ガソリン価格は、新型コロナウイルス感染症の拡大緩和による需要増やロシアのウクライナ攻撃による供給困難に加え、円安の加速などを背景に2021年7月ごろから、急激に上昇。政府は「激変緩和対策」として22年2月以降、石油元売り会社に対し補助金を交付し、小売価格を抑制するとしています。制度開始以降、数次にわたり期間を延長するとともに、支給単価の上限を上げ、今年9月末までに6.2兆円が計上されています。
会計検査院が7日に公表した22年度決算検査報告ではこのガソリン補助金の全額が抑制額に反映されていないと指摘しています。
岩渕議員の調査によると、今年8月末時点で6.2兆円のうちすでに3.6兆円が34社の補助金対象企業に交付されています。しかし、どの企業にいくら支払ったのか、その全額を国は依然、明らかにしていません。こうしたもと、石油元売り大手のエネオスHD、出光興産、コスモHDは3社合計で当期純利益を20年度の2348億円から22年度は4653億円へと倍加、商社大手の三菱商事、三井物産、伊藤忠、丸紅は1兆1327億円から3兆6548億円へと3倍化しています。岩渕議員はこうした事実を取り上げ、次のように迫りました。
「原油価格の上昇と円安で棚ぼた式に利益を増やしている。これだけの利益を上げ、内部留保を持つ企業なら経営努力でガソリン代を下げるよう求めるべきだ」
これに対し、西村康稔経産相は「この支援制度を来春までは続けていきたい」とまともに答えませんでした。
また、総務省「家計調査」によると22年のガソリンへの支出は東京都区部が2万1583円なのに対し、福島市で8万6469円、山口市で10万3120円と地域によって大きな格差があります。岩渕議員は地方では自動車がないと暮らしも経済も成り立たないことや、燃料価格の高騰により運送会社などの倒産が増加していると述べ、「補助金を出すのであれば、地方、中小・小規模事業者、運送業を手厚くするなどそのあり方を見直すべきだ」と求めました。
西村経産相は「(ガソリン補助金という)このやり方が一番簡素だ」「地方については交付金で支援を講じてもらいたい」と自治体任せの姿勢に終始しました。
岩渕議員はガソリン補助金のあり方についての検証を重ねて求めて質問を終えました。
2023年11月9日(木) 参議院 経済産業委員会
「西村康稔経産大臣の所信的挨拶を受けての質疑」
○岩渕友君
日本共産党の岩渕友です。
異常な円安と物価高騰が中小・小規模事業者を直撃をしています。
全国商工団体連合会附属の中小商工業研究所が2023年下期、9月の営業動向調査の結果を公表しました。従業員6人以上の売上DI値も利益DI値も、若干の改善はあるものの、依然として厳しい状況が続いているんですね。従業員5人以下では、売上DI値はマイナス42.5、利益DI値はマイナス52.1と、困難な状況から脱し切れないというような状況なんですね。
事業者の方からは、コロナが五類になったからといって良くなったわけではない、物価も電気代も値上がりをして、そこにインボイスが導入をされた、コロナ禍以上に大変だ、こういう声が上がっています。規模が小さい事業者ほど深刻な実態になっています。このままだと、コロナ危機を上回る倒産、廃業が起きる危険性があります。
実態に即した直接支援や資金繰り支援が緊急に求められていると思いますが、大臣の認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
経済の状況については、全体としては改善しつつあるというふうに認識をしておりますけれども、小規模事業者、中小企業事業者の景況感は、中規模あるいは大手の企業に比べればもう弱いものがあります。多くの中小企業は、人手不足、そしてエネルギーコストの上昇、様々な資材、物価の高騰、こうした課題に直面しているものと思います。特に、資力の乏しい事業者ほどこれらの影響も受けやすいものというふうに認識をしております。
このため、電気・ガス料金あるいは燃料油対策の激変緩和措置を継続するということ、また、コスト増に対応するための価格転嫁対策についてもしっかり取り組むということで経営を支えていきたいというふうに考えております。
資金繰りの面でも、ゼロゼロ融資がこれからの返済が本格化をしてまいります。民間金融機関が早期の経営改善を図る計画の策定に、中小企業が早期に経営改善を図る計画を作る、そのことに民間金融機関が積極的に関与していくことに対して時限的な支援を行って、迅速な経営改善も後押ししていきたいというふうに考えております。
また、転換を図っていくため、この状況を打開し、転換を図っていくために、企業自らも何らかの取組をやろうという、そういう意欲的な取組に対して是非支援をしていきたいということで、設備投資や広報戦略による販路拡大、あるいは新たに輸出を行うという新規輸出の実現であるとか、IT導入あるいは省力化投資で人手不足を乗り越えていこうと、こうした支援を是非拡充していきたいということで、売上げ拡大、生産性向上を目指す中小企業のそうした取組を支援をしてまいりたいと思います。
全国のよろず支援拠点、商工会、商工会議所とも連携をして、こうした施策をしっかりと隅々まで届くように対応していきたいというふうに考えております。
○岩渕友君
今、激変緩和措置という話もあったんですけど、電気代の支払をめぐって非常に深刻な事態が起きているんですね。コロナ対応として、経産省は、電力会社に電気料金の支払を猶予して柔軟な対応を行うということを要請してきました。当初5か月だった支払猶予期間は縮小されてきています。
こうした状況の下で、関西電力管内の中小事業者の方からこんな相談が寄せられているんですね。支払猶予期間の電気料金を全額払わなければ電力供給を止めると言われた、コロナの影響で業績が回復していないのに100万円単位の一括支払を求められても払えない、こういう相談なんです。さらに、6月から2か月分ずつ払うように通知が来た、支払えずに会社の電気が切られた、同じ建物内に同居をしていた母親の医療器具が動かなくなって母は救急で病院に担ぎ込まれたという、これ非常に深刻な相談が寄せられているんですね。これは関西電力だけではなくて、ほかの電力会社管内の方からも同じような相談が寄せられています。
これ、余りにもひどい対応だと思うんですよ。生存権を脅かす深刻な事態です。電気料金は公共料金であって、これあってはならないことだと思うんです。こうした実態をちゃんとつかんでいるでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
大手電力による電気料金の支払猶予措置についてでありますが、本年2月から段階的に縮小してきています。9月検針分以降は新たな猶予は行われていないものというふうに承知をしています。事業者からの聞き取りを行っておりますけれども、令和5年9月末時点で大手電力10社合計で約14.4万件に適用されているということで聞いております。
政府としては、御指摘のような個別の事案について全てを把握をしているわけではございません。ただ、事業者に対しては、今年の2月の段階で各電力会社に対して、個々の需要家の置かれた状況に十分配慮してくださいと、支払猶予を受けた料金の請求とか供給停止の扱いについては十分配慮して行ってほしいということ、それから、生活困窮により支払が困難と申出があった需要家については、地方自治体に情報提供を行ってその対応を相談するとか、そうした対応をするように私どもから要請を行っているところであります。
引き続き、事業者に対しては、需要家の実態を踏まえた、それぞれの事情に配慮した対応を行うよう、引き続き求めていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君
配慮や相談、必要なんですけれども、こうした深刻な実態が起きているので、実態をちゃんとつかんでほしいということなんです。
これまでの私の質問に対して大臣は、この電気というのは国民生活及び経済活動に不可欠だというふうに答弁をしてきているんですね。これそのとおりなんですよ。支払の猶予を要請したのは政府なわけです。これ、電力会社と消費者の問題だということにはできないんですよね。相談があった方々も、払いたいけれども厳しいんだと、こういうふうにおっしゃっています。
これ、支払の延期であるとか分納であるとか、この柔軟な対応を政府の責任で要請するべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
それぞれの事情に応じて対応するようにということで、私どもから要請を既にしておりますし、引き続きそれは求めていきたいと思いますが、その上で、生活困窮な状態になっている方々に対して必要な支援を行っていくことも重要であります。これは政府や自治体の福祉部局で対応しますので、しっかりと連携をしていくことが大事だと思っております。
全ての個別案件を網羅的に把握することは難しいわけですけれども、需要家から申出を受ける電気事業者に対して、まさにこうした生活困窮者自立支援法等に基づく自治体への情報提供とか需要家に対する福祉部局の紹介など、連携して対応をするよう、努めるよう求めていきたいというふうに考えています。
○岩渕友君
皆さん、払わないと言っているわけではないんですよ。払いたいけどとても厳しいと言っていて、その上で延期だったり分納だったりということを言っているので、是非柔軟な対応を要請していただきたいということを強く求めておきたいと思います。
大手電力会社が電気料金を値上げをする下で、電力10社の23年4月から9月期の決算では、沖縄電力以外の9社が4月から9月期で経常最高益になっているんですね。経産省が認可した値上げがこれ不当に高かったということです。電力会社は電気代の値下げを行うべきだし、消費者に還元をするべきです。
次に、いわゆるガソリン補助金について伺います。
先日、会計検査院がこのガソリン補助金について様々な問題を指摘しました。ガソリン代も依然として高いままなんですね。ガソリン補助金が始まって1年10か月がたっていますけれども、政府は来年4月まで継続をするということを決めています。6.2兆円もの基金のうち、8月末時点で約3.6兆円が支払われています。
ところが、その実態も効果も不透明なんですよね。これだけの税金を投入している事業なので、その効果だとか評価だとか検証するということが必要です。そのために、どの企業にどのぐらいの補助金が支払われているのか、これを明らかにするべきだということを求めてきたんですけれども、大臣は事業が終了してからだというふうに答弁をしているんですね。けれども、来年4月までということになったら、これ2年以上もの間検証されないということになるんですね。更に延長される可能性もあります。
このガソリン補助金の参加対象となる企業は34社あるんですけれども、どの企業に幾ら支払ったのか、これ明らかにするべきではないでしょうか。
○政府参考人(定光裕樹君)
お答え申し上げます。
この御指摘の激変緩和対策のいわゆるその補助金をどの会社に幾ら支払ったかにつきましては、今年の3月末分までの補助金額を取りあえず年度の区切りだということで激変緩和事業のウェブサイト上に公表させていただいているところでございます。
34社ございまして、制度をスタートした22年1月から23年3月分までの補助金として支払った額ですけれども、34社分ホームページには掲載してございますが、上位の3社について申し上げますと、ENEOS株式会社に対して約1.4兆円、出光興産株式会社に対して約9600億円、コスモ石油マーケティング株式会社に対して約4200万円となってございます。あっ、4200億円です。失礼しました。
○岩渕友君
資料の一を見ていただきたいんですけれども、34社のうち石油元売大手3社、そして商社大手4社が利益を大きく増やしているんですね。2020年度と22年度の当期純利益を比べてみると、出光興産も三菱商事も約7倍に増やしていて過去最高水準の利益を維持して、その上、各社とも利益剰余金というのはこれ増やし続けているという状況なんですね。
それで、大臣に伺うんですけれども、この原油価格の上昇、そして円安で在庫評価益が上がったことによって利益が増えています。何もしないのに利益が出ているという状況なんですね。棚ぼた式に利益が上がっているというようなことになっています。これだけの利益を上げて内部留保を持っている企業であれば、経営努力でガソリン代を下げることを求めるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
この激変緩和事業は、まさにエネルギー価格の高騰から国民生活や経済活動を守るために、石油製品の小売価格の急騰を抑制するために行っているものであります。元売事業者の事業を支援する補助事業ではございません。
実際、元売事業者から補助金の支払請求があった場合には、その補助金支給の単価相当額の全てが卸売価格に反映されたことが確認できた場合のみ事後的に、事後精算という仕組みで補助金を支払うことになっておりますので、元売事業者を支援するものとはなっていないということであります。
御指摘のように、一般論として言えば、原油価格が高騰する局面においては、元売事業者の決算は保有する在庫の会計上の評価額が上振れる影響で利益額も増加する傾向にありますけれども、私どもの補助金が何かこうした元売への補助になっているということは一切ございません。
○岩渕友君
そういうこと聞いているわけではなくて、さっき3月分までは公表されているという話でしたけれども、じゃ、その後どうなのかということもあるわけですよね。ちゃんと検証することがやっぱり必要だと思うんですよ。
それで、だからこれだけの利益上げているということなので、経営努力でガソリン代を下げることを求めるべきじゃないかというふうに聞いているんですよ。
ちょっと、改めていかがですか。
○国務大臣(西村康稔君)
私どもとして、国民生活、経済活動を守るためにこの支援制度は続けていきたいと考えておりますが、もちろん、春までですね、続けていきたいと考えておりますが、出口も見据えてということでありますので、エネルギーをめぐる様々な情勢を見ながら適切に判断をしていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君
欧州では、エネルギー企業に棚ぼた利益、超過利潤への課税というのを行っているんですね。これ、日本でもこの棚ぼた利益に課税をするべきだというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○政府参考人(定光裕樹君)
お答え申し上げます。
先ほど大臣も申し上げましたとおり、激変緩和事業による補助金によってこの石油元売企業が利益を得ているということはございません。この国が交付します補助金は、まさに石油製品の卸値を抑制するための原資として全て使われておりまして、その旨は元売企業各社がホームページでも一切懐に入れていませんということは公表していますし、我々もそれが確認できた場合においてのみ支払をしているということでございます。
また、その棚ぼた利益課税の仕組みなどを海外が導入していることは承知しておりますけれども、それはまた、日本の国情に適しているのかどうか等々いろいろ総合的に判断しながら幅広く検討されるべきものだというふうに認識してございます。
○岩渕友君
私たちにもちゃんと検証できるようにしてから是非言っていただきたいと思うんですよ。
それで、石油の元売、そして輸入商社に対する補助金を通じて小売価格を抑える現状の方式では、抑制効果と補助金額にそごが生まれるだけではなくて、各社の引下げ努力が見えない下で莫大な利益を上げているということになります。課税をして、その利益をちゃんと還元させるということが必要です。
このガソリン補助金をめぐっては様々な問題が指摘をされているんですね。その一つが不公平という問題なんですよ。不公平なんじゃないかという問題なんです。
そこで、資料の二を見ていただきたいんですけれども、これは家計調査からうちの事務所で作ったものなんですけれども、二人以上の世帯のガソリン代ということで、地域の比較をしたものです。これを見ていただくと、2022年ちょっと見ていただくと、東京都区部、まあ23区ということですね、がそのガソリン代2万1583円なのに対して、私が住んでいる福島市では8万6469円ですよね。最も高いのは山口市で、10万3120円ということになります。東京都区部と比べると5倍近く多いと。これ長野市も高いですけれども、一リットル当たりの価格が上がったということで、その2021年と比べても、数量は少ないけれども金額は増えているというような状況ですよね。
地方と都市ではやっぱり大きな差があるんですよね。2022年のガソリンの使用量を見ると、山口市は東京都区部の約5倍は使用しています。現状、地方では車がないと暮らしも営業も成り立たないということで、不可欠なもので負担が避けられないということになっています。
また、年収が高い世帯ほど負担軽減額が大きい傾向にあるという調査結果もあります。更に言うと、帝国データバンクのまとめでは、今年、燃料価格などの影響で運送会社が倒産した件数は、9月までで82件、既に昨年を上回っているというんですね。
補助金を出すということであれば、地方とか中小・小規模事業者とかこの運送業を手厚くするといった在り方を見直すべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
私ども、どういう形の支援策がいいかというのは、最初の導入するときから今もなおいろんな議論を行ってきております。やはり国民全体に公平に、そして迅速に、かつ事務負担も余り重くすることなく対応しようということで、この電気について言えば電力事業者、石油について言えば元売事業者を通じてやっておりますので、よく指摘をいただくように、個別の審査、一件一件審査をするとなると、事務局をつくり、再委託をし、コールセンターをつくりという、また委託費も掛かってくることになりますので、そうしたことも含めて、全体としてこのやり方が一番簡素で迅速に的確に公平にいくということで、このやり方を講じさせていただいております。
その上で、地方に対する交付金によって地域の事情にも応じて個別に、地域ごとに支援策を講じていただくことにしておりますので、全体として、私どもとしてそういうような方針で臨んでいきたいというふうに考えております。
先ほどの税制については、一つには企業の予見可能性というものは、ある時点で突然税が掛かるということがあります。また、上がっているときは利益出ますけど、今度価格が下がっているときは赤字になるわけですね。そのときに、じゃ、その企業に支援をするのかという議論もありますので、様々な論点から検討を進めていかなきゃいけないというふうに考えております。
○岩渕友君
ガソリン補助金については、脱炭素に逆行しているという指摘もあります。政府がガソリン価格に介入することは市場をゆがめることにもなります。現行の補助金の在り方について、ガソリン税の問題も含めて検証が必要だと求めて、質問を終わります。