北朝鮮に対する輸出入全面禁止措置の期限を延長する承認案が9日の参院本会議で全会一致で可決されました。採決に先立ち、日本共産党の岩渕友議員が8日の参院経済産業委員会で質問しました。
岩渕氏は、前回の制裁措置以降も北朝鮮が、2016年に核実験を実施し、弾道ミサイル発射を繰り返していることに言及し「累次の国連安保理決議、6カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言にも違反をする度重なる暴挙であり、断じて許せない」と厳しく批判。2日に採択された国連安保理決議では「対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にするための努力を歓迎して、緊張緩和のための取り組みの重要性を強調している」と指摘し、政府の姿勢をただしました。
世耕弘成経産相は「北朝鮮に対して諸懸案の包括的な解決に向けた具体的な行動を取るように強く求めていく」と答えました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
外為法に基づく北朝鮮に対する輸出入禁止措置の延長に係る事後承認案件について質問をいたします。
北朝鮮が今朝、短距離の地対艦巡航ミサイルと見られる飛翔体を数発発射したと報道がありました。日本共産党としても、この暴挙に対して改めてこの場から強く抗議をしたいと思います。
北朝鮮が前回の制裁措置以降も二〇一六年九月に核実験を実施し、二〇一七年の二月、三月、そして五月には三週連続で弾道ミサイルを発射していることは、世界平和と安定への重大な脅威です。累次の国連安保理決議、六か国協議の共同声明、日朝平壌宣言にも違反をする度重なる暴挙であり、断じて許されません。強く抗議をするものです。
同時に、平和的、外交的解決の努力を抜本的に強めることが求められております。外為法に基づく我が国独自の北朝鮮に対する輸出入を全面禁止する制裁措置は、先ほどの趣旨説明にもあったように、二〇〇六年十月に北朝鮮が初の地下核実験を実施した発表を受けて北朝鮮からの輸入の禁止などの措置が実施をされて、二〇〇九年の五月に北朝鮮による二度目の核実験が実施された旨の発表を受けて六月に北朝鮮への輸出の禁止などの措置が実施をされました。
我が党は、前回の延長の承認について、問題の平和的、外交的解決を図るための手段として賛成をいたしました。今回、新たに同様の措置について二〇一九年の四月十三日まで二年間延長することについても、賛成の立場で質問をいたします。
初めに、六月二日に国連安全保障理事会で採択をされた決議について伺います。
北朝鮮による累次の弾道ミサイル発射等に関する安保理決議第二三五六号の概要について説明をしてください。
○政府参考人(飯島俊郎君) お答えいたします。
安保理決議第二三五六号は、その前文において、北朝鮮が度重なる弾道ミサイルの発射等を通じて安保理決議に違反し続けてきたことに深刻な懸念を表明するとともに、北朝鮮の禁止された武器販売が核兵器及び弾道ミサイルの追求に流用される収入を生み出してきたことに強い懸念を表明しております。
また、主文におきましては、北朝鮮による核兵器及び弾道ミサイルの開発活動を最も強い表現で非難しております。加えて、北朝鮮が全ての核兵器及び既存の核計画を完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄し、全ての関連活動を直ちに停止し、弾道ミサイル技術を使用したいかなる発射、核実験又はその他のいかなる挑発もこれ以上実施をせず、弾道ミサイル計画に関連する全ての活動を停止し、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再確認し、その他のいかなる既存の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画も完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で放棄するとの決定を再確認しております。
その上で、資産凍結及び入国・領域通過禁止の対象として十四個人、資産凍結の対象として四団体を新たに追加指定しているところでございます。
○岩渕友君 今、概要の説明をいただきました。この安保理決議について、外務省はどのように受け止めているでしょうか。
○政府参考人(飯島俊郎君) お答えいたします。
御指摘の決議第二三五六号が安保理の全会一致で採択されましたことは、国際社会が一致して北朝鮮に対する圧力を強化する意思の表れとして評価しております。北朝鮮が国際社会の度重なる警告を無視して挑発を続けていることは、断じて容認できるものとは考えておりません。
政府としましては、北朝鮮に対し、国際社会の声を真摯に受け止め、関連安保理決議を厳格かつ全面的に実施し、更なる核実験や弾道ミサイル発射等の挑発行動を行わないよう強く求めていくこととしております。
○岩渕友君 今、安保理決議が全会一致で採択をされたというふうに答弁がありました。
そこで、国連安保理決議の位置付けについて改めて確認をしたいので、説明をお願いします。
○政府参考人(飯島俊郎君) お答えいたします。
国連の安保理は、国連憲章第二十四条に基づき、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を負っております。そうした安保理の決議は安保理が国際社会に対して示す公式な意思表明であって、また、国連の全加盟国を法的に拘束する決定を行うことも可能となっております。
我が国としましては、北朝鮮に対し、一連の安保理決議を厳格かつ全面的に実施し、更なる挑発活動を行わないよう強く求めていくものでございます。
○岩渕友君 今答弁にあったように、国連安保理決議の位置付けというのは法的な拘束力があると、そういったものであるというふうに答弁をいただきました。非常に重要な位置付けになっております。
今回の安保理決議で、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にするための努力を歓迎して、緊張緩和のための取組の重要性を強調している、これが非常に重要だというふうに考えるわけなんですけれども、この部分について外務省はどのように評価をしているでしょうか。
○政府参考人(四方敬之君) お答え申し上げます。
平和的、外交的に問題を解決することが重要であるということは言うまでもないと考えております。ただし、対話のための対話では意味がないというふうに考えております。北朝鮮との意味のある対話のためには、北朝鮮が非核化に向けた真剣な意思や具体的な行動を示すことが重要と考えておりますが、北朝鮮は五月二十九日も弾道ミサイルを発射しておるような状況でございまして、今は対話ではなく関係国と連携しながら北朝鮮への圧力を強化することが必要であると考えております。
その点につきましては、五月二十六日の日米首脳会談、六月三日の日米外相電話会談でもこういう方針を確認しておりまして、我が国とアメリカ政府との立場は完全に一致しております。
我が国といたしましては、対話と圧力、行動と行動の原則の下、引き続き、米国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、北朝鮮に対して諸懸案の包括的な解決に向けた具体的な行動を取るように強く求めてまいる所存です。
○岩渕友君 そこで、大臣にお聞きをいたします。
この安保理決議の平和的、外交的、政治的解決というところが重要だというふうに考えるわけなんですけれども、大臣はこの部分をどのように評価しておられるでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) まず、今の情勢の認識としては、私は、北朝鮮は国際社会による働きかけにもかかわらず安保理決議に違反をして核実験や度重なる弾道ミサイルの発射を行っているわけでありまして、これはもう我が国にとって新たな段階の脅威であるというふうに思っております。我が国及び国際社会の安全保障に対する明らかな挑発行為でありまして、これは断じて容認ができない。また、こういうことを受けて、六月二日には制裁内容を更に強化をした国連安保理決議も行われて、国際社会の北朝鮮に対する圧力を強化する意思というのが表明をされたということだと思っています。
それに加えて、我が国にとっては最重要課題でもある拉致問題がありまして、一日も早く全ての拉致被害者の帰国を求めてきているわけですけれども、現時点においても解決には至っていないというわけであります。
そういう中で、外為法に基づく北朝鮮に対する輸出入の全面禁止措置は、こうした情勢を踏まえて、我が国の平和と安全を維持するための日本独自の強い措置でありまして、我が国の断固とした姿勢を示すものであります。
経産省としては、引き続き、関係省庁と緊密に連携をしながら、この措置の厳格な執行を行っていきたいと思います。
日本としては、今後も、対話も重要でありますが、やはり対話と圧力、そして行動対行動の原則の下で対応をしていきたいというふうに思っております。アメリカや韓国を始めとする国際社会と緊密に連携をしながら、北朝鮮に対して諸懸案の包括的な解決に向けた具体的行動を取るように強く求めてまいりたいというふうに思います。
○岩渕友君 安保理決議を受けて、先ほどの答弁の中にもあったんですけれども、六月三日に岸田外務大臣が米国のティラーソン国務長官との電話会談を行って、安保理決議を歓迎することで一致したと、こういった会談だったというふうに聞いております。この会談の内容はどのようなものだったのか、説明をお願いします。
○政府参考人(四方敬之君) お答え申し上げます。
国連安保理決議二三五六号の採択を受けまして六月三日に行われた日米外相電話会談におきまして、岸田大臣とティラーソン国務長官は、今般採択された国連安保理決議を歓迎し、北朝鮮に対し更に圧力を強化していくことが重要であり、国連の場を含め、日米、日米韓で連携を強化していくことを確認いたしました。また、北朝鮮問題の解決に当たっては、中国、ロシアの建設的な役割が重要であり、日米で連携して働きかけていくことで一致いたしました。
引き続き、米国を始めとする関係国と緊密に連携しながら、北朝鮮に対して諸懸案の包括的な解決に向けた具体的な行動を取るよう強く求めていく所存でございます。
○岩渕友君 安保理決議を歓迎することで一致したと、そのような答弁がありました。
それで、このティラーソン国務長官は、五月三日に国務省の職員を前に講演をしていると。ここで北朝鮮に対して四つの問題を述べています。この四つの問題について確認をいたします。
○政府参考人(四方敬之君) 御指摘のティラーソン国務長官の国務省における御発言は、朝鮮半島の非核化という目標のために米国政府として北朝鮮に対する圧力を強化していく考えを説明する文脈の中でなされたものと承知しております。具体的には、米国の北朝鮮に対する圧力強化は、まず北朝鮮の体制転換、金正恩政権の崩壊、北緯三十八度線以北への侵攻、朝鮮半島の再統一の加速化を目指すためのものではないことを説明したものと理解しております。
○岩渕友君 今答弁があったように、四つの問題というのは、一つに北朝鮮の体制転換を追求しないこと、二つに金正恩政権の崩壊を目標にしないこと、三つに朝鮮半島の統一を急がないこと、四つに三十八度線を越えて北朝鮮に侵攻しないと、このことを表明したものです。ティラーソン国務長官はこの四つのことを表明をして、その上で、条件が整えば対話をする準備ができているんだと、このようにも述べております。
平和的、外交的、政治的解決が重要になっています。この問題の解決は外交的解決しかありません。経済制裁の全面実施、強化が必要ですが、その目的は対話に置かれなくてはなりません。関係国が北朝鮮との外交交渉に踏み切り、その中で、核・ミサイル開発を止めて、その放棄を迫ることが急務になっています。特に、日朝平壌宣言の当事者である日本を始め、関係国が六か国協議を含めて対話による解決を図る努力を抜本的に強めるように、このことを求めて、質問を終わります。