テーマ:原発事故避難地域のくらし再生が重要/医療・介護の減免つづけよ/汚染水廃液被ばく問題
(議事録は後日更新いたします)
福島第1原発/廃炉作業の総点検を/岩渕氏、廃液飛散事故の責任追及/参院復興特委
日本共産党の岩渕友議員は6日の参院震災復興特別委員会で、福島第1原発の汚染水を処理する多核種除去設備(アルプス)の配管洗浄作業中の作業員が、放射性物質を含む廃液を浴びる事故が発生した件について質問。岩渕氏は同様の事故は直近で2011年3月24日以来であることを確認し、「極めて深刻な事態」と指摘し、「緊張感の緩みを疑わざるを得ないという声もある。東京電力は自らの責任についてどう考えているのか」と追及しました。
東電の酒井大輔副社長は「経営一同相当重く受け止めている」と答えました。岩渕氏は「東電に再稼働する資格などない。海洋放出を中止し、廃炉作業の総点検を行うべきだ」と迫りました。
岩渕氏は、現時点で帰還困難区域が310平方㌔㍍残され、「帰還を希望する住民の自宅とその周辺だけの限定的な除染では日常生活が成り立たない。避難地域全域の除染が重要だ」と指摘しました。土屋品子復興相は「全てを避難指示解除し、復興再生に責任を持って取り組む」と述べました。
岩渕氏は、避難指示が解除された地域での医療・介護保険料等の減免措置の段階的な縮小について、「生活となりわいの再建ができていないなかでの支援打ち切りは影響が大きすぎる」として方針見直しを主張しました。
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
2023年12月6日(水) 参議院 東日本大震災復興特別委員会
「土屋品子復興大臣の所信的挨拶を受けての質疑」
○岩渕友君
日本共産党の岩渕友です。
東京電力福島第一原発事故から間もなく12年9か月になります。飯舘村から福島市に避難をし、村に通いながら農業を続けている方から、避難をすればいいということにはならない、東京電力から、賠償金で家を建て、町で暮らしている今の生活の方がいいのではないか、こんなふうに言われたけれども、避難でなりわいを失い、近所の人たちとの安心して暮らせるコミュニティーを失った、子供や孫に囲まれて暮らしてきたけれども大家族がばらばらになった、原発事故によってむごい仕打ちを受けた、基本的人権の侵害だという訴えをお聞きしました。この方は、さらに、村の農業を再興させるために村に戻って頑張っている人がいる、自分のように村に通いながら農業を続けている人がいる、地域の文化も守りたいと思っている、こうした人たちを大事にしてほしいという話もお聞きしました。
大臣、こうした訴えを聞いてどのように思われたでしょうか。そして、原発事故がもたらす被害についてどのように認識していらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(土屋品子君)
原発事故で今でも避難している皆様、全国津々浦々いらっしゃって、それをサポートしている方たちと、昨日ですか、お会いしていろんな話をさせていただきました。その中でも、今のお話、2か所、要するに、避難元とそれから自分の、例えば福島のどこかの町に住んでいらしたら、そこを行ったり来たりしている人も多くて、そしてまた、帰りたいけど帰れない思いの方が結構いると、それと、帰るというこの結論を出せないでいるというような方が多いように感じました。そういうことを考えますと、やはり一日も早く、農業であれば農業ができるような原状復帰をすることが大変重要かなと思います。
ですから、農業をやりたい、戻りたい、だけど、あの被災、発災した直後の畑は今も直後のままではない、行ってみたらもう本当にどこが畑だったのというような状況でありますから、そういう意味では心が痛みますけれども。
私たちがやれることは、拠点区域外の避難指示解除に向けた取組をしっかりと進めていくこと、そして住民の帰還や移住を実現していくため、インフラ整備と併せて、交流人口、コミュニティーが崩壊していますので、交流人口を増やしていく、関係人口の創出、拡大も図っていく、それと同時に、働く場所、なりわいをつくっていく、また、町のにぎわい創出などを全体として前へ進める。当たり前のことかもしれないけど、それが今できていない状況だと思っておりますので、これからも一生懸命進めていきたいと思います。
○岩渕友君
原発事故によって今も避難指示が出されている帰還困難区域のうち、先行して除染などを進めてきた特定復興再生拠点区域の避難指示解除が行われて、11月30日に富岡町の拠点区域の避難指示が解除をされて、全ての拠点の避難指示が解除をされるということになりました。
現時点での帰還困難区域の面積がどのぐらいでしょうか。そして、帰還困難区域全体のうち、この特定復興再生拠点区域の割合はどのぐらいになっているでしょうか。
○政府参考人(桜町道雄君)
お答え申し上げます。
特定復興再生拠点区域の避難指示解除前の帰還困難区域全体の面積は約337平方キロメートルでございました。このうち、特定復興再生拠点区域の面積は約27平方キロメートルでございます。
○岩渕友君
つまり、拠点の解除の後は300大体10平方キロぐらいということですよね。これだけの面積というのは、東京23区の大体半分ぐらいなんです。
このうち、今お答えはなかったんですけど、拠点の割合どのぐらいかということでいうと、大体1割ぐらいだということでいいのかな。
○政府参考人(桜町道雄君)
お答え申し上げます。
約8%程度でございます。
○岩渕友君
今、8%ということでしたけど、それだけしか解除されてないということなんですよね。
しかも、11月30日に富岡町で解除をされたのは墓地や集会所と幹線道路などで、居住地は含まれていません。事故から12年以上掛かってようやくお墓参りが自由にできるようになったという、そういう状況なわけですよね。
住民の方々からは面的な除染を求める声が上がり続けています。今後は特定帰還居住区域を設定して避難指示を解除する方針になっていますけれども、これは、帰還を希望する住民の自宅、そしてその周辺を除染するものです。限定的な除染では日常生活成り立たないということは通常国会のときも議論をしました。自治体も住民も面的な除染を求めてきています。それが行われないまま帰還するかどうかということを住民に迫ることに対して、順番が逆じゃないかという怒りの声が上がってきました。
これまで政府は、帰還困難区域全ての避難指示を解除すると言ってきました。その前提は除染です。大臣にはそうした認識があるでしょうか。そして、帰還希望の有無を問わず避難地域全域の除染、環境整備を行って、いつでも安心して戻ることができるようにする、このことが重要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(土屋品子君)
除染は大変時間の掛かるものでありますが、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除して、復興、再生に責任を持って取り組むとの決意には揺らぎないものであります。
地元の強い要望を受け止め、まずは2020年代をかけて、帰還意向のある住民の方々が全員帰還できるよう、本年6月に改正福島復興再生特別措置法が公布、施行されたところでありますが、まずは帰還意向のある住民の方々が一日も早くお戻りいただけるよう、市町村で今意向調査をしていると思いますけど、それを踏まえて除染、インフラ整備等を進めていきたいと思っております。
また、引き続き、残された土地家屋等の取扱いについても、地元自治体も含めて、関係者との協議をこれからも重ねて検討してまいりたいと思っています。
○岩渕友君
帰還希望の有無にかかわらず全域の除染を行うべきだということを改めて求めておきます。
帰還をされる方々の中には高齢な方も多くてですね、介護とか医療が非常に重要になっています。ところが、介護人材が不足をしていたり、医療や介護を受けるということが困難な実態になっています。けれども、政府は、避難指示が出ていた地域の住民を対象に減免をしてきた医療・介護保険料等の減免措置の見直しを行っています。
資料を見ていただきたいんですけれども、医療・介護保険料等の減免措置については、この資料のように、2014年から2017年までに避難指示が解除された地域について段階的な縮小が行われて、早い地域では来年度末でもう終了ということになるんですね。
大臣に伺うんですけれども、原発事故によって生活となりわいの再建がまだまだ十分できていないという下で支援を打ち切るのは影響が大き過ぎるという訴えも寄せられているんですね。打切りの方針を見直すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(土屋品子君)
この原発事故により設定された避難指示区域等に移住されていた方々について、医療・介護保険等の保険料、窓口負担の減免措置を実施してきたところでございます。
本措置については、第二期復興・創生期間以降における東日本大震災からの復興の基本方針を踏まえまして、関係自治体とも御意見をお伺いしながら、昨年の4月、本措置の見直しを決定した次第でございます。
この本決定に関しては、関係自治体の御意見を踏まえたわけですけど、急激な負担増にならないよう、避難指示解除から10年という十分な経過措置をとるとともに、複数年掛けて段階的に見直すこととしておりまして、平成29年4月までに避難指示が解除された地域については、令和5年度より順次見直しを開始しているところでございます。
それについてですけど、本特例措置の終了後も、所得の低い方に対しましては通常の保険料の負担軽減措置が講じられ、個々の事情に応じた納付相談が実施されるようにするなど、厚生労働省とも連携してきめ細やかな対応に努めてまいりたいと考えております。
○岩渕友君
避難地域の医療費等の減免は住民の命綱なんですよね。避難指示解除から何年ということで区切るような機械的な対応ではなくて、実態に合わせた対応が必要だということを改めて求めておきます。
医療体制は、今お話ししたように、回復したとは言えない状況だと。で、実際には、高齢化が進んで現役世代が減少をして、介護人材の不足も深刻だと。医療や介護の体制の整備を始め、生活となりわいの再建にこそもっと予算を回すべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(土屋品子君)
私も地域行きまして、やっぱり最初に要望を聞くと、やはり医療の心配というのは大変多いです、あと、戻ってきたいけど、医療が自分の住まう予定のところの周辺にないからやはり不安で帰ってこられないという声も大変聞いております。これは極めて重要な課題だと思っております。
基本方針に従って、これまでも福島県双葉郡等における医療提供体制の再構築に関して、地域医療再生基金を活用して医療機関に対する施設、設備整備や事業再開後の経営確保、医療従事者確保を行う、医療機関への人件費等の支援、被災地域等の医療機関での勤務を希望する医学部生への修学資金貸与など支援を行ってきたところでございます。また、介護提供体制に関しても、介護施設等への就労希望者への貸与等による人材確保、施設への運営支援を行ってきたところでございます。
いずれにしましても、この被災地だけでなく、全国的に介護においても医療に対しても人手が足りない中で、福島県関連において医療、介護の人を集めてくるのは大変かもしれませんけど、厚生労働省と連携して、最大限努力をしていきたいと考えております。
○岩渕友君
避難指示が解除されればそれで終わりということではないわけですよね。将来のビジョンが見えないとか、何に向かって進めばいいのか分からないといった声や、原発事故などなかったことにされようとしているといった危機感など、避難を強いられていた、強いられた方々がこんな思いを抱くような状況では、とても復興などとは言えないんですよね。政府と東京電力が被害者の生活となりわいの再建に最後まで責任を果たすよう、強く求めます。
次に、先ほども議論ありましたけれども、10月25日に発生をした東京電力福島第一原発内の増設ALPSにおける配管洗浄作業中に、放射性物質を含む廃液を作業員が浴びた事故について質問をします。
身体汚染があった方のうち2名は、管理区域からの退域基準以下になるまでの身体除染作業が発電所構内では困難というふうに判断をされて、福島県立医大に搬送をされました。今回のように、管理区域からの退域基準以下になるまで身体除染ができずに、病院に搬送された事態があったのは直近ではいつのことでしょうか。
○参考人(酒井大輔君)
東京電力ホールディングスの酒井でございます。お答え申し上げます。
今回の事案のように、身体汚染によりまして構内の退出基準を満足できずに病院へ搬送された事例は、2011年3月24日以来となります。
○岩渕友君
今の答弁のとおりで、2011年の3月24日ということは事故直後ということですよね。今よりも非常に混乱していたと思うんですよ。だけど、あれからもう12年以上たっているわけですよね。それ以来ということを見ても、今回の事故は極めて深刻な事態だということです。
事故をめぐっては、被曝された2人の作業員の方が本来であれば着用するべきかっぱも着用してないということで、山中規制委員長も東京電力の管理不十分だという見解を示しています。
さらに、東京電力は、現場にいた作業員は当初5人と言っていたけど実際には10人だと、東京電力は最初から知っていたという話も先ほどありました。飛び散った廃液の量が当初100ミリリットルと説明していたものが実際には数リットルだったということや、東京電力の管理体制や情報公開の在り方など、何重にも問題があると言わざるを得ないんですよね。
東京電力は、今回の事故について深刻な事態だと認識をしているのでしょうか。また、自らの責任についてどう考えているのでしょうか。
○参考人(酒井大輔君)
当社は、福島第一の運営主体として適切な作業環境を維持管理する責任があると、このように考えてございます。したがいまして、今回の事態につきましては、経営一同、本当に相当重くこの事態を捉えております。
本事案の原因究明ですとか再発防止に向けまして、東芝エネルギーシステムズへのヒアリングを実施し、また東芝エネルギーシステムズにおいて請負契約上求めている要求事項、作業計画、そして防護装備を含む現場管理等でございますけれども、こちらが一部遵守されていないことが確認されております。このため、作業管理や防護設備を含め、現場の管理等が適切となるように、東芝エネルギーシステムズ社には是正を求めているところでございます。
また一方で、今回の事案を受けまして、福島第一原子力発電所構内で実施する全ての現場作業におきまして安全管理体制の確認を実施してございます。
福島第一の運営主体である当社といたしましても、今回の事案を踏まえました再発防止策、これを検討、実施進めるとともに、今後も廃炉作業におけます安全確保に万全を尽くしてまいりたいと思います。
以上でございます。
○岩渕友君
もうこの東京電力の責任、重大なんですよね。
地元紙などでは、緊張感の緩みを疑わざるを得ないとか、受注先の不備を見抜けなかった責任は大きいとか、原子力施設はささいな油断やミスでも大事故につながるといった厳しい意見が相次いでいるんです。また、多重下請構造を明らかにしてやめるべきだという声も上がり、北海道新聞は社説で、処理水放出にも懸念が生じるだろうとして、放出を一時中断して廃炉作業を総点検するべきだと書いているんですね。
大臣に伺うんですが、今回の事故について、東京電力の責任についてどう考えているでしょうか。東京電力に再稼働する資格などとてもないと言わざるを得ないし、海洋放出を中止して廃炉作業の総点検を行うべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(土屋品子君)
私は、10月7日にALPSの処理をしている状況を見に第一原発に行きまして、その後の25日にこの配管洗浄作業における事故が起きたということでは、もう大変なショックでございました。残念でならなかったということです。
お邪魔したときにも、何しろ、ちょっとした事故でもあったら本当にこれは続けることも難しくなる可能性があるから、しっかりとやってくださいということを言って帰ってきた直後でございましたので、本当にショックでございました。
しかし、私たちは、この廃炉に向けてALPS処理水を海洋放出するという決定、それはいろんな御意見もあると思いますけれども、これを着実にやっていかなければ廃炉は完成できないと私も考えておりますので、そういう意味では、東京電力が本当に今回の事件を通して、今までにもあった同じような事件、事故を本当に起こさないためにどうしたらいいか徹底的に社内でチェックをしていく、そして何重にもチェックをしていろいろな作業をするということが必要なんではないかと思っています。
そういう意味では、廃炉作業を安全に行うために、これからも東京電力以外に、まあ自分、原因をつくったところですから、原因をつくったところが最後まで責任を持っていくということが重要だと思っておりますので、再発防止を徹底してもらいたいと思います。
○岩渕友君
とても任せられるような状況じゃないってことなんですね。
海洋放出の中止と廃炉作業の……
○委員長(野田国義君)
時間が来ましたので、まとめてください。
○岩渕友君
はい。
総点検を行うこと、再稼働をやめて廃炉にこそ予算も人員も集中するべきだということを政府と東京電力に求めて、質問を終わります。