2020年6月12日(金) 参議院 経済産業委員会
「中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案」
事業者支援は柔軟に
日本共産党の岩渕友議員は12日の参院経済産業委員会で、新型コロナウイルスの影響で減収した事業者を支援する持続化給付金で、制度のはざまにある人たちを対象にするなど、柔軟な対応を求めました。
岩渕氏は、昨年、個人事業主から法人になったなどの事情で対象にならなかった例を挙げ、「実態を個別に見るべきだ」と迫りました。
法人格のない「みなし法人」が対象となっていない問題では、福井競輪売店組合と農民連ふるさとネットワークの例を示し、職員を雇用して納税し、取り引き実態もあるとして、対象にするよう要求。梶山弘志経産相は、団体の構成員である事業者が条件を満たせば、個別に申請は可能だと答弁しました。
また岩渕氏は、北海道厚真町のバス会社が月240万円のリース代について、地震とコロナの二重被害のもとで、リース代の猶予後の支払いに不安が広がっていると指摘し、固定費などへの補助が必要だと強調。梶山経産相は「中小企業の経営に寄り添った対応をしたい」と答えました。
岩渕氏は、経営承継円滑化法等改正案について、経営者保証の解除要件の緩和を求めました。同法案は同日の参院本会議で全会一致で可決・成立しました。
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質問資料 新型コロナ 貸切バス業界の運送収入【PDF版】【画像版】
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
法案に入る前に、新型コロナウイルスの影響による中小業者をめぐる問題、持続化給付金の問題について聞きます。
給付の遅れなどの一方で、不透明な業務委託の問題が次々と明らかになる、そして、前田長官をめぐる疑惑もあると。事業者も国民も怒っていますよ。真相を徹底的に明らかにすることをまず冒頭強く求めたいと思います。
持続化給付金をめぐって、多くの相談や声が私のところにも寄せられています。入金の遅れで廃業する事業者も出ていますけれども、一刻も早い給付は待ったなしとなっています。
この間、コールセンターやサポートセンターの対応について、国会でのやり取りを現場に徹底してほしいと求めてきました。けれども、三百五十回掛けたけれどもセンターにつながらないとか、一度送った書類を再度要求された、支給を先延ばしにしてこちらが潰れるのを待っているのかと疑いたくなると、こういう声も寄せられています。八十代の方からは、資料をそろえてサポートセンターに行ったところ、自分でパソコンを使って申請するようにと言われた、こうした実態が寄せられています。
改善点が現場にすぐ届くようにすること、コールセンターやサポートセンターの対応が改善されるように迅速に取り組むべきです。大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 五月一日から申請が始まりまして、国会の審議の中でも様々な御意見をいただいております。個別の案件はなかなか触れないのが通常でありますけれども、その案件の中身がボトルネックになっている大きな理由であったりするのではないかという思いもあって、全て今事務局に伝えているということでありますけれども。
それらが徹底されていないという御指摘でありますけれども、再度そういったことがしっかり徹底できるような取組をしてまいりたいと思いますし、コールセンターというのは申請のときの中身について説明をする前提で設置をされたもので、今、途中経過についてはなかなか対応できないと思っております。ですから、個別の申請ナンバーでどう対応するかということも含めて至急に検討しろということを今週、先週末から今話を出しておりまして、個別の申請ナンバーで今どこに、どういう状況にあるのかというのが分かるような形にしたいと思っております。
今、百五十万件ほど支払が終わったということ、大体四分の三ぐらいの形で来てはいるんですけれども、書類の不備と言うとまたお叱りを受けるかもしれませんけれども、そういった判読が不能であったり、なかなかその中身について、確定申告書の事業所得の欄と、あとその内訳、月次の売上げ等について分かる書類があればということで、月次の書類については公のものでなくても、手書きでも通常帳簿として使っているものでも結構ですよということで、それが分かればお支払いするような形になっておりますので。
今の時点では、そのマイページで具体的に二枚、多分二つのマイページが行くと思うんですけれども、一枚目はお待たせしているというおわびと、二枚目に具体的な話でこういったことで遅れていますというような話が行っていると思うんですけれども、それに加えて、先ほど申しましたように、個別のナンバーで対応できるような今体制を検討、整えている最中ですので、御理解をいただきたいと思います。
○岩渕友君 こうした問題に加えて、売上げが五〇%以上減少しているのに申請できない事業者の方々がいるんです。
北海道で事業を営む方は、昨年十一月、個人事業主から法人になりました。今年三月の収入が前年同月比で五〇%以上減少したので給付金を申請しようとしたんですけれども、できないというふうに言われました。今年は法人だけど、去年は個人事業主だから駄目だということなんですね。個人事業主のときも、法人化してからも、事業の内容は全く同じなんですよ。創業特例があるんですけれども、比較できるのは昨年冬の売上げですよね。でも、冬の売上げは例年低い傾向にあるということで、季節性収入特例にも該当をしないし、制度のはざまに落ち込んでしまっているということなんです。この方は、五〇%ダウンを証明できるのに条件に入れていただけないのは大変悲しいというふうに訴えています。
こうした事業者も申請できるように、実態を個別に見るべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 持続化給付金は、経営に苦しんでおられるたくさんの事業者の方に一刻も早く給付金をお届けする観点から、簡素かつ迅速さを第一に制度設計することとしております。
委員御指摘のように、二〇一九年一月から十二月に法人成りした事業者が個人事業者として過去の売上げと比較することとした場合に、決算月が十二月と定められた個人事業者と決算月を任意に選択できる法人の間で事業年度のずれが生ずるなど、給付金の算定基礎となる前事業年度の年間総売上げを定めることができない、一つの考え方の下に定めることができないということがあります。
また、個人事業者において、確定申告の方法によって確定申告書類に月ごとの売上げが記載をされていないということがあり、法人成りまでの事業収入が確認できないといった課題があります。というのは、確定申告書、青色と、申告の種類によって月次が書かれていないものもあるということでありますね。こうした理由から、二〇一九年に法人成りした事業者については、法人設立後の売上げに着目しての給付額を算定をすることにしております。
一方で、法人成りは事実上の創業とも言える側面もあるため、創業間もない事業者向けの支援策として、持続化補助金について、補助上限額を通常の二倍の百万円に引き上げて、また、前年度との比較ができなくとも、一定の要件を満たせば交付決定額の二分の一を即座に支給するといった特別の措置を講じているところであります。また、政府系金融機関、民間金融機関による実質無利子無担保の最大五年間の元本返済据置きの融資という強力な資金繰り支援なども利用できるということであります。
事業者の皆様の目線に立って利用しやすい制度としてまいりたいと考えておりますけれども、一つ変えればかなり多くの方がまた変わってくる可能性もあるということも含めて一応の線を引かせていただいておりますので、是非御理解の上、この範囲に入る方であればこれで対応できるんですけれども、それに対応できない方は別の制度、補助金の制度も御利用をいただきたいと思っております。
○岩渕友君 個別の事情を見ながら柔軟に対応していただかないと、営業を守ることができないわけなんですよね。事業は同じなのに何で申請できないのかと。実態、是非見ていただきたいんです。そもそも、売上げが五〇%以上減少している事業者などと線引きするべきではないということも述べておきたいと思います。
さらに、衆議院でも議論をされていた、主たる収入が不動産所得になっている個人事業主が対象外になっている問題。スナック三店舗を貸しているという方は、コロナの影響を考慮して家賃を減額したことで収入が減っています。何で自分たちが対象にならないのかと、待ったなしの状態なんだというふうに訴え寄せられているんですけれども、個人家主も対象にするべきではありませんか。
○国務大臣(梶山弘志君) 持続化給付金は、新型コロナウイルス感染症の拡大により大きな影響を受けている事業者に対して、事業の継続を下支えし、再起の糧とすることを目的として現金を給付するものであります。
不動産所得には個人が保有する不動産を活用した賃料収入等が計上をされ、個人の保有する資産を運用するという意味では株式投資等の類似する性質があるために、事業継続を下支えし、再起の糧とする給付金の趣旨になじまないものも少なくないと考えられています。
一方で、不動産所得に計上している個人の方も、入居する事業者の事業継続が困難とする中、非常に厳しい状況にあると認識しております。このため、持続化給付金とは別に支援を行ってまいりたいということで、具体的には、今回の二次補正予算において家賃の支援給付金を創設をします。感染症の影響により売上げ減に直面するテナント事業者に対する支援を通じて不動産オーナーへの賃料支払を間接的に促進する、これにより不動産所得に計上する個人の方の生活も支えてまいりたいと思いますし、これは大家の方にも、オーナーの方にも連絡をしながら、そのたな子、テナントの方に入るということも連絡をするような形でやってまいりたいと思っております。
○岩渕友君 直ちに検討して支給してほしいということを強く求めます。
人格なき社団、いわゆるみなし法人が持続化給付金の対象になっていません。福井競輪売店組合、農民連ふるさとネットワークから事業の実態見てほしいんだという声が届いています。どちらも職員を雇用して、法人三税始め税金の申告納付も行っています。ふるさとネットワークは法人登記していなくても、学校給食に食材を納めるときも、大きな会社との取引でも問題になっていません。けれども、給付金だけは門前払いになると。
事業実態があって、去年と今年の収入金額を比較できる、こういう場合は実態に即して給付対象にするべきではないでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 持続化給付金、新型コロナウイルスの感染症の拡大により影響を受けている事業者に対する現金給付をするものであるということがまず第一点。
みなし法人は、法人税法における法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものに含まれ、例えばサークル活動や同窓会なんかもこれに入ってくるわけでもあります。こうした形態の組織においては、財産の取扱いは必ずしも一様ではなくて、実態として個々の構成員に帰属することもあり、この場合、給付した現金が必ずしも本給付金の目的である事業の継続のために利用されないおそれもあるわけであります。
このため、みなし法人では本給付金の対象外としておりますが、その構成員たる事業者、組合等での一つ一つの事業者ですね、事業者が個別に本給付金の要件を満たす場合には、構成員それぞれが個別に申請を行うことが可能であるというのが現状であります。
○岩渕友君 どの事業者も売上げが五〇%以上減少しているんです。でも、結局は、給付側の論理に当てはまらないから対象にならないということになっているんですね。事業者ごとの実態を見て給付してほしいということ、これ強く求めます。
次に、胆振東部地震で甚大な被害があった厚真町のバス会社から、もう月二百四十万円のリース代払っている、バス全く動いていないんだ、何とかしてほしいという実態が寄せられています。
資料を見ていただきたいんです。国交省が行っているアンケートの結果なんですけれども、貸切りバス業界の四月末時点のコロナの影響について、運送収入が前年より七割以上減少する事業者が九割を超えているんですね。
それで、先月の国土交通委員会の中で、このリース代について赤羽大臣が、梶山大臣といろいろしっかり取り組んでいかなくちゃいけない、取り組み始めているところなんだと言っているんです。実際何をしているのか。大臣、お答えください。
○国務大臣(梶山弘志君) バス事業者を始め中小企業の資金繰りに重大な懸念が出ているということで、特に観光に関する事業をしている方たちは急激にその影響が出ていると承知をしております。こうした状況を踏まえて、三月上旬に、公益社団法人リース事業協会及び日本自動車リース協会連合会に対して、中小企業等からのリース料の支払猶予等申込みがあった場合には柔軟かつ適切に対応するように文書で要請をしたところであります。
その上で、経産省としましては、国土交通省とともに各関係機関に対するヒアリングや周知を行うとともに、両省間でも随時情報交換を行っているところであります。
引き続き、国土交通省、赤羽大臣と密に連携をしつつ、中小企業の経営に寄り添った対応をしてまいりたいと思っております。国土交通省の所管であるけれども、やはり中小企業、それぞれの産業という点では同じ考え方でありますので、そういった取組を共同でしてまいりたいと考えております。
○岩渕友君 実際には猶予を受けられない業者もいるんです。固定費の補助を是非とも国に強く求めたいと思います。
そして、最後に法案についてお聞きします。
経営者保証の解除は長年中小企業団体が求めてきたものです。この本法案の経営者保証解除スキームで現在想定されている保証解除の要件が四つあるわけです。これ、衆議院の審議では、現状に鑑みて、返済緩和を行った事業者に限ってこの要件を特別に除外する方向で見直しを進めているんだけれども、その他の要件については中長期で見るというふうに答弁がありました。
この問題なんですけれども、例えば債務超過で借入金返済も条件変更中という事業者は要件に該当しないということになって、とりわけ小規模事業者が厳しい条件となっています。その他の要件についても緩和するべきではないでしょうか。
○委員長(礒崎哲史君) お時間ですので、お答え簡潔に願います。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
返済緩和中でないという以外の他の三要件につきましては、今回の制度改正によりまして、既存のプロパー融資、これを信用保証付融資へと借り換えることを特別に可能とする上で、金融機関のモラルハザードを防止する観点から設けさせていただいているところでございます。
こうした趣旨から、三要件自体の緩和は難しいと考えてございますが、今般の新型コロナウイルス感染症の影響を受けまして厳しい状況にある事業者の中には、自らが今回の経営者保証解除スキームの対象になるかどうか気付いておられない方や、金融機関とうまく相談できていない方もおられると考えてございます。このため、三要件を緩和するということではなくて、専門家による経営相談も行っていくことで、一者でも多くの経営者保証を解除していただけるよう、事業者の方々の立場に寄り添って支援してまいりたいと考えてございます。
以上でございます。
○岩渕友君 より幅広い事業者が活用できるようにすることを求めて、質問を終わります。
○委員長(礒崎哲史君)
<中略>
他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(礒崎哲史君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、浜野君から発言を求められておりますので、これを許します。浜野喜史君。
○浜野喜史君 私は、ただいま可決されました中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・国民の声、立憲・国民.新緑風会・社民、公明党、日本維新の会、日本共産党及び碧水会の各派並びに各派に属しない議員安達澄君の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
中小企業の事業承継の促進のための中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 事業承継の際の障壁となっている経営者保証の解除については、本法により新たに措置される信用保証制度の効果や活用状況を適時検証し、必要に応じ更なる対応策について検討を行うこと。
また、経営者保証に依存しない融資を一層促進するため、「経営者保証に関するガイドライン」及び同ガイドラインの特則の周知を図るとともに、中小企業と金融機関の橋渡し役となる経営者保証コーディネーター等が効果的に機能し、適切な運用が促進されるよう努めること。
二 事業承継の円滑化が我が国経済の持続的な成長や地域における雇用の維持に極めて重要であることに鑑み、第三者承継への更なる支援や中小M&A市場の活性化等の施策を適切に講ずること。
三 中小企業の海外展開支援については、海外生産拠点の分散化や国内生産拠点の再構築等の必要性も踏まえつつ、中小企業のニーズに対応して、資金調達面のみならず、情報提供やマッチング支援等、総合的な支援の一層の充実強化を図ること。
四 各種計画制度については、事業者にとって使い勝手の良いものとなるよう引き続き適切な見直しを行うとともに、それら制度が今後の中小企業の発展につながるよう更なる環境整備に努めること。なお、計画の申請手続については、書類の簡素化等により、事業者の負担軽減を図るとともに、事業者間のデジタル・デバイド(情報格差)にも十分配慮しつつ、計画の電子申請を推進すること。
五 新型コロナウイルス感染症の影響による中小企業・小規模事業者の廃業や倒産を回避するため、予算・税制・金融面での必要な支援策の検討を含め、万全の対策を講ずること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○委員長(礒崎哲史君) ただいま浜野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(礒崎哲史君) 全会一致と認めます。よって、浜野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、梶山経済産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。梶山経済産業大臣。
○国務大臣(梶山弘志君) ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。
ありがとうございました。