(会議録は後日更新いたします)
改正省エネルギー法が6日の参院本会議で、全会一致で可決・成立しました。これに先立ち、参院経済産業委員会は5月31日、改正案について参考人質疑を行いました。
龍谷大学の大島堅一教授は、電源構成比における原発の目標を2030年で20~22%とする政府の第5次エネルギー基本計画案に言及。放射能汚染や事故のリスクなどにふれておらず「認識の誤りが多い」と批判しました。
日本共産党の岩渕友議員は、原発を「ベースロード電源」と位置づけ、「電力コストが低廉」だとした同計画案への見解を質問。大島氏は、福島第1原発事故後の安全対策強化で建設費が倍増しており、事故が起きればコストがより膨大になるとして「これ以上経済的に見合わない電源はない」と強調しました。
大島氏は、同計画案が福島原発事故による避難者を2・4万人に絞っていると指摘。岩渕氏も「被害の実態を反映していない」と批判しました。
自然エネルギー財団の大野輝之理事は、同計画案が再生可能エネルギーを「主力電源化」する方針を示す一方、導入目標を22~24%に据え置いたことに言及。「目標を引き上げるべきだ」と指摘しました。
岩渕氏は、今国会で野党4党が史上初めて「原発ゼロ基本法案」を提出したと紹介。原発ゼロの実現と再エネへの転換は「多くの国民の世論であり、福島の願いだ」と強調しました。
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○参考人(田辺新一君) 本日は、参考人として意見を述べさせていただく機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
早稲田大学の建築学科でも教育研究を行っております。私のモットーとして、快適で健康で生産性の高い環境を省エネで行うということが研究テーマでございます。また、公益社団法人空気調和・衛生工学会の今会長をさせていただいております。
表紙が黒い資料で説明をさせていただきます。
まず、開いていただいて、二ページを御覧ください。
日本全体の最終エネルギー消費量の動向を示した図です。最近では減少傾向にあります。図に年を入れておりますけれども、二〇〇八年のリーマン・ショックは、非常に実はエネルギー消費に大きな影響を与えています。また、二〇一一年三月十一日の東北地方太平洋沖地震によって起こった東日本大震災以降、また減少しています。二〇一〇年度は大変暑い年で、少し増えておりました。経済活動や気温は、エネルギー消費に大きな影響があります。二〇一三年度のところに矢印を引いておりますけれども、ここがエネルギーミックスの基準年になっております。
次のページを開けていただきたいと思います。
この資料は、国際エネルギー機関、IEAから出されたものを引用したものです。右のグラフは、二〇三五年までの世界の経済成長を示したものです。世界の経済成長の六五%は、何とこの非OECDアジアによって起こるというふうに予測されています。そのため、アジア地域のエネルギー需要はますます旺盛になるというふうに推測をされておりまして、中国は二〇三五年に日本の九倍、インドは三倍以上になるというふうに予測されておりまして、エネルギー自給率が現在八%しかない我が国では、日本のことだけを考えていても駄目でございまして、エネルギーセキュリティーを常に考えておく必要があるというふうに考えています。
次の四ページを御覧ください。
この図は、いわゆる二〇三〇年度の長期エネルギー需給見通し、いわゆるエネルギーミックスにおける省エネの位置付けを示したものです。前提として、経済成長により二〇三〇年のエネルギー需要は増加するとまず予測しています。そこから五千三十万キロリットルを削減するということなんですけれども、五千三十万キロリットルは、もう大きいか小さいというのはいろいろ議論があると思うんですけれども、私は実は極めて大きいと思っていまして、どうしてかと申しますと、現在家庭で使われているエネルギー全部足すと四千九百五十万キロリットルなんですね。ですから、これをなくそうというので、今家で使われているテレビとかなんとか全部なくせというのと同じぐらいの努力をしなさいということを言っています。オイルショック後ほどの効率、効果はやっぱりやっていかないと、この五千三十というのは減らないというふうに思います。
それでは、五ページ御覧ください。
省エネは、今回の法改正の分野だけではなく、様々な分野で網羅的に行う必要がございます。本日、ちょっと時間も限られていますので、三点に課題を絞ってお話をしたいというふうに考えています。省エネ委員会の私、メンバーでございますけれども、省エネ全般について議論はしております。
まず第一として、一番左の、産業・業務部門の企業間連携による省エネです。今回の法改正で対応するものです。第二として、荷主、輸送業者の連携強化です。これも今回の法改正で対応するものです。一番右側に、私の専門でもあります住宅、建築物の省エネについて、課題三としてお話をしたいというふうに思います。
開けていただいて、六ページを御覧ください。
これが課題一です。産業・業務部門はもう大丈夫だという御意見があるかもしれないんですけれども、ここ数年でエネルギーが減っているのは、多消費産業の生産が低調であること、気温要因などが実は影響しています。したがって、省エネ対策が必ずしも順調に進んでいるわけではないというふうに考えています。対策の強化が必要であるということです。さらに、原単位といいまして、物をつくるときのエネルギーの量が必ずしも向上していないと。日本の産業構造が今後どうなるか、成長するのかということも含めて考えないといけないんですけれども、もちろんこういう部分もよく考えておく必要があります。
左の図は、企業経営が多様化して、もし上工程の工程をほかの会社に集めてしまって集約するようなときに、下の会社は今までですと増エネとなっていたんですけど、これを統合して省エネを考えることをできるようにしようというものです。また、右は、食物なんかを作ると、天候が悪いと余り売れないかもしれない、そういうものを天気予報などで予測してフードロスもなくそうと、こういったことについて考えています。設備投資に関する減税も行われるというふうに伺っております。
次の七ページです。
課題二ですけれども、私も自宅とか大学で最近、ネット通販、Eコマース、大変利用することになりました。この新しいビジネスに対応する省エネが必要とされているんですけれども、右の図を見ていただくと、緑の部分は今まで省エネ法の網が掛かっていたんですが、赤いところは実は対象外でした。自分自身のことを考えてみると、ネットで商品を購入します。Eコマースの事業者の中にはその対象外が大手十社中五社あったんですが、それは、私が買うと荷主は私になってしまうんですね。ですから、大きな裾野に対して掛けたものということで、今回その荷主の定義を変えるということが大きなものでして、また、我々も再配送ないように極力少なくすることが必要ということで、人材不足にも対応できるということです。
八ページが、建築、住宅に関するものです。
この部分は、省エネ法から建築物に関する部分が取り出されて、いわゆる建築物省エネ法というものになりました。一番上に赤い枠があるんですけれども、ここが二千平米以上の非住宅の建築物です。ここは省エネ基準に適合しないと建築ができなくなっております。それから、三百平米から二千平米のビル、建物、住宅などは届出をしなさいということになっています。また、小規模な三百平米以下の建物は努力義務ですけれども、その中でも、年間百五十軒以上住宅を分譲している事業者には、住宅トップランナー制度といって、適合をちゃんと平均値で守ってくださいということをお願いをしているところであります。
九ページ見ていただくと、ちょっと国交省の資料を私の方でアレンジしたものなんですけれども、年間の着工棟数とエネルギー消費を示しています。
赤い部分がさっきの二千平米以上の非住宅に当たります。数は大体年間二千九百六十四棟、三千棟ぐらいです。数では、日本で建っている家とか含めて、〇・六%しか数ではありません。ところが、左の図を見ていただくと、この部分が三三・七%エネルギー使っていますから、数が物すごく少ないけれども使っているので、この部分はやっぱり規制的にきちんとやっていただく必要があるのではないかと。青い部分が三百平米から二千平米以上の建築物で、棟数では七・五%で、約三万七千棟ぐらいあります。この部分が二八・五%のエネルギーを使用しています。黄色い部分は三百平米以下の建築物で、多くは住宅です。数では九一・九%、約四十六万棟ぐらいあります。ここが三七・八%のエネルギー消費をしています。
この中で、先ほど申し上げた住宅トップランナーの対象が大体五万棟ぐらい、一年間に建っています。ここの方々は、いわゆる比較的安めの住宅を提供されている方なんですけど、制度が五、六年前始まったときは三割ぐらいしか適合していなかったのが、実は九十数%今適合していまして、非常に大きく適合しています。
それから、二〇一六年度にはゼロエネルギーハウスが三万四千棟建てられています。これらによって窓とか断熱材のマーケットが非常に変わってきていまして、かなり安く手に入るようなことになっています。この部分まで義務化するかというのは行政のコストなども考えながら慎重に考えていく必要があるんじゃないかというふうに思います。
十ページでございます。
十ページは、単純に基準に適合するというだけでは、先ほど申し上げた省エネにはちょっと不十分であります。更に進んだものを建設していこう、あるいは改修していこうというのがゼロエネルギービル、ゼロエネルギーハウスです。
二〇一五年に先ほど御紹介した学会のガイドラインを基盤としまして、ZEB、ZEHと言われる定義を決めたことで非常に認知をされることになってきました。設計ガイドライン等も公開しておりまして、三万件ぐらいのダウンロードがあります。単に、こういうものを建てていきますと、我慢の省エネから賢い省エネ、冬のお風呂で亡くなるとか夏の熱中症なども少なくなっていくんじゃないかと思います。
この中で、ZEHに関しては、最近、経産省だけではなく国交省、環境省、同じ目標に向かって、連携してタッグを組んでいってくださるということをされています。ZEBに関しては、完全にゼロにするのは少し、四階建て、五階建て以上になると難しいので、半分にエネルギーをしたものをZEBレディーと呼んでいまして、ここを広い意味のZEBというふうに呼んでおります。
十一ページは、アメリカでは国会議事堂の前で大学対抗で省エネ住宅、ゼロエネルギーハウスを建てて、コンテストをやっています。二〇〇二年からなんですけど、アメリカの大学教育には非常に大きな影響がありまして、ここからイノベーションなどもできております。
日本では二〇一四年からエネマネハウスのコンテストが始まっておりまして、早稲田は三回出しておりまして、去年十二月に大阪で、この下の住宅を建てまして、これ改修でゼロになって、更にエネルギーも売れるような住宅というのを建てさせていただいています。
十二ページが日本の住宅ストックです。
日本の家というのはどうなっているかということなんですが、日本の家は大体今、五千二百十万戸あります。そのうちの持家と借家というのでは六対四なんですね、戸数では。ところが、面積で見ると持家は八、二ぐらいになります。
緑のところ見ていただくと、ここ戸建てなんですけど、戸建ての持家が実は日本の住宅のほとんどだということです。この住宅の三八%が無断熱なので、エネルギーを考えるときはこのストックをどう考えるかというのは非常に重要です。
断熱強化しても、欧米のように画期的に暖房が減るわけじゃないんです。元々使っている量が少ないので、なかなか減らないので、こういう健康面とか長寿社会ですとか百寿社会ですとか、こういうことも考えて政策を行っていく必要があるのではないかと思います。
そして十三ページです。
これまでの省エネは、つくると書いていますが、つくられたものが送られて使うというのが我々の今までで、使うところを少なくするのが省エネと言われていました。ところが、再生可能エネルギーをもっともっと使っていかないといけませんから、これを操る技術が必要になってきています。これがスマートグリッドであったりスマートハウスやスマートコミュニティーでありまして、早稲田では林泰弘先生中心に研究グループを組みまして、いろんな実証ですとかこういう分野の研究をしています。操るというのが新しい省エネの概念になっているということです。
次は、早稲田の実証センターに、ディマンドレスポンスのサーバーですとか系統電力のシミュレーターですとか、こういったものを住宅とつなげたりするとどういうふうになるのか、再生可能エネルギーを入れていかれるのかと、こういった研究を行っております。
最後、いただいて十五ページでまとめたいと思います。
日本の最終エネルギー消費量は減少傾向にあるんですけれども、これはエネルギーの多消費産業の生産の低調さですとか機器効率の向上はございますけれども、気温要因などもあります。したがって、省エネ対策が必ずしも順調に進展しているわけではないということです。産業・業務分野においては原単位の改善が必要とされています。今回の法改正では、企業の連携による大規模投資のエネルギーマネジメントのようなIoTを活用したものを促すとともに、荷物を送る人、受ける人、また輸送業者の連携を強化して省エネ対策の進展を加速しようとするものです。住宅、建築物の対策については、支援措置を活用するとか、不動産価値、ESG投資と言われていますけれども、こういうものを活用していくことが重要であろうと思います。再生可能エネルギーの利用拡大を考えると、これまでの省エネの概念とは異なる新しい省エネの概念構築が必要になっているのではないかというふうに思います。
以上でございます。
御清聴ありがとうございました。
(公益財団法人自然エネルギー財団常務理事 大野輝之参考人)
○参考人(大野輝之君) 本日は、参議院経済産業委員会におきまして意見陳述の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
本日の議案は省エネ法改正というものでございますけれども、なぜ自然エネルギーを専門とする財団の常務理事が参考人なのかという疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんので、最初に、省エネとの関わりについて、二点お話をさせていただきます。
私が常務理事を務めます財団は、自然エネルギーを基盤とした社会を実現するということを目的にしまして、二〇一一年の八月に設立されたものでございます。この目的の実現のために、まず、太陽光発電や風力発電、あるいは水力、地熱など、様々な自然エネルギーの普及拡大が必要でございますので、中心的にはそのために必要な政策、研究、調査研究を行っております。
しかし同時に、エネルギーの使い方を効率化をしまして、社会生活でございますとか経済の発展に必要になるエネルギーを量を減らしていきますと、自然エネルギーを基盤とした社会、究極的には自然エネルギー一〇〇%の社会を実現することもより容易になるということでございます。こうした観点から、私どもの財団ではエネルギーの効率化や省エネルギーに関する政策研究も行っていると、これが第一の理由でございます。
それからもう一点は、私個人のこれまでの経験に関するものでございまして、この自然エネルギー財団に参加したのが二〇一三年なんですが、それ以前の十五年間、私は東京都で環境・エネルギー政策の担当をしておりました。特に二〇〇三年以降は、企業の省エネ、エネルギー効率化を進めるための施策立案を担当いたしまして、二〇〇八年には省エネ法の求める以上の対策を進める新しい制度の導入を実現いたしました。
この制度は温室効果ガスの総量削減義務と排出量取引制度という名前のものでございまして、国の省エネ法が削減の努力義務にとどまりまして、また原単位の改善だけを目指したものであるのに対しまして、総量の削減を義務化をするというものでございます。
こうした経験を踏まえまして、現在もエネルギー政策に関する環境省でございますとか東京都の検討会委員などをやっております。これが第二の関わりということでございます。
前置きはこの程度にいたしまして、本日の議案でございますエネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律案について意見を述べたいと思います。
改正案の主たる内容でございます複数の事業者が一体的に又は連携して省エネ対策を行う制度並びに貨物の荷主の定義の見直しと準荷主の位置付け、この二つにつきましては、事業者の省エネを促進する仕組みとして必要なものでございまして、その意味で妥当な改正であると考えております。
特に後者は、今もお話がございましたように、インターネット販売の拡大の規模とテンポを考えますと速やかな改正が必要なものと思って、賛成をいたします。
ただ一点、複数の事業者が一体的に又は連携して省エネ対策を行う改正については懸念がございます。
これまで、年間千五百キロリットル以上のエネルギー消費を行う工場は個別に毎年エネルギー使用状況の報告義務がありました。改正案で、認定管理統括事業者が設置された場合に、定期報告は一括して提示されると、こういうものでございますので、その際に個別工場のエネルギー使用量がこれまでどおり明らかになるものか法律の文面からは分かりません。一体化された合計使用量だけしか報告されないということになりますと、効果的な省エネ対策に必要な個別工場のエネルギー消費量が分からなくなってしまいます。この点は法律改正事項ではないと思いますので、今後、政令や告示において適切な対応をされるものと思いますが、その点を明確にしていく必要があるというふうに考えております。
ここまでが今回の改正案の条文に即した意見でございます。
これに加えまして、今回の改正については何点か意見を申し述べたいと思います。
今回の改正案の提案理由を拝見しますと、徹底した省エネ対策に必要な措置を講ずるためと書かれています。問題は、我が国が現在直面しております課題、徹底した省エネ対策を進めるために今回の改正案以外にも、ほかに速やかに導入すべきものがあるのではなかろうかということでございます。
私の配付資料の一枚目を御覧いただけますでしょうか。一枚目に、図表の一と書かれたものに上段に書いてございますのは、今回の改正の前提となりました国の省エネルギー小委員会の意見の目次の一部でございます。今回の改正案は、このうち三の(四)の複数事業者の連携省エネ、それから四番の運輸部門の省エネ対策の取組強化に関わるものでございます。
この省エネルギー小委員会の意見には、このほかにも一の工場等判断基準、(二)の事業者クラス分け評価制度について、現行制度が有効に機能していないという指摘がございます。
特に重要なのは、この図表一の下段に書きました工場等判断基準に関しまして、経営層を巻き込んだ大規模な省エネ投資を促すには必ずしも至っていない、経営層を巻き込み、現場のエネルギー管理を踏まえた大規模な投資判断を促進する見直しが必要であると、こういう重要な指摘がされていることでございます。
今回の改正案を見ますと、これらの点については必ずしも対応がされていないと考えます。恐らく、こうしたものについては資源エネルギー庁におかれて順次対応を図っていくということだと思うんですけれども、我が国の省エネ対策も、これを考えますと早急な制度改正が必要ではないかと考えております。
早急な対応が必要ということを説明するために、幾つかの資料を御用意いたしました。
図表の二を御覧いただけますでしょうか。図表二は、国のエネルギー白書二〇一七から取ったものでございます。ここには製造業のエネルギー効率の推移が示されております。七〇年代の後半から八〇年代後半には、確かに石油危機の対応がございましてかなりエネルギー効率の改善が進んだということがこれを見て分かります。しかし、問題はその後でございまして、一九八〇年代後半から今日まで三十年もの間エネルギー効率の改善が見られない、こういう状況でございます。
図表の三を御覧ください。これは、同じく省エネルギー小委員会の第三回、二〇一四年七月二十四日に開催されたものでございますけれども、ここに一般財団法人省エネセンターから提出された資料でございます。ここでは、設備の老朽化やメンテナンス不足によりエネルギーロスが全部門で増大しているという指摘がございます。
ここに写真がございますが、これは屋外のパイプ類の断熱材が劣化している例として示されているものです。こうした箇所から熱が漏れまして保温ができないということになりまして、エネルギーの損失が生じていると。その量でございますけれども、これは左下に円グラフがございますが、製造業全体の消費エネルギーの一一%にも当たる、非常に大きな量が漏れているということでございます。
それから、図表の四を、次のページを御覧ください。これは、エネルギー生産性、エネルギー効率を日本とほかの国で比較をしたグラフでございます。この赤い線が日本でございます。図の左端、一九九五年は世界でも二番目に効率が高いという状況だったところでございますが、その後各国の効率の改善が進みまして、右端、二〇一五年で見ますと、もうかなり下の方に行ってしまっている、残念ながらそういう状況でございまして、もはや今日では世界の省エネ大国とはやっぱり言えないというような状況になっているということでございます。
やっぱり、省エネルギー小委員会の意見にございますように、経営層を巻き込む大規模な投資がなされない、なかなか遅れているという状況の中で、設備の老朽が進み、日本のエネルギー効率は他国に追い越されてしまっているという状況かなと思います。
実は、私が東京都で省エネ対策を所管していたときにも、同じような省エネ対策の行き詰まりに直面いたしました。東京都では、二〇〇二年から都内の大規模事業所に省エネ対策、これは言葉を換えれば地球温暖化対策でございますので、これを自主的に取り組んでもらう制度を導入していただきましたが、実際に先にはなかなか進みませんでした。工場や事業所のエネルギー管理の現場を都の担当者が訪問しますと、一様に聞かれましたのは、もっと省エネができることは分かっているんだけれども、経営陣の理解がなくてなかなか大規模な省エネ投資ができないという声でございました。
当時、東京都は新たな温室効果ガスの削減目標を定めまして、当時の国よりも高い二〇二〇年までに二〇〇〇年比二五%削減という目標を決めていました。この目標の実現のためには、自主的な削減努力にとどまっていたこれまでの東京都の制度、また省エネ法も上回る総量削減を大規模事業所に義務付ける制度が必要であるという結論に至りました。
図表の五、次のページでございますが、これは当時の東京都環境審議会が出した答申の一部でございます。この中で、総量削減義務と排出量取引制度、いわゆるキャップ・アンド・トレード制度の導入が必要だという中身が書かれています。その目的の一つが、ここに二つ目にございますけれども、温室効果ガスの削減、つまりこれは省エネということですが、省エネを現場レベルの問題から経営者が真剣に考慮すべき課題に変えるということでございました。
次のページ、図表の六は、この制度の導入の効果を見たものでございます。二〇一〇年度に制度を開始しましてから結果の出ている二〇一六年度まで、二六%という大幅削減が実現をしております。これはCO2排出量と書いてございますが、東京都の場合は排出係数というものを固定をしていますので、これがほぼエネルギー削減率と考えていただいても大丈夫だと思います。
図表の七は、これを国と比較をしたものでございます。一番上の点線になっているのが全国の産業・業務部門のエネルギー消費量の推移でございまして、一番下が東京都で削減義務の掛かっている大規模事業所のエネルギー消費量、CO2排出量の推移でございます。
二〇〇五年を一〇〇としてグラフを示しておりますが、都の大規模事業所、削減義務の掛かっている事業所では、全国を上回る削減が進んでいるという状況が見て取れるのではなかろうかと思います。
図表の八を御覧ください。これは、二〇一四年度に、東京都が削減義務の対象になっている事業所にアンケートを行った結果でございます。CO2削減、すなわち省エネ対策に対する経営者の関心が高まったかという質問に対して、合計七二%の方が大いになった、あるいは、なったという回答をしています。
右側でございますけれども、また、ですが、設備更新の際に、高効率機器の採用に積極的になったかという問いかけに関しても、やはり合計七二%が大いになった、なったと回答をしているということでございます。高効率の機器は、やはり導入に要する初期費用が高うございますので、従来はなかなか導入が進まなかったものです。東京都の総量削減義務制度の導入の目標の一つは、先ほど申し上げましたように、省エネ対策を現場の問題から経営層の関与する問題に変えるということでございますので、そういう意味では意図どおりの効果を発揮したのではなかろうかと思っております。
国の省エネ小委員会の意見には、先ほど冒頭に言いましたように、経営層を巻き込み、現場のエネルギー管理を踏まえた大規模な投資判断を促進する見直しが必要ということでございまして、東京都の経験は、省エネ対策を自主的な努力義務にとどめるのではなくて、総量での削減義務にすることが、経営層を巻き込んで削減、投資のレベルを引き上げるためにも一つの重要な解決策になり得るということを示したのではなかろうかと思います。
東京都の制度は、総量削減義務と排出量取引制度を組み合わせております。排出量取引制度は、炭素税とともに、いわゆるカーボンプライシングと呼ばれる制度でございます。図表の九でございますが、図表の九は、世界各地でこのカーボンプライシングが拡大をしている状況を示しております。東京都が十年前に導入をいたしましたこのカーボンプライシング、排出量取引制度は、国ではいまだ本格的には導入されておりません。
最後、図表の十でございますけれども、これは、このカーボンプライシング制度が導入された国におきまして炭素生産性が改善しまして、日本をしのぐようになっているという状況を示しております。この炭素生産性と申しますのは、先ほど図表四で見ましたエネルギー生産性に近い、パラレルに動くものであると考えております。図表四と同様に、かつての日本は上の方にいたんですが、これが下がってきているという状況です。
停滞しております日本のエネルギー効率の改善を進めまして、国際的な課題である温室効果ガスの削減を進めるためにも、日本ではカーボンプライシングの導入を急ぐべきではなかろうかと考えております。
今回の省エネ法の改正の議論の中でもこうした論点が深められることを期待しまして、私の意見表明を終わりたいと思います。
どうも御清聴ありがとうございました。
(龍谷大学教授・経済学博士 大島堅一参考人)
○参考人(大島堅一君) 龍谷大学政策学部の大島堅一と申します。
この度はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私は、エネルギー利用に関わる環境経済学、環境政策論を二十五年以上研究してまいりました。特に、気候変動問題に関しましては、気候変動枠組条約第一回締約国会議、ベルリンですけれども、に参加して以来、強い関心を持って取り組んでまいりました。
本日は、三点申し上げます。一つはエネルギー・環境政策の基本的な考え方、二つ目はエネルギー基本計画について、三つ目は気候変動問題並びに省エネルギー政策についてです。
まず、エネルギー政策の基本的考え方について述べさせていただきます。二ページ目を御覧ください。
なぜ今エネルギー政策が重要なのか。それは、エネルギー消費の在り方が環境問題と不可分になったからです。これは、チェルノブイリ原発事故や福島原発事故、更に気候変動問題を念頭に置けば明らかであります。
エネルギー政策の立案に当たって重要なのは、環境への影響を極力小さくし、環境と社会を持続可能なものにするという考え方です。環境と人間社会が持続しなければ、全ての政策は意味がなくなります。それゆえ、持続可能性は最も重要な原則であって、エネルギー政策に貫かれていなければなりません。
その上で重要なのは、この原則を踏まえた社会のつくり替えを実行するということです。持続可能性の観点から、必要性がなく無駄になりつつあるのは大胆にリストラクチャリングすること、逆に次世代に必要な産業は、それらのビジネスが成り立つような公正な市場環境を整備することです。
例えば、原子力産業や石炭産業は持続可能性の観点からは斜陽化するのは必然であり、早期の撤退が必要です。逆に、再生可能エネルギーは追加的な負担と捉えず次世代ビジネスのための投資と捉えて、再生可能エネルギービジネスのための環境を整備するという必要があります。何もかもが重要、選択肢とするのではなくて、大胆に構造転換を促す必要があります。
エネルギー基本計画には3EプラスSが重要と述べられているわけですが、幾つかの考え方を並列的に、平板に並べているにすぎません。何が根幹になるのか、どのような社会をつくるのかという点が極めて重要です。このことをまずは強調しておきたいと思います。
次に、三ページ目ですが、エネルギー基本計画について述べます。
さきに述べた持続可能性の観点からすれば、エネルギー源として原子力発電や石炭は絶対に推奨できないことは明らかです。言うまでもなく、原子力発電は深刻な事故を引き起こす可能性があり、実際に日本は福島原発事故を経験しました。また、事故を起こさなかったとしても、放射性廃棄物を十万年以上にわたって管理する必要があります。原子力はそれゆえ、環境適合的な電源ではありません。
一方、石炭は、大気汚染を引き起こす上に、最新鋭のものであっても、LNGに比べ大量の二酸化炭素を放出します。それゆえ、世界は石炭への投資を控えるようになっています。資源として存在していてももはや使うことができない資源となるということが予想されています。
こうした資産をストランデッドアセットといいます。座礁資産とも申します。原子力発電と石炭火力発電を前提としないエネルギー政策が構築される必要があります。
四ページ目です。
この観点からすると、政府において作成されようとしているエネルギー基本計画には問題が多いと感じております。このままでは、社会を誤った方向に導くのは明らかです。
例えば、まず冒頭に、原子力に関して誤解を与える表現があります。エネルギー基本計画には、避難者に関して、避難指示を受けている者を対象にということで二・四万人という記述がございますが、現在の、調べましたところ、福島県の速報値で四万六千人いらっしゃいます。それは、明らかに過小評価を、誤解を招くような表現ではないかというふうに私は非常に懸念しております。
更に言えば、次ですが、四ページ目、四ページ目そのままですけれども、原子力に関してこのような記述がございます。これは福島原発事故とほとんど全く変わってございません。このような位置付けであれば、原子力は使い続けましょうということになります。しかも、このようなことは日本以外に聞いたことがございません。原子力は、本当にこのような理想的なエネルギー源なのでしょうか。
全ての問題点をここでは申し上げられませんが、原子力の位置付けのところで放射能汚染の現実は触れられておりません。また、事故の現実やリスクについても触れられておりません。さらに、準国産ということに関しましては、高速増殖炉の開発は政府によっても中止され、もはや準国産ということは言えません。そもそも、準国産というような経済的な財はないのであって、用語自体が非科学的です。また、運転コストが低廉ということについても大変疑問です。
次のページです。
五ページ目ですが、有価証券報告書や国の予算書などを基礎に実績値を計算いたしますと、火力や水力に比べて原子力は最も高い電源でした。つまり、原子力は最も不経済です。そもそも東芝が経営危機に陥ったのは、原発の建設費用が高騰したためです。運転コストが低廉の一言で済ますのは全く理解できません。
六ページ目です。
原子力に典型的に見られますが、エネルギー基本計画は認識の誤りも数多く含まれています。にもかかわらず、その誤った認識を前提に発電量に占める原子力の割合を二〇から二二%にするというのです。
ごく簡単に試算いたしますと、七ページ目ですが、二〇から二二%にしようとすれば、運転期間を二十年間延長し、さらに二〇三〇年の時点で、可能性のある原発を全て再稼働させなければなりません。これは計画時点で不可能、ないし控えめに言っても非常に困難な、野心的過ぎる目標です。
八ページ目です。
他方、再生可能エネルギーの目標は二二から二四%とされていますが、これは低すぎる目標です。二〇一二年の固定価格買取り制導入以降の伸びをそのまま延長したとすれば、これは水力を除いてございますが、二〇三〇年を待たずして達成できてしまいます。原子力については野心的過ぎ、再生可能エネルギーについては過小です。
このように、エネルギー基本計画の内容は非常に問題が多いと考えております。このままの内容でエネルギー基本計画を定めるべきではございません。
最後に、気候変動問題とエネルギー政策の手法、これに関連して、省エネルギー政策の問題点について述べさせていただきます。
さて、気候変動問題はエネルギー政策と環境政策が統合的に実施されなければ解決できない最重要課題の一つです。
九ページ目を御覧ください。
二〇一五年十二月に策定されたパリ協定では、産業革命以前から気温上昇幅を一・五度ないし二度未満にすることを求めています。そのためにはできるだけ早めに温室効果ガスの排出量を世界的にゼロにする必要がございます。
十ページ目、御覧ください。
原子力や石炭は持続可能な観点から除外されますので、排出量をゼロにするためには二つの考え方の組合せが必要です。第一に、エネルギー源を環境負荷の小さい再生可能エネルギー源へと転換すること、第二は、エネルギー消費量の絶対量を大幅に減らしていくことです。再エネについてはここでは割愛いたしますが、まだ審議には入っていないと聞いております海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案については、事業者の後押しをする観点からも早期の成立が必要というふうに私は考えております。
さて、十一ページ目ですが、省エネルギーについて述べさせていただきます。
これは、エネルギー消費量が少なくなれば再エネで賄うことも容易になり、また温室効果ガス排出の大幅削減も可能になります。それゆえ、省エネルギーというのはエネルギー・環境政策の柱と考えます。
経済にとっても省エネルギーは大変よいものです。というのは、エネルギーに掛かっていた費用を節約できるからです。省エネ対策の多くは投資費用を節約金額が上回ります。マイナスの費用、言い換えれば、利益が生まれるのが省エネルギー対策です。多くの研究において省エネルギー対策は最も経済効果が高い対策として捉えられております。
十二ページ目を御覧ください。
政策を進めるに当たっては幾つかの手法がございます。ここでは、環境・エネルギー政策の手法について四点申し上げます。
第一は、義務や命令を含む規制的手法ないし直接規制。第二は、国や自治体などの公共的主体と民間企業が一種の契約を結んで実施する協定、ないしは公害防止協定ですね。第三点は、環境税や排出量取引などの経済的手法。第四は、事業者が自主的に環境目標と施策を定めて実施する自主的対策です。
日本は、高度経済成長期に生み出した公害問題を対処するために、協定や直接規制が主に取られ、大きな成果を上げてきました。これらの手法は企業に対して強制力が働くために、環境上の目標達成が容易となります。また、環境上の目標達成だけでなく、規制を満たすために技術開発が進み、かえって経済的にも利益を生むということもございます。近年は、直接規制に加えて環境税、排出量取引などの経済的手法が世界各国で取り入れられて効果を上げています。しかし、残念なことに、日本では限定的にしか使用されておりません。
また、第四の自主的対策も広がっていますが、各国では拘束のある協定と組み合わされて目標達成が担保されているところが多いと私は認識しております。つまり、自主的対策といっても、事業者の自由に任せていては対策が進まず、経済的効果も生み出されないということです。
十三ページ、御覧ください。
その上で、日本の省エネルギー政策について申し上げますと、省エネルギー政策は大きく三つに分かれてございます。第一に事業者、運輸業者、荷主の省エネ、第二には建築物の省エネ、第三に自動車と機器の省エネです。今回の改正案が第一の事業所、運輸業者の省エネ中心であることから、この点について述べさせていただきます。
現行の政策には幾つかの問題点がございます。十四ページ目、御覧ください。
まず第一点目に、自主計画であるということです。言い換えれば、事業者、運輸業者、荷主に対しては、省エネルギーについて義務や目標が与えられていません。そのため、実効性が弱いです。第二に、国に対する内容や計画は国民に対して公開されてございません。そのため、国民によるチェックも、また研究者を含む第三者によるチェックも行うことができません。これでは、事業者ができると思うことを報告するだけになってしまいかねません。政策としては非常に緩い方法であると考えます。
今回の改正においてもこの構造は変わってございません。つまり、あくまで自主計画であり、内容の公開もされないままです。これでは大幅な省エネは期待できないのではないかというふうに懸念しております。
十五ページ目です。
さらに、今回の改正では、問題となるのではないかと思われる内容も含まれてございます。それは対策の柔軟化というようなもので、これによって複数連携が可能となり、事業者によっては、言わばどこの削減にしてもよいということになるおそれがございます。これではエネルギー消費の実態が政策決定者にも分からなくなってしまうのではないかと考えております。むしろ、これまでの対策をより強化して、エネルギー消費量は個別事業所ごと、個別工場ごとに燃料別に報告を義務付けて、これを公表するような方向で改正がされるべきではないかと考えております。
次に、運輸部門についてですが、今回の改正によって、荷主とネット小売事業者が追加されるとともに、準荷主として荷受け側が追加されます。実態を踏まえて対象範囲が拡大されることについては評価できます。とはいえ、元々運輸部門の省エネ対策も自主的なものにとどまるのであって、根本的な改善策にはなっていないのではないかという懸念がございます。
それでは、より根本的な施策というのはどういうものなのかということを述べさせていただきます。
十七ページ、御覧ください。
第一に、エネルギー消費量、燃料種別の消費量などの情報は会社単位、工場単位、プラント単位で報告させるべきです。これによって初めて適切な政策を取るための情報が得られるようになります。現行の制度や改正省エネ法では、大規模事業所単位、会社単位で一括して報告するとされております。これでは不十分です。
第二に、報告内容を国民に公表すべきです。業種によってエネルギー消費量の態様は異なります。これが分かるよう、丁寧に公表させるべきではないかと考えております。
時間がございますので、二十一ページ目に飛んでいただきます。
次に、より根本的には、自主計画ではなく、削減義務を含む規制へと転換すべきです。
二十二ページ目です。
大野さんがいらっしゃる前で恐縮なんですけれども、例えば東京都では、エネルギー消費の削減義務化に踏み込んでおり、情報も一部の業種で公開するようになってございます。これによって企業の対策が進み、基準年に比べて、削減義務一五%から一七%であったところ、二〇一六年には平均で二六%の削減を達成してございます。
二十三ページ目です。
国レベルでは、省エネ率の向上は遅れておりまして、東京都に比べて進んでおりません。国の政策で日本社会の省エネ化を進める必要がございます。
以上、簡単に大きく三点に分けて御説明いたしました。
現在は、環境の持続可能性の観点からエネルギー政策の抜本的な見直しが必要な時期にあると考えております。省エネルギーは環境政策上極めて重要な施策でありますところから、より抜本的な制度改正が必要と考えます。
これで意見の陳述を終わります。この度は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました。
三人の参考人の皆様には、今日は本当に貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。
まずは大島参考人にお聞きをします。
先ほど来話が出ていますけれども、五月十六日に第五次エネルギー基本計画案が示されました。この中では、原発を重要なベースロード電源だというふうに位置付けて、電源構成比率でこれまでと同様の二〇三〇年に二〇から二二%というふうにされています。
この間の質疑の中で世耕大臣から、電力コストを下げる、自給率を上げる、CO2を削減する、これら全てを解決するのが原発だというような答弁がありました。
私は、福島の出身なんです。東京電力福島第一原発事故から七年二か月がたちましたけれども、事故も被害も終わっていません。先ほど、エネルギー基本計画案で、大島参考人から、避難指示の対象になっている方は二万四千人というふうにあるけれども、福島県の発表では五万人近くの方が避難をされているじゃないかと。これも、避難指示の区域内、区域外とありますから、区域外の皆さんで避難をされている方も含めれば、もっともっと多くの方が避難されているということになるのかなと思うんです。
確かに、その原発事故の被害の実態がきちんと反映されていないというふうに私も思います。被害が続く限り賠償しなくちゃならないというのは当然ですし、徹底した除染の願いも切実です。廃炉や汚染水対策のこともこれからの課題です。原発事故の処理費用がどんどん膨らんでいると。これでとてもコストを下げる電源というふうには思えないんです。
先ほどもありましたけれども、原子力のコストについて、先ほどちょっと話せなかったことも含めて、大島参考人の見解をお聞かせください。
○参考人(大島堅一君) では、コストについて少しお話しさせていただきますと、新規の原発につきましては建設費用が二倍から三倍になっていると。これは安全対策が、安全規制が強化された結果でありまして、これはアメリカであれヨーロッパであれ、同じような傾向にあるわけです。日本は、まだ新設の原発について議論はされていないという認識にありますけれども、ただ、新しい原発を造る際に福島原発事故以前の原発を建てるというようなことになると、それはやっぱり国民的にも許されないであろうと。
原発の計算をする際にどういう想定をしているかと申しますと、福島原発事故以前の原発を建てることを想定して計算しています。それは当然ながら安く出るのでありまして、初めから安く出すつもりがあってやっているとは私は思いたくありませんけれども、そのように誤解されてもおかしくないというようなものになっています。
原発事故のコストも、発生頻度は半分になるからというようにやっておりますけれども、発生頻度の話は、どこが、どこのパーツが一番危ないのかということに関しては発生確率、確率的な評価をするわけですけれども、全体のプラントとして事故発生確率が何年なんだという話にはならないわけであります。実態的には、世界的には非常に高い現実には事故発生頻度でありますので、経済計算する際に技術的な確率的評価を用いるというのは正しくないというふうに思っております。
現実には数十兆円掛かっているわけです。政府が発表しているところによると二十一・五兆円と。民間の、まあ日経センターですけれども、などはもう七十兆円掛かるんじゃないかというようなものであって、もはや国家ですら支払い切れない、追加的には支払い切れないようなコストを与えているわけです。これは、これ以上、これ以上経済的に見合わないような電源というのは私はないというふうに考えています。もし本当に見合うのであれば、これ先ほど申し上げましたが、それは事業者が払うべきです。これは、全ての産業が自分の出した被害は全て払っているわけです。それは当然でありまして、それ、原子力だけ国家が何か特別の仕組みをつくるというのは、それは国家に寄りかかった電源であるというふうにしか見ることができないというふうに私は思っているところです。
また、先ほど申し上げましたように、エネルギー基本計画では、区域指定されている、区域に指定されている人は二・四万人というふうに書かれておって、それ自体は、まあ記述自体は間違いではありませんが、それを見ると、福島原発事故で避難されている方が二・四万人であるかのように見えるわけです。それは全く間違いであって、福島原発事故の被害者というのは非常に多いです。福島県が把握しているところだけでも四・六万人です。つい最近、例えば大阪市などが避難者の数を評価したところ、実は、評価方法を変えたところ倍近くいらっしゃるとか、そういうような話が出てきているわけです。ですので、こういった、あたかも、これも意図的にそういうふうにやっているとは私は思っておりませんが、ただ、実態を表す数字ではないのではないかと思っておりまして、やはり福島原発事故を踏まえてここを起こさないということがエネルギー基本計画に書かれておりますので、やっぱり実態を反映したものにしないと、それは福島県の方々ないしは被害を受けた方々から大きな批判が来るのではないかというふうに私は思っているところです。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて、大島参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどの話の中で、省エネは経済にとってもいい、最も経済効果が高いという話もありました。それで、IPCCであるとかその他の研究報告なんかでは、省エネ対策はその最も経済効果が高い対策だとして捉えられているということのようなんですけれども、もしその中身について御存じだったら教えていただきたいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(大島堅一君) これは幾つかほかの参考人の先生方からも御指摘ありましたけれども、やはり、単純に言いますと、熱配管の断熱強化などでもその投資回収年を非常に短くできますので、その分利益が出るであるとか、LEDなんかは非常に簡単でありまして、照明を、もちろん機器そのものは高いわけですけれども、交換いたしますと一年から三年ぐらいで回収できるといったような内容がありますので、まず省エネというのは温暖化対策の中でそのマイナスのコスト、追加的な費用は掛からないものだというふうに研究上も認識されているところです。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、大野参考人にお聞きします。
第五次エネルギー基本計画案なんですけれども、この中で、再生可能エネルギーの比率が二二から二四%というふうになっています。自然エネルギーを基盤とする社会の構築目指しということで、自然エネルギー財団の御説明いただきましたけれども、国際的な組織との連携や調査研究を行われている立場からこの目標をどのように見ていらっしゃるかというのが一つです。
加えて、世耕大臣が第五次エネルギー基本計画案で再生可能エネルギーを主力電源と位置付けたと、それはなぜかというと、技術革新などによって世界的には低コストで再エネの導入が増大をしているし、産業競争力の観点も踏まえて大量導入を図っていく決意を示したという答弁を行っているんですね。
これ、再エネを主力電源と位置付けるというふうに言っているんですけれども、一方では、日本は再エネのコストが非常に高いというふうにも言っているんです。再エネのコストが高いということについてお聞かせいただければと思います。
○参考人(大野輝之君) まず、目標については二二から二四%、これ低いということは間違いないと思います。各国で今二〇三〇年目標を立てておりますけれども、例えばドイツは二〇二五年までに四〇から四五%、英国も二〇二〇年までに三〇%、フランスも二〇三〇年までに四〇%、アメリカでも、大きな州でありますカリフォルニア州やニューヨーク州は二〇三〇年までに五〇%という目標を立てています。ですから、大体先進国標準としてはざっくり言って二〇三〇年までに四割以上はやろうというのがほぼ相場観でございますので、もうその半分にとどまっているということでございます。
ですから、その主力電源化にするという方針が出たことは大変すばらしいことだと思いますし、いいことだと思います。ですから、問題は、主力電源化にするのであれば、やっぱり目標も同時に引き上げていくことが本来あるべきではないかと思います。
コストなんですけれども、コストはおっしゃるように世界的には非常に安くなってきております。今世界で最も安い太陽光発電、風力発電は、一キロワットアワー、二セントを切っております。二セントを切るということは、日本円にしてもう二円を切っているという段階です。これ、もうちょっと信じられないコストだと思うんですけれども、まさにこれが現に入札の結果、出ております。ただ、こういう入札結果が出るのは、やっぱり太陽光であれば、中東のように非常に日照が多いところであるとか風況が非常にいいということなので、なかなかここまではやはり世界的にはいかないと。ただ、世界的にもう太陽光も風力発電も一キロワットアワー当たり日本円でいって十円を切るものがざらになっているということでございます。
日本も高い高いと言われながら、下がってはまいりました。太陽光発電の買取り価格、四十円以上からスタートしましたが、現在では実際一番安いものはもう二十円を切るものになっておりますし、風力発電に至っては、日本でも一番安いのは十三・八円だと思いますが、そういう数字が出ております。ですから、日本でも下がってきております。ただ、世界の下がり方はもっと早くて、やはりギャップはむしろ広がっているという状況です。
何でそうなのかということをよく聞かれるんですけれども、これは先ほど申し上げましたが、なかなか系統につなごうと思う場合、これいろんな理由を付けて系統への接続がなかなか認めてもらえない。系統に接続するんだったらこれぐらいのコストを払えというふうなやっぱり電源的な制約があって、そこでコストが加算していく。
あともう一つは、やはり発電コストを分析してみますと、例えば太陽光発電ですと、パネルの価格自体はそこまでは海外と違わないんですが、やっぱり設置に係るコストが違うんですね。これはやっぱり設置に関していろんな制約条件があったり、例えば、よく日本では風力発電を造る適地がなくて、山の上の方に造るので土木費掛かるという話があるんですけれども、調べてみますと、日本でも二〇〇〇年代の半ばまでは農地で、だから牧場で造れたんですね。そうすると、フラットなところなので建設コストも安いということなんですが、これが二〇〇〇年代の半ばに農地法の改正があったり、あるいは運用規則が難しくなったりして、それで、そういう農地や牧草地での建設が極めて難しくなってしまったと。いろんなやるようにする方法もできているんですけど、依然として難しいと。したがって、なかなか造りやすいところで造れないような土地利用の規制があると。もちろん土地利用規制は必要なんですけれども、不合理な規制があるということで、電源系統の問題と土地利用の問題、こういうことを直していくことがやはり日本でも世界で実現しているような安い再エネを享受できるようにする、そういう道じゃないかと思います。
○岩渕友君 続けて、大野参考人にお聞きをするんですけれども、先ほど、参考人が東京都の排出量取引制度の導入に関わっておられたという話ありました。
先ほどもちょっと質問あったんですけれども、激しい反対があって、CO2の削減は必要なんだけれども、ビジネスへの悪影響を懸念するというような意見もあったと。こうした声をどのように乗り越えたのかということで追加でお話しいただけることがあれば教えていただきたいのと、国レベルの導入についてどのようにお考えでしょうか。
○参考人(大野輝之君) 東京都、二〇〇七年にこの計画を発表しまして、二〇〇八年、翌年に東京都議会で全会派一致で条例が成立いたしました。
作るに当たって、経済団体の方々、NGOの方々も、経済団体十四団体、企業だと思いますけれども、お招きして、ステークホルダー会議という議論する場を設けました。当初はやっぱり非常に難しいと、強い反対でありますとかかなり困難であるというふうな御意見が多かったんですが、議論を重ねていくうちに、経済団体、企業の中で反対にも二種類あるなということが分かりました。
一つは、これはもう今、あえて言ってしまうとポジショントークと申しますか、もう反対と決めて言っている意見と。つまり、これは東京都の制度に反対しているのではなくて、東京都でキャップ・アンド・トレード制度が導入されてしまうと国への導入で道を開くかもしれないと、だからとにかく反対なんだと。当時、経済団体、一部の経済団体が出された意見書の中には、いかなる改善をしても反対であると、こう書いてあるんですよね。これはもう話ししようがないと、これが一方でございました。
その一方で、もう一つ、東京都の不動産の業界でありますとか商工会議所なんかからの意見は、実際に東京でビジネスをやる場合に実際にこの制度が障害になってしまうのではないかとか、そういう実際の懸念でございました。ここについては丁寧な話合いをいたしまして、どういう点に心配があるのかという意見をお受けしまして、それで改善を図っていったということによって実現をしていったと、こういう経緯でございます。
○岩渕友君 ありがとうございます。
時間が来てしまったので田辺参考人にはお聞きすることができませんでしたが、貴重なお話をいただいてありがとうございました。
今国会、原発ゼロ基本法案が野党四党によって提案されていますけれども、原発ゼロ、再生可能エネルギーへの転換が大きな国民の世論になっています。この国民の声がエネルギー基本計画にもしっかり反映されることが必要だということを改めて感じました。
参考人の皆さん、ありがとうございました。