(資料があります)
日本共産党の岩渕友議員は5日の参院経済産業委員会で、東京電力福島第1原発事故のもとで、東電の賠償打ち切りや廃炉での相次ぐ深刻なトラブル、隠蔽(いんぺい)体質を示し、柏崎刈羽原発(新潟県)再稼働の「適格性」などありえないと主張しました。
岩渕氏は、「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で国と東電の責任を問う判決が下された一方、加害者である東電が事故との「相当因果関係」や賠償打ち切りなどを一方的に判断している実態に、福島県商工会連合会も「到底容認できない」と指摘しているのは当然だと批判しました。
また、廃炉作業でも高濃度汚染水漏出を招く水位計設定ミスが5カ月も放置されるなど、「廃炉の覚悟と実績があるとは思えない」と強調しました。
その上で、原子力規制委員会の柏崎刈羽原発6、7号機再稼働を許可する審査書案に「異存はない」と回答(10月24日)した世耕弘成経産相に、「11月3日までのパブリックコメント募集(意見公募)の結果を待たずに回答したのはなぜか」と追及。世耕氏は「パブコメは規制委が実施したもの」と答え、国民に耳を傾けない姿勢をあらわにしました。
岩渕氏は、国民の命にかかわるエネルギー基本計画を議論する経産省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の消費者代表は1人だけだとして、「国民の声が反映される仕組みをつくるべきだ」と要求。世耕氏は「検討していく必要はある」と認めざるを得ませんでした。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東日本大震災と原発事故から間もなく六年九か月がたとうとしています。十月十日、東京電力福島第一原発事故をめぐって国と東京電力に損害賠償などを求めた「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟で、国と東京電力の責任を問う判決が下されました。
判決では、国が二〇〇二年七月に地震調査研究推進本部が公表をした地震活動の長期評価に基づきシミュレーションしていれば原発敷地高を大きく超える津波を予見可能だったこと、さらに、同年末までに東京電力に対して非常用電源設備の安全確保を命じていたならば事故は回避可能だったと指摘をした上で、国が規制権限を行使しなかったのは許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠いていた、こう言って国の責任を断罪しました。
なりわい訴訟には約三千八百人の原告の方々がいらっしゃいますけれども、福島県内の全ての市町村、宮城県、茨城県、栃木県に広がっています。原発事故での被害はここまでだと線引きできるものではありませんし、被害者の皆さんの思いは一つの枠の中に収まるようなものではありません。国と東京電力は、再稼働をやめて廃炉に全力を尽くすこと、被害が続く限り賠償や除染など生活となりわいの再建に責任を持って取り組むべきです。
福島の実態は今どうなっているでしょうか。八月に会津の東山温泉観光協会で話を伺いました。教育旅行は、原発事故前は八百五十校ほどあったわけですけれども、今は六百校になっていると。県全体で観光という分野を見てみると、除染労働者の宿として使われるなど、観光での利用が落ちていて、なおかつ人手不足も非常に深刻だと、震災で離れていってしまった方たちもいるという、そういうお話をお聞きしました。原発事故による被害は今も続いています。
そこで、東京電力にお聞きをいたします。この商工業の営業損害賠償の実績はどうなっているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 東京電力ホールディングスの小早川でございます。
まず、福島第一原子力発電所の事故から六年九か月余り経過いたしますが、今なお福島地域の皆様、広く社会の皆様に多大なる御負担、それから御心配をお掛けしておりますことをまず改めておわび申し上げます。
ただいまの商工業賠償の実績についてお答えいたします。
平成二十九年十一月六日時点における商工業の、これは一括賠償の受付件数でございますが、一万五千四百件、うち合意件数は約一万四千二百件、その合意件数のうち年間逸失利益の二倍相当で合意した件数は一万百件となります。
以上でございます。
○岩渕友君 今示していただいた数字は、避難区域の中と外を合わせた数字になっています。それぞれの実態がどうなっているのかということは分からない状況になっています。少なくとも、今言っていただいた数字だけ見ても、四千百件以上は二倍相当額の賠償が行われていないということになると思います。
福島県の商工団体連合会が行った避難指示区域外の営業損害賠償に関する調査では、損害賠償を請求した事業者のうち、二倍で合意をしたという方が約二四%、一倍合意は約七〇%となっています。釣り具店を営んでいる方からは、近所にある阿武隈川は今禁漁続きで釣りをする人そのものが減っている、禁漁はいつまで続くか分からない、それなのに一倍しか賠償されなかった、こうした実態が寄せられています。一倍で合意をした方の中には、商売を続けるためには合意せざるを得ないと仕方なく合意をしたんだという方もいらっしゃって、合意をしていても賠償に納得したというわけではありません。
福島県の商工会連合会からもお話をお聞きしたんですけれども、帰還困難区域内の事業者の実態についてお聞きしました。この皆さんの実態、どうなっているか。二倍一括賠償を受けて追加分の請求を行ったところ、東京電力の審査部門から、いわき市で営業を再開している事業者もいるのに、あなたはなぜ再開しないのかと言われた。しかし、自分は地元に戻って営業を再開させたいと思っていて、営業再開の補助金は一度使えばもう使うことができなくなる、こうした対応でこれからもきちんと賠償がされるのか心配だ、こういうお話でした。
東京電力は、相当因果関係がある被害については賠償をしますと言っていますけれども、相当因果関係があると判断される根拠は何なのかと。賠償がされるかされないか、なぜこの金額が示されたのか、賠償がどういうふうに判断をされているのかがブラックボックスになっていると。被害者はこちら側なのに、主導権を握っているのは東京電力だというのはおかしいんじゃないか、こうした声が上がっています。
そこで、東京電力にお聞きをいたします。適切な賠償が行われるようにするためにも、この賠償の基準というものを明らかにする必要があるのではないでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 商工業の賠償の考え方についてお答え申し上げます。
商工業者様の営業損害賠償につきましては、避難指示区域内は平成二十七年三月より、また避難指示区域外は同年八月より、事故と相当因果関係が認められる被害を被られている方を対象として、将来にわたり発生する損害に関して年間逸失利益の二倍相当額を一括してお支払いしております。
当社といたしましては、商工業者様が営まれている事業や地域の特殊性により損害が発生している状況などが異なることから、具体的な状況についてお伺いさせていただき、内容について丁寧に御確認させていただいた上で総合的に判断させていただいております。
なお、御請求の内容を御確認させていただいた結果、事故と相当因果関係を認めることが困難と考えられる御請求につきましても、お伺いした個別事情を最大限考慮の上、一定額をお支払いさせていただく場合があります。
私からは以上でございます。
○岩渕友君 こういう東京電力の対応を受けて、九月二十日に福島県の商工会連合会が東京電力に要望を行っています。これ、小早川社長、受けたと思うんですけれども。ここにどういうふうに書かれているかというと、東京電力が個別事業者の被害と原子力発電所事故との相当因果関係の可否を一方的に判断し、賠償の切離しや打切りを厳しく提示することは到底容認できない、こういう厳しい指摘が行われているんです。これ、賠償の実態から考えれば当然の指摘だというふうに思うんですよね。
そこで、大臣にお聞きをするんですけれども、大臣は、この間何度もこの問題やり取りしてきましたけれども、東京電力が個別の事情を踏まえて対応することが必要だと、東京電力をしっかり指導していくんだというふうに言ってきました。けれども、実態はそうなっていないと。原子力経済被害担当大臣ということでお聞きをしたいんですけれども、この商工業の営業損害賠償の実態と指針を一度検証する必要があるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 私も、福島県の商工会連合会始めいろんな方々から状況は聞かせていただいています。なかなかまだ風評被害から脱することができないという悲痛な声も聞かせていただいています。
そういう中で、商工業の営業損害については、東京電力は、将来にわたる損害として、個別事情を確認の上、事故との因果関係がしっかりと確認されれば年間逸失利益の二倍相当額を一括で賠償ということになっています。その上で、平成二十七年に閣議決定をされました福島復興指針を踏まえて、東京電力は、損害が一括の賠償額を超過をした場合には、個別事情を確認の上、追加賠償するということにもなっています。
経産省としては、今後とも東京電力に対して、被災された商工業事業者の皆さんの御相談に対して個別の御事情を丁寧に把握をして、公平かつ適切な賠償を行うようしっかりと指導をしてまいりたいと思います。
また、御指摘の中間指針についてですけれども、賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲などを示したものでありまして、これは文部科学省に設置された専門家による原子力損害賠償紛争審査会が策定することになっているわけでありまして、その見直しの是非については今私の立場ではコメントは控えさせていただきたいと思います。
○岩渕友君 先ほど示した実例で、帰還困難区域でもこんな言われ方しているのかというふうに私非常に驚いたわけなんですよね。
それで、指針は上限ではないんだと、記載のない分野も賠償の対象となっているにもかかわらず、東京電力は実際には指針を上限にして賠償の対象を限定しているんだ、そういう怒りの声が上がっているわけですよね。中間指針の第四次追補は、被害者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日を賠償の終期だとしています。被害が続いているのに賠償を打ち切るということは、許されることではありません。
こうした状況の下で、東京電力は、福島への責任を果たすためだというふうに言って、新潟県の柏崎刈羽原発を再稼働しようとしています。
十月四日、原子力規制委員会は、柏崎刈羽原発六、七号機が新規制基準に適合しているとする審査書案を了承しました。これに対して、福島でも新潟でも怒りの声が上がっています。福島の原発事故は、その原因も究明されていません。事故の収束も賠償も、廃炉も見通しが立っていません。東京電力が原発を再稼働させるというのはとんでもないことです。
七月十日に規制委員会は臨時会議を開いて、東京電力の新しい経営陣との意見交換を行いました。ここで資料一を見てください。この会議で当時の田中規制委員長は東京電力に対して、廃炉の覚悟を示せない事業者に柏崎刈羽の運転をする資格はない、一にありますけれども、こういうふうに厳しく指摘をして、基本的考え方として問題意識を七点にわたって示しました。これに対して、東京電力は八月二十五日に書面で回答を行っています。
ここで規制委員長にお聞きをします。規制委員会が、東京電力に原発を運転する資格があるのか、この適格性を確認することにしたのはどうしてですか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 今回のこの審査は、原子炉等規制法に定める許可の基準のうち、発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力、運転を適確に遂行するに足りる技術的能力に係る審査の一環として行ったものであります。
今回、この審査、何より東京電力が福島第一原子力発電所事故を起こした当事者であることから、通常の審査に加えて更に深掘りをして検討をしたものであります。審査会合における技術的審査に加え、東京電力に、柏崎刈羽原子力発電所を設置し及び運転をすることにつき必要な安全に対する姿勢、安全文化その他の原子力設置者としての適格性を有するかどうかについても特に審査することとしたものであります。
○岩渕友君 今、安全姿勢、安全文化という言葉もありましたけれども、それでは、東京電力にその廃炉を主体的に取り組んでやり切る覚悟と実績があるでしょうか。
審査書案が了承される直前の九月二十八日、福島第一原発でサブドレンの水位計設定ミスが発覚をしました。ミスが見付かったのは、今年の四月十九日以降に新設をされた六か所のサブドレンピットです。水位の管理は、東京電力も規制委員会も非常に重要だというふうに位置付けています。水位管理に関わってミスがあったということだけでも重大な問題なのに、設置からミスの発覚まで五か月以上も放置されていたということは、これ大問題です。
ここで東京電力にお聞きしますが、水位計の設定に誤りがあるということでどういう事態が起きることになるでしょうか。
○参考人(小早川智明君) ただいまの水位計の設定誤りについてお答え申し上げます。
九月末に福島第一原子力発電所のサブドレーン水位計の設定の誤り事象が判明し、福島県の皆様を始めとする社会の皆様に御心配お掛けしましたことにつきまして、まず深くおわび申し上げます。
水位計設定の誤りにより、一部のサブドレーンピットの水位を誤って低く設定をしておりましたが、建屋周辺のほかのサブドレーンピットの水位は高く維持されていましたことから、建屋からの汚染水の漏えいはなかったものと判断しております。
今回の事象につきましては、大変重く受け止めております。サブドレーンに関する全ての運転制限対象項目につきまして総点検を実施いたしましたが、運転上の制限逸脱となるような誤りは確認されませんでした。
今回のような事象が今後起こらないよう、安全最優先で廃炉作業に取り組んでまいる所存でございます。
以上でございます。
○岩渕友君 ちゃんと答えていないなというふうに思うんですけど、少しだけ触れていた、要するに、高濃度の汚染水が漏れ出すおそれがあるから非常に重要な問題だというふうに位置付けられているということなんですよね。
八月にもサブドレンの水位が急低下して、福島県の内堀知事が現場の緊張感が足りていないと述べて、加えて情報提供が遅れた東京電力の対応を批判したばかりに起きた問題なんですよね。規制委員の一人は、水位については相当厳しく言ってきたのに、こういうことが起きたのは腹立たしい部分があると、こういうふうにも述べています。
水位計設定ミスが何で起きたかということなんですけれども、東京電力は、大震災で原発構内の地盤が沈下をしたことで沈下前の基準と沈下後の基準が混在するようになって、新しい基準を使うということを決めました。けれども、この変更が水位管理の部門内だけでしか共有をされていなくて、工事の関係者であるとか施工会社が知らないという状況で、マニュアルもなくて、職員も一年、二年ですぐに入れ替わる、こういう中で引き継がれなかったことが原因だというふうに説明をしています。余りにもお粗末な対応じゃないかと思います。
この問題について、十月三十日に行われた規制委員会の会議で委員からは、工事計画段階での事前検討委員会に何十人もいるのに全員が見過ごすというのはどういう議論がなされていたのか、会議がどれだけ機能しているのか、こういう厳しい意見が出されて、十二月には、現地に行くときに実際に確認するとまで言われています。
十一月三十日には、東京電力は、福島第一原発三号機原子炉圧力容器内にある温度計十二個が事故当初から故障していたということを発表しました。原子炉を監視するための重要な装置の故障が事故から六年以上が過ぎて判明した、これも非常に重大です。
柏崎刈羽原発をめぐっては、東京電力が免震重要棟の耐震性不足を把握しながら原子力規制委員会に誤った説明を続けていたという問題もありました。福島第一原発では、事故のときに炉心溶融の定義を示したマニュアルがあったにもかかわらず、公表が二か月以上遅れただけじゃなくて、判定のためのマニュアルがあったことを明らかにしたのは事故から五年近くもたってからだったということもありました。この東京電力の深刻な隠蔽体質、危機意識の欠如など、廃炉の覚悟と実績があるとは思えません。
基本的考え方では、廃炉に多額を要する中で、柏崎刈羽原子力発電所に対する事業者責任を全うできる見込みがないと柏崎刈羽原子力発電所の運転を再開することはできないというふうにあります。これに対して、東京電力の回答書では、廃炉をやり遂げることと柏崎刈羽原発の終わりなき安全性向上を両立するとして、今後必要な資金の手当てについては新々総合特別事業計画に基づいて着実に実行すること、今後追加で安全対策が必要となる場合は社長である私の責任で資金を確保するというふうに回答書の中にあるんです。
これ、小早川社長にお聞きしたいんですけれども、私の責任で資金を確保するというのはどういう意味でしょうか。
○参考人(小早川智明君) まず、規制委員会の方に御回答いたしました回答書に記載いたしました、追加で安全対策が必要となる場合は社長の責任で資金を確保するというただいまの御質問に関する御説明を申し上げます。
当社は、柏崎刈羽原子力発電所の安全対策を確実に実施できるよう新々総合特別事業計画を策定し、主務大臣の認可をいただいております。まずこれを着実に実行してまいります。今後、追加で安全対策が必要となる場合、当社は安全対策最優先の下、安定供給を維持しながら合理化を進めるなどの資金確保に努め、対策を確実に実施してまいります。
以上です。
○岩渕友君 私の責任で資金を確保すると言ったのに、それには全く答えていないという今の回答だったというふうに思うんです。
五月の当委員会で廣瀬前社長ともやり取りしたんですけれども、東京電力は原子力損害賠償・廃炉等支援機構から資金交付を受けていて、資金は国民負担になっています。
これまで交付をされた原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの総額、これ総額だけでいいんですけれども、幾らになるか、東京電力、答えてください。
○参考人(小早川智明君) 原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付額についてお答えいたします。
平成二十九年十一月時点での資金交付額は、累計額といたしまして約七兆五千二百億円となります。
以上でございます。
○岩渕友君 資金交付が決定された総額でいうと、約九・五兆円になるわけなんですよね。原賠機構法では、毎事業年度、機構の損益計算において利益が生じた場合には国庫に納付しなければならないというふうになっています。じゃ、国庫への納付が一体どれぐらいになっているかというと、来年一月末までに納付予定の金額を含めても、約一兆五百億円にしかならないんですよね。
廣瀬前社長は、東京電力は破綻処理を免れているというふうに述べていましたけれども、東京電力はもう既に潰れている状態だと。先ほど、私の責任で資金確保するということにちゃんと答えていなかったわけですけれども、このことを小早川社長はちゃんと自覚しているのか、このことを言いたいと思います。
原発事故の処理費用が十一兆円から二十二兆円に膨らんで、そのうち十六兆円を東京電力が確保するために、今後の事業計画となる、先ほどもあった新々総合特別事業計画が五月に策定をされて、これは国も認めています。東京電力は、賠償、廃炉に必要な資金を確保しつつ経常利益を創出するとしています。その要が柏崎刈羽原発の再稼働ということになっています。
資料二を見てください。線が引いてあるところなんですけれども、原発を再稼働すると一基当たり約四百億から九百億円のコスト減になると。つまりは収益になるということです。
ここで規制委員長にお聞きをします。基本的考え方では、経済性よりも安全性追求を優先しなくてはならないというふうにあります。けれども、実際には安全性よりも経済性が優先をされているということなのではないでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 原子力規制委員会は東京電力に対しまして、原子力事業については経済性よりも安全性追求を優先しなければならないとの考え方を示しました。東京電力より、経営陣からの聞き取りや現場を訪れてでの所長を始めとする職員との意識調査等を行いましたが、特に経営陣より書面にて安全確保を大前提とするとの回答を得ました。これらにより、現時点の東京電力における経済性より安全性を優先するとの意思を確認をいたしました。
もとより、こうした東京電力の意思が将来にわたり維持され、かつ実際の行動とも一致している必要がありますから、東京電力の回答を保安規程に明確に記載することを求め、原子力規制委員会はその状況を検査等により確認していくこととしております。
○岩渕友君 東京電力が安全性優先すると言ったから安全性が優先されるんだというのでは、ちょっと納得できないんですよね。
更田委員長は、柏崎刈羽を動かすことで事故の責任を果たそうというのは一定の理解はできると述べたというふうに報じられています。福島への責任を果たすために柏崎刈羽原発を再稼働させるなどということを福島県民は望んでいません。福島県民からは、福島の惨状を思い、強い怒りを禁じ得ない、東電に原発を動かす資格はないし、動かしたいというのはおこがましい、ふるさとを元に戻して返してほしいという私たちの求めを実現できないのだから、原発なんて動かすべきではない、こういう怒りの声が上がっています。
資料三を御覧ください。新々総特では、柏崎刈羽原発を二〇一九年度、二〇二〇年度、二〇二一年度から順次再稼働すると仮定をした場合の三つの収支の見通しを算定しています。この見通し案では、再稼働を予定しているのは六、七号機だけではありません。
新潟県では一年前に、東京電力福島第一原発事故の徹底的な検証を公約に掲げた米山知事が誕生をしました。米山知事は、福島原発の事故原因、健康や生活に与えた影響、安全な避難方法の三つの検証が終わらない限り、再稼働の議論はできないというふうに述べて、検証には三、四年掛かるとしています。二〇一九年度に柏崎刈羽原発を再稼働させるということがあり得ないということになります。
二〇一二年五月に成立をしている総合特別事業計画では、二〇一四年三月期に柏崎刈羽原発の再稼働を見込んでいました。その後、新総特でも新々総特でも、この二つを経ても結局は計画どおりになっていません。
そこで、大臣にお聞きをします。この総合特別事業計画、新総特、新々総特と、計画どおりに進んでいない、その根本的な原因は何だというふうに思いますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 今年五月に新々総特が策定をされて、そして六月に東京電力の新しい体制が発足して約半年が経過したということになります。新々総特においては、東電自身による生産性向上の取組によって収益改善を実現をして、そして他社との共同事業体の設立を通じた再編統合によって更なる収益改善と企業価値向上を実現することになっています。
そうした中で東京電力は、新々総特が始まってから六か月程度でありますけれども、例えば、電力産業が抱える共通の課題の解決のための連携強化に向けて、潜在的なパートナーの理解を得るべく丁寧かつ真摯な話合いを進めています。また、二〇一九年上期に予定されています既存の火力発電事業の統合に向けて、中部電力との間で合弁契約書、これを新々総特を発表した後に締結をしております。また、社債の発行なども着実に行えているところであります。
東京電力は、引き続き福島への責任を果たすため、東電改革のアクションプランである新々総特に基づいて着実に改革を実行してほしいと思っています。
柏崎刈羽六、七号機の再稼働については、これは、先ほどから委員もおっしゃっているように、我々も思っていますが、これはもう安全最優先で取り組むということであります。これは、安全最優先という考え方で原子力規制委員会において引き続き審査が行われておりますので、新々総特との関係でコメントすることは控えたいと思います。
○岩渕友君 計画どおりに進んでいないのは、福島県民、新潟県民、そして国民の理解を得られていないからです。
六月二十四日付けの東京新聞によれば、六月二十三日に行われた東京電力ホールディングスの株主総会で、新々総特の実現可能性を問われた当時の数土会長は、できないというふうに答えて株主から批判の声が上がったといいます。さらに、数土前会長は、原発事故の処理費用が二十二兆円になったことを受けて、二十二兆円という数字は驚天動地、未曽有の数字で捻出できないと明言をしたとされています。
柏崎刈羽の再稼働をめぐっては、七月十日の意見交換会で当時の田中規制委員長は東京電力に厳しい態度で臨んでいたにもかかわらず、八月三十日に行われた規制委員会と東京電力の経営陣の意見交換会後に行われた記者会見の中で、記者から具体的な回答はこれ以上求めないのかと、実績がまだ示されていないのではないか、こういう質問が出されたのに対して、田中前委員長は、もう少しよく考えてください、大人の頭で、こういうふうに言うだけだったというふうに報道されています。これでどうして東京電力が原発を運転する資格があると判断をしたのか、私には全く分かりません。
そこで、更田委員長にお聞きをします。これ、大人の頭で考えてくださいというふうに言われても、何で適格性があるというふうに判断されたのかよく分からないわけです。これ、適格性があると判断されたのはどうしてですか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) まず、田中前委員長の会見での発言に関しましては私ちょっと詳しく通じているものではありませんけれども、私たちのいわゆる東京電力に対する適格性の審査というのは、原子炉等規制法に定められた技術的能力を有するかどうかという観点から行ったものです。
私たちは、あくまで技術的な能力の範囲内で、東京電力、これは安全文化の維持もその中に広義で含まれるものではありますけれども、一方で道義的責任、東京電力の道義的な責任を問うているものではありません。経営者との間の意見交換、それから田中前委員長が委員一名を伴って柏崎刈羽原子力発電所を訪れ、職員の方々の意識の確認等を進めました。その上で、現在の東京電力に柏崎刈羽六、七号機の運転するに足る技術的能力に欠けるという判断をしなかったというものであります。
○岩渕友君 今の話を聞いても、やっぱりどうして適格性があると判断されたのかが分かりません。
それで、資料の四を御覧ください。十月四日に原子力規制委員会が柏崎刈羽原発六、七号機の設置変更許可に係る審査書案を了承して、同じ日に規制委員会から経済産業大臣宛てにこの許可についての意見照会があったのに対して、十月二十四日、大臣は、許可することに異存はないという旨の回答をしております。
大臣にお聞きをするんですけれども、大臣がこういう判断をしたのはどうしてですか。
○国務大臣(世耕弘成君) まず、この意見照会についてのちょっと制度的背景をしっかり御理解いただかなきゃいけないと思いますが、原子力発電施設の安全性の審査は、高い独立性を有する規制委員会が科学的、技術的に行うことになりますけれども、この審査においては、原子力事業者が発電用原子炉を設置するために必要な技術的能力や経理的基礎を有するか否かについても原子力規制委員会によって確認が行われるものと承知をしています。
原子力規制委員会から経済産業大臣に対して行われる意見照会は、原子力規制委員会が審査における自らの判断を行った上で、電気事業法を所管する経産大臣からも、事業者の技術的能力、この技術的能力という場合、経産省に意見照会をされているのは、例えば非常時に外部電源を接続するなどの送配電の技術ベースを持つかどうかという意味での技術的能力だと理解しています。そして、経理的基礎を有するか否かについて確認をされたわけであります。これらの点について特段の問題は認められないものですから、東京電力が設置変更許可の基準に適合すると規制委員会の判断に対して異存はない旨回答をしたわけであります。
また、この意見照会の手続においては、今年八月に東電が規制委員会に説明をした、経済性を優先して安全をおろそかにすることは決してなく、終わりなき安全性を追求する、地元の方々に対して主体的に説明責任を果たしていくなど、経営方針についても、電気事業及び原子力損害賠償・廃炉等支援機構法を所管する経産大臣の立場として、東京電力の見解に異論はないか、また、これを遵守させるべく、同社への指導監督を行う意向があるのかの確認を求められたわけであります。
東京電力が示したこれらの考え方は、原子力事業を運営していく上での当然の大前提となる極めて重要なものであります。このため、原子力規制委員会に対しては、東京電力が示した方針について異論はないこと、また、東京電力に対してはこれらを遵守させるべく適切に指導監督を行っていくという旨を規制委員会に回答したところであります。
○岩渕友君 審査書案に対して、十月五日から十一月三日までパブリックコメントが募集をされていたにもかかわらず、十月二十四日にこういうことになっていると。
大臣にお聞きするんですけど、このパブリックコメントの結果を待たずに許可することに異存ないというふうに回答したのはどうしてですか。
○国務大臣(世耕弘成君) パブコメはうちが集めているものではありませんので、これは規制委員会にお答えいただくべき問題だと思います。
○岩渕友君 パブリックコメントのその中身を受けて、大臣がそれの前にこれ判断しているということなので、だから、なぜそういう、結果を待たずに許可することに異存ないと回答したのかということです。
○国務大臣(世耕弘成君) ですから、そのパブリックコメントは規制委員会が行われていることであって、規制委員会の判断に影響を与えるものであって、経産省としてパブコメを取っているわけではありませんので、経産大臣としては、これは特段異論がないということであれば、異論がないという返事を速やかにするということだと思います。
○岩渕友君 もう一度資料四を見ていただきたいんですけれども、この文書の中に、エネルギー基本計画の方針に従って再稼働を進めるというふうにあります。エネルギー基本計画の見直しが今進められていますけれども、これからの日本のエネルギー政策をどうしていくのかは、国民の暮らし、命に関わる重要な問題です。
十一月二十八日に開催をされた分科会では、出席をした辰巳菊子委員は、国民の声を反映する努力が図られていない開催となっている、国民の意見を受け付ける仕組みを設けてもらいたいというふうに注文をしています。消費者代表の委員は辰巳氏しかおりません。
六月には市民団体から、エネルギー基本計画の策定に当たって民意を反映できる仕組みを求める要請書が経済産業省に提出をされています。
そこで、大臣にお聞きをします。エネルギー基本計画の策定に当たって、国民の声が反映される仕組みをつくるべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) これは総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会の話ですね。
これは、まず、いろんな立場の有識者の皆さんにゼロベースで予断なく議論していただきたいと思っていますし、これは最終的にはこの分科会のメンバーの皆さんによく御相談はしなければいけないと思いますが、パブリックコメントを取るなど国民の意見を集める方法も何か検討はしていく必要はあると思っています。
○岩渕友君 検討していくというお話だったんですけれども、かつては公聴会を開いたりしたこともあったので、国民の声を聞く必要があるだろうと思います。
エネルギー基本計画では、原発をベースロード電源として、二〇三〇年度の発電電力量の二〇から二二%を賄う方針となっています。これを達成するためには三十数基の再稼働が必要だということになります。
福島第二原発も再稼働しようとしているのか、こういう声も、不安の声も寄せられるんですけれども、福島への責任を果たすというのであれば、福島県民の総意になっている福島第二原発の廃炉を決断するべきです。
十一月に吉田栄光福島県議会議長が小早川社長に対して、福島第二原発の全基廃炉を進めるための工程を議会に示すようにということを求めました。これまでよりも踏み込んだ要望をすることになったのは、東京電力と国に第二原発の廃炉を何度求めても一向に決断されないからです。
大臣にお聞きをするんですけれども、国は、第二原発の廃炉について、事業者が決めることだというふうに言ってきました。けれども、東京電力は、国のエネルギー政策の動向を見て決めるというふうに言っています。国が東京電力に廃炉を決断しない理由を与えているということです。国が福島第二原発の廃炉を決断するべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 福島第二原発については、福島県民の皆さんの心情を察すると、これまで新規制基準への適合性審査を申請している他の原発と同列に扱うことは難しいと認識しています。この原発の扱いについては、まずは東京電力が地元の皆さんの声に真摯に向き合った上で判断を行うべきものと考えています。
今後、東京電力が地元の声に真摯に向き合うとともに、原子力人材などの経営資源投入の在り方など経営面での判断も含め、どのような方向性を示していくか注視をしていきたいと思います。
○委員長(斎藤嘉隆君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
○岩渕友君 はい。
第二原発の廃炉は県民の総意で、復興の前提です。住民の方々からは、将来再稼働する可能性がある原発のあるところには帰ることができない、こうした不安の声が上がっています。東京電力が廃炉を決断しないなら国が責任を持って廃炉を決断するべきです。再稼働反対という声は国民過半数を超える世論になっています。原発ゼロの政治決断を求めて、質問を終わります。