはスキル形成を支えていくためにも、やはり女性にもっと期待するというか、仕事を与え、もっとチャレンジングな仕事を与え、キャリアが継続できるような仕事を与えていく、そういったことも非常に重要になっているということを申し上げたいと思います。
先ほど申しましたが、リカレント教育について申し上げますと、二〇〇七年に文科省の社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムに選定され、そして初めてリカレント教育課程が日本女子大に誕生いたしました。その後、二〇一五年には、厚労省の専門実践教育訓練講座と連携して、雇用保険の給付金の対象講座などにもなりまして、費用負担の面でも少し楽になった。ここら辺から受講生が増えてくるという傾向が見られるようになっております。二〇一六年からは、履修証明プログラムの修了が百二十時間から六十時間に短縮され、また、二〇一九年には、最初は七大学によるリカレント教育推進協議会が発足しました。現在は十一大学で教育推進協議会になっております。
ということで、当初、私どもの大学でリカレント教育課程が誕生したときには、これはうまくいかないのではないかということが言われたんですけれど、私たちも大丈夫かと思いましたが、予想以上に就職は決まっています。
しかし、やはり問題はまだございまして、こういったリカレント教育課程への認知度が低い、それから、非常に優秀な女性が入学してくるのですけれど、やはり企業は出産退職で辞めた女性に対しての偏見もあると思います。やはり、子供を優先して仕事を従としてしまうのではないかと。他方、女性たちは両方を充実させたいということで、必ずしもどちらかを選んでいるわけではない。そういったことについても、社会全体での偏見をなくしていくような取組というのを是非国全体でやっていただきたいというふうに思います。
そしてもう一つは、受講料負担の問題ですけれど、最近、ドイツでインターンシップの導入をして、これは大学生のケースですけれど、大学生が授業を受けながら同時にインターンシップをして、その間は有償であるという、そういうプログラムも導入されております。
これはリカレント教育課程でも福岡でそれが実践されているというふうに聞いておりますが、アメリカでもこういったインターンシッププログラムの拡大が進んでおります。こういったところを進めていくことでリカレント教育生への偏見を正していく、そして履修の費用を下げていくような、こういったこともリカレント教育を進めていく上では重要ではないかと思います。
あとは、この後でお話があるかもしれませんけれども、長時間労働の解消、これは一旦辞めた女性ではないですけれど、やっぱりそういった、リカレント教育課程では今年の六月から、必ずしも仕事を辞めた女性だけではなくて、現在働いている女性に対しても夜の講座を開いております。そういった講座に行くことでスキルのキャリアアップを図るということもできますので、そういった意味で、労働時間の管理、あるいはオンライン授業などを広げていくことも重要になっていくのかなというふうに思います。
以上が、リカレント教育課程について御質問いただいたことに対する私のお答えになっております。
もう一つは、新型コロナウイルス感染に伴って女性たちがどういう問題に直面しているのかという御質問でございました。
もう既に皆様方御承知のように、女性というよりは、むしろ非正規女性に非常に深刻な影響が出ているということは御存じだと思います。ちょっとこれからデータを示したいと思います。そして、テレワークというのは女性が仕事と家庭を両立しやすい働き方として期待されたわけですけれど、実際にはそれが実現されていない、そういった実態についてお話ししたいと思います。
今日は、私の専門ではないですけれど、テレワークを通じて、一方で家庭の関係が良くなったという回答者が三割ぐらいいるのと同時に、非常に家族間の関係が悪くなったという人が一割程度いるということで、コロナを通じて日本社会が持つ問題というのが、社会問題というのが今新たに浮かび上がってきた、そういうことにどう対応していったらいいのかということも考える必要があると思います。
これ、ちょっと時間が五十二分までなので飛ばしていきますが、そうですね、ちょっとこれは、女性と男性で企業規模別に、テレワークを実施した企業に勤めている男女別の比率なんですけれど、やはり大手企業ほどテレワークの推進が進んだということと、そういった大手企業において男女差が大きいということが分かりました。
また同時に、この男女差というのがどういう要因によって生じるのかというのを正規、非正規別に、男女別に見たものなんですが、結論から申しますと、男女差が生じている主な理由というのは、雇用形態の違い、そして、それから企業の業種、女性が多い業種に今回影響が非常に大きかったということが関連しています。そして、従業員規模という、この三つによって関連が明らかになっております。
こういったことを通じて一体何が分かったのかということですが、日本はやはり、正規、非正規の労働市場の二重構造論という、二重構造になっていて、その核の労働市場ではテレワークが導入され、そこでは男性が多いわけですが、特に女性の場合には、キャリアの進展がない、人的資本の賃金の見返りの少ない労働市場に女性が多くいるという、この問題というのが更に女性の貧困の問題、そして子供の貧困の問題に関わってくるわけですけれど、この二重労働市場の中での女性の存在、これをどういうふうに解決したらいいのかというのが今回のコロナ禍で非常に重要な問題として浮かび上がってきたように思います。
最後の、職業訓練機会についてどのように考えたらいいのかという、非常に難しい問題を投げかけていただいたように思います。
今回、改めて国の職業訓練制度を見ると、充実して、特に二〇一五年以降非常に充実して、雇用保険制度に加入していれば基礎講座や専門講座のいろいろな制度が受けられる、そして、雇用保険に受給していなければ求職者支援制度みたいなもので訓練が受けられるというところは非常に進化したと思う反面、やはり女性のその働き方というところでいうと、やはり子供を持ってトレーニングを受けて、そして働く、多様な働き方が本当にできているのかというのもありますし、それから、そういう制度を知らない人が多い。
実際に、ですから、その制度をつくることが大切なのと同時に、それを周知していき、必要な人にその制度を周知し、実際に一緒になってその人を助け、生活を支援していく、そういった、社会全体が、受援力といいますか、援助して、一緒になって、助けてと言っている人の声を聞いて、一緒に助けてもらえるようにその方法を考えていく、そういった機能というのがまだまだ日本の中にない。
ですので、職業訓練機会の拡大だけではなくて、そういった機会にどうやって必要な人がアクセスして自立して生きるようになるのか、そういったNPOの存在も含めて、社会全体でやはり貧困の問題、失業の問題についてもっともっと私たちが手を携えて問題を解決する必要があるというふうに思います。
もう最後になってしまったのですが、そういったもので、もちろん長時間労働の是正ということを申しましたが、もう一つ、今回のテーマではないんですけれど、社会保障制度の見直しとセーフティーネットの拡充、これは非常に重要な問題になっていて、この問題が解決しないと女性の非正規の問題は解決しないのではないかというふうに思っております。
私が準備した内容は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
2021年4月21日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通じたテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「生活基盤の安定に向けた課題」について 参考人質疑
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
三人の参考人の皆様、今日は貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございます。
まず、棚村参考人にお伺いをするんですけれども、養育費の問題ということで、これまで家族の問題であるとか私的な問題というふうにされてきていたと思うんですね。その取決めの内容やその回収も親の責任だというふうにされてきていたわけなんですけれども、今日も御紹介あったんですけど、例えばスウェーデンとかフランスなんかでは国による養育費の立替払制度が設けられているということで、公的な制度になっているわけですよね。
この養育費の問題を、私的なものということではなくて公的なものだということを位置付けるということが子供たちにとってどういう意味を持つのかということをまずはお聞かせいただきたいということと、あと、先ほど参考人も触れておられたんですけれども、選択的夫婦別姓の問題で、今日のテーマにも関わるということでお話をされていました。今、実現を求める声高まっているわけなんですけれども、実現の必要性について、先ほども触れられていたんですけれども、改めて簡単に教えていただければと思います。
○参考人(棚村政行君) ありがとうございました。貴重な質問をいただきましてありがとうございます。
やはり今までは、特に戦前、家制度というのがあって、家族ががっちり固まっていれば日本の社会は、近代化もそうですし、発展すると、こういうような考え方がやっぱりかなり強かったと思います。ところが、家族非常に重要なんですけれども、大きな家族ではなくなって、核家族、小家族ということで弱くなっていきました。小川委員からもお話あったとおりですね。
そういう中で、あくまでも家族の問題って、やっぱり離婚もそうですし、私的な問題で、公が入るべきでないという考え方がやっぱりかなり強いと思います。今でもやっぱりそういう意識が強くて、子供も家族も何か問題あったら、何というんですかね、自分の家族を恨めばいいんじゃないか、しようがないと、そういう意識が強かったのが、だんだん、公的な介入というんですかね、家族ができないことについては、やはり弱者を守っていくとか子供たちを守るということで、国や社会がやらなければいけないという意識は大分強くなってきたと思います。だから、ある意味では私的な債権とか私的な関係ということで自己責任というふうにしていたのが、DVとかやっぱり暴力、いじめ、こういうのが深刻であると、自殺もそうですけど、命に関わると。
で、そういう人たちを救い出すために、公というか、そういうのが入っていかなければいけないということは国際的なやっぱり流れになっていますので、私が提案した法案でも、やはり私的な債権としてそれを譲り受けて国がやるとかというんじゃなくて、取れない場合は国が本当に、何というんですか、税金から出すぐらいな覚悟で、取れる人からは、逃げ回っている人からは取る、厳しく制裁も場合によっては考えるということで、おっしゃるとおり、やっぱり私的なものから公的なものへとやっぱり転換をする必要があって、そのためには、子どもの権利条約にあるように、大人とは違う別の人格として、子供たちは本当に未来を担う重要な宝なんだと皆さんおっしゃっていますから、その宝に対しては、親が、家族がやれないときは社会全体でやるんだという、そういうコンセンサスを得て、法的にもそういう位置付けにしていただいて、今まさに民法の改正の議論をさせていただいていますけど、そういうような応援があると議論もすごく進むかなと、そういうふうに思っております。
それから、もう一点はあれでしたよね、選択的夫婦別姓です。これはちょっと今日のテーマとは違うと思いますけれども、ただ、さっき言った共通だなというふうに思ったのは、たかが名前、されど名前ということで、私の本当に身近なところでも女性が活躍して社会でどんどん働いて、今、結婚しても仕事を皆さん辞めずに続けています。そういう、社会の中では、一々どっちかが名前を変えなきゃいけないということで、例えばサイボウズの青野社長みたいに、自分が変えるということを選択して裁判を起こしている男性もありますけど、私たちの調査でも、結局、選択的夫婦別姓ができなかったので、事実婚とか結婚を諦めた男性が結構いらっしゃいます。
そして、私たちの調査で、四十七都道府県調べましたけど、賛成が七〇%以上、それから反対は一四・四%になったんですけれども、これは世代も全部合わせて。ただ、地域差があります。これは、申し訳ないんですけど、沖縄県がトップで、それから青森とか和歌山が非常に、何というんですかね、反対が少ないんですね、賛成が多くて。ところが、愛媛とか、済みません、関わったら、山口とか新潟、済みませんですね、それを調べていったら、結局、四十代、五十代の働き盛りの中心の人たちが反対が物すごく多いんです。
ということは、女にやらせてもって、済みません、森発言みたいなことが、建前は男女共同参画とか女性活躍とか言いながら、本音はやっぱり、女性が出ると会議が長くなるとか、もちろん失礼な話ですけれども、何か男性が頑張らなきゃという気持ちが強過ぎじゃないかと思うぐらい、議員さんの割合とか、それから女性社長率も、沖縄県、日本一なんですね。
結局、女性が元気で、大きな声を上げて頑張っているところは、今言った選択的夫婦別姓とかいろんなことについて、子育て両立支援とかいろんなことも割合と進んでいるんですね。ところが、男がやっぱり中心だと、男じゃなきゃという何か思っておられるところは、残念ながら僕も昔そうだったんですけど、とっても無理し過ぎて、自殺したり、いろいろすることが起こるんだと思う。むしろ、もう自分もできないと、もう無理だと、助けてよと言えるような社会になる方がいいと思うと、多様性とか男女共同参画とか女性活躍って、もしかすると、女性の問題というよりは、私たち男にとっても、男性にとっても、そういう社会になると楽になってくるのかな、もっとざっくばらんに弱音を吐けるのかなと、そんなことを思って支持させていただいている次第です。済みません。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、大沢参考人にお伺いをします。
女性が初期のキャリア形成の段階でその差別的な慣行が維持されてきたというふうに、実は事前にもらった資料の中にそういうふうに書かれていたんですね。ところが、この間、例えば医科大学の入試で女性の受験生の差別的な取扱いが行われていて、そのことによって医師国家試験の合格者数の女性の比率が低い水準になって、それがずうっと横ばいで推移しているということで、そういった実態が明らかになってきました。
働くその前の段階でこうした差別的なことが行われているという実態をどのように見ていらっしゃるかということと、こうしたことが起こる背景にどんなことがあるというふうにお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(大沢真知子君) ありがとうございます。
びっくりしたわけではないですが、そういうことがあったということが報道されたことで、より透明性が高くなったということと同時に、やはりその背後に女性が出産後継続するのが難しいというような、そういったロジックが使われたように思います。
そういった、ある意味で、私たちのこれからを考えると、そういう誰でもが両立できる仕組みを整えて、誰でもが活躍できる社会がつくられるべきなのに、何か逆の方向に、差別をすることでより自分たちの首を絞めているというか、そういうことが起きていたというふうに思います。
それ多分氷山の一角で、いろいろなところで、今回のコロナ禍でも、育児休業制度を取った後に職場に戻ろうとしたら仕事がなかったというようなこと、それもやはりケアをしている、子供を育てている人たちに非常に、何でしょう、ペナルティーを科すというか、子供を育てるということが日本にとってのペナルティーになっているんですね。
少子化対策の基本は何かというと、そのペナルティーがないという、どちらかを選ばせなきゃいけない社会じゃない、そういう社会をつくることが国の責任であり、社会の責任であり、それができて少子化対策として出生率が上がるという、そういう議論というのがこの二〇〇〇年代になってエビデンスを伴って見えてきたと思うんですが、それを当てはめると、日本はやはり女性にどちらかを選ばせている、両方を選ぶというのが本当に難しい、そこが今見えてきたんじゃないかなと思います。
ですので、だからしようがないねじゃなくて、やっぱりそれが両立できなければもうこれ以上進めないので、やはりそういった差別をなくすということをすべきですし、例えば間接的な、エビデンスでそういうことが、差別がなければ平等に合格率が決まるはずなのに女性が例えば少ない例とか、そういうことに対して間接的な差別をもっと厳しく取り締まるような均等法を考えるべきだと思います。
ですので、別にこういう差別があるからいけないよという話じゃなくて、何らか見えない差別があるがゆえに結果的に女性が活躍できないような社会がある、そういった間接的な差別を取り締まる動きが世界的にできているにもかかわらず、日本はその間接的差別に対する法律が非常に狭く議論されて、全くないわけではないですけど、ほとんどの場合にはスルーされて、育児をしている女性たちが差別されやすい事情があると思います。ですので、均等法をもう一度強化して、そういう差別がないように徹底する必要があるというふうに考えております。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございます。
最後に清水参考人にお伺いをするんですけれども、コロナ禍も加わって、十代、若い世代の自殺が増えているということで、今日、参考人からも非常に深刻な声や実態について御紹介をいただいたということですけれども、こうした実態を受けて、現場の先生方から、やっぱり一人一人の子供たちの声に向き合うことができるように先生を増やしてほしいということや、養護教員の先生を一人じゃなくて複数人配置するようなことが必要だというような訴えをいただいているんですけれども、こうしたことについてどのようにお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(清水康之君) 先生が子供としっかり向き合えるような体制をつくるというのはもう極めて重要なことだと思います。先生がやる気になればなるほどバーンアウトしてしまいかねないような状況の中で、クラスの中で一人自殺リスク抱えた子がいれば、もうその子への支援だけでも大変な中で、ほかの子たちについても、でも当然ながら育ちを支えていかなければならないと。これは、やはり学校の先生の負担をもっと減らす、その意味で、先生を増やす、あるいは養護教諭を増やすというようなことは、私は極めて子供が育つ環境づくりという意味で非常に重要だというふうに思います。
加えて、先ほど少し御紹介させていただきましたが、学校がいつでも助けを求めることができるような、アドバイスを求めることができるような、そういう専門家のチームを少なくとも都道府県に一つずつぐらいはつくって、そこと現場の先生方、子供たちと接する大人たちが連携をしながら子供を支えられるような状況をつくらなければならないんじゃないかというふうに思っています。
○岩渕友君 ありがとうございました。
三人の参考人の皆さんから本当に貴重な御意見をいただきました。
以上で終わります。ありがとうございます。