2023年6月13日(火) 参議院 経済産業委員会「信用保険法及び商工中金法改正案」
テーマ:中小企業のための商工中金、民営化やめよ(法案への討論あり)
(議事録は後日更新いたします)
経営者保証解除 要件緩和さらに 信用保険法改正
日本共産党の岩渕友議員は13日の参院経済産業委員会で、信用保険法の改正による経営者保証解除の範囲拡大は全商連や中小企業家同友会などの中小企業団体が長年要望してきたもので、「一歩前進」だと評価し、解除要件のさらなる緩和を求めました。
経営者保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が連帯保証人となる慣行。企業が倒産し、経営者が返済を迫られ、自己破産する事例の増加が問題になっていました。
改正案は、省令で見込む解除の要件として、法人から代表者への貸し付け等がないこと、直近の決算で債務超過していないことなどの全てを満たす必要があるとしています。一方、中小企業庁は、要件の全てが当てはまる事業者数を「把握していない」と答弁しています。
2020年度の中企庁の調査によると、経営者保証解除を望む企業は8割にのぼります。岩渕氏は「要件が厳しいので多くの事業者が対象にならない」との声を示し、「実態と合っていない」と指摘。実態に即した柔軟な運用を求めました。
西村康稔経産相は「できるだけ幅広く使っていただけるように、(要件の)不断の見直しは行っていきたい」と答弁しました。
完全民営化は撤回を 商工中金法改定
商工組合中央金庫(商工中金)法改定案が14日の参院本会議で、賛成多数で可決・成立しました。共産党は反対しました。
日本共産党の岩渕友議員は13日の参院経済産業委員会で、中小企業を支援する政府系金融機関の商工中金を完全民営化する方針の撤回を迫りました。
改定案は、現在政府が保有している約1016億円もの商工中金株式の全部を「2年以内のできる限り速やかに」売却するとしています。さらに、全国中小企業団体中央会など中小企業団体に株主資格を緩和し、同法廃止で完全民営化へと進むのが政府の?針です。
岩渕氏は、株式売却の期限を、これまでは「5年から7年後」や「できる限り早期に」としていたにもかかわらず、法案の前提となる検討会で中企庁が急に2年の売却
年限を提案し、議論もなかったと指摘。「中企庁内での議論の過程が分からない」と述べ、記録文書などの提出を求めました。
岩渕氏は、期限ありきでの売却は株価の下落を招き「国有財産を毀損(きそん)することになる」と主張し、投資ファンドや外資が株主となる危険性を指摘。西村康稔経産相は「本来果たすべき役割が果たせなくなることのないよう、政府としてしっかり監督していく」と答えました。
質問資料1 全商連婦人部協議会による「全国業者婦人実態調査2022」より 【PDF版】/【PNG版】
質問資料2 「所得税法第56条廃止を求める意見書」を採択した北海道内自治体(2022年11月末時点、北商連婦人部協議会しらべ) 【PDF版】/【PNG版】
質問資料3 商工中金の民営化に関するこれまでの流れ 【PDF版】/【PNG版】
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2023年6月13日(火) 参議院 経済産業委員会
「信用保険法及び商工中金法改正案」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
初めに、男女共同参画に関わって質問をします。
各国の男女格差を示すジェンダーギャップ指数を見ると、日本が146か国中116位と極めて低い順位です。政府が示した女性版骨太の方針では、東証プライム市場に上場する企業の女性役員の比率を2030年までに30%以上、J-Startupにおいて女性起業家の割合を20%にするとしています。これは当然だと思うんですね。
同時に、地域の経済を支えている中小・小規模事業者の女性経営者や女性従業員の方々の地位向上、これは切実な課題です。
全商連婦人部協議会が昨年の6月から7月に行った実態調査というものがあるんですけれども、全国から8000人分を超える回答が寄せられて、その結果をまとめたものが今年の3月に公表されています。(資料提示)これがそのまとめたものなんですけれども、事業者の方々がどんな実態の中で営業をされているのか、是非大臣や長官にも知っていただきたいということで、委員会が終わったらこの冊子お渡しをしたいと思いますので、是非御覧いただきたいなというふうに思いますし、経産省として自営業者の皆さんや小規模事業者の皆さんの実態を是非調査していただきたいと思います。
それで、資料の1を御覧いただきたいんです。これは、今紹介した実態調査の中から幾つか抜粋をしたものなんですけれども、コロナ禍での売上げ状況は、2018年と2021年比べてみますと、横ばいの割合が落ち込んで、減少した割合が増えています。営業所得だけでは生活できないという回答が半数近くに上っているんですね。自営業の所得水準が低迷をしている下で、25%の自営業の女性が収入確保のために家業以外で働いているという実態です。
そこで大臣に伺うんですが、これ、非常に深刻な実態ではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) まず、是非、意欲ある女性は是非ともいろんな機会で活躍をしていただきたいと思いますし、大企業、中小企業、小規模事業者問わず、是非、そうした意欲、能力を生かす機会を大いにつくっていかなければならないというふうに思いますし、そのことが日本の経済全体の成長につながるというふうに私は確信をしております。
そうした中で、特に小規模事業者においては家族経営も多いですから、夫婦一緒に頑張っている中小企業の皆さん、小規模零細の皆さんも多いですし、お子さんも含めて大変な苦労をしておられる、特にコロナ禍で厳しい思い、さらには今の物価高、いろんなエネルギー高、そして人手不足の中で厳しい思いをしておられると思います。しっかりと一生懸命頑張っておられるそうした皆さんの応援をしていきたいという思いであります。
もう御案内のとおり、ゼロゼロ融資の返済期限も迎えますけれども、その返済猶予などの取組を金融機関にもお願いをしておりますし、要請を何度となくしてきておりますし、また、借換え保証制度も1月から実施をしております。資金繰り支援に万全を期していきたいと思いますし、何より取引の適正化、価格転嫁ですね、これを大企業から、親事業者からしっかりとそれが事業者に受け入れてもらえるように、今も30万社全国で調査も行っておりますし、引き続き大企業にはこのことを強く要請をしていきたいというふうに思っております。
また、小規模な事業者の方々がよく利用される持続化補助金であるとか、あるいはIT補助金であるとか、こうしたものでちょっとした工夫とかですね、ちょっとした何か資金の必要なときにそれを応援して営業につなげていく、そういった取組を引き続きしっかりと後押しをしていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 暮らしと商売を守るやっぱり施策が必要だということです。
この女性を始めとする家族従事者の働き分を経費として認めない所得税法56条の廃止が重要です。ジェンダー差別の根幹に関わる問題でもあり、廃止に向けた運動が広がっています。資料の1の右下にあるように、自家労賃が認められていないのは先進国ではまれな例というふうになっているんですね。
それで、資料の2を御覧いただきたいんですけれども、所得税法56条の廃止を求める意見書が採択された地方議会は全国で566に上っています。この資料2は北商連婦人部協議会の皆さんが調べたもので、北海道では、179ある自治体のうち、今はこの調査のときよりちょっと更に進んで102の自治体が採択をしているということなんです。この声に応えるべきだということを求めておきたいと思います。
次に、信用保険法に関わって質問をします。
法案では、経営者保証の解除の要件を定めて、解除の範囲を広げるということです。これは、中小企業家同友会全国協議会や全国商工団体連合会といった中小事業者の団体、そして我が党も求めてきたことであって、一歩前進だというふうに考えています。
けれども、要件の一つとされる法人から代表者への貸付け等がないことという要件を満たす事業者は、昨年3月に公表された帝国データバンクの中小企業実態調査によれば約半数です。直近決算期において債務超過でないこと、又は直近二期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないことという要件を満たすのは厳しいと、こうした声も上がっているんですね。これでは小さい事業者の多くが経営者保証を外すことができないということになります。
そこで長官に伺うんですけれども、中小企業庁は、どれだけの事業者が全ての要件を満たすのか、それを把握しているでしょうか。
○政府参考人(角野然生君) お答えいたします。
中小企業の4割が利用しております信用保証制度では、依然として7割が経営者保証を徴求している、こういう現状を変えるために、0.25%の保証料を上乗せし、経営規律等に関する一定の要件を満たした経営者からは保証を徴求できないようにする制度を整備すべく、今回、改正法案を国会に提出させていただいたところでございます。
その一定の要件としては、今委員御指摘のとおりでございますが、法人から代表者への貸付けがないこと、そして財務書類を定期的に金融機関に提出していること、そして直近決算期において債務超過ではないこと、又は直近二期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないことのいずれかを満たしていることといった項目を省令において定めることを想定してございます。
その上で、個別の要件で見ますと、法人から代表者への貸付けなどがないという要件につきましては、今御指摘のとおり、約半数の事業者が会社から経営者に対しての貸付け等はないという回答がアンケート調査でございます。
もう一つの要件、財務状況に関する要件でございますが、こちらは、全国の信用保証協会や多くの民間金融機関から取引先のデータを提供されている一般社団法人CRD協会のデータによれば、約9割の事業者が要件を満たしているということでございまして、それなりの規模の中小企業、全てこれは把握、どの要件が全てはまっているかというのは把握はしてございませんが、今申し上げたことを照らし合わせれば、それなりの規模の中小企業がターゲットとなっているのではないかなというふうに考えております。
○岩渕友君 全ての要件を満たすという事業者がどれだけかというのは把握していないということでしたよね。
2020年度の経営者保証に関するガイドライン、周知・普及事業の事業報告書によれば、経営者保証の解除を希望する方は8割に上っていると。で、こうした下でやっぱり実態把握することが必要だということです。
大臣に伺うんですが、この要件が厳しいので多くの事業者が対象とならないんじゃないかという声も上がっているんですよね。要件が実態と合っていないんじゃないかと思うんです。更なる要件緩和を行うべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 今長官から答弁をさせていただきましたけれども、一定の私ども、調査などに基づいて検討を重ねて今このような形で提案をさせていただいております。
基本的には、幅広い中小企業の皆さんに活用いただけるものというふうに思っておりますけれども、まあ実際に実態がどういうふうになっていくのかなども踏まえて、いろんな形でいろんな場面場面で活用していただけるように、できるだけ幅広く使っていただけるようにしたいとは思っていますので、そういう意味で、状況も見ながら、また不断のそうした見直しは行っていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 中小企業団体からの要望を受けてせっかく実現するということなので、多くの事業者が対象にならないというのはお互いにとっても本意じゃないというふうに思うんですね。なので、実態に即して柔軟な運用を行うべきだということを求めておきたいと思います。
次に、商工中金についてお聞きをします。
商工中金は預金、決済、貸付けのフルバンクの機能を持つ唯一の政府系金融機関です。資本金のうち約46%を占める1016億円を政府が出資をしています。法案では、政府が保有する株式を2年以内にできるだけ速やかに完全に売却するとしています。
資料の3を御覧いただきたいんですけれども、この株式の処分について、2006年5月に成立した行政改革推進法では、おおむね5年から7年後を目途とするとしていました。その後、リーマン・ショックを受けて、2009年の商工中金法改定で、完全民営化の時期を2012年4月から5年から7年後として、さらに、東日本大震災の対応のために、2011年の法改定で、2015年4月から5から7年後として、2015年の改定ではできる限り早期にとしています。
新たなビジネスモデルを踏まえた商工中金の在り方検討会では、第4回で、平時に実施すべきとの考え方もあると。そして、第5回では、今実行すべきとの意見があるとするその一方で、金融団体からはタイミングについては慎重な判断が必要、こうした意見が出されたというふうにあるんですね。ところが、第6回では、制度改正から2年以内という期限が急に示されてくるんですよ。
本法案で、政府が持つ株式を全て売却する期限をこの2年以内とした根拠は何なのかと。どこで議論をされたのでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(角野然生君) お答えいたします。
今回の改革でございますが、不正事案発覚後の2017年から5年以上掛けて経営改革を進める中でも政府内で議論し、全国中小企業団体中央会などの中小企業側からの要望も踏まえて改革案を形にしたものでございます。
民間ゼロゼロ融資の返済が本格化し、今後、中小企業の事業再生支援のニーズが高まると見込まれる今だからこそ、商工中金の事業再生支援などの機能強化を図る改革が必要だと、そういうことでございます。
政府保有株式の全部処分を今行うべきだというふうなことは、先ほど来答弁で申し上げたとおりでございますが、具体的にその2年以内、どこでという御質問について少し具体的に申し上げますと、この2年以内という年数でございますが、商工中金改革を議論した検討会の第4回会合、これ1月13日において、多くの委員がタイミングは今だと、こういう発言がある中、関根社長からも、環境が厳しく変化が激しい今だからこそ変革を急ぐべきだと考えている、先送りすることは衰退につながり、決して中小企業のためにならない、こういった発言がございました。
続いて、第5回検討会、これ1月24日でございますが、そういった中で、政府保有株式の全部売却を含む改革を今実行すべきとの考えが委員の共通認識になったところでございます。
こういった中で、政府保有株式の売却方法の決定や手続などに一定期間が必要となるため、日本アルコール産業株式会社などの過去の非上場株式の売却に要した期間、こういったことも参考にしながら、第6回の検討会におきまして、事務局より2年以内という期限を提示し、委員の方々から特段の御意見なく御賛同いただき、設定したものでございます。
○岩渕友君 事務局からの提案ということなんですけれども、これ事務局の中ではどんな議論したのかということだと思うんですよ。そもそもは5年から7年と言っていて、今と言っていたのが2週間後には2年以内となるわけなので、ちょっとその議論の過程がよく分からないんですよね。
なので、こうした、何で2年以内としたのか、その経過を明らかにする、事務局で議論されたというのであれば、そのときのメモなど分かるものを委員会に提出していただきたいと思います。
○委員長(吉川沙織君) ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議いたします。
○岩渕友君 この2年以内に1016億円もの株が売却できるのかということなんですね。
法案では、新たに全国中小企業団体中央会や日本商工会議所や全国商工会連合会などに株主資格を広げるというふうにしているんですけれども、これらの団体が株式を買うということなのでしょうか。
○政府参考人(角野然生君) お答えいたします。
全国中小企業団体中央会から中央会に株主資格を付与してほしいとの要望を受けていることを踏まえまして、改正法案が成立いたしましたら、中小企業のための金融機関という根幹を変えない範囲において株主構成の多様化を図る観点から、政府保有株式を処分するまでの間に株主資格の対象を広げる政令改正を行うことを検討してございます。その対象としましては、中小企業団体中央会、商工会議所、日本商工会議所、商工会、商工会連合会といった中小企業を支援する機関を想定しておりまして、こうした団体自身に株主資格を付与することを検討してございます。
○岩渕友君 ちょっと答え、あっ、そうか、買う、買えるということなんでしょうかね。
○政府参考人(角野然生君) 購入を促していきたいというふうに思っております。
○岩渕友君 これらの中小企業団体が、じゃ、その株主を引き受けるということがもう約束されているということなんでしょうか。
○政府参考人(角野然生君) お答えいたします。
約束しているというか、約束されているということでは決してございません。これは検討会でもございましたように、中央会などから購入したいという、こういう意欲が表明されたと、そういうことでございます。
○岩渕友君 全国中央会の当期純利益は約4000万円なんです。日商や全国連の財務諸表を見ても、余力は数億円程度にすぎないんですよね。意欲があると、意欲があっても意思があっても、2年で1016億円というのは非常に大きいわけですよね。中小企業団体に期限ありきで多額の株式を押し付けることになりかねないんじゃないかというふうに懸念持っています。
この株主資格をめぐって、先ほど紹介をした検討会では、株主資格制限を撤廃して、投資ファンドなどに株式が渡ると、中小企業へ融資スタンスが厳しくなる可能性があるため、株主資格の制限の維持をお願いするといった意見が述べられています。これ、投資ファンドや外資の企業に株式を売らないということが法案で保障をされているのでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 商工中金は1936年の設立以来、中小企業組合等に対する金融の円滑化を目的として、その株主資格を取引先でもある中小企業組合及びその構成員等に限定をしております。言わば中小企業による中小企業のための金融機関ということであります。引き続き、危機対応を含め、中小企業の資金繰り円滑化を目的に経営されるということを担保するために、現在の商工中金の性質を堅持していくことが必要だと考えております。
今回の改正法案におきましても、引き続き、この商工中金の議決権株式の株主資格を中小企業組合及びその構成員等に限定をしております。この改正法案が成立した暁には、先ほどもありますように、中小企業団体中央会などの中小企業を支援する機関も株主資格の対象とすることを、政令改正を行うことを検討しておりますけれども、一方で、投資ファンドや外国の法令に準拠して設立された法人に対して、直接商工中金の株主資格を新たに付与することは考えておりません。したがって、政府保有株式の引受先は中小企業組合とその構成員や中小企業支援機関等に限定されることになると考えております。
その上で、一部の、ああ、そうですね、その上で、商工中金法は、5%以上の商工中金の議決権株式を取得しようとする場合には主務大臣による認可を必要としておりますので、その際、株式取得者の業務内容や、その者の、議決権を5%超保有する者の国籍などを記載した書類等の提出を求めているところであります。
いずれにしても、一部の者が商工中金の経営権を握ったり、本来果たすべき役割が果たせなくなることのないよう、政府としてしっかり監督していきたいと考えております。
○岩渕友君 もう終わりますけれども、2年以内に株式売却できないということになれば、投資ファンドなどもその株主の対象になったり、株主資格が広がる可能性があるんじゃないかとか、低い株価で売却をされて国庫収入にも大きな穴を空けることになるんじゃないかと、国有財産を毀損することになるんじゃないかという懸念もあります。
商工中金が持っている中小企業向けの金融機能が損なわれないようにするということが非常に重要だと思うんですね。商工中金の完全民営化、これは撤回をして、真に中小企業のための政策金融機関として位置付け直すべきだということを述べて、質問を終わります。
2023年6月13日(火) 参議院 経済産業委員会
「信用保険法及び商工中金法改正案」法案への討論
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表し、中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案について反対討論を行います。
コロナ禍において、信用保証制度と政府系金融機関は、中小・小規模事業者の資金繰りを支えるセーフティーネットの役割を果たしてきました。
本法案で、経営者保証に依存しない融資慣行の確立など、経営者保証改革を行うとしています。中小企業団体、我が党も長年求めてきた経営者保証解除に向けての前進であり、評価できます。
しかし、審議を通じて、解除要件を満たす事業者がどれほどいるのか、中企庁が把握していないことが明らかになりました。また、この要件は事業者にとって高いハードルであり、この問題は改善すべきです。
反対理由の第一は、政府が保有する商工中金の株式を2年以内のできるだけ速やかに売却することは、商工中金の政府系金融機関としての役割を放棄し、国有財産を毀損しかねず、国の責任を投げ捨てるものだからです。
商工中金は、預金、決済、貸付けのフルバンク機能を持つ唯一の政府系金融機関です。その重要性を踏まえ、民間による危機対応業務が十分に確保されるまでの当分の間、政府が株式を保有すると答弁してきました。しかし、今もなお民間金融機関から手は挙がっていません。それにもかかわらず、期限ありきで売却することは答弁をほごにするものです。
また、これまで政府は、完全民営化の時期について5年から7年を目途と繰り返してきました。2年以内という期限については在り方検討会で突如事務局から提示され、まともな議論も行われておらず、その検討経過は明らかになっていません。
本法案により強引に完全民営化を進めることは中小企業への金融支援機能を後退させるものであり、認められません。
反対理由の第二は、一定の場合に商工中金による危機関連保証の利用を認めないことが中小企業の資金繰りの手段を奪うことになるからです。
2017年創設の危機関連保証はコロナ禍で初めて適用され、危機対応業務とともに資金繰りの手段となりました。制度の重複を理由に危機関連保証の利用を認めないことは、中小企業の資金繰りを下支えするという商工中金の本来の役割を制限することになります。
商工中金の完全民営化方針は撤回し、真に中小企業のための政策金融機関として位置付けし直すべきであることを指摘し、討論とします。
○委員長(吉川沙織君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(吉川沙織君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。