2020年2月19日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査 参考人質疑「困難を抱える人々の現状(外国人をめぐる諸問題)」
参院国民生活・経済に関する調査会は2月19日、「困難を抱える人々の現状(外国人をめぐる諸課題)」について参考人質疑を行いました。
岩渕友議員は、日本語教育の機会を保障する点でも夜間中学が果たす役割が大きいと指摘、外国人の教育における夜間中学の重要性について質問しました。
愛知淑徳大学交流文化学部の小島祥美准教授は、夜間中学が限定した地域にしかない現状に触れ「まずは自治体格差を解消していただきたい」と主張しました。
続いて岩渕氏は、ジェンダー問題解消の重要性に関わって、外国人女性が日本で抱える問題について質問しました。
東洋大学ライフデザイン学部の南野奈津子教授は、フィリピンパブで働くなかで日本語を覚え日本人男性と結婚し、子どもができてDV(家庭内暴力)で離婚した、生活保護を受給している外国人母子世帯の子育ての事例を紹介し、「日本の公的保育は昼間働く人を基本にしている。(パブなど特定の職業しか経験したことのないような女性が)昼間の職に就けたとしても、待機児童問題など日本人の多くが直面するような壁にぶつかる。日本人女性以上に厳しい状況がある」と答えました。
山脇啓造参考人 意見陳述
小島祥美参考人 意見陳述
南野奈津子参考人 意見陳述
岩渕友 参考人質疑
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明治大学国際日本学部教授 山脇啓造参考人
○参考人(山脇啓造君) 私、明治大学の山脇と申します。
本日、こうした場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
この調査会は、総合的な、そして長期的な観点から研究調査を進めていくということを伺っていますので、本日のテーマであるこの外国人をめぐる諸問題、そして私は、特に労働環境、生活環境の整備に関しまして、そうした観点からお話をしていきたいと思います。それから、私、長く多文化共生の研究をしてまいりましたので、またそうした観点からのお話をしようと思っています。
本日、いただいた二十分の中で、まず導入となるお話をしまして、それから自治体の取組、国の取組、そして最後に今後の課題という順番でお話をしていきたいと思っています。簡単に申し上げますと、私は、これまでこの分野では自治体が様々な取組をしてきていますので、そうした経験を国がしっかり生かしてほしいと、そうした観点からお話をしようと思っています。
本日、こちら、パワーポイントを使っていますが、皆さんのお手元にはレジュメの資料があるかと思います。内容は基本的にほぼ全て同じ内容ですので、どちらを御覧いただいても構いません。(資料映写)
まず初めに、外国人住民に関する状況から話し始めたいと思うんですが、最新の統計で二百八十三万人となっています。これは日本の総人口の約二%に当たります。
この日本で暮らす外国人の数は、戦後ほぼ一貫して増加をし、二〇〇八年のリーマン・ショック、それから二〇一一年の東日本大震災のときに一時的に減りましたけれども、その後、また増加傾向にあり、特にこの近年ですね、数年は急上昇をしているところは皆さんも御存じなことかと思います。
こちらに書かれたような国々の方がたくさん日本で暮らしていらっしゃるわけなんですが、最近ではベトナム人、それからネパール人、あと最新の統計だとインドネシア人も急速に増えています。それぞれ入管法に定められた在留資格を持っていますが、こうした外国人の約半数は定住する資格、まあ在留資格でいいますと定住者や永住者あるいは日本人の配偶者等といった資格を持っている人たちになっています。
政府はこれまで、様々な外国人、様々な分野あるいは形態での外国人の受入れ、労働者の受入れを進めてきました。こちらに書かれたような形で、ある意味小刻みに分野あるいは就労の資格をつくってきたわけですが、その一番最新の形が昨年四月に施行された特定技能の在留資格になります。
次に、私が研究をしている多文化共生の定義についてお話をしたいと思います。
こちらに書かれたのは、総務省が二〇〇五年度に設置をした多文化共生の推進に関する研究会の報告書に示された定義になります。その報告書を基に、総務省は地域における多文化共生推進プランを策定しました。それを全国の自治体に通知をしました。そのプランの概要が示されたのが、皆さんのお手元にある多文化共生推進プログラムになります。横長のカラーの資料になります。
大きく三本柱、コミュニケーション支援、生活支援、それから多文化共生の地域づくりという三つの柱がその内容になっています。そうした取組を進めるための体制整備ということが書かれています。ここには、右側の一番右には、国の役割として、外国人受入れの基本的な考え方やオリエンテーション等ということも実は入っていました。
それからあと、二〇一六年度に同じ総務省が多文化共生の事例集というのを策定しました。そちらは全国の自治体のグッドプラクティスを集めたものなんですが、基本的にはこの三本柱を踏襲しつつ、四つ目の柱として地域活性化やグローバル化への貢献というテーマが入りました。これは、それまで主流であった外国人への支援という考え方から、外国人に活躍してもらう、外国人が地域に貢献する、そうした観点を取り入れたものと言えます。
次に、冒頭、私は自治体の取組が国に先行してきたことをお伝えしましたが、ここで自治体の取組の歴史を簡単に十年刻みで振り返ってみたいと思います。
まず、一九七〇年代、この頃から自治体の取組が本格化しますが、当時、日本に住んでいる外国人の多くは在日コリアンでした。こうした在日コリアンの多い主に関西の自治体において、人権施策として外国人施策が取り組まれていきました。
一九八〇年代になりますと、当時、国は国際国家日本ということを掲げ、そうした中で地域の国際化も新しい課題として提示され、全国の多くの都道府県や政令市などで国際交流の担当部署や、それから国際交流協会が設置をされました。と同時に、この時期はいわゆる、最近は余り使われませんが、ニューカマーと呼ばれる外国人の人たちが特にアジア、東南アジアを中心に日本に増えていった時期でもありました。
一九九〇年代になると、八〇年代後半から南米からの日系人、特にブラジル人が増え始めていたんですが、そうしたブラジル人の多い主に東海地方の自治体において、国際化施策としての外国人への対応施策が進んでいきました。
そして、二〇〇〇年代になると、そうした各地の取組の中で、次第にこの外国人住民に関する施策をより総合的、体系的に進める、そうした自治体が増えていきました。そのときのキーワードが多文化共生でありました。
さらに、二〇一〇年代になると、多文化共生施策の新たな展開がありました。これを私は多文化共生二・〇というふうに呼んでいますが、多文化共生の第二ステージと言っていいかもしれません。
次に、この二〇〇〇年代、二〇一〇年代の動きをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
二〇〇一年、浜松市を筆頭に、外国人労働者の多い、特に南米系外国人、ブラジル人労働者の多い自治体、十三の市町が集まったネットワーク、外国人集住都市会議が結成しました。そして、日本人住民と外国人住民の共生社会を目指す浜松宣言を採択しています。二〇〇四年には、同様に県レベルでのネットワーク、愛知県を中心とした多文化共生推進協議会が設置されています。そして、二〇〇五年には、川崎市が多文化共生を目指した本格的な指針、そして新宿区には多文化共生を進める拠点施設が設けられ、二〇〇七年には宮城県が全国に先駆けて多文化共生社会の推進を目指した条例を制定しています。
続いて、二〇一〇年代の動きですが、二〇一二年、多文化共生都市サミットが開かれました。これは、国際交流基金、それからヨーロッパの欧州評議会の共催によるイベントで、日本とアジア、アジアとヨーロッパ、実際には日本と韓国なんですけれども、多文化共生に取り組んでいる自治体の首長が集まったサミットでした。日本からは浜松市長、それから新宿区長、大田区長の三人が参加をしています。ヨーロッパからはポルトガルのリスボン市長、スウェーデンのボットシルカの市長などが参加をしています。
このときに、外国人や移民の存在をプラスの存在として都市の発展に生かしていこうという多様性を生かした都市づくりを目指した東京宣言が採択されましたが、浜松の鈴木市長は、こうした理念に共鳴し、翌年、多文化共生都市ビジョンというのを策定しています。それから、同様の観点で、外国人が活躍する都市づくりを目指した東京都の指針も作られています。
一方、この二〇一〇年代というのは、東京や大阪などの大都市を中心としたヘイトスピーチの問題が顕在化した時期でもありました。そうした中、大阪市は、全国に先駆けてヘイトスピーチ対処条例を策定しています。
そして、世田谷区においては、多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例を作っています。これは、多様性という観点から、男女共同参画と多文化共生の取組を一体として進める条例ですが、こうした中では、性的マイノリティーや外国人に対する偏見や差別の解消を目指すことをうたい、そしてまた具体的な苦情処理委員会を設置するという、そうした全国初の取組となっています。
さらに、昨年十二月には、川崎市において、これも全国初となる差別を禁止する条例を設け、全国で初めて罰則、ヘイトスピーチを規制するための、に対する罰則を設けています。
それからもう一つ、この二〇一〇年代の動きとして大事なのが、こちらの二〇一八年の安芸高田市のプランになります。広島県の安芸高田市は人口三万人弱の小さな地方の自治体であります。安芸高田市では、二〇一三年には第一次の多文化共生のプランを作っていましたが、この第二次のプランにおきまして、外国人に魅力的な地域づくり、外国人の移住、定住を促進する、そうした取組をプランの中に位置付けました。それまでも地方創生の取組は進んでいましたが、地方創生の中での移住、定住促進というのはあくまでも日本人の移住、定住の促進でしたが、こちらにおいては外国人の移住、定住促進ということを初めてうたったプランになります。
こうした自治体の動向をまとめますと、一つには生活支援から活躍支援へ、それから、グローバル化を目指した都市が取り組む場合と、それから地方の小さな自治体、こちらには安芸高田市のほかに岡山県の美作市、あるいは北海道の東川町を取り上げましたが、そうした小さな地方の自治体が地方創生の観点から外国人の受入れを進めている例も増えてきています。さらに、二〇一〇年代の新しいキーワードとしての多様性あるいはダイバーシティーということも指摘できます。そして、偏見と差別の解消を目指した取組が多文化共生の推進にとって非常に大事になってきました。
こうして、自治体においては多文化共生を進める条例や指針、計画、そして担当組織を設置していますが、一方、国はどうなのかということを次にお話ししたいと思います。
国の取組に関しては、二〇〇六年の総務省の多文化共生推進プランが一つの契機になったかと思います。そうした中、二〇一二年には、恐らく私は多文化共生の観点から最も重要な取組と評価しているんですけれども、住民基本台帳の中に外国人が含まれるようになりました。
そして、その後、今の政府になってから外国人材の活用ということが二〇一四年以来取り組まれるようになってきましたけれども、そうした中で、外国人の生活環境整備ということが次第に重要になり、教育と医療に関する数値目標が設けられるなど動きが発展してきました。
それから、ヘイトスピーチに関しては、ヘイトスピーチ解消法が成立し、そしてまた、法務省によって外国人住民に関する偏見、差別の問題に関する初めての調査も実施されています。
それからあと、この時期には皆さんも御存じなような入管法の改正、そして総合的対応策の策定といった取組が進みますが、同時に、地方創生の分野でも、国としても外国人材による地方創生を進めるという方針が新たに示されています。
残った時間が、私、あと二分ほどですので、課題というところに移りたいんですが、様々な課題がありますが、大きく就労環境、生活環境、共生社会づくり、そしてそうした取組を進めていく体制整備というふうに整理をしています。
生活環境の中では、ここに教育の課題を取り上げましたが、後ほど小島先生からお話あるので、ここは割愛したいと思います。
それから、医療の分野に関しましては、私は医療通訳の体制整備が欠かせないと思っています。国の取組は進んでいますが、ここまで厚労省が全国に拠点病院をつくっていますが、実は、これまでの二十年近くの間に全国の様々な地域におきまして草の根のNPOや国際交流協会や自治体などが立ち上げた医療通訳の派遣の仕組みがあります。現在、この二つの取組がばらばらに動いています。こうした取組を統合していくことが必要かと思います。
それから、居住の問題、こちらもちょっと時間の関係で短くしかお話しできませんが、入居差別の問題も深刻ですが、もう一つ、公営住宅への外国人の集住について皆さんに関心を持っていただきたいと思います。この問題は、次第に、長く東海地方では起きている課題ではあるんですが、大きな問題にはなっていませんが、集住化は今も続いています。これは多文化共生の観点から望ましくないことだと考えています。
それから、多言語情報に関しては、今法務省が中心となって様々な取組を進めていますけれども、本来この情報の多言語での発信というのは国が行うべきことであり、現状においては自治体がばらばらに動いていますが、国が一元的に多言語の情報をつくり、それを自治体が活用するのが望ましいと思います。
それから、共生社会づくりについては後ほどお話をしたいと思います。
最後に、体制整備のお話なんですけれども、私は、基本的には国の大きな役割として法律の制定、そして組織の立ち上げがあるというふうに思っています。それから、これ体制整備と少し離れるんですが、外国人に関する統計の整備ですね。現状、日本にはこうした統計がありません。OECDでは各国がこうした統計を作って国際比較をしていますが、日本においても今後は外国人の統計整備が必要かと思われます。
あと、外国の取組も少し紹介したかったんですけれども、法律の制定、組織の立ち上げといったところは、ほぼ先進国では日本以外は行っていますので、日本も是非御検討いただきたいというふうに思っています。
あと残った時間で、もしお時間、皆さんから御質問があれば、企業の課題、そして今注目されている取組としてのやさしい日本語についてもお話しできればと思います。
以上です。御清聴ありがとうございました。
愛知淑徳大学交流文化学部准教授 小島祥美参考人
○参考人(小島祥美君) 皆さん、こんにちは。愛知から参りました小島祥美と申します。
本日は、全国で活躍している、活動されているボランティアの方、NPOの方たちがこのネット中継見ております。その方たちの思いを込めて、その方たちが支えてきた子供たちの教育の部分について願い、そしてその方たちの希望、また何よりも地域に住んでいる子供たちの教育保障を願い、報告させていただきます。よろしくお願いいたします。
資料の方は、クリップ留めをしていただいています資料になります。そちらの方を御覧いただきながらです。
この発表の中で就学調査二〇一九と申し上げます、そのところにつきましては、別添で付けていただいています、文部科学省で九月二十七日に発表されました外国人の子供の就学状況等調査結果速報、その一と書いてある資料に相当いたします。また、日本語調査二〇一八と申し上げる点につきましては、別添の資料になりますその二です。日本語指導が必要な児童生徒の受入れ状況等に関する調査、平成三十年度の結果についてという、文部科学省が今年一月十日に一部修正した資料の方の内容についてを指しますので、こちらの方を御覧いただければと思います。
日本の公教育において、外国人はいまだ就学義務の対象とされていません。安倍首相の国会答弁でも、就学義務については、外国人の子弟の方々が就学、義務教育を希望されれば、当然、日本国民と同じようにその機会を現在保障していると二〇〇六年十二月十三日に発言されています。つまり、実際は外国人の就学を恩恵的な形でしか許可していない、ここが一番の問題なんですよね。
そこから、関係します、すぐに可能な政策、将来に向けて検討すべき課題、そして絶対に取り組まなければならない課題、本日はこの三点について絞って、以下報告させていただきます。こちら、カラー刷りにしていただきました資料の方を御覧ください。
まずは一点目です。すぐに可能な政策の点です。この点については、六点これから申し上げます。
一番目です。外国人の教育に携わる業務を自治体で職務と位置付けていただきたいです。
就学調査の二〇一九、文部科学省が行いました調査ですけれども、この調査によって明らかになったことがあります。それは何か。各自治体で就学に携わること、つまり、子供の教育に関する分掌規定ですとか内規等が全く明示ない、規定していないという地域が圧倒的多いということが分かりました。つまり、この外国人の子供たちの教育に携わることが職務となっていないんですよね。ですので、就学手続の扱い、また就学案内の方法、その後の子供たちの教育の就学実態をどう把握するかなどなどもろもろですが、全て担当者任せになっている、次第であるということが分かるかと思います。ですので、仕事になっていませんので、思いがあれば担当者が行う、就学案内するというような実態です。
二〇〇五年四月一日より、岐阜県可児市は不就学ゼロを目指し、施策が開始しました。この岐阜県可児市は、教育施策先進市という形で今全国で知られ、昨年もNHKの例えば「クローズアップ現代」等でその実践等は放送されているところです。
この自治体は、もう二〇〇五年からそうした施策について、このように分掌規定を作り、実施、全てが明文化されているという状況です。今、十五年たとうとしているこの地域、不就学ゼロを合い言葉に、皆さん、町と自治体と、そして地域とNPOの方、ボランティアの方たちがみんな一体となって取り組んでいらっしゃいます。やはり、これが職務となっていることで公務員の方も動けますよね。是非職務としていただけるような位置付けをお願いしたいです。
二点目です。就学手続と学齢簿の作成の義務化です。
外国人の子供たちは就学義務の対象になっていないということにより、学齢簿の作成ということも義務付けられておりません。何よりも、先ほど申しましたとおり、就学手続自体が各自治体任せ、つまり担当者任せになっています。このような状況から、今回、国が行った就学調査二〇一九の自由記述でも明らかになりました。外国人に就学義務がないことから、各家庭に踏み込んでの説明は難しいですとか、保護者から日本の学校に通わせるつもりがないと申出があった場合は就学させていないなどなどの実態が明らかになったところです。
このような状況の中で、是非とも就学手続というところ、そして子供たちがどのような就学実態になっているのかという学齢簿の作成というのを、この職務に位置付けるのと併せて義務化をお願いしたいです。この点については、現在、重国籍の子供たちについての方法は各自治体持っています。ですので、これを応用した形であるならば、決して難しいことではないと考えます。
三点目です。文部科学省の悉皆調査である学校基本調査と日本語調査の改善です。
別の資料の方を御覧ください。学校調査票の方を付けていただきました。
こちら見ていただきますと、学校調査の十七の項目に学年別、国籍別を加えていただきたいというものです。といいますのも、見ていただきますと分かるとおり、外国人児童生徒の数については、国の調査の項目としては今総数でしかない、この十七ですね、にしかないというのが実際です。かつて国は一九五六年から一九七〇年度の間は国籍別に調査を行われていましたので、不可能ではないです。この国籍別、学年別が分からないことで、地域の中で正確に、また、学校の中で正確に子供たちの就学実態が把握されていないというところに関係しますので、この調査項目を是非改善していただきたいことと。
あわせて、一枚めくっていただきまして、学校調査票の次が不就学学齢児童調査票になっております。こちらの補注を御覧ください。下の欄になります。右の下の方ですね。一番に書いてありますとおり、外国人は対象から除外すると書いてあります。ですので、この調査自体に外国人が調査対象者となっていません。ここを除外するじゃなくて調査にするとしていただくことで、子供たちがこの調査の対象になります。是非お願いしたいです。
また、三番目です。日本語調査の点ですけれども、この日本語指導が必要という理解について、自治体がかなり理解が異なりますので、この内容、どの点が、もって日本語指導が必要なのかというところを統一化してほしいです。
その点については、別添の資料二の方を御覧ください。一覧表をお作りいたしました。こちらは、①で申し上げた学校調査票で把握されています今の外国人児童生徒数に対して、うち日本語指導が必要な子供たちの数を自治体別に並べたものになります。
見ていただきますと分かりますとおり、黒く囲った自治体があると思います。そこを見ますと、総数よりも日本語指導が必要な子供たちが多くなってしまっている自治体もあるわけですね。ですので、対象者が自治体によって異なること、また、何をもって日本語指導が必要なのかというところが統一化されていないことによってこのような差異が生まれてしまっているかと考えます。これも国の悉皆調査です。是非この調査を見直していただきたい。
あわせて、この日本語指導が必要な子供たちについては在住年数も新たに加えていただきたいのが願いです。
といいますのも、子供たちは今、言語学の中では一、二年で日常会話が上手になる、覚える、習得できるというふうに把握されています。ですけれども、学習言語、つまり教科の学習ですよね、国語、算数、理科、社会、こうした教科の点について、日本語が分からない子供たちが日本語を理解しながら教科を学ぶということに対して五年以上必要だと言われています。ですので、この在住年数、また学びが何年であるのかということが物すごく関係していますので、こんなところの改善も願うところです。
次が四番目になります。公立高校入試での自治体格差の是正です。
この点については、別資料で一覧表をさせていただきました。こちらもカラー刷りのA3の方になります。
表一を御覧いただきますと分かりますとおり、自治体で外国人の子供たちの高校入試について措置があるか、枠がないかというものについてマル・バツで示したものです。措置というのは、一般入試に対して、外国人のある一定の規定に準じた者に対して、ルビを打つですとか、何か措置がされているかどうかという点について、また、枠ということについては、ある一定の基準を満たした者に対してその特別な入学枠を持っているかというものになります。
高校入試、公立高校の入試については都道府県の教育委員会さんが裁量を持っていますので、この内容が自治体によって全く異なるんです。ですので、マルだ、バツだ、三角だというふうになってしまっているのがこのような状況です。これによって高校入学できる子供たちが全く数が異なります。
こちら、パワーポイントで作りましたカラー刷りの方を御覧いただきますと、日本語指導が全国で第一位の愛知県、第二位の神奈川県、第三位の東京都を比較しただけでも、この枠という内容について全く異なるということ、そして、それによって志願者、合格者数が全く異なるという状況がお分かりいただけるかと思います。それによって、日本語調査二〇一八で把握されている高校生の数が全く異なるというのも見てのとおりです。
ですので、せっかく小中学校で幾ら頑張っても、幾ら学校の先生たちが努力されても、それが高校まで結び付かないんです。ですので、この自治体格差、住んでいるところだけで運命が変わってしまうような、そんな格差を是非是正していただきたいです。
五番目です。やり直し教育の充実化です。
普通教育機会確保法が成立し、そのことによって、現在、今、各都道府県、政令都市に夜間中学一校を設置ということが強く推し進められていらっしゃいますけれども、それを後押ししていただきたいことが一つです。ですけれども、現在、まだ九都府県に三十三校しかないのが現実です。私が暮らします愛知県には全くありません。ですので、もう一度学び直しをしたい、義務教育年齢のときに学べなかった子供たちが学齢を超過し、そしてやり直したいと思っても、学び直すところがないんです。東海地域は全くありません。そうした地域がたくさんあります。ですので、九都府県以外の地域は学び直しが全くできませんので、広く学び直しができる社会をつくっていただきたいことが一つ。
それに併せて、すぐに取り組めることとしては、中学校卒業程度認定試験というものがございます。一年に一回、今ございます。大検のような試験のその中学校版がございます。ですけれども、たった年に一回の入試です。この入試のために、例えば私が住んでいます愛知県、岐阜県、三重県、この三県については、この一年一回のテストのために子供たちは頑張って勉強しています。それをNPO、ボランティア団体が支援し、この一回に向けて、中学卒業程度、いわゆる高校入学資格を得るための試験に今取り組んでいます。ですので、これをせめてでも回数を増やしてほしいというのが願うところです。
また、公立高校の受験資格の扱いということについても、実は実は実は、全く自治体によって異なります。特に、外国人学校の存在の扱いが特に違います。外国人学校の存在は、就学調査二〇一九から明らかになったとおり、とっても子供たちにとって最後のセーフティーネットとして、学び舎として大きく貢献しているところです。でもあるにもかからわず、愛知県の現状ですと学習内容ではなく場所で判断されているんです。
愛知県内ではブラジル学校がとても多くあります。ブラジル学校を大きく分けると、各種学校として都道府県から認可されている学校とブラジル政府が認可した学校があります。これについては公立の大学の受験資格はありとなっています。ですけれども、公立の高校の入学資格についてはバツなんですよね。外国で、同じブラジル政府が認可した、ブラジルで九年学んだ子については入学資格はあります。ですけれども、同じ政府が認めた学校が国内にある、そこを卒業した子供たちについては公立高校の入学資格はなしなんです。
こんなふうに自治体の中でも全く差異がありますので、そこを変えていただきたいのが五つ目です。
そして、六点目です。幼保無償化の対象の改善です。こちらを各種学校を含むにしていただきたいです。
なぜならば、これは、国が今まで各種学校にしていく、いわゆる促進を促してきたのが国なんです。平成二十四年にもこのような文書が出ています。
一枚めくってください。こちら、今年度六月に発表になりました、文部科学省が発表した外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム報告の概要版ですけれども、その図です。
ここにありますとおり、各種学校を御覧ください。外国人学校、ちょっと真ん中辺にあるんですけれども、紫色になっていて、点々点々とオレンジ色で囲んでいます。見てのとおり、就学前のところが点々点々となっています。つまり、国が進めてきたこの各種学校認可促進なんです。であるにもかかわらず、今、幼保無償化の対象外となってしまっている各種学校です。
ブラジル学校が今全国に四十五校ありますけれども、そのうち各種学校は十五校あります。国が進めてきた各種学校化であるにもかかわらず、この十五校はこの幼保無償化の対象外となってしまっています。この矛盾を是非変えていただきたいです。
将来に向けて検討すべき課題について、次、参ります。
このような状況ですので、外国人の子供たちの就学義務をどう考えていくのかというのが大きな課題になっています。
今回の国が行った調査から明らかなとおり、十二・四万人の就学年齢の子たちがいる、うち、二・三万人の子たちが教育にアクセスできていないという実態が分かりました。これは約六人に一人の状況です。ユニセフのホームページによりますと、小学校に通っていない子供の割合が世界で最も高い地域が今、サハラ以南のアフリカ地域だと言われています。そこが約五人に一人だというんです。日本の子供たちが同じような状況になってしまっています。これでよいのでしょうかね。
その学校に行っていない子供たちは、就労をしている子供たちが多いです。児童労働です。この問題を日本はほっておいていいんでしょうかね。
そして、ジェンダーの違いによって通えない子供たちがいるということも明らかになっています。
また、各地の状況から、不登校ではなく、外国人の子供たちについては、就学義務ではないということによって除籍や退学されてしまっている子供たちもいます。給食費が払えなければ、未払だといって午前中で帰されてしまっている子供たちもいるんです。そもそも、日本語が分からない子供たちについては、就学手続さえもさせてもらえていない子供たちもいるんです。
誰一人取り残さないという施策ですね。先生方の胸にもこのバッジが付いていらっしゃいます。この二〇三〇年までに向けた世界が合意した持続可能な開発目標を達成するためには、全ての子供たち誰一人取り残さない施策を是非お願いしたいです。
最後、二分になりました。残り時間で、絶対に取り組んでいただきたい課題について、最後、報告させていただきます。
それは、守られていない外国人の子供たちの健康問題です。
今、健康問題はいろんな形でクローズアップされていますよね。愛知から東京に来ました。東京駅に降りましたら、皆さんマスクしています。愛知ではまだまだマスクをしている方たちは少ないですけれども、それぐらい、今、皆さん、健康問題は注目されている点ですよね。であるにもかかわらず、外国人の子供たちは、学校健診さえも受けられない子供たちがいます。
まず、一点目です。
自治体間の違いで結核検診を受診できない子供たちが外国人の子たちにはいます。自治体窓口で外国人の子供たちが就学手続をしますと、結核検診の問診票の記入が求められます。それについて、過去三年以内に通算して半年以上外国に住んだことがありますかという質問があるんですけれども、そこについて、結核が蔓延の高い国に該当するところについては、すぐに結核検診が求められます。
ですけれども、この結核検診の受診が求められても、これは公費で扱うか私費で扱うかが自治体によって異なるんですよね。公費で扱われない場合については、それが受診できないことによって就学手続できない子たちがいます。また、来日したばかりで保険証等を持っていない子たちについても同様です。言葉が分からないことによってすぐに予約ができなく、受診できない子たちもいるんです。
こんな形でいますので、結核検診が受診できないことで学校に通うことができないという、こんな先進国ではあり得ないような状況がありますので、これを改善していただきたい点が一つ。
そして二つ目が、外国人学校の存在です。
外国人学校については、各種学校であっても、各種学校無認可であっても、政府が認可した学校であっても、学校健診は受けられる学校保健安全法の対象外になっています。それによって、日本で一度も健康診断を受診したことがないという子供たちが多数います。このような現状をほっておいていいんでしょうか。ここを是非改善していただきたいです。
時間になりましたので、終わりにいたします。
以上です。
東洋大学ライフデザイン学部教授 南野奈津子参考人
○参考人(南野奈津子君) よろしくお願いいたします。
私の方からは、こちらのスライドにもあるように、外国人の高齢化と社会保障、そして、私自身社会福祉を専門としておりますので、社会福祉制度などについても述べたいと思います。(資料映写)
特に、社会保障の検討の観点から見た外国人の概況、そして現状としての社会保障や社会福祉制度の適用状況、そして今後の課題について述べたいと思います。
社会保障制度を考える上で、外国の方がどういった方がいるのか、そして、労働者なのか子供なのか高齢者によっても社会保障制度をどう考えるかは変わってきますので、まず最初、保障制度を考える上で理解すべきは、年齢層や地域差、そして所有している在留資格であると考えます。前提の話として、三か月以上在留するいわゆる在留外国人は、年齢を問わず何らかの在留資格というのを持って生活をしています。そのうち、日本人と同じ活動ができる在留資格が一定の要件ありまして、それらをここでは定住につながる外国人又は定住外国人として、幾つかのデータを見たいと思います。
時間の関係上、ポイントのみを御紹介させていただきます。
まず、日本に暮らす外国人は、現在、過去五年間で六十万人増加しているわけですが、それを日本に定住する外国人又は労働を中心として在留している外国人を見ると、定住している外国人、定住外国人は約十万人の伸びに対して、労働を目的として来ている外国人、非定住外国人は五十万人となっています。
次に参ります。
定住につながる在留資格保持者上位十か国を見ていくと、多い人数においても国によっての差が非常に大きいということが分かります。左側の表を見ていただくと、定住につながる在留資格の保持者は、韓国や中国、フィリピン、ブラジルが非常に多くなっていますが、特に労働で来ている外国人を見ていただくと、一番下のベトナムが非常に多い人口を占めているということが分かります。このベトナムの約五六%は技能実習生で、日本に在留をしています。右側のグラフを見ていただいても、在留、在留以外の割合を見ていただくと国によって差が大きいということが分かるかと思います。
では、次のページに参ります。
外国人の高齢化率はどういう状況なのかというところで、日本人の人口の年齢層別の構成、そして外国人を見ていくと、外国人においては六十五歳以上の人口割合は六%となっておりまして、日本人の二九%に対し非常に小さくなっています。これは世界の傾向と同じく、やはり移住してくる人は労働世代が多いというところで、社会保障の検討をする際にもこういったデータは押さえておきながら見ていく必要があると考えます。
では次に、それぞれの年齢層別の外国人の中で、それぞれの国籍が最も多いのはどの国なのかというところで見ていきます。こちらも、社会福祉制度や社会保障制度のうちどの政策を今後どういった形で充実させていくかということで、一つの参考になると考えています。
詳細は割愛いたしますが、零歳から十八歳、児童福祉法では十八歳未満としておりますのでそちらに合わせていますが、そちらでは、いわゆる定住につながる外国人、中国人、ブラジル人、フィリピン人が多くなっておりますが、十八歳から六十五歳においてはベトナム人、そして六十五歳以上においては韓国と朝鮮の割合が非常に高くなっています。
次の外国人の数については割愛させていただきます。
次に、国内の地域差についても一応確認しておいていただきたいところであります。
社会保障制度や社会福祉制度を運用する上では、その自治体での浸透度、また外国人のコミュニティーの形成状況なども社会保障制度や福祉制度の在り方に影響を与えるわけですが、こちらの棒グラフを見ていただいても分かるように、非常に自治体間格差が大きくなっています。日本で最も外国人数が少ない都道府県は秋田県で四千二百三十人ですけれども、これは、東京は五十八万二千人ということで約百三十七倍と、非常に大きな差があるという実態があります。
こちらの棒グラフを見ていただくと、その中でも特に関西圏は朝鮮・韓国籍の外国人の方が多くなっている実情があります。
では次に、外国人における社会保障や社会福祉の現状について述べてまいります。
先ほども申し上げたように、社会保障の対象になるかは、国籍で決まるのではなく、所有している在留資格で決まるということがあります。現在の法律上は、生活保護を除き、ほぼ全ての在留外国人は公的社会保障制度の対象になるという制度設計になっています。
ただ、実際には、そうした社会保障制度や福祉制度にたどり着けず、苦境に陥っている外国人も多くいるのも事実です。また、在留資格を所有していない非正規滞在の外国人も日本にはおりますが、そうした方々も含めて対応するような社会制度もあるのですが、十分な活用には至っておりません。そして、制度の対象になっているから大丈夫だということにはなっていない実情が多々あるというのも現状としてあるところです。
では、幾つかここからは代表的な日本の社会福祉制度や保障制度について概要を述べたいと思います。
まず、生活保護ですけれども、これは、生活保護法に示している対象としては日本国民としておりますので、法律上は外国人は対象外というふうになっていますが、現在は人道的な見地から、準用という形で特定の在留資格を持つ人に関しては生活保護が利用、受給できるというような状況になっています。下の表には、現在の被保護世帯数を示しておりますが、年度によって若干数字は違いますけれども、外国人の方が受給世帯としては一%前後、多いというようなデータが示されております。
生活保護受給世帯は、日本とはまた若干違う特徴がございます。円グラフで日本人そして外国人といった形で受給世帯の特性を見ていただくと、日本人の場合は約半数強が高齢者世帯になっていますけれども、外国人も一番多いのは高齢者世帯なんですが、母子世帯の割合が非常に高くなっています。
その母子世帯の中でも、特定の国籍に生活保護の受給世帯が偏っているという特徴があります。資料の方では色を付けてあるところがありますが、特に受給が多くなっている世帯分類としては、韓国籍、朝鮮籍の高齢者世帯、そしてフィリピン国籍の母子世帯という形になっております。
ですので、ここからも、外国人の方、一律に貧困になるのではなく、特定の国籍、背景を持った人が貧困状況にあるということが分かります。
次に、母子生活支援施設という児童福祉法に制定されている母子で入所できる施設の入所者についてですけれども、こちらのデータでも、外国人の入所者が割合が高いということ、そして、その入所理由がドメスティックバイオレンス、DVの割合が高いということは福祉関係者の中でも指摘をされているところになります。
では次に、年金と保険制度の概要について御説明申し上げます。
国民年金、国民健康保険、介護保険については、日本の在留資格が三か月以上となっている在留資格の保持者は加入義務があります。また、三か月に達していなくても、見込まれる場合は加入が可能となっています。一方、労働者が加入する健康保険や厚生年金は、外国人の権利や義務というよりは事業所の義務ですので、そこに対して国籍の要件はないということになります。
以前は厚生年金は二十五年以上の加入が受給の要件になっていましたが、今現在は十年以上ということで、長期で滞在する外国人にとっては、短期になったことで加入した場合に受給できる時期まで日本にいるということが見込みやすいということが出てきたということもあり、また、近年はそれぞれの事業所も加入に対して規制が厳しくなっていますので、未加入率は減少しています。
次のページに行かせていただきます。
医療関係のその他障害、難病などの状況に関してどのような制度があるかということですが、例えば、障害を持っている方が所有している各種手帳、そして、障害に関連する医療に対して自己負担分を支給する自立支援医療というのがありますが、こういったものに関しましては、特に国籍、また在留資格の要件はありませんが、現実的には、こういった手続をする関係上、医療機関に関わり、そして保険加入が前提になっているというのが現状になります。やはり、突然行って手帳のための診断書が出るということはないということです。母子保健、母子健康手帳や入院助産につきましては、在留資格にかかわらず利用が可能ということになっております。
なお、近年また話題になっている感染症に関しては、特に在留資格の関係なく適用となっております。
次に、労働関係です。
各種労働に関する法律においては、外国人の国籍や在留資格によって差別的な扱いをしてはならない、そして労災の適用、そして健全な労働対策を取るということは事業者の義務であるというふうに示しているわけですけれども、実際には、労災が起きたときにも事業者が対応をしたがらない又は厚生年金の加入を渋るといったような問題が相談としては多く上げられております。
次のページは、労働者の現状として参考情報を示しておりますが、外国人労働者の多くは製造業、そして小規模又は請負事業のところで勤務をしている割合が高いということを考えると、なかなか社会保障や制度にたどり着くのが困難な環境が存在するということが言えます。これは外国人に限らない問題であるとも言えるわけです。
では次に、制度上対象だから使えているのかというと、そうではないというような問題に関して触れていきたいと思います。
制度の対象になっているのにもかかわらず、生活保護の受給に至ったり、家を失ったり、また医療や保険が利用できないといったことはなぜ起きるのかということですけれども、まずは言葉の壁、これは非常に大きくなっています。今は様々なパンフレットなどが整備はされていますが、例えば源泉徴収票であるとか最低生活費など、手続をする上で様々な難しい制度用語が出てくる中で、そういったところまでの対応に至っていないのが現状です。自分の国にそういった制度がないから、やっぱりそういった制度があるのかないのか分からないといった生活感覚の違いもあります。また、通訳の不備としては、社会保障や福祉、医療制度の利用上で大きな壁になっています。こうした問題が医療費の未払や病気に対する自己決定を阻害するといった要因になっております。
そうした中で、外国人の集住地域では、そのコミュニティーの中での様々な情報を駆使して生活をしている方も多いわけですが、時にそういった情報が誤っているということもあり、なかなか制度にたどり着かなかったり、誤った解釈をしているということが実際に起きております。
次に、受入れ社会の課題として、通訳やソーシャルワーカー、コーディネーターなどの不備というところがございます。また、外国人の労働特性、例えば夜間も働いている三交代制の勤務であるとか、そういった方にとっては、やはり日本の行政機関を利用するであるとか日本語教室に行くということが難しいこともございます。
また、これは外国人の問題というよりは日本社会の問題として、そもそも地域での支え合いの希薄さが進行しているとか、女性の自立において待機児童問題があるであるとか、そういったことも外国人にとっては更なる壁になるという実態があります。ですので、外国人だからなるということに問題を帰するのではなく、日本社会の問題としても捉える必要があると考えます。
外国人の立場の弱さに付け込んだ雇用やあっせん、そして男女間の暴力といったようなものが起きているということもこれは背景にありまして、やはり仕送りをする立場であるとか、その在留資格の更新上、夫や雇用主のサインがなければ更新ができないといったような、そちらの意見を優先しなければいけない構造が、外国人が社会保障制度や例えば労災などの利用に関してちゅうちょしてしまう背景になっております。
外国人の方の社会保障を考えたときに、これは日本人もそうですけれども、こちらの表に示させていただきましたけれども、その制度があるということに加えて、地域の中での支え合い、その特徴的なコミュニティーということでいうと教会であるとか日本語教室であるとか、そういったところでのつながりが、こういう制度があるんだとか、そういうときにはこういうことが必要だとか、あなたもこうしなければいけないといったような情報を提供していたり、社会保障制度の利用をサポートしていたりして、そういったことを通じてそれぞれの外国人住民が生活知識を付け、日本語力を付けというふうになっていくわけです。
そういうことを考えると、社会保障制度だけを整えても駄目であって、やっぱりそういった制度がカバーし切れないサポート体制、そして社会保障制度につながるような社会環境や支援があってこそ、こういった社会保障制度の充実や促進が意味を成すと考えます。
最後に、まとめとして今後の課題を述べさせていただきます。
最初に申し上げたように、現在、年齢層別の人口や地域特性は大きな差がありますので、社会保障制度を考える際には日本の現状を踏まえた上で検討していく必要があるということです。
世界の移民動向から考えても、外国人の高齢化が急激に進むとは考えにくいですが、それでも高齢者ということで生活リスクを抱えるという点は事実であるということと、労働世代の間に定住外国人が低所得状態が長く続くことで、高齢化になってから様々な生活問題を抱えるということは留意しておく必要があります。
また、先ほど述べたような高齢の特定の外国人の国籍の方々や外国人母子世帯などに関して、やはりこうした問題に対する社会統合支援や自立支援が重要であると考えます。
近年増えている外国人労働者については、やはりどうしても立場が弱くなってしまうということを踏まえて、権利保障に関する取組を引き続き続けていくべきだと考えます。
先ほども申し上げましたが、外国人の生活構造特性は、日本人と、特に労働者の場合には就労する分野によって違いがありますので、地域の中での様々な取組においても、彼らが実際に使えるような場を検討していくこと、そして、やはり同じ国の出身者同士のコミュニティーも含めてサポートネットワーク構築を促進していくような体制が必要だと考えます。
震災のときもそうでしたが、また近年の日本の高齢化においても、外国人は日本人が支える存在ではなく、共に日本を支えていく存在です。そういうことを考えると、外国人の生活保障問題を短期的な視野で日本にとっての損得で考えるのではなく、日本を支えていく立場として共存共栄をやはり考えていくべきですし、やはりグローバル社会に沿った人権保障の視点から、社会保障問題、社会福祉問題を捉えていく必要があるのではないかと考えます。
以上になります。ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆さん、今日は本当にありがとうございました。貴重な御意見をいただきました。
それで、まず山脇参考人にお伺いをするんですけれども、今も話題になっていた外国人労働者をめぐる問題についてお聞きをしたいんです。
今出ていたように、特に技能実習をめぐって本当に深刻な人権侵害が問題になっています。その外国人労働者をめぐるこうした人権侵害をやめさせて、やっぱり人間らしい生活を営むことができるように国がやる必要があることについて、今少し出していただいたんですけれども、加えて、参考人がお考えのことがあればお聞かせいただきたいんですけれども。
○参考人(山脇啓造君) 先ほども少しだけお話しさせていただいたんですが、基本的には、この技能実習制度は、劣悪な環境であってもなかなかそこをある意味逃げることができないという問題が構造的にあるのかなというふうに思っています。もちろん、私、幾つかの企業で、技能実習生を非常に良い形で受け入れ、技能実習生も満足している、そういう企業も幾つも知っています。先ほどお話しした群馬県の共生会議においても、そうした企業の方々とお会いしてお話を伺うことができました。
しかしながら、技能実習制度はもう何十年、何十年といいますか、二十年、三十年ですかね、続いている中でいろんな指摘がされ、そして制度はいろいろもう改善はされてきたはずなんですけれども、それでもこうした課題が起きているということで、私は、基本的には、今の制度の中でいえば、やはり特定技能の制度における受入れをより拡充するといいますか、広げていく方向で進めていくのがいいのではないかなというふうに考えております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
もう一問、山脇参考人にお伺いするんですけれども、その日本に住む外国の方たちに対する様々な差別の実態があるということで、先ほど冒頭のお話でも、その法務省の調査でもそういう差別があることが分かったということの紹介があったと思うんですけれども、多文化共生社会ということで、そのお互いの違いを認め合いながら地域社会で共に生きていく、こういう社会を実現をする上で、その人権の観点が非常に重要だというふうに考えるんですね。
その多文化共生という点で、国として人権の観点に立って行う必要があることについて参考人がどう考えるか、お聞かせください。
○参考人(山脇啓造君) 先ほども、ちょっと時間がなくてその共生社会づくりのところは飛ばしてしまったんですけれども、今、多文化共生に取り組んできた自治体の中で、幾つかの自治体がこの偏見、差別の問題に取り組み始めているわけですね。大阪市あるいは世田谷区あるいは川崎市といった多文化共生の先進自治体がそうしたテーマにも今取り組み始めていると思うんですけれども、私は、やっぱり国として、このヘイトスピーチの解消法ができましたけれども、そこには罰則がないわけですし、それからあと、これも長く以前から指摘されていることですけれども、その差別を禁止する、あるいは解消をするための法律というのが日本にはないということもあり、やはり国の役割としてはそうした法整備になるんではないかなと考えております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、小島参考人にお伺いをしたいんですけれども、冒頭の御説明の中で、やり直し教育ということで夜間中学についての御紹介がありました。それで、日本語教育の機会を保障するという点でも夜間中学が果たしている役割は大きいというふうに思うんです。
それで、外国人の皆さんの教育における夜間中学の重要性について詳しく教えていただきたいということと、夜間中学の数を増やすということはすごく大事なことだと思うんですけれども、同時に、例えば専任の先生を増やすということも必要なことだと思うんですね。その夜間中学を更に充実をさせるために必要だと思うことについてお聞かせください。
○参考人(小島祥美君) 御質問いただきまして、ありがとうございます。
夜間中学については、冒頭にお話しさせていただきましたとおり、やっぱり限定した地域にしか今ないというのが現状ですので、こうした設置については自治体格差をまずは解消していただきたいというのが大きな点です。
二つ目は、夜間中学が設置された地域について抱えている課題ですけれども、そこについては、専任の教員の問題、また保健室の養護の先生の設置の問題、また、広域に通う生徒たちが多いですので、学割だったりとか交通費の問題等にもなります。また、給食についても整備されている地域とされていない地域がございますので、そうしたところの観点も重要だと考えます。
また、最後ですけれども、夜間中学が設置されていない地域についてはなかなか設置への働きかけというのが今現状としては難しい状況で、この普通教育機会確保法ができても設置されない。例えば、私が今住んでいます愛知県名古屋市については全くその動きがないというのが現状です。
ですので、今施行しているこの法律は議員立法での理念法になっているというところが強くあるかと思いますので、是非これが執行できる、運用されるための法律を併せて設置していただきたいということを強く望みます。
○岩渕友君 ありがとうございます。
小島参考人にもう一つお伺いをしたいんですけれども、実は先週の参考人質疑のテーマは子供の貧困だったんですね。これをテーマにいろいろ参考人質疑やったんですけれども、この中でも、新たな課題ということで、外国にルーツを持つ子供たちへの対応が重要になっているんだということでお話をされた、資料を出された参考人の方もいらっしゃったんですね。
それで、貧困の解消ということと関わって、外国人の子供たちの教育の重要性についてどんなふうにお考えか、お聞かせください。
○参考人(小島祥美君) 御質問いただきまして、ありがとうございます。
これは、やっぱり日本の姿勢が世界に問われているというふうに私は考えます。といいますのも、この二〇三〇年までに全ての子供たちに教育を、つまり、このバッジにある持続可能な開発目標がされているにもかかわらず、日本はいまだに全ての子供たちが教育にアクセスできるような体制がつくられていないというのは大変恥ずかしい、ゆゆしき国だと思うんですよね。私も日本人としてとても恥ずかしいです。オリンピックを迎えようとしている、開催しようとしているこの国で、その子供たちが、様々な国の方たちがいらっしゃるこの国で、その国の方たちが学校に行けないような状況があるというのは大変恥ずかしいと思うんですよね。
ですので、この誰一人取り残さないという施策をやはり日本が、日本の姿勢をやっぱり世界に見せてほしいというふうに私は考えます。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、南野参考人にお伺いをします。
事前に配られた資料の中で、参考人が外国人女性の自立と福祉的課題について書いた資料が掲載をされていたので、それを読ませていただきました。外国人女性が日本で抱える問題とその解決のために必要なことについて詳しく教えていただきたいというのが一つと。
この資料の中で参考人がこんなふうに述べていらっしゃって、外国人女性に立ちはだかる自立の壁は、日本人の女性が経験をしている自立の壁がまずあって、その日本のジェンダーの解消こそが外国人女性が抱える福祉課題の改善につながると、こういうふうに述べていらっしゃるんですね。こういう点で、その日本のジェンダー解消の重要性について参考人がお考えのことをお聞かせください。
○参考人(南野奈津子君) 御質問ありがとうございます。
まず、一点目、二点目、重複するかと思うんですけれども、まず一点目で、外国人の女性のジェンダー問題として解決すべき課題ということでよろしかったでしょうか。
○岩渕友君 今日は、その外国人の女性の自立と福祉課題についてはお話がなかったということがあるので、その外国人女性が日本で抱えている問題について、その問題と解決の中身について教えてください。
○参考人(南野奈津子君) ありがとうございます。
私は、外国人母子世帯の調査を、インタビュー調査をやったことがあるんですが、ある事例をお話ししたいと思います。
その方は、日本には興行という在留資格で来て、フィリピンパブでずっと仕事をされていて、その後、日本人の男性と出会い、結婚をしたんですけれども、DVが原因で離婚をされました。彼女は日本に来てすぐ興行の仕事でパブで仕事をしていて、日本語はカラオケの画面で覚えたというふうにその方はおっしゃっていたわけです。お客さんとのその会話と、そういったカラオケなどで日本語を覚えたと。その後、子供ができて、離婚をした際に、DVで離婚されたわけですが、彼女にとっての働くスキルは日本ではその仕事しかなかったわけですね。そうすると、その仕事に就くと、子供がいたので子供の保育をどうするかといったときに、日本の公的保育は基本的には昼間働く人を基本にしている制度になっていますので、やはり夜働く女性としては、これは日本の母子世帯にも多くあることですけれども、やはり高い認可外の、時には質もなかなか高いとは言えないようなサービスを一時間千円から千五百円ぐらいで利用していた。それだともう働いているのか何をしているか分からないと。だから、彼女の場合には、その子供を一旦母国の家族に預けて、自分はその子供の生活費をまた稼ぐ、御自身の生活費も稼ぐためにまた夜の仕事に戻られた、でも昼はクリーニング工場か何かで仕事をされていたということがあります。
そういった女性の、日本は、特にその外国人に限らず、そういった接待業というか、そういった仕事で稼ぐことでしか子供を育てることが困難になるという女性は国籍にかかわらず一定数いるわけですね。ただ、日本の保育制度がそういった女性たちは必ずしも対象にしていない現状があるということと、そういったスキルが十分にない女性が昼間、例えば職に就けたとして、日本の現状の待機児童問題というところでいうと、やはり子供を預けたくても預けることができないといったような、外国人でなくて日本人の多くが直面するような壁にぶつかる。そういった形で、特定の職業しか就くことができないような日本でのその就労能力を持っている女性にとっては、日本社会をやはり生きていくのは、やはり日本人女性以上に非常に厳しい状況があります。
彼女は、小学校の入学の時期に子供を呼び寄せしたんですけれども、保育園に子供が行っていると、それを通じて日本のしきたりや習慣をだんだん学んでいくということが非常に大きいです。プリントなんかを読んで日本語を身に付けていく、日本の行事を学んでいく、こういったことがあるんですけれども、そういったことがすぽっと抜けたまま子供が小学校になってぽんと日本に帰ってきたので、やはり小学校に子供が入ったときに親がやる様々な、もう巾着を作るみたいなことから含めて、日本の教育に関する知識もないまま急に親としての生活が始まるといったような課題を彼女は非常に抱えていて。そういった面では、子供の教育支援、サポートについても、御自身の就労能力を高めるということについても非常に苦労されて、いまだ生活保護を受給していたという事例がありました。
今の事例なんかは、非常にそのジェンダーの問題、日本での就労状況が男性ではなく女性にどうしても子育ての場合には偏っているということも非常に大きな影響がある問題として捉えております。
○岩渕友君 貴重な御意見いただきました。ありがとうございました。
以上です。