2019年5月28日(火) 参議院経済産業委員会 中小企業等経営強化法等改正案
「中小・小規模事業者が事業継続できる施策こそ」
(議事録は後日更新いたします)
日本共産党の岩渕友議員は28日の参院経済産業委員会で、中小事業者の事業承継の問題は日本経済全体に関わる喫緊の課題だと指摘し、政府の認識をただしました。
世耕弘成経済産業相は、現状を放置すれば2025年ごろまでに約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)を失う恐れがあり、「(中小企業の事業承継は)地域経済の活力、雇用の維持といった観点からも極めて重要な課題だ」と発言。岩渕氏は、全商連青年部協議会との懇談をふまえ、事業承継の障害になっている問題として、家族従業員への給与を必要経費として認めない所得税法第56条の見直しと社会保険料の負担軽減を求めました。
岩渕氏は、東日本大震災と台風10号で被災した岩手県宮古市の中小業者が、被災直後から「自分たちは地域と一体」との思いで自発的にがれき撤去など災害復旧に取り組んだとして「中小企業を防災のインフラ拠点と位置付けて支援すべきだ」と主張。世耕経産相は「地元の中小企業の役割は非常に大きかった」とし、支援策を検討する必要があると答えました。
岩渕氏は同市が2010年から2年間取り組んだ住宅リフォーム制度の地域経済への波及効果を示し、自治体独自の地域振興の取り組みを国が支援すべきだと主張。世耕経産相は「中小・小規模事業者の事業発展、持続的発展を目指し地域経済の活性化を図っていきたい」と答弁しました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
中小・小規模事業者が地域で果たしている役割については、私もこの委員会で何回も取り上げて、大臣にも確認をしてきました。先日の参考人質疑の中でも、事業者団体、そして事業承継に関わっていらっしゃる専門家の方、それぞれの立場から、中小・小規模事業者の存在そのものの重要性について述べられております。
それで、今回の法案提出の背景として、中小・小規模事業者の事業承継が喫緊の課題だと、こういうふうに位置付けられている現状認識について改めて確認をしたいと思います。
○政府参考人(前田泰宏君) お答え申し上げます。
二〇二五年までに、平均引退年齢である七十歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約二百四十五万人と見込まれております。そのうち、その約半数の百二十七万人が後継者未定と承知しております。
この現状を放置した場合、二〇二五年までの累計で約六百五十万人の雇用と約二十二兆円のGDPが失われるとの推計もあることから、事業承継は喫緊の課題であるというふうに認識しております。
○岩渕友君 今答弁にあったように、放置しておけば二〇二五年頃までには約六百五十万人の雇用、そして約二十二兆円のGDPを失う可能性があるということで、これ、もう日本経済全体の問題だということです。
事業承継は特に地方でこそ深刻な実態になっています。地方経済にとって中小・小規模事業者の事業承継の重要性についても確認をします。
○政府参考人(前田泰宏君) お答え申し上げます。
事業承継、特に地方におきまして大変深刻な問題になっていると認識しております。例えば、東京商工リサーチのデータによりますと、六十歳以上の中小企業経営者の割合、第一位が秋田県の六六・七%、次いで島根県六二・八%、佐賀県六〇・九%となることから、上位にランクインしているのがいずれも地方の県であることから、仮に円滑な事業承継が進まなければ、特に地方において多くの中小企業が経営者不在という原因によって廃業に陥る可能性があると認識しております。
また、地方の伝統工芸品や地場産業の組合を対象とした調査によりますと、後継者不在を理由とした倒産、廃業が伸展しているため、地域に根差した産業の技術やノウハウを維持するためにも、事業承継をしっかりと後押ししていくことが重要であるというふうに認識しております。
○岩渕友君 経産省の資料の中では、事業承継問題の解決なくして地方経済の再生、持続的発展なしと、こういうようなタイトルも書かれていたんですけど、まさにそのとおりだというふうに思うんですね。
こうした今答弁いただいたような現状認識を踏まえて、そもそもの中小・小規模事業者の果たしている役割、そして事業承継の重要性について大臣の認識を確認したいと思います。
○国務大臣(世耕弘成君) 中小企業・小規模事業者は全国に約三百五十八万社存在しまして、雇用の七割を支えている日本経済の屋台骨でありまして、極めて重要な経済主体だというふうに思っています。
こうした中、この事業承継問題というのを放置した場合に、二〇二五年までの累計で約六百五十万人の雇用と二十二兆円のGDPが失われるという推計もあります。また、事業承継は、これ単なる中小企業の後継ぎ問題だけではなくて、サプライチェーンですとか地域経済の活力、雇用の維持といった観点からも極めて重要な課題でありまして、日本経済を支える上で極めて重要な政策課題だというふうに思っています。
このため、経産省では、昨年、法人向け事業承継税制の抜本拡充を行いました。さらに、平成三十一年度税制改正では、個人版事業承継税制を創設しました。さらに、税制以外にも、全国四十八か所の事業引継ぎ支援センターによる後継者不在の事業者へのマッチング支援ですとか事業承継補助金による事業承継後の事業者の新たな挑戦の支援とか、いろんな施策も講じているところであります。
これらの取組を通じて、極めて重要な政策課題である中小企業の事業承継をしっかりと後押ししてまいりたいと思っています。
○岩渕友君 事業承継問題が日本経済を支える上でも非常に重要だということを改めて確認できたと思います。
それで、若手経営者などでつくっている全商連青年部協議会というところが二〇一七年に行った実態調査というものがあるんですね。この中で家業を継ぐと答えた青年が五八・九%なんですけれども、前回、二〇一一年に行われた調査から約一〇ポイント減っているという実態になっています。家業を継ぐ理由として挙げられているのが、親を助けたい、仕事にやりがいがある、事業を発展できる、引き継いで事業をもっと発展させたいんだと、こういったことが理由として挙がっています。
先日、辰巳議員とも一緒に、協議会の方々から直接話をお聞きをしてきました。青年が希望を持って事業を継続できるようにしてほしいんだという要望が皆さんから寄せられました。後を継ぎたいという思いを持った業者青年が事業承継ができるように、そして事業を継ぎたくなるような後押しというのが今本当に必要になっていると思います。
ところが、この事業承継の障害になっている問題があります。その一つが所得税法五十六条の問題です。家業を継いでお父さんと事業を行っている若手事業者の方から、地域を元気にしたいんだと、子供たちに元気な地域を残したいんだと、こういう思いで事業を継いだ、けれども、地域では、周りでは、もうかっているのに後継者がいなくて廃業をする、こういう事業者もいると。所得税法の五十六条がネックになっているんだというふうにお聞きをしました。
白色申告の場合、所得税法五十六条で、配偶者であれば年間八十六万円、その他の親族は五十万円の控除しか認められていません。このことによって、家業に従事をして技能の習得であるとか経営ノウハウを学ばなくてはならない業者二世が外に出て働かざるを得ないと、こういう状況に追い込まれています。
三月二十八日の参議院の財政金融委員会で、我が党の大門実紀史議員の質問に、麻生財務大臣が、以前から所得税法第五十六条を見直すべきとの指摘を受けているので引き続き丁寧に検討をすると答弁がありました。
神奈川県の葉山の町議会では、中小企業は地域経済の担い手として日本経済の発展に貢献してきた、家族従業者の労働の社会的評価、働き分を正当に認めて人権保障の基礎をつくるためにもとして、この五十六条の廃止を求める意見書が提出をされています。こうした意見書が、自治体請願が五百件以上提出をされていて、各地の税理士団体であるとか弁護士会なんかも意見書を出しています。
地域に密着をしている中小・小規模事業者の業者青年の事業承継を促進をして地域の経済を持続発展させるためにもこうした声に応えるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 今御指摘の所得税法第五十六条というのは、個人事業主が親族に給与等を分散して支払うことによって、本来は自分の所得なものを親族間で分割をして、いわゆる累進税率の適用を、高い累進税率の適用を免れることで税負担を軽減するといった租税回避行為を防ぐために、所得税の計算上、親族に給与を支払ったとしても必要経費に算入しないという規定であると理解をしています。ただし、所得税法ではこの規定を原則としながらも、五十七条において、青色申告者については帳簿等によって家計と事業の分離や給与支払の実態を確認できるということから、親族への給与の実額による経費算入が認められている、こう理解をしているわけであります。
今の御質問の趣旨は、青色申告をしていない個人事業主についても親族への給与の実額による経費算入を認めるべきだという御意見だと承知していますが、白色申告者は青色申告者とは異なって、資産の状況まで記録することは求められていないなど、両者の記帳の状況には依然として違いはあることを踏まえて、白色申告者に対しては、実際の給与の支払の有無にかかわらず、定額の控除、配偶者八十六万円、その他の親族五十万円を認めるという配慮がなされているわけであります。
こうした中、与党税制改正大綱では、「適正な記帳の確保に向けた方策を講じつつ、事業所得等の適正な申告に向けた取組みを進める。」とされておりまして、三月二十八日、今御指摘の財金委員会における麻生大臣も答弁されているとおり、まずは白色申告者の記帳のレベルを引き上げていくことが重要ではないかというふうに認識しています。
○岩渕友君 喫緊の課題だと言われている事業承継にも障害になっていると、現場の声があるということなので、こうした見直しの声にしっかりと応えるべきだということです。
社会保険料の負担も中小・小規模事業者の事業承継の障害の一つとなっています。売上総利益に占める社会保険料負担の割合は、二〇一七年で、資本金十億円以上の大企業が九・五%であるのに対して、資本金一億円未満の中小企業は一三・六%となっていて、中小・小規模事業者が雇用を確保、そして維持するに当たって重い負担になっています。
この社会保険料の負担が中小業者にとってどのような影響をもたらしているのか、大臣の認識を伺います。
○国務大臣(世耕弘成君) 社会保険料の支払については、中小・小規模事業者から、これ赤字でも払わなければ、ここが税と違うところですが、赤字でも支払い続けなければならないので、雇用を守る上でも重荷であるなど、負担感についての声はいただいているところであります。中小企業・小規模事業者が社会保険料の支払負担に対応できるように対策を講じていくべきだということは、強く認識をしております。
ただ、一方で、やはり社会保険料の負担というのは、これは雇用とセットで生じる経営者の、会社のある意味義務的なところもあるわけであります。社会保険制度そのものの在り方は厚労省で検討が進められると承知をしておりますけれども、経産省としては、例えば生産性の向上、そして下請取引条件の改善などによって付加価値がしっかりと事業者に残って、社会保険料を負担する力がこの中小企業・小規模事業者に付いていくように全力で取り組んでいきたいと思っています。
○岩渕友君 資料の一を御覧いただきたいんです。小規模企業振興基本法の附帯決議で、先ほども出されていましたけれども、この附帯決議で、政府に社会保険料の負担軽減のためにより効果的な支援策の実現を図るということを求めています。
先日の本会議で附帯決議がどのように実行されているのかと聞いたところ、大臣からは、今答弁をいただいたように、生産性の向上だと、取引条件の改善だと、こういった答弁があったんですね。だけど、これでは附帯決議が求めていることに応えているとは言えないと思います。どんな実態になっているのか、詳しい調査を行うべきではないのかということが一つ。
そして、小規模企業基本計画の改定に当たって行われたパブリックコメントでは、社会保険料の負担軽減に関して、全国商工団体連合会の会長から、保険料の滞納で従業員の給与や売掛金が差し押さえられるなどの事態も各地で発生している、一向に軽減策が図られていない、これは行政府の不作為である、早急に軽減策を実施する必要があることを明記すること、こういう厳しい意見が寄せられました。
この間、一人親方でも社会保険が未加入だと現場から締め出される、こういう実態があるんだということもお聞きをしてきました。附帯決議に応えて、軽減策の実施を基本計画に明記するべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) いずれにしても、これは我々も実態は当然把握をしているわけであります。
中小・小規模事業者の方が当然売上げがそもそも小さいわけでありますから、売上総利益に占める社会保険料負担というのは大企業に比べて重くなるわけであります。また、日本商工会議所や中小企業団体中央会などからは、やはりこの負担軽減を求めるというような声もいただいておりますので、中小企業・小規模事業者が社会保険料の支払負担に対応できるように対策を講じていくべきだということは強く認識をしています。
一方で、社会保険制度そのものについては厚労省で検討されるべきものだというふうに思いますけれども、社会保険料の事業主負担というのは、やっぱり雇用を生むことによって事業主の利益にも資するという観点から事業主に求められていることでありまして、一般論として、こうした社会保険料負担を広く何か公費で負担を肩代わりをして軽減をするというのは適当ではありませんし、財政上の問題も出てくるというふうに思います。
ですから、経産省としては、やはりまず王道として、生産性を向上させる、下請取引の適正化を図るというようなことをしっかりと進めていくことが重要だと思っています。
現在変更作業を行っております小規模企業振興基本計画においても、こうした観点から、事業者によるIT導入の生産プロセスの改善や国による下請の取引の監視、取締り活動の厳正な実施を盛り込むことを検討しているところであります。
○岩渕友君 大臣も負担軽減の必要性は認めていると、そういうことが必要だと、さらには、中小業者の団体の皆さんからも事業者の皆さんからも声が上がっているということなので、これを受けて早急に進めていただきたいということです。
それで、冒頭、地方経済にとっても中小・小規模事業者が重要な役割を果たしていると、地方経済にとって大切な役割を果たしているし、事業発展を中小・小規模事業者がしていくことが大事だということは確認をしました。
先日、岩手県の宮古市に伺って、地元の業者の皆さん、そして中小企業対策に関わっている市の担当者の方々から話をお聞きしてきました。市内のある商店街では、その八割に後継者がいないという実態なんかもお聞きをしたんですけれども、宮古市は二〇一〇年四月からの二年間、住宅リフォーム制度を全国に先駆けて実施をしていて、制度を全国に広げさせる大きな力になりました。
リーマン・ショックの影響を受けて、どこでも不況だという状況のときです。当時、宮古市の家の新築件数というのは年間八十件から九十件、宮古よりも人口が少ない周辺の自治体よりも少ないという状況だったそうです。地域経済対策だということで、それを目的として実施されたのがこの住宅リフォーム制度なんですけれども、制度の中身が市内の業者に限ったもので、工事対象が幅広いと。対象工事は二十万円以上で、一件につき十万円補助するという中身で、申請も簡単にしたこともあって、使い勝手が良くて非常に好評で、当初一年だった予定がもう一年間ということで延長をされました。総世帯の一五%以上が活用をして、予算は二か年で四億円弱、工事費は約十九億円ということで、補助に対して工事費が四・七五倍になったということなんですよね。
市の担当者の方がシャワー効果という言葉使っておられたんですけれども、経済波及効果が非常に大きいものでした。これによって、クリーニング屋さんであるとか飲食店であるとかスナックとか、地元の業者が非常に潤って、地元の有名なおすし屋さんがあるんですけど、そこに週一回通えるようになったという話が出るほど、地元の業者の皆さんに非常に歓迎されたものでした。地域経済を活性化させるのに大いに役に立ったということなんですよね。
自治体が地域の振興のために独自に取組を行っていることに対して国が支援するということが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 中小企業・小規模事業者の振興に向けては、国だけではなくて、地方公共団体においてそれぞれの地域の実情や課題に沿った施策が実行されることが望ましいと考えています。
今回の法改正でも、地域の小規模事業者の支援計画を定めていく経営発達支援計画について、商工会、商工会議所だけではなくて市町村も計画作成の作成、実行主体に位置付けて、地方自治体と一体となった支援を明確化したところであります。また、都道府県が地域の課題に合わせた小規模事業者支援施策を推進する取組を支援するため、今年度から都道府県の経費の一部を国が補助する予算措置である自治体連携型持続化補助金を創設をいたしました。
引き続き、国だけではなくて、地方公共団体による施策実行も後押ししながら、中小・小規模事業者の事業の発展や持続的発展を目指して地域経済の活性化を図ってまいりたいと思っています。
○岩渕友君 住宅リフォーム制度にも支援をしてほしいという要望もあったんですよね。地域経済の活性化のために国の支援をもっともっと充実させるということが今本当に必要になっていると思います。
先日の参考人質疑でも、中小・小規模事業者が災害のときに果たした役割についていろいろ聞かせていただきました。
この宮古市なんですけれども、東日本大震災とその後の台風十号でも被災をしています。災害時に地元の業者がどういう役割を果たしたのか、これを直接お聞きしてきたんですけれども、あの大震災の直後、建設業者の方々が、もう誰に言われるでもなく市役所に集まってきて、自衛隊の後方支援として道路の復旧であるとか瓦れきの撤去作業などを率先して行ったということがきっかけになって、この宮古地区での災害復旧対策連絡協議会というものが発足することになりました。地元の業者なので地理も知っているし地形もよく分かっているということで、スピーディーな対応ができたということを市の担当者の方も話をされていました。
先日の参考人質疑の中でも、災害時に地元の業者がいち早く駆け付けているんですという話がありました。事業者の方々が、自分たちは地域と一体なんだと、自分たちの地域は自分たちが守るんだと、そういう思いで災害対応に取り組んでおられるということが本当によく分かりました。
そこで大臣に伺うんですけれども、災害時に地元の中小・小規模事業者が果たしている役割、そして、中小業者が地域にいることそのものが防災対策となるんだというふうに思うんですけれども、大臣の認識を確認をしたい、それが一つです。
加えて、宮古市では、今後も地元業者に災害があったときは対応してほしいんだという話がありました。行政だけでは災害対応難しいという実態もある中で、中小業者は重機もある、そして人材の面から見ても災害対応の力になります。
中小企業家同友会全国協議会の皆さんと懇談をしたときにも、皆さんから、東日本大震災のときに、自治体が用意をした避難所が津波を受ける一方で中小業者の屋上に避難をして助かる方がいるなど、中小企業が防災の拠点となったと、食料備蓄もあるし、発電や暖房器具などもあるんだというお話もお聞きをしました。
そこで、例えば資材や機材、そして重機など、災害に活用できるものを持っている事業者の維持費の負担軽減ということで、その部分の税制面での優遇措置をとるだとか機器を導入するときに補助金を出すだとか、中小企業を防災のインフラ拠点と位置付けて支援することが重要だと考えるんですね。こうした対応を検討する必要があるんじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 昨年の西日本豪雨の際にも大規模な浸水被害に遭った例えば倉敷市真備町地区においては、地元の商工会青年部を中心に様々な組織が連携をして、例えば自前の重機も活用しながら瓦れきの撤去や汚れた資機材の搬出を行うなど、復旧復興に当たって地元の中小企業の役割は非常に大きかったというふうに認識をしております。
今回の法案は、中小企業が自然災害への備えを強化をして、円滑に復旧復興支援に移行することにも資すると考えておりまして、例えば非常用発電設備ですとか防災倉庫の整備といったものは、これ、御指摘の災害時に活用可能な設備の導入にも資するというふうに思っています。
ただ、一方で、例えばユンボのような重機ですと、これは平時にも事業用で利用するということが前提になるわけであります。こういった設備に対して特別の支援を講じるということは、なかなかこれ、災害時と平時に活用するものとを区分けして切り分けることがなかなか簡単ではないということと、こういった重機等については既に設備投資減税や補助金といった支援策が存在している。そういうことを考えると、ですから、防災倉庫とか非常用発電設備なんというのはこれは対応できると思っていますが、それぞれ物によって是非やニーズについてよく見極めていく必要があるというふうに思っています。
○岩渕友君 参考人質疑でも、全国商工会連合会の森参考人から、特別な補助制度がこれからは必要ではないのかという意見もあったんですね。今、全国各地で災害が頻発しているということもあるし、災害時に、先ほど答弁いただいたように、中小・小規模事業者が果たしている役割は非常に大きいということもありますので、引き続き検討していただきたいというふうに思います。
衆議院の参考人質疑で、東日本大震災のときに宮城県の気仙沼で被災した参考人が、地元業者復旧の決定的な支援になったのがグループ補助金だったというふうに述べておられました。ところが、昨年の西日本豪雨では、保険加入率を理由にして熊本地震よりも補助金が減少をして、自己負担分が増加をするということになりました。
グループ補助金だけでは事業を再開することはできませんし、衆議院の法案審議の中で我が党の笠井亮議員が明らかにしたように、保険や共済に入っていても必要な額の半分もカバーできなかった事業者が五割を超えています。保険加入率を理由としてグループ補助金の自己負担分が増えるということはあってはならないと思います。
参考人質疑でも、中小企業団体中央会の晝田参考人が、このグループ補助金について、有り難い制度だと、廃業を考えていた企業が考え直すきっかけになった、そして森参考人も、本当にいい制度で、更に拡充してほしいというふうに意見が述べられています。グループの形成が難しいので、事情を知っている市町村に任せてほしいと、こういった要望なんかも聞いてきているんです。
この柔軟な対応、そして制度の充実、改善こそ行う必要があるのではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) グループ補助金は、これまでも東日本大震災、熊本地震、そして平成三十年七月豪雨において措置をしてきておりまして、各地域の商工会、商工会議所等の支援機関や市町村の御協力もいただきながら、二社以上のグループに対して、被害の実情に応じて柔軟に支援を行ってきたというふうに思っています。
例えば、平成三十年七月豪雨では、初めて水害に対応して措置を行いました。水害ということで、パソコンですとか車両の被害が大きいといった現場の声を踏まえて、こういったものを新たに補助対象とする拡充措置を講じています。
また、この事業の運用開始後も、各自治体と相談しながら不断の運用改善に努めてきているところであります。具体的には、専門事業者による設備比較証明書というものを活用して、一部破損する前よりも性能が上がってしまった設備であっても補助の対象とするとか、補助金申請業務に時間を割くのが困難という声も踏まえて、復興支援アドバイザーによるこの補助金申請の作成支援を強化するといった改善策も講じてきているところであります。
今後も、被災中小企業にしっかり寄り添いながら復旧復興支援に取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 復旧の決定打となった、それぐらい皆さんに歓迎されているということなんですよね。だからこそ、縮小するということはあってはならないし、拡充する必要があるんだということを改めて述べておきたいと思います。
昨年九月に発生をした北海道胆振東部地震は、全道に本当に甚大な被害をもたらしています。全道への電力供給の約半分を担っていた苫東厚真火力発電所が停止をしたことがきっかけになって、奥尻島を除く北海道の全域が停電をするブラックアウトが発生をしました。
北海道商工団体連合会が行った被害実態アンケートは、僅か一か月で千六十七人から回答が寄せられました。停電によって納期に間に合わず、遅延賠償金を支払わなければならなくなった、停電によってカニを廃棄した、売上げが半減をして、十年間居酒屋を営業してきたけれども初めて赤字になった、こうした実態が寄せられて、被害の調査をした千人で被害額は三億円を超えるということになりました。北海道電力に損害を賠償してほしいという怒りの声や、同じことを繰り返さないためにも地産地消の分散型電源への転換を求める声が寄せられています。この思いは当然のことです。
胆振東部地震では、グループ補助金が適用になりませんでした。地元の事業者からはもちろんなんですけれども、全国の町村会と北海道町村会からグループ補助金の適用、拡充を求める緊急要望書が出されて、道からも、グループ補助金と同様の補助制度やグループ化ができない企業等の事業継続に向けた個別補助制度の創設や、長期無利子貸付制度を設けるよう求める緊急要望書が出されています。
グループ補助金を含めて、直接支援を求める声に応える必要があったのではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) グループ補助金も適用の考え方というのがありまして、施設設備の損壊等の物理的な被害が広範囲で甚大であること、そしてサプライチェーンが毀損するなどによって我が国経済が停滞する事態が生じていることということが前提に特別に措置をしているという補助金でありまして、残念ながら、北海道胆振東部地震ではこの措置をする対象には当たらなかったわけであります。
ただ、当然、これ面的な被害の広がりはありませんが、一社一社見ていけば、それはそれぞれ深刻な打撃を受けられているという面もありますので、この北海道胆振東部地震においても、既存の予算も含めて必要な財源を確保して、そしてグループ補助金に相当するぐらいの支援を一社一社の事情に合わせて実施をしてきたところであります。
具体的には、小規模事業者による業務用冷蔵庫や工作機械などの設備導入、店舗改装、広告宣伝などの取組への支援、商店街における集客イベントなどの支援、そして中小企業基盤整備機構による被災自治体における仮設店舗設置の支援、政府系金融機関の低利融資、そして一般の保証とは別枠での信用保証による資金繰り支援などの措置を講じてきたところであります。
○岩渕友君 グループ補助金も是非適用していただきたかったという要望も含めて、直接支援を更に拡充させる必要があるということを述べておきたいと思います。
次に、複数の事業者による連携事業継続力強化計画について聞きます。
法案では、中小企業者以外の事業者、大企業者との連携も含まれています。これは、主にサプライチェーンで親事業者と下請事業者が連携をしてBCP策定などに取り組むということを想定しているということでいいでしょうか。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
経営資源に制約のございます中小企業が単独で自然災害への事前対策を講ずることには一定の限界がございます。そうした中小企業にとっては、同業の他社でありますとか、あるいはサプライチェーンの親事業者、商工団体等の外部者と連携して、それらの支援を得て防災・減災対策に取り組んでいただくことが有益であると、このように考えてございます。
サプライチェーンの親事業者が関与する連携の態様といたしましては、様々なケースが想定されますが、例えば、親事業者がサプライチェーンに属する取引先中小企業に対しまして共同セミナーを開催して、被災時の初動対応において相互に人的支援を行う計画を策定するように指導、助言を行いますこと、あるいは、親事業者が仲介する形で、遠隔地に所在する同業の中小企業同士が被災時にそれぞれ代替生産を行う取決めを結ぶことなどが考えられます。
なお、連携事業継続力強化計画におきましては、親事業者が関与しない組合を通じました同業の中小企業間の連携でありますとか、あるいは工業団地など特定の地域に所在する事業者間の面的な連携も併せて支援するということにさせていただいております。
以上でございます。
○岩渕友君 このサプライチェーンの事業継続計画をめぐって、親事業者の働きかけが下請中小企業にとって過大な負担を押し付けることがないようにと中小企業強靱化研究会に出席した委員から意見が上がって、今年一月の中間取りまとめで過大な負担の例が示されました。
先ほども少し紹介されていたんですけれども、改めてこの過大な負担の例を読み上げてください。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
お尋ねございました中小企業強靱化研究会中間取りまとめにおきます過大な負担の例でございますが、一つ目といたしまして、親事業者の指示を受け、下請中小企業が防災関連の設備投資を行ったにもかかわらず、そのコストを不当に下請中小企業者に負担させるということ。二つ目といたしまして、連携して事前対策に取り組む中で、親事業者が下請中小企業に対して、一方的に製品に関する営業秘密の無償提供を求めること。三つ目に、連携して事前対策に取り組むことを名目として、親事業者の下に従業員を無償で派遣させる、あるいは取引に関連のない商品や役務を無理やり購入させることなどにより、下請中小企業の利益を不当に害するといったケースを例示させていただいているところでございます。
以上でございます。
○岩渕友君 これらは、独占禁止法が禁じている優越的地位の濫用に当たるのではないでしょうか。
○政府特別補佐人(杉本和行君) お答えいたします。
個別の事案にどう独占禁止法が適用されるかについては具体的な答弁を差し控えたいと思いますが、まず一般論として申し上げますと、今指摘されましたような事例については、まずは下請法の適用対象となるかどうかが検討課題になるのではないかと思います。下請法は、一定の資本金基準を満たす親事業者と取引を行っている中小事業などの下請事業者の取引が製造委託等の関係にある場合に適用されるものでございまして、下請事業者が利益を不当に害するかどうかという観点から下請法違反となるかどうかを個別に具体的に判断していくことになると考えております。
委員御指摘の優越的地位の濫用に該当するかどうかにつきましては、行為者がまず取引上の地位が相手方に優越しているかどうかということ、それで、当該行為が正常な商習慣に反して不当に行われたものであるかどうか、また、自己のために金銭、役務、その他経済上の利益を提供させたものであるかどうか、これについて個別の事案に沿って判断していくことになると考えております。
公正取引委員会としては、独占禁止法に違反の疑いのある事実に接した場合は厳正に対処してまいりたいと考えているところでございます。
○岩渕友君 この間、大臣は、下請企業に負担が押し付けられる事態が生じることも想定されると答弁をしています。想定をされるというのであれば、事前の対策を取るべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 当然、事前の方策というか、もうこういった押し付けが起こることがあってはならないということで、昨年十二月には下請中小企業振興法の振興基準を改正して、下請事業者に取引上一方的な負担を押し付けることがないように留意することや、天災等が発生した場合、できる限り下請事業者の復旧を支援するとともに、従来の取引関係を継続することを明記する、そういったことに加えて、今回の法案でも、基本方針において、親事業者は下請中小企業に対して過大な負担を一方的に押し付けないよう配慮する規定を検討しているところであります。
これに加えて、今全国に散らばっている下請Gメンヒアリングなどを通じて実態の把握に努めるとともに、仮に下請中小企業に過大な負担を求めるようなケースが出てきた場合には、下請法に基づいて厳正に対応をしてまいりたいと思います。
○岩渕友君 下請企業は取引関係で弱い立場に立たされていて、BCP策定についても問題が生じるということが懸念をされてきています。実際に、公正取引委員会の平成二十六年度上半期における下請法の運用状況等及び今後の取組では、下請取引等改善協力委員から、BCPを策定しなければ親事業者と取引できない状況となった場合、実際の災害時に供給が再開されるまでに時間を要する製品については、下請事業者の負担で在庫を一定程度抱えておかなければならないといった問題が生じ得るのではないかとの意見が報告をされています。
大企業に都合のいいBCPが策定をされて、対応できる企業だけが選別されるような仕組みにしてはならないというふうに考えますけれども、大臣の認識はどうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 今後、例えば補正予算を活用して専門家派遣による計画策定支援を行うとともに、経営資源が脆弱で支援が必要な小規模事業者に対しては、商工会、商工会議所と市町村が連携をして支援体制を強化するなど、なかなかBCPを整備する余力がない中小企業にも配慮した多面的な支援を講じてまいりたいと考えています。
○岩渕友君 サプライチェーン全体の隅々に至るまで防災・減災対策の底上げが行われるように、大企業に責任と役割を果たさせるということが重要だということを指摘をしておきます。
最後に、中小・小規模事業者の廃業を加速させる消費税増税とインボイス導入についてはきっぱりやめるべきだということを求めて、質問を終わります。
○委員長(浜野喜史君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(浜野喜史君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、浜口君から発言を求められておりますので、これを許します。浜口誠君。
○浜口誠君 私は、ただいま可決されました中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲民主党・民友会・希望の会、国民民主党・新緑風会、公明党、日本維新の会・希望の党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 中小企業の防災・減災対策の高度化に向けて、認定事業継続力強化計画等が最大限活用されるよう、効果的なハンズオン支援を実施できる人材を育成するとともに、制度の普及啓発を含め十分な支援措置を講ずること。
特に、小規模事業者による活用を促すため、商工会・商工会議所と関係市町村の緊密な連携に向けて、商工会・商工会議所、小規模事業者に関する実情が市町村において十分に理解されるよう、政府が責任を持って対応するとともに、「基本方針」で分かりやすい認定基準を示すほか、申請手続をできる限り簡素化すること。
二 商工会・商工会議所の経営指導員については、マンパワー不足が確認されているため、地方交付税措置等を通じ、必要な財源措置を講ずるよう努めること。また、都道府県による設置定数基準の見直し等を促し、抜本的な体制整備に努めるとともに、こうした取組が着実に継続して実施されるよう、不断の検証を実施すること。さらに、支援能力向上のための研修を充実し、小規模事業者支援を十分に実施できる体制を構築すること。
三 サプライチェーンの強靱化に当たっては、親事業者が下請中小企業に対して過大な負担を一方的に押し付けることがないよう、下請法の運用等について適切な対応を図ること。
四 喫緊の課題である中小企業の事業承継への対応を推進するため、事業承継税制等について広く周知に努めるとともに、事業引継ぎ支援データベースの抜本的な拡充を図る等の取組を加速すること。
五 プログラマーや弁護士等の社外高度人材をストックオプション税制の対象として認める課税特例については、社外高度人材活用新事業分野開拓計画に関する合理的かつ客観的な認定基準を定めた上で、適切な認定を行うこと。あわせて、認定後も計画の実施状況について継続的な確認に努めるとともに、税の公正の観点から、制度全体を通じて適切な運用を行うこと。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(浜野喜史君) ただいま浜口君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(浜野喜史君) 全会一致と認めます。よって、浜口君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、世耕経済産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。世耕経済産業大臣。
○国務大臣(世耕弘成君) ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。