本会議、予算委員会

原発事故を忘れ、原発回帰に大転換する原発推進法案の問題(本会議)

2023年5月10日(水) 参議院 本会議「GX脱炭素電源法案」(原発推進等5法案)代表質問
テーマ:原発事故を忘れ原発回帰に大転換する原発推進法案の問題


◎事故の責任とれるのか/原発法案の撤回要求/参院本会議で岩渕議員
 原発推進等5法案(GX電源法案)が10日、参院本会議で審議入りしました。同法案は原子力基本法など5本の改定を束ねた法案。日本共産党の岩渕友議員は、脱炭素やエネルギー危機を口実に、原発事故の反省も教訓も投げ捨て原発回帰に突き進む政府を厳しく批判。岸田文雄首相に対し「安全神話に陥り、再び事故を起こしたら責任をとれるのか」と迫りました。(質問要旨4面)
 同法案は、運転期間を制限する条文を、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法から削除し、推進側である経済産業省が所管する電気事業法に移します。岩渕氏は「規制委員会の独立性に重大な疑念を抱かせる」と指摘。改定により経産相の認可で運転期間の60年超を可能とする上、延長回数の限度がないと批判しました。
 また、原子力基本法の改定で原発の活用を「国の責務」とし、原子力産業の安定的な事業環境の整備などを新設することをあげ、「将来にわたって原発を活用するための法的な枠組みづくりだ」と追及しました。
 岩渕氏は、原発を優先する送電網の利用ルールが再生可能エネルギーの導入を阻み続けていると指摘し、「原発を最優先とするルールこそ抜本的に変えるべき」と主張しました。
 岸田首相は、原発の安全性について「事故の防止に最善かつ最大の努力をしていく方針を明記している」などと無責任に答弁。高市早苗科学技術政策担当相は、国の原子力産業への支援について「従来の政府方針を明確化するもの」とまともに答えませんでした。


◎原発推進等5法案/岩渕氏の質問/参院本会議/要旨
 日本共産党の岩渕友議員が10日の参院本会議で行った原発推進等5法案に対する質問(要旨)は次の通りです。

 法案は、脱炭素やロシアのウクライナ侵略によるエネルギー危機を口実に、東京電力福島第一原発事故の反省も教訓も投げ捨て、原発回帰へと大転換するものです。
 原発事故から12年余りたった今も、原子力緊急事態宣言はいまだ解除されず、ふるさとに戻ることができない方々は8万人を超えるといわれています。福島県内はもちろん全国で、「事故をもう忘れたのか」という声があがっており、断じて許されません。
 この深刻な事故をうけて、原子力規制委員会が設置され、安全規制として、運転期間は原則40年、例外的に一度に限り20年延長できると原子炉等規制法(炉規法)が改正されました。
 ところが法案は、運転期間を制限する条文を炉規法から削除し、推進側である経済産業省所管の電気事業法に移すとしています。山中伸介原子力規制委員長は、「運転期間の規定は安全規制ではない」という誤った答弁を繰り返しています。これは規制委の独立性に重大な疑念を抱かせ、炉規法改正時の解釈を根本的にねじ曲げるものではありませんか。さらに、経産相の認可で20年以上の延長を可能とし、延長回数の限度はありません。
 原子力基本法の改悪は極めて重大です。原発を電源の選択肢として活用し続けることを国の責務として新設し、原発の推進を事実上規定しています。さらに、国の基本的施策として、原発技術の維持と開発の促進、原子力産業基盤の維持強化、原子力産業の安定的な事業環境の整備なども行うべきとしています。原子力産業を政策的に保護し、将来にわたって原発を活用するための法的な枠組みをつくることになります。
 原発事故の最大の教訓は、原発を推進する経産省の中に、規制する役割をもった当時の原子力安全・保安院があったこと、規制する側が電力会社に取り込まれる「規制のとりこ」の構造に陥っていたことにあります。ところが、原発の運転期間をめぐり、資源エネルギー庁と原子力規制庁が非公式に面談を重ねていたことが明らかとなりました。推進による規制への介入に他なりません。
 これまで政府は、原発の依存度は低減する、新増設など想定していないと述べてきました。ところが、国会と国民にまともな説明もないままであり、立法過程をみても原発事故の反省と教訓をないがしろにするものです。
 「再生可能エネルギーの最大限導入」を掲げながら、稼働していない原発を優先する送電網の利用ルールになっており、大手電力会社は再エネの出力抑制を繰り返し、再エネの導入を阻み続けています。原発を最優先とするルールこそ抜本的に変えるべきです。
 世界の流れとなっている原発からの撤退、石炭火力発電の全廃と徹底した省エネ、再エネの大量導入で脱炭素を実現するべきです。


◎国会発/胸に迫った岩渕質問
 「法案の問題の本質をつき、胸に迫るものがあった。私たちにとっても原点を思い起こさせる討論だった」―。原発回帰に大転換する原発推進等5法案の審議が、参院で始まった10日。同法案に反対し、国会前で抗議行動を続ける国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花事務局長は、本会議での日本共産党の岩渕友議員の質問を聞いて、このような感想を寄せました。
 岩渕氏は質問の冒頭で、「私たちが奪われ、失ったものは、家族・住民、民俗・芸能、歴史・伝統、自然・風土、地域社会、そして、これら一切に対する誇り、矜持です。地域の過去・現在・未来、人生そのものを奪われ、失った」と、被災地の住民の声を紹介。岸田首相に対し「安全神話に陥り、再び事故を起こしたら責任をとれるのか」と迫りましたが、首相は何も答えられません。
 「岸田首相の答弁は質問に真正面から向き合うものではありません」と満田さん。「あたり前の議論ができず、悲しくなります」と述べ、「本来は政府与党の人たちにもこの原点を思い起こしてほしい」と話します。
 満田さんは今後の国会の審議に「多くの市民が見守っていることを、国会議員は忘れないでほしい。法案の問題に切り込んでいってほしい」と、期待を寄せます。
 事故の教訓から、原発への依存度を低減し、新増設は想定していないとした方針を投げ捨てる法案を、国民の声を無視して進めることは許されません。


◎終盤国会/「悪政4党連合」自・公・維・国VS共産党・市民、鮮明に/悪法のひどさ・矛盾浮き彫り
 6月21日の会期末まで1カ月を切った国会は、いま参院で悪法とのたたかいが正念場を迎えています。自民、公明、維新、国民民主の「悪政4党連合」によって悪法が衆院で次々と強行される一方で、悪法に反対する市民の怒りや専門家の批判、日本共産党の国会論戦などで悪法のひどさや矛盾が浮き彫りになっています。参院で廃案にとさまざまな分野での新しい世論と運動の広がりが起きています。

原発推進等5法案
 原発回帰への大転換を進める原発推進等5法案(GX電源法案)とのたたかいも参院で正念場を迎えています。同法案は、原発の「60年超」運転を可能にするため、運転期間を制限する条文を原子炉等規制法から削除し、推進側である経済産業省が所管する電気事業法に移します。
 日本共産党の岩渕友議員は参院で審議入りした10日の本会議で、脱炭素やエネルギー危機を口実に、原発事故の反省も教訓も投げ捨て原発回帰に突き進む政府を厳しく批判。首相に「安全神話に陥り、再び事故を起こしたら責任をとれるのか」と迫りました。原発優先の政策が再生可能エネルギーの導入を阻んでいると指摘し、「原発からの撤退、石炭火力発電所の全廃と徹底した省エネ、再エネの大量導入で脱炭素を実現するべきだ」と求めました。
 同法案をめぐっては、福島大学名誉教授ら9人が22日、福島県での地方公聴会開催を求める要望書を参院経済産業委員会に送付するなど、原発事故の被害者を置き去りにしたまま、審議をすすめることに抗議の声が高まっています。

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