参院国民生活・経済調査会は11日、ユニバーサルサービスへの取り組みについて参考人質疑を行いました。
岩渕友議員は、障がい者が安心して暮らし、輝いて生きていくことができる社会づくりのため、憲法25条、13条など、憲法や障害者権利条約の理念を広げることが必要だと主張しました。
岩渕氏は、日本も批准している障害者権利条約27条(労働及び雇用についての権利実現の保障)、28条(相当な生活水準及び社会的な保障)を紹介し、その実現に重要な所得の引き上げについて質問。「滋賀県手をつなぐ育成会」の﨑山美智子理事長は「障害基礎年金を上積みし、生活保護世帯と同じくらいに引き上げてほしい」「今の障害基礎年金は何十年前の制度。生活水準自体も引き上がってきた。引き上げが最低限の生活を保障することになる」と述べました。
岩渕氏は、視覚障害者が駅のホームから転落する事故が後をたたないことをあげ、再発防止策であるホームドア設置に関わって、国がやるべき対策を質問。筑波大学付属視覚特別支援学校教諭の宇野和博氏は「事業者任せだけではお金を持っている事業者かどうかで格差ができてしまう」「もっと集中的に予算をつぎ込んで、整備していくことが必要」と話しました。
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○会長(増子輝彦君) 国民生活・経済に関する調査を議題といたします。
本日は、「あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築」のうち、「豊かな国民生活の実現」に関し、「ユニバーサルサービスへの取組」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
御出席をいただいております参考人は、日本理化学工業株式会社代表取締役社長大山隆久参考人、公益社団法人滋賀県手をつなぐ育成会理事長崎山美智子参考人及び筑波大学附属視覚特別支援学校教諭宇野和博参考人でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
御多忙のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
本日は、皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議事の進め方でございますが、まず大山参考人、崎山参考人、宇野参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、大山参考人からお願いいたします。大山参考人。
○参考人(大山隆久君) 皆さん、こんにちは。日本理化学工業、大山と申します。
本日は、このような場所でお話をさせていただく機会を頂戴し、本当にありがとうございます。障害を持った社員から教わったこと、気付きの中で得た御提案をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)
まず、弊社の会社の概要ですけれども、昭和の十二年、東京の大田区で操業を開始をいたしました。今年で八十一期目になります。黒板で使うチョークを作る会社でして、体に優しい、食べても害のない炭酸カルシウム製のダストレスチョークという商品名で、そういった商品を主力に製造販売する小さな文具のメーカーです。工場は神奈川県の川崎と北海道の美唄というところに二か所ありまして、全社員が八十五名おります。そのうちの六十三名が知的障害の社員で、その六十三名中、重度の方が二十六名おります。重度というのはIQ四〇以下ということで、字の読み書きとか数字の理解は難しいかなという人たちです。その障害者雇用のスタートというのは昭和三十五年からスタートしておりますので、ちょうど来年で六十年になります。
どういう会社の状況かということで、うちは十二月決算なものですから直近の数字を持ってまいりました。売上高八億四千八百万です。本当に小さな規模です。うちのその売上げの半分以上はやはりダストレスチョーク、黒板で使うチョーク、また黒板拭きとか、そういった関連の商品で占められています。本当に小さな、チョークのマーケットというのは小さなマーケットなんですけれども、一応国内のシェアは六〇パー以上はあるかなと思います。
でも、全く危機感しかないというか、全く余裕がある状況ではなくて、もう三十年以上前から少子化というのは始まっておりますし、九〇年代に入るとPCが普及をして授業の形態がどんどん変わって、二〇〇〇年代になると、もうICT化でこういうプロジェクターとか電子黒板が導入されるようになっていますので、板書での授業というのが本当にますます減ってきている状況の中でその危機感ということです。
利益については、経常利益五千九百八十四万ということで、売上げに対しては七%ぐらいです。自己資本比率については六九・六一ということで、少しずつ安定できるような状況をつくろうということで重ねてきております。
弊社の経営理念ですけれども、ここに書いてあるとおりです。一番大切にしていることというのは、やはり理解力の差というのはみんなそれぞれ違いますから、その中で相手の理解力に合わせる、その中で教えるとか段取るということを一番弊社の中で大事にしていることです。やはり伝わらなければ意味がありませんので、ただ言葉で伝えれば伝わる人たちでもないですので、いろんな模索をしながらその相手の理解力に合わせるということを大事にしております。
我々、この経営理念の中に二つのミッションを入れておりまして、全従業員の物心両面の働く幸せということと、一番最後に書いてある、障害者雇用にこだわり、より良い皆働社会の実現に貢献しますと書いてあるんですが、この皆働社会ということ、弊社の会長がずっと思いを持って伝えてきていることです。今日、皆さんに是非ここの部分、後ほど御説明をさせていただきたいと思います。
ここは私の私見になるんですけれども、知的障害の方ってどういう方たちが多いのかなということで少しお話しさせてもらいたいんですけれども、まず、苦手なところ、臨機応変に作業をすること。
やはり非常にこだわりの強い人たちが多いものですから、なかなか、次、じゃ、こうしようというふうになったときに、切替えが難しいというんですかね、そこの今やっていることにこだわっていってしまうということが多いものですから、なかなか臨機応変な対応というのがちょっと難しいかなというところはあります。ただ、みんな成長しますので、ここもちゃんと克服もしていきます。
次いで、自分のことを正確に言葉で伝える。
なかなかその表現の、何というか、スムーズに言葉にならない人もおりますし、言葉自体にならない社員もおります。ただ、だからってコミュニケーションができないわけではなくて、短い言葉だとか単語で酌み取ることというのは幾らでもできるし、その表情だとかそういうことで、逆に知る努力につながるというか、言葉に頼らないで知る努力につながるので、我々にとっては逆に良いことにもなったりもします。
三番目、字の読み書きや計算。
先ほどIQ四〇以下という話をしましたけれども、これも、だからって仕事ができないわけではなくて、それに代わることを考えればいいわけで、例えば、文字の認識が難しければ、色が分かれば色で感知すればよいですし、時間の見方が分からない人がもしいれば、昔は砂時計とか、今はキッチンタイマーとか、時間を表すものって幾らでもあるわけですから、そういうことでその苦手なことを超えていく工夫はできるかなと思います。
一つ、今日持ってきたんですけれども、これ、でき上がりのチョークなんですけど、JISの規格でちゃんと何ミリ以上何ミリ以下と決まっているんですね。その中で我々も作るんですけど、普通は、長さだと定規を使うと思うんですね、測って何センチ以内だからオーケーとか、太さだったらノギスを使うと思うんですけど。ただ、やっぱり数字が苦手な人に、じゃ、検査をどうやってしてもらえばいいかなということで、我々が実は採用しているのはこういう治具なんです。
ちょっと見づらいと思うんですけれども、ここ、今段差があるんですね。だから、どう使うかというと、ここにチョークを当てて、この上限と下限の間にいてくれれば、要は結果が合えばいいわけですから、これをすれば、長さはこれでオーケーなんだということをもう見るだけで分かるんですね。今度、太さについても、ここの幅が上限で、これ、実は真ん中に段差があるんですけど、ここが下限になっていて。どういうことかというと、もしここで止まってしまったらこれは太過ぎるから駄目ですよ、今度これが真ん中で止まらずに下まで行ってしまったら細過ぎるから駄目ですよ、この間でこうやって止まるチョークはオーケーですよと言ったら、みんなうちの社員分かるんですね。
だから、検査というとどうしても数字を使わなきゃいけないというイメージあるかもしれないですけれども、要らないんですね。だから、こういう、結果を合わせるためにこういう治具を考えればいいだけなので、まあ一つの例ですけれども、こういうことをちょっとした工夫で十分彼らは大きな戦力になってくれるということです。
続いて、長所の部分ですが、自分が理解したことを一生懸命に集中して仕事をしてくれる。
まあ、本当にこういう機会はないと思いますけれども、もしうちの工場に来ていただけたら、邪念なく働く姿というのは本当にすごいなと思うし、単純作業かもしれないですけど、その持続力というんですか、それを一心にこうやっていくあの力というのは、もう到底僕なんかまねできないですし、やっぱりうちの宝はそこだなと思うし、いつもできることを精いっぱいその現場でやってくれる人たちなんですね。だから、今日行っても、一週間後でも、一か月後でも、一年後でも、うちのその現場の雰囲気というのは変わることがない。これが我々の宝だなというふうに思っています。本当に職人のようにやってくれる人たちです。
続いて、風邪で休まない人がほとんど。
確かに苦手なことはありますけれども、体は元気なんですね、本当に休まない。休まないというのも、これは責任感で休まない。やっぱり、自分が会社に行かないと会社が困るんだ、我々みたいな小さな会社というのは、一人がやっぱり休まれてしまうと誰かがそこをバックアップしなきゃいけない、そうすると本当に予定どおり組めなくなっちゃう。だから、毎日ちゃんと来てくれるというのは物すごく大きな貢献なんですね。その体の丈夫さ、あるいは自己管理ということもそうですし、責任感の中で彼らは大きな戦力になってくれています。
最後、手順どおり仕事をしてくれるので、けがに至らない、特に重度の人と書きました。
これ、どういうことかというと、もうそのとおりその仕事をしてくれるので、仕事のやり方のとおり、決められたとおりにやってくれるということは、そのとおりの結果が出るんですね。僕みたいに、もうこれ面倒くさいからこうやっちゃおうとか適当なことをやるから、不良になったり、あるいは下手するとけがとか、そういうことになる。だから、そのとおりやってくれるということは、こちらも信頼ができるんですね。そのとおりしかやらないということは、余計なことを考えずに済みますので。だから、けがに至らないというのは、特に重度の人の方は、こだわりの強さとか手順どおりに踏まないと逆に気が済まない人たちもおりますから、逆にそれが長所になるということです。信頼につながるということです。
こういう社員に我々支えてもらっている会社なんですけれども、安定した強い経営ができてこそと、今後の目指すところに書きました。
私ももう二十数年この会社に入って時間がたつんですけれども、やはりもう六十年前からそういった障害者雇用をやっているので、彼らが戦力になってやっていること自体がもう当たり前になっていて、我々ボランティア企業でも何でもないですし、一般企業ですから、ちゃんと利益を出して継続していく会社です。ですから、戦力の社員がたとえ知的障害の社員であっても、その中で我々やっているわけですから、そこに、経営理念の中でも徹底的にこだわるということを言っている以上、そこに言い訳をしてもしようがない。ですから、それがもう当たり前の姿に実はなっていて、先ほど申し上げたように、職人のように本当に一つのことを、きちんと理解したことをやり続けていくあの人たちに支えられているんですが。
実は、二〇〇八年に私、社長にさせてもらって、ちょうど十年ぐらいになるんですけれども、当時がちょうどリーマン・ショックが起きた年で、いろんな働き方とか生き方を見直すタイミングだったと思うんですね。そこで、実は、カンブリア宮殿という番組に取り上げていただいて、初めてその番組を通して自分の会社を見たときに、ああ、こういう会社ってなきゃいけないんだなということをすごく思いました。だから、日本理化学がというよりも、こういう会社がなきゃいけないなというふうに今更ながら思って、やはり、僕らの中で当たり前になっている、彼らの、障害のある方の能力の高さとか素直さとか純粋さとか人間力の高さと、これを世の中にちゃんと伝えなきゃいけないんだな、自分たちの会社の中で完結するだけじゃいけないんだなということ、だから、こういうことを世の中にちゃんと伝える、正しい情報を伝える、もちろんできるできないっていろんなことも含めてですけれども、それが僕らの使命なんだなということを気付かせてもらって。
だとすると、何が一番大事かなって思ったときに、やっぱり経営がちゃんとできていなかったらこれ説得力にならないなということで、やはり強い経営、安定した強い経営ができてこそだなというふうに思いました。
企業の目的とここに書いてありますけれども、全社員の物心両面の働く幸せの実現。これはもうどの企業でも同じことだと思うんですけれども、やはりその物心の物というのは、生活の豊かさ、これが、みんな生活懸かっているわけですから、この水準をいかに上げていけるかということは幸せのところに直結することですし、ただお金を稼ぐためだけに会社があるわけではないので、心の豊かさ、それはやっぱり働く幸せということだと思いますので、うちの会長が障害者雇用をしていく中で支えとなった禅のお坊さんから教えていただいた人間の究極の幸せということ、人から愛されること、人から褒められること、人の役に立つこと、人から必要とされること。この四つのうちの愛されることはともかくも、それ以外の三つというのは、働く現場だから、働く場だからこそ与えられる幸せなんだということをその禅のお坊さんから教えていただいて、企業の役割というのはそういうことなんだということを支えにして、そういう企業を目指そうということで今の今までやっております。
もう一つ、目指すところということで、経営理念の中でも言った皆働社会の実現ということなんですけれども、これはどういうことかと申しますと、かつてうちの会長がヨーロッパに障害者雇用の視察にたまたま行かせてもらう機会があって、そのときに、ベルギーという国であった、実際にあった制度で、まあ今そのとおりあるかどうか分からないんですけれども、重度の障害をお持ちの方を一般の企業が採用したときに国がその最低賃金分をバックアップするという制度があったそうで、とにかくこれを日本に取り入れてほしいんだというのがうちの会長の、また我々日本理化学のミッションとして、これを世の中に今一生懸命伝えていることです。
これ、もしそれが実現するとなるとどういうことがあるかということですが、まず、その働く御本人について、まず、最低賃金分バックアップをしてもらえるということは、そのお給料分で自立ができるということ。うちは神奈川県ですから最低賃金が九百五十六円。そうすると、役職の手当とか賞与とか関係なくしても、大体月額十四、五万になるんですね。だから年間二百万ぐらいにはなるのかなと思うんですけれども、それに障害年金とかを、六、七万ですから、足せば優に二十万を超えていける。だから、自立がその御本人ができるし、健康保険とか厚生年金、自分で支払ができるんですね、企業に属するわけですから。
やはり働くということは、稼ぎをするだけじゃなくて、やっぱり人間的な成長の場ですので、働く幸せ、やっぱりその人が役に立って、ありがとうと言ってもらえることが働くことだと思うので、その自己認識というんですか、自分の存在意義も確認できる、そういう働く幸せを実感できるんじゃないか。
じゃ、二番目に、その受け入れる企業ですけれども、企業にとっては、その方、まあ確かに重度の障害の方かもしれないけれども、その人が役に立つところをいかに見付けてあげることができたら、その人が貢献してくれる分が全てその企業の経営強化というんですか、競争力につながる、そういうメリットがあるということです。
三番目、じゃ、国についてはどうかということですけれども、二百万、先ほど言いましたけれども、じゃ、持ち出しをしなきゃいけないんじゃないかと、確かにそのとおりだと思います。
ただ、うちの隣にも福祉の施設があるんですが、そういう場所で例えば二十歳から六十歳まで四十年間ケアをするとなると、まあいろんな試算あるんですけど、一億五千万ぐらい掛かると言われているんですね、四十年間。計算しやすいので一億六千万だとすると、一年間四百万、国費から、社会保障費から支払っているわけです。ですから、もしこういう制度があれば、二百万、半分を国費からも削減できるんですね。だから、国にとってもメリットがありますし、御本人から健康保険だ、厚生年金ということを逆に支払ってもらえる、そういうことにもなるわけです。
四番目、これは御家族です。障害をお持ちの御家族にとって、例えば御両親の立場だったら、先にやはり順番的に、残していかなきゃいけない。だから、そのときに、一般企業で就職をしてちゃんとお給料のそういった自立ができているということは物すごく大きな安心につながるわけです。まあ我々もいろんな御父兄といろんな話をしますけれども、やはりそういったところの大きさというのは実感もしています。ですから、家族の中の安心につながるということ。
最後、五番目は、福祉の先生方ですね、施設の。今、やはり工賃を稼ぐために、先生自らいろんな内職の仕事を先頭を切ってやってくださって、それで通所されるその方たちの工賃を一生懸命稼いでくれている。本来だったら生活のケアをするのが本来先生たちの仕事だと思うんですけれども、だから、もしこういう制度があれば、働くことは我々中小企業に任せてくれればいいんですね。我々中小企業というのは、手取り足取りこうやって教えていく場所ですから、マニュアルに頼らずに。だから、そういう場所にも預けてくれたら、福祉の先生たちは生活のケアに集中ができる、そうしたらその御本人もより成長につながって安心して生活ができるんじゃないかなということです。
ですから、この五方一両得なんて書きましたけれども、いろんな方がこの制度があると幸せを実感できるんじゃないかなと思っています。
そういうことで、是非御検討いただければと思うんですが、これ憲法にも書いてあるんですね、幸福追求に対する国民の権利。これ権利で、みんな幸福を追求できる。やっぱり働くことも幸福の一部だと思いますから、ここを追求していくこと。二十七条では、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」、権利と義務というふうに言っているんですね。だから、働くことは義務なんです。
ですから、国は是非、その場を提供していくということがやはり憲法に書かれているとおりのことだと思いますので、是非そういう御理解をいただけると有り難いなと思います。
安倍首相も一億総活躍社会とおっしゃっている、もうこれ多分同じことなのかなと勝手に思っていますし、まさに人間だけが持つ共感脳、共感脳というのは、人間はみんな人のために役立つことに幸せを感じる脳を与えてもらっているそうなんですね。ほかの動物にはない、人間だけが持たされた脳というのが共感脳。ですから、この人間だけが持つ共感脳を満たすこと、多くの人が社会に役立って、ありがとうと言われる社会へ、そう憲法に書いてあるのです。うちの障害のある社員たちが戦力として会社を支えてくれています。それが一つの証明になっているんじゃないかなと思います。
最後に、糸賀一雄先生の「この子らを世の光に」という御著書にあることですけれども、戦後、重度の障害者とともに歩まれて、命を懸けて障害者福祉を切り開いた方ですけれども、その御本の中にこの文章がありました。
精神薄弱児の生まれた使命があるとすれば、それは世の光になることである。親も気付かず、本人も気付かない。この宝を本人の中に発掘して、それをダイヤモンドのように、磨きを掛ける役割がある。そのことの意義に気付いたら親も救われる。社会も浄化される。そして本人も生きがいを感ずるようになる。
私は、人の役に立つことが自分の存在を確認できることにつながり、プライド、自信、そしてその責任感によって、人からの信頼、そして幸せの実感につながっていくのだと確信をしています。このことを社員から教わりました。誰もが人の役に立ち、必要とされる社会づくりが、まさにユニバーサルデザインな社会であり、私たちが目指す社会なのではないでしょうか。
御清聴ありがとうございました。
○会長(増子輝彦君) ありがとうございました。
次に、崎山参考人にお願いいたします。崎山参考人。
○参考人(崎山美智子君) 本日は、このような機会を設けていただき、ありがとうございます。
私は、公益社団法人滋賀県手をつなぐ育成会の崎山美智子です。どうぞよろしくお願いいたします。
手をつなぐ育成会は、主に知的障害の子供を持つ親の会として活動しています。当会は、滋賀県では障害福祉の父と言われた糸賀一雄氏の力添えにより、六十五年前の昭和二十八年十月に発足いたしました。糸賀氏の「この子らを世の光に」という福祉理念の下に、保護者の相談活動から始まりました。これまで保護者の運動団体として活動してまいりましたが、現在、障害当事者の、障害があっても地域で普通に暮らしたいという思いを大切に育て、自立への手助けはもちろんのこと、当事者がいかに生まれ育った地域で支援を受けながら生きがいのある生活ができるようにと活動しています。
長い活動の中、今、親の高齢化と子の高齢化により様々な課題が生まれています。また、情報あふれるこの社会、若い親は、人間関係の希薄さから、我が子の障害の受容すらできず、毎日の生活に追われ、情報の渦の中でもがきながら子育てをしているのが現状です。
課題の一つに就労があります。
今日は、私どもが知的障害者の団体ということで、数字としては、知的の数、数字を就労実態として挙げさせていただいています。
障害者の就労として、一般就労と就労継続支援A型については、労働関係法令の適用を受け、労働者とされています。雇用契約を結び、法的にも最低賃金が保障されています。就労継続B型やその他は、福祉サービス利用者等の扱いとして、賃金も工賃との名目で支給され、月額一・五万円は目標値としまして、少ないところでは月三千円という事業所も少なくありません。
参考までに、一般就労では、約六十三・一万人、そのうち、知的障害者は十五万人、身体障害の方は四十三・三万人、精神障害の方は四・八万人とこの二〇一六年の資料には書かれています。平均賃金ですけれども、一般就労では、月額賃金が、知的では十・八万円、身体障害者の方は二十二・三万円、精神障害の方でも十五・九万円というふうになっています。
就労継続支援A型では、約五・五万人の方が働いていただいています。うち、知的障害者の方は二万人です。身体障害者の方は一・一万人、精神障害の方は二・四万人となり、平均月額賃金は、知的の方で六・六万円、これはほかの身体障害の方、精神障害の方も大体平均六・六万円と聞いております。
就労継続支援B型、これは先ほど言いましたように、雇用契約を結んではなく、訓練という形を取らせていただいているところの事業所です。働いていただいている人数としましては二十万六千人ということで、うち、知的障害の方は十一万三千人というふうになっています。身体障害の方はぐっと減りまして二・六万人です。精神障害の方で六・六万人。平均月額賃金は、目標としていますのが一・五万円というふうになっています。
障害者の目標法定雇用率も二・二%に引き上げられました。しかし、知的障害の雇用はまだまだ低迷と言わざるを得ません。比べて、就労継続B型での就労は、知的の方が全体の半数以上となっています。多くの知的の方は、福祉就労に落ち着かなければ仕方がないという実態が見えてまいります。
近年、就労支援事業所の課題として、障害当事者がその適性に応じて能力を発揮して、一般就労への定着や、工賃、賃金向上、一般就労への移行に更に促進しなければならないところです。また、障害当事者である利用者の高齢化、重度化が進み、生産能力の低下から工賃向上が困難になってきています。
そのような現状の中、就労継続A型の突然の廃業が問題になっています。滋賀県におきましても、この二月に事業所A型が突然閉所したケースがありました。原因は、制度の問題もあったり、利用者と関わる指導員の人材不足もあったり、利用者の高齢化があったりといろいろですが、働く場を突然なくしてしまった利用者の戸惑いと落胆、将来への不安は計り知れません。
これからの就労支援には、障害理解の取組を積極的に推進していかなければと思っています。特に、障害特性の多様化により、地域での地道な活動が必要となってきています。本人が自分の望む人生を実現するために、障害特性を含めた本人理解の必要性を感じ、私どものような親の会や他の障害者団体がこの障害理解のための活動に取り組み、力を入れていこうとしています。この動きは、私どもの上部団体であります全国手をつなぐ育成会連合会によりまして、現在、疑似体験を通じ、障害理解のためのキャラバン隊が次々と各地で結成されております。
支援機関においては、近年の障害者増加に伴う就労希望者の増加、それを想定した就労機関の充実を図っていただき、障害当事者にとって、希望に沿った、またその障害特性に合った仕事を長期に安定的に続けられるようにお願いしたいところです。また、体力、気力等が徐々に低下していく中高年齢層の障害者がその能力に応じた働き方ができるような支援の仕組みを考察していただきたく、お願いしたいと思います。
余談ですが、知的障害者の老化については、実年齢よりも十年から二十年早く進むと言われています。私が運営していますグループホームの利用者の中で、私と同い年の利用者がいらっしゃいます。支援する側とされる側ですが、とても同級生とは思えないくらい認知能力が、また体力も低下が著しく最近では見られています。
このように、障害のある子供の就労をまた陰で支えてまいりました保護者の高齢化が深刻になってきています。障害のある本人の、朝起きて、起床から身支度、通勤の準備、また出かける玄関の前ですらチェックをする、ともすると通っている支援事業所までの送迎まで担っている保護者もいらっしゃいます。就労環境を何十年と支えてきた保護者です。進路の決定、就労先の決定、地域とのつながりなども保護者が支えてきました。本人の生活全般をコーディネートしています。必ずしも本人の思いを一〇〇%代弁しているとは言い切れませんが、可能な限り本人の希望と目標に基づく支援をし、生活の見守り役を果たしてまいりました。
親の会活動の歴史から見ましても、教育の義務化、これは一九七九年でしたが、養護学校ができて四十年。学校卒業後の行き場がなく、行き場のないその現状から、働く場をつくろうという親の動きで作業所作りに励みました一九八〇年代。当時、作業所を作った親たちは大体四十歳から五十歳代、それから三十五年ほど経過しています。障害者である子供たちは四十歳から五十歳代、親は七十歳から八十歳代になってきています。就労を支えてきた親の役割は、どういう形でつないでいくのでしょうか。
今、親たちは、親亡き後の問題に直面しています。一昨年、滋賀県手をつなぐ育成会では、六十五歳以上の高齢期家庭へのアンケートを実施いたしました。結果として、親亡き後の不安として、住まい、金銭管理、身上監護を不安材料として挙げられました。
ただ、この不安の解消には積極性に欠けるところがあります。本人の日常生活の見守りや権利擁護に対する不安はあるものの、漠然とした不安の中で、なかなか改まって相談に行くというふうなケースが少なくございます。身近に相談する仲間もつながりが薄くなりつつあり、亡くなる先輩のお母さん方もいらっしゃって、なかなか孤立化の方の現状が進んでいる状況です。
就労を支えることは本人の生活そのものを支える生活支援であるという、そういうふうに思います。親亡き後は、複数の支援が連携して支える仕組みが必要となってまいります。相談支援、また法的支援、生活支援がお互い牽制し合いながら支えることで、身近な地域の方々も本人を支えてくださるような関係づくりができればと願いながら、私の御意見とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。
○会長(増子輝彦君) ありがとうございました。
次に、宇野参考人にお願いいたします。宇野参考人。
○参考人(宇野和博君) 筑波大学附属視覚特別支援学校の宇野和博と申します。
本日は、このような場を与えていただき、ありがとうございます。
今日は、視覚障害の現場から、また一人の視覚障害者として、格差をなくしていくために五点お話しさせていただきます。
一点目は、弱視生徒の受験上の配慮に関する格差についてです。
視覚に障害があっても、進路を切り開くために入学試験を突破していかなくてはなりません。一方、視覚に障害があると情報入手に困難が生じますので、どうしても文字の読み取りに時間が掛かります。よって、受験上の配慮として、時間延長が認められています。
大学入試センター試験においても時間延長は認められていますが、それが認められる条件として、良い方の目の視力が〇・一五以下という基準があります。視覚障害の認定基準では、例えば〇・二の視力があっても、もう片方の目の視力が〇・〇二以下であれば視覚障害五級に該当します。また、盲学校の就学基準も、学校教育法施行令に規定がありますが、おおむね〇・三未満とされています。つまり、盲学校に在籍して障害者手帳を持っていても、視力が〇・一六以上あれば、試験において時間延長が受けられないという現実があります。
実際の教育現場では、たとえ視力が〇・二あっても、視野などの関係でなかなかすらすら文字が読めないという弱視生徒は少なからずいるのが現実です。病院の眼科においても、視力〇・一以下の場合は小数点二桁まで測定していますが、〇・一から二・〇の間は小数点一桁までしか測定していません。よって、〇・一の視力の場合、果たして〇・一五以下なのか、〇・一六以上なのかは病院では分からないという実態もあります。
大学入試センター試験の基準はその他の大学入試や高校入試にも大きな影響を与えていますので、合理的な基準、つまり盲学校の就学基準や視覚障害の認定基準にそろえていただきたいと考えています。
また、試験時間の延長の幅についても格差があります。大学入試センター試験においては、点字は一・五倍、弱視は一・三倍と格差があります。一方、実用英語技能検定、いわゆる英検においては点字、弱視とも一・五倍が認められていますし、私どもの盲学校の入学試験においても点字と弱視の間に時間延長の差はありません。司法試験においても弱視に対して一・五倍が認められていますので、大学入試センター試験においても点字と同様に一・五倍の時間延長を認めていただきたいと考えています。
次に、高等学校における拡大教科書の費用負担についてです。
弱視児が必要とする拡大教科書につきましては、二〇〇八年に教科書バリアフリー法を制定していただき、その後、教科書出版社が義務教育段階の拡大教科書を発行するようになりましたので、弱視児は小中学校に在籍しても盲学校に在籍しても安定的に無償で拡大教科書が入手できるようになりました。
しかし、義務教育段階ではない高等学校ではまだ課題が残っています。高額な拡大教科書を自己負担しなければならないという問題です。高校の拡大教科書を出版社が作るということはほとんどありませんので、事実上、ボランティアに製作を依頼します。ボランティアに製作を依頼したとしても、製作実費だけでも一教科数万円掛かってしまいます。全教科そろえるとなると数十万円に及びます。これが大きな負担となって、ある県では、保護者がこの額を知って拡大教科書の製作の依頼を諦めてしまったという事例も出ています。
盲学校では就学奨励費制度がありますので、高額な拡大教科書や点字教科書は自己負担なく無償で給与されています。この就学奨励費制度は、二〇一二年度までは特別支援学校や特別支援学級だけが対象でしたが、二〇一三年度からは小中学校の通常の学級の障害児にも適用されるようになりました。しかし、このときも高等学校段階まで広げられることはありませんでした。
国連障害者の権利条約は、障害がある子もない子も共に学ぶというインクルーシブ教育を推奨しています。また、この四月からは高校の通級指導の制度もスタートしています。言うまでもありませんが、日本国憲法には教育の機会均等や法の下の平等ということが書かれています。それから、今から十二年前になりますが、二〇〇六年、参議院文教科学委員会の附帯決議でも、高校段階の拡大教科書の自己負担の軽減について検討するよう決議がなされているところであります。
是非、高校段階にも就学奨励費制度を適用していただき、せめて検定教科書と拡大教科書の価格差だけでも国又は自治体の予算で保障していただけますようお願いいたします。
次に、障害者の読書環境の整備についてです。これはまさに、今、国会でマラケシュ条約の承認や著作権法の改正案が審議されている問題でもあります。
私たちにとって紙の本は、著作権を制限されただけでは紙の束にすぎません。誰かに点字、音声、拡大にしてもらう必要があるわけです。そのことがマラケシュ条約の前文に書かれています。四枚目の資料の裏面を御覧いただけますでしょうか。条約の前文に、著作権法で著作権を制限しても、引き続き障害者が利用可能な著作物は不足している、利用可能な著作物を増やしていくためには相当の資源が必要であるということが書かれています。まさにこの理念を実現していくために、私は、国内の障害者のための読書環境を総合的に整備していく、仮に読書バリアフリー法というような法制度をお考えいただきたいと考えています。
読書のバリアフリー化に必要なポイントは二つあります。一つは買う自由、もう一つは借りる権利を確立していただきたいということです。
買うことについては、近年、スマホやタブレットで読み上げ可能な電子書籍も配信されていますし、本の後ろにテキスト請求券が付いていることもあります。しかし、これらの動きはまだ全体のごく一部にしかすぎません。利用可能なデータがあれば、私たちでも本の発売日当日に情報にアクセスすることができます。もっとも、これは著者や出版社にとっても私たちにとってもウイン・ウインのことですので、是非後押ししていただけるような施策をお願いしたいと思います。
借りることにつきましては、図書館の役割が大きいと思います。これまで、主に視覚障害者のために点字図書館が整備され、大きな役割を果たしてきました。しかし、マラケシュ条約の批准に伴い、寝たきりや上肢に障害のある方々も受益者となります。ところが、この寝たきりや上肢に障害のある方々の読書を保障する機関、図書館がはっきりしません。私は、この解決策として、国立国会図書館関西館が核となり、全国の障害者が利用可能なデータを収集し、そしてさらに、公共図書館、学校図書館、大学図書館とネットワークをつなぐことが基礎的環境整備として必要なことだろうと考えています。
また、これまで、主に視覚障害者のために録音図書が製作され、それはインターネット上のサピエという電子図書館にアップされています。ここにある七万タイトルの録音図書も、現在は国会図書館からは閲覧ができませんが、それらも国会図書館を通して全国の公共図書館等に提供できるような仕組みが必要だと思っています。
ほかにも読書バリアフリーに資する施策はあると思いますが、それらをまとめて法制度につなげていっていただけますよう、お願いいたします。
次に、障害者への差別や偏見をなくしていくための施策についてです。
近年、国の文書の中にも心のバリアフリーという言葉を見かけるようになりました。これはハード面のバリアフリーと異なり、一朝一夕にできることではありません。場合によっては十年、二十年掛かるかもしれません。それでも、人の心の中に潜む差別や偏見というものをなくしていくためにはどうしていったらよいのか。
一つ問題提起ですが、私は、行政用語の中にある特別支援教育又は特別支援学校の言葉の中にある特別という言葉がどうなのかなと疑問に感じています。現に、私どもの特別支援学校の卒業生には、卒業した後に自分の出身校の名前を言いたがらない卒業生もいます。また、日本では、障害者施策の理念として、ノーマライゼーションという言葉を使ってきました。特別、スペシャルというのはこのノーマライゼーションの理念にも反するのではないかと思います。
資料の二枚目に全国の視覚障害特別支援学校の一覧がありますので、御覧ください。今でも盲学校の名前を使っている学校もたくさんありますし、視覚特別支援学校と改名した学校もあります。一方、札幌や宮城、大阪のように、視覚支援学校とし、あえて特別という言葉を学校名に盛り込んでいないところもあります。障害者への差別や偏見を助長しかねない特別という文言については見直していただきたいと考えております。
障害者の障害という言葉にも様々な議論があります。障害の害という字に別の漢字を当てたり、平仮名で表記されることもあります。しかし、私は、そもそも障害という言葉がどうなのかなと疑問に感じています。といいますのは、日常的に障害という言葉は、システム障害とか交通障害というようにネガティブな意味で使われることが多いからです。また、健常者、障害者と言いますと、まるで国民を二分しているかのように聞こえてしまいます。
アメリカではかつて、障害者のことをハンディキャップドピープルと呼んでいました。しかし、ピープルの前にハンディキャップド、これはまるでレッテルのようになるということで、最近、ピープル・ウイズ・ディスアビリティーという言葉も出てきています。まずは人なんだ、ピープルを前面に出し、そしてその後にウイズ・ディスアビリティー、障害があるということを付加しています。
日本語は言語の構造上同じようなことはできませんが、災害時の避難行動においては要支援者とか要援護者という言葉も使われています。よくよく考えてみると、人は生きていく中で誰もが助け合っている、お互いに支援し合っているとも言えるわけです。障害を個性や差異、生きていくための条件と捉え、様々な多様性を包摂できるような理念、用語をお考えいただければというふうに思います。
最後に、ホーム転落事故の対策についてです。
私どもの盲学校の生徒でも通学途中にホームから転落したこともあります。また、一昨年八月には、銀座線青山一丁目駅で盲導犬を連れた視覚障害男性がホームから転落し、大きな社会問題となりました。その後も視覚障害者のホーム転落事故は相次ぎ、東京や大阪で四人の命が失われています。
どうしたら事故は防げるのでしょうか。最善の策はホームドアです。国土交通省によると、二〇二〇年度において全国の八百八十二の駅でホームドアが整備されるとのことです。しかし、全国には駅はおよそ一万あります。一日の利用客三千人以上の駅に絞ったとしても三千五百、一万人以上としても二千百の駅があります。八百八十二と比べると、半分以下です。
ここで考えなくてはいけないのは、たとえホームドアがなくてもホームから転落しないようにするにはどうしたらよいのかということです。
国土交通省は警告ブロックの内側に内方線を敷設することを進めていますが、残念ながら、現実には内方線があるホームでも転落事故は起こっています。駅員による声掛けや見守りも推奨されていますが、全国の無人駅の数は四千四百を超え、年々増えています。駅員がいる駅においても、朝のラッシュ時にしかホームに出場していないということもあります。
ここで、資料三、三枚目の写真を御覧いただけますでしょうか。
一番上の写真は、ホームの中央に誘導ブロックが引かれています。この誘導ブロックがあれば視覚障害者もホームの中央を歩いていくことができますので、安全で理想的なデザインと言えます。しかし、実はこのデザインは国土交通省のガイドラインに違反しています。国土交通省が求めている誘導ブロックというのは、真ん中の写真にあるように、最短経路により敷設する、よって、最も近くの車両のドアに誘導しているのがガイドラインです。
これは、乗る駅と降りる駅でドアが一致していればよいのですが、実際にはそうでないことが多々あります。よって、自分が便利なドアまでホーム上を移動することになります。しかし、このときに何を頼りにするかというと、ホームの端にある警告ブロックです。本来、警告ブロックは止まれを意味するものであって、それに沿って歩くものではありません。ホームの端から八十センチから一メートルのところに敷設されていますので、数歩間違えれば転落するという危険な場所にあります。
過去の調査で、ホーム転落の七三%は慣れた駅で起こっているという結果があります。なぜ慣れた駅でも事故が起こるのか。視覚障害者は、つえの先や足裏から伝わってくる情報、耳からの聴覚情報で頭の中に地図を描きます。しかし、どうしても人間ですので、錯覚や誤認識ということが起こり得ます。しかし、私は、たとえ錯覚や誤認識、ヒューマンエラーがあっても、これがヒヤリ・ハットとならない、事故につながらないようなホームのデザインを考えていただきたいと思っています。具体的には、一番上の写真にあるように、ホームの中央に動線を確保していただきたいと思っています。
写真の一番下は、現に事故のあった蕨駅と青山一丁目駅の写真です。警告ブロックのすぐ脇に柱があるのがお分かりいただけるかと思います。また、視覚障害者は、人ともぶつからないようにするために、時に警告ブロックの外側を歩くこともあります。これはヒヤリ・ハットであると思っています。この誘導ブロックを敷設することは、ホームドアを設置するように数億円掛かることではありません。恐らく数十万円でできることであります。
ちょうど今の国会でバリアフリー法の改正案が審議されると伺っています。東京オリンピック・パラリンピックに向け、これ以上犠牲者が出ないことを願いつつ、私の話を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆さん、本日は本当にありがとうございます。
政府が、二〇一四年、国連障害者権利条約を批准しております。条約の中では、障害者の権利と尊厳の促進と、障害のない市民と同様に地域で暮らし、学び、働き、スポーツや余暇を楽しむなどの権利保障を掲げています。条約の批准に当たって関連法の整備がいろいろ進められているわけなんですけれども、障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言というものがあって、その中では、障害の有無にかかわらず、個人として尊重をされ、真の意味で社会の一員として暮らせる共生社会を目指すというふうになっています。
障害を持つ方も安心して暮らして輝いて生きていくことができる社会づくりというのは、障害者権利条約や、生存権を保障する憲法二十五条、個人の尊厳を保障する憲法十三条など、憲法に基づく政治、社会を実現することと一体だというふうに考えます。その憲法と障害者権利条約の理念を地域の隅々に広げながら、誰もが安心をして暮らすことができる排除のない社会の実現が求められているというふうに考えています。
その上で、参考人の皆さんにお聞きをしたいんですが、まず初めに大山参考人にお伺いします。
大山参考人のインタビュー記事を事前に見せていただいたんですけれども、その中に、参考人が入社当時、生産性を上げるために健常者の割合をもっと増やした方がいいんじゃないのかということで経営陣に言ったこともあるんですと、でも、現場での仕事を経験するうちにその考えは変わってきたというふうな内容があったんですけれども、今、生産性向上ということで働き方改革が進められたり更なる規制緩和がいろいろ進められようとしているということに対して私自身は懸念を持っているわけなんですけど、障害者の就労とその生産性向上ということについてどのようにお考えか、お聞かせください。
○参考人(大山隆久君) 非常に難しい御質問だと思うんですが、そうですね、やっぱり人は安心した場所じゃないと一生懸命頑張れないと思うので、僕らが一番考えているのは、その人にとっての居場所が会社の中でちゃんとあるようにしたいというふうに思っています。それがために、本当単純ですけど、声を掛けたり、何かあればいろいろ話を聞いたりというようなことぐらいしか僕らはできていないですけど、あとは、もうレクリエーションとかそういうことも含めて、やっぱりただ遊びに行くんじゃなくて、みんなお互いを知って、それがやっぱりチームワークだったり会社の発展に、また、仲よく仕事ができれば生産性にもつながってくるし、それが向上してくれば、僕らの幸せに、さっき言った物心両面の働く幸せにかなってくるんだということを、純粋にそれぐらいしか言っていないです。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、崎山参考人にお聞きします。
障害者権利条約の中で、二十八条では、障害者が、自分と家族が相当な生活水準を営む権利を有している、生活条件を不断に改善する権利を有しているんだというふうにあるんです。同じくその条約の二十七条では、雇用と労働の保障ということで、障害者が自由に選択をし、承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利があるんだということも書かれているんですね。相当な生活水準を確保するという、そのためには雇用を保障することと所得の引上げが重要になるんだと思います。
先ほどの冒頭のお話の中で、雇用の実態についていろいろな御紹介があったんですけれども、そして、大山参考人からも、国が最低賃金をバックアップする必要があるんじゃないのかということでお話もいただいたんですけれども、一般雇用でも福祉的就労でも最低賃金が保障されるということが必要だというふうに思います。
このことについてどのようにお考えかということと、あと雇用の保障と所得の引上げがどういう意味を持つのかということをお聞かせください。
○参考人(崎山美智子君) 雇用の促進と、それから最低賃金の保障というところでは、本当に、一般就労をしている方、それから就労継続A型というふうなところで働いていらっしゃるところの方々は、もちろん最低賃金は保障されています。
ただ、就労継続B型であったり、ほか事業所としまして生活介護の事業所もあるわけですけれども、そういう福祉的就労というふうなところでの最低賃金の保障というのは、これはできかねるだろうというふうに私自身思っています。私の娘も、重度のダウン症の娘ですけれども、生活介護の事業所に行っています。到底、お仕事というふうなところよりも、介護ですので、最低賃金というふうなところでは次元が違うのかなと思っています。
ただ、B型の方は、本当に一生懸命仕事をしても、先ほどの、言っていますように、一万五千円届かないような、そういうふうなところでは、障害基礎年金というふうな形で、大体、今、一級で八万一千円弱、また二級で六万四千円ちょっとというふうな、そういう年金がございます。私ども親の会の方は、この障害者基礎年金のせめて生活保護世帯と同じぐらいの引上げをお願いしているところでございます。
働いていただく賃金とは違いますが、今の障害基礎年金というのはもう何十年前の制度でございますので、生活水準自体の金額的なところで言えば、少し生活保護世帯の生活保護費と同じぐらいの水準まで引き上げていただくのが最低の生活を保障するというふうな権利の状態になるのではないかと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○岩渕友君 ありがとうございます。
では次に、宇野参考人にお伺いします。
先ほどの冒頭のお話の中で、駅のホームからの転落事故の問題について御紹介いただいたと思うんですけれども、これ、非常に深刻な実態だなというふうに思います。先ほど御紹介いただいたように、慣れている駅でも七割以上の方が何らかの事故に遭われているということだったり、調べてみましたら、日本盲人会連合が二〇一一年に行った全国的な調査では、約四割の視覚障害者がホームからの転落を経験していて、約六割が転落しそうになったというような回答を行っているということで、非常に命に関わる重要な問題で、対策は喫緊の課題だと思っています。
でも、御紹介をいただいたように、実際一番いいのはホームドアの設置だけれども、一割にも満たない状況だということなんですけれども、そのホームドアの設置について、事業者任せにせずに設置を義務化するとか、設置を加速するための手だてや支援を抜本的に強めるということが求められていると思います。
さらには、誘導ブロックをどういうふうに配置するのかということでは、先ほど写真を見ながら説明いただいたように、当事者の方からよくお話聞くということが非常に重要だなということも感じたんですけれども、改めて、このホームからの転落事故の問題で、その事故の実態と国がやるべき対策、そして事業者に求めることについてどのように考えるか、お教えください。
○参考人(宇野和博君) ホームドアにつきましては、恐らく事業者任せだけでは、やはりお金を持っている事業者とそうでないところの格差がどうしても出てしまうと思います。ですので、ここは、国、自治体も含めて、まあ現在でもその費用の分担はあるわけですけれども、もっと集中的に予算をつぎ込んで、例えば時限立法という形で五年間集中的にホームドアを整備していくということも必要なのではないかと思います。
また、駅、事業者に対しては、現在、ホーム上に出ていく駅員というのはごく限られているわけですけれども、もっときちんとホーム上で安全管理をする基準というのを国に作っていただき、やはり規模の大きい駅では、一日のかなりの時間、ホームできちんと安全を見守るというようなことを進めていただきたいというふうにも思っています。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございました。
以上です。