2021年5月20日(木) 参議院 経済産業委員会
一般質疑
宮城県石巻市須江地区に建設予定のバイオマス火力発電所をめぐり、環境団体や地域住民は25日、経済産業省資源エネルギー庁に認定の取り消しを求めました。日本共産党の岩渕友参院議員が同席しました。
この計画はパーム油火力発電所として再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の認証を受けています。事業者=G―bio(ジーバイオ)イニシアティブ(仙台市)は燃料をパーム油で申請していましたが、マメ科のポンガミア油に変更すると住民に説明しています。
エネ庁の担当者はポンガミア油を燃料とする火力発電はFITで認めていないと述べました。
住民グループ代表の我妻久美子さんは「なぜ燃料を変更したのにFITを進めるのか不信感がある」と事業者とエネ庁を批判しました。
パーム油火力発電は京都府福知山市で大気汚染や悪臭の問題を起こし、各地で建設計画への反対運動が起きています。G―bio火力発電所建設計画については、須江地区の過半数の住民が建設反対に署名しています。岩渕議員は5月に国会でこの計画を取り上げ、事業認定取り消しを経産省に要求しています。
国際環境NGO FoE Japanの満田夏花事務局長はエネ庁の担当者に対し、「県や市も計画に反対しているのに、本当にやるのか」と指摘しました。
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質問資料1 G-Bio 石巻須江発電所(火力) 予定地周辺図【PDF版】【画像版】
質問資料2 燃料運搬トレーラーの予定ルート【PDF版】【画像版】
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質問資料3 燃料種別・産地ごとのライフサイクルGHG排出量の試算(2019年2月)【PDF版】【画像版】
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2021年5月20日(木) 参議院 経済産業委員会
一般質疑
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
深刻な気候危機の下で再エネの導入拡大を図ることは喫緊の課題ですけれども、事業を進める上で地域住民の理解を得る、このことは大前提の問題です。ところが、これに逆行するような事業が強行をされようとしています。宮城県石巻市須江地区に計画をされているG―Bio火力発電所計画です。
資料一を御覧ください。森林約八万平米、東京ドーム二個分近くあるわけですけれども、これだけの森林を買収をして火力発電所を建設する計画なんです。見ていただければ分かるように、近くには、保育所や小学校、人口が今増加をしている住宅地があるんですね。ディーゼルエンジンで二十四時間稼働し、液体燃料では国内最大規模で、振動、騒音、悪臭、大気汚染など、生活環境の悪化が懸念をされています。
資料の二を御覧ください。これ、燃料輸送のために大型トレーラーが一日三十三台も通学路を横切る計画があるんです。安全面でも非常に心配をされているんですね。
石巻の須江地区の環境を守る住民の会と須江地区保護者の会の方々はこれまで何度も市や県への申入れを行っていて、私も、液体ディーゼル火力発電所計画の中止・撤回を求める要望書、これを受け取っています。市議会でも県議会でも、我が党議員だけではなくて超党派で質問が行われていて、県議会では今年三月、建設反対の署名は今年二月末時点で一万筆を超えたと、この須江地区住民の過半数を超えていると、住民の大多数が建設中止の意思であることは明確になっているということで、国に意見書提出を求める請願が全会一致で採択をされています。
そこで、大臣にお聞きするんですけれども、この地域は、東日本大震災で被災をされて、住まいを求めて新築をされたという方々も多くいらっしゃるんですね。同事業はこうした地元の皆さんの理解を得られているとは到底言えないと思うんですけれども、これまでの経過や話を聞いて、大臣、どのように認識されたでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) G―Bio石巻須江発電所事業については、地域住民から発電所稼働に伴って発生する騒音、悪臭、大気汚染などによる住環境への影響や健康被害、そして事業者による地元とのコミュニケーションの取り方について、地域の住民から懸念の声が上がっていると承知をしております。
二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて再エネの主力電源化を進めていくに当たっては、地域の信頼を獲得しながら地域に根差した再エネ導入拡大を進めていくことが重要であります。FIT制度では、電気発電事業者が地域住民と適切なコミュニケーションを図ることを努力義務としており、怠っている場合には再エネ特措法に基づく指導を行っているところであります。
個々の対応をお答えすることは控えますけれども、地域住民と適切なコミュニケーションが図られていないことが確認された場合には、地域と共生した事業が実施されるように適切に対応してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 この事業は県の条例アセスメント手続の対象なんです。現在は準備書が提出をされて、間もなく意見受付が締め切られます。
方法書提出後の住民説明会、これは二〇一九年の一月に行われているんですけれども、町内会などへの事前案内は一切なくて、新聞に公告を載せただけと。説明会でも、資料と説明の内容が違っても、撮影も駄目、録音も駄目ということで、住民の合意を得ようという姿勢がほとんどありませんでした。
方法書に対する宮城県の知事の意見では、冒頭紹介をしたような生活環境への重大な影響や交通環境負荷の増加による影響への懸念を示して、重大な影響を回避又は十分に低減できない場合は対象事業実施区域の見直しを行うこと、事業内容に対する十分な理解を得たことを確認した上で事業を進めること、こう厳しく指摘をしているんですね。
けれども、今年の四月の下旬に行われた準備書の住民説明会で事業者は何と言っているかというと、国や県知事から建設をやめろと言われたらやめるけれども、言われていない、こんなふうに言っているんですよね。こういう態度だということなんです。
大臣、これ、県のアセスでの指摘を無視をするようなこうした開き直りの態度や姿勢が許されるのかと。大臣の認識をお聞きします。
○国務大臣(梶山弘志君) 個別の案件につきましては、今、私の意見を申し上げることはできませんけれども、地域住民とのコミュニケーションについては、各地域の実態に応じながら事業者が適切に地域との対話を深めていくことが重要であると考えております。
これ、ほかの再エネの案件でも私のところに持ち込まれるものがありますので、段階を経てお話をさせていただいておりますけれども、こうした観点から、再エネ特措法では、地域の実情に合わせて自治体が定めた条例を含む関係法令の遵守を認定基準として定め、違反した場合には必要に応じて認定を取り消すこともあるということであります。
また、地域共生を円滑にするための条例策定を検討したい自治体をサポートする観点から、二〇一八年十月に全ての都道府県を集めた連絡会を設置をして各地域の条例の事例などを広く自治体に横展開しており、今後、条例のデータベース化をし、そして更なる事例の展開に努めてまいりたいと思っております。
○岩渕友君 石巻の市議会では超党派で反対が広がっていて、今年三月には全会一致で経済産業大臣、資源エネルギー庁の長官宛ての意見書を採択しているんです。
二つの要望を上げているんですけれども、この二つの要望項目を読み上げてください。
○政府参考人(茂木正君) 石巻市議会からは、令和三年三月十七日に、地方自治法第九十九条に基づきまして意見書が提出されております。
二つの要望ございますが、ちょっと前文も非常に重要なので、そこも読まさせていただきます。(発言する者あり)結構ですか。分かりました、はい。
二つ要望ございまして、一、バイオマス発電所建設においては、全国的に問題になっている住宅地への建設を避ける、事業用地買収段階から地権者以外の広い地域住民への事業計画の周知と理解を得るなど、建設基準の見直しと事業計画策定ガイドラインの遵守を義務化していただきたい。二、国内で使用実績が十分でない新規輸入燃料のFIT認定は、慎重に判断していただきたいと強く要望いたします。
○岩渕友君 この二つなんですね。前文も確かに大事なんです。
それで、住民の理解を得るということがないがしろにされている現状から見ても、この要望の一つ目にあるように、事業計画策定ガイドライン遵守の義務化、つまりは事業に対する住民合意、義務化するべきだと思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(梶山弘志君) 二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けて再エネの主力電源化を進めていくに当たって、地域に根差した再エネ導入拡大を進め、地域住民の信頼を獲得していくことが重要であります。
発電設備の設置に当たっては住民同意を義務化すべきとの御指摘でありますけれども、地域住民とのコミュニケーションについては、各地域の実態に応じながら事業者が適切に、そして地域との対話を深めていくことが重要であると考えております。
こうした観点から、先ほども申しましたけれども、再エネ特措法では、地域の実情に合わせて自治体が定めた条例を含む関係法令の遵守を認定基準として定め、違反した場合には必要に応じて認定を取り消すこととしております。また、地域共生を円滑するための条例策定を検討したい自治体をサポートする観点から、先ほど申し上げました条例のデータベースを構築をして事例の展開に努めてまいりたいと思っております。
○岩渕友君 方法書に対する市長の意見でも、業務を遂行するに当たって地域住民の同意は不可欠だと、極めて厳しい意見が述べられているんですね。これ住民の同意はやっぱり不可欠なんですよ。地元住民や自治体にとってはこの問題、本当に切実な問題で、いよいよ住民合意の義務化をするべきだ、ときだということを私思っています。
これ、要望の二つ目に関わって、この事業者は二〇一七年二月二十二日にFIT認定受けているんですけれども、その際の申請燃料というのはパーム油だったんです。けれども、パーム油については国際的に問題視する流れが強まっていて、米国ではバイオ燃料としてのパーム油利用は禁止する、EUでは段階的に廃止するなど、厳しい目が向けられているんですね。
こうしたことを受けて、事業者は住民に対して、燃料はパーム油ではなくてポンガミア油を使用するという説明を始めているんですよ。このポンガミア油なるものはそもそもFITの対象とされていないはずなんです。このことを確認したいと思います。
○政府参考人(茂木正君) 御指摘のポンガミア油でございますが、これはFIT制度の対象とはしておりません。
○岩渕友君 対象になっていなくて、バイオマス発電の新規燃料については、昨年度、ライフサイクルGHGの検証が終わるまでは新たな燃料の追加認定を行わないということとしているわけですね。このパーム油の旗色が悪いというふうに判断すればFIT認定もされていない燃料を使うって説明する事業者の態度というのは、誠実とはとても言えないですよね。こういう事業者を信頼しろと言われても難しいというのは当然のことだと思うんです。
このような事業者のFIT認定、取り消すべきではないでしょうか、大臣。
○国務大臣(梶山弘志君) 実際にFIT認定されていない燃料を使うということであれば、FIT認定の取消しということにつながると思います。
○岩渕友君 FIT認定は法令違反がなければということなのかなというふうに思うんですけれども。
全国で同様の問題いろいろ起きていますけれども、それにもかかわらず、法令違反で認定が取り消されたというのは一件だけなんですよね。だから、いろんな問題起きていることとの実態と合わないということなんだと思うんです。
このパーム油の扱いについても国内でもいろんな検討が進められています。この検討を簡潔に説明をしてください。
○政府参考人(茂木正君) パーム油につきましては、FIT制度で、パーム油を用いるバイオマス発電に対しまして、二〇一八年度から審議会において専門家の議論も踏まえて、これ持続可能性について第三者認証の基準を満たすことを求めております。また、あっ、求めているところであります。
○岩渕友君 第三者認証の機関の基準で確認するべきだというふうにしているということですよね。
それで、過去にFIT認定を得ているパーム油発電について経過措置があるということなんですけれども、二〇二二年の四月一日からはこれどのような扱いになるでしょうか。
○政府参考人(茂木正君) まず、パーム油につきましては、先ほど申し上げたように、二〇一八年三月三十、あっ、二〇一八年の四月一日以降の新規認定案件については、今申し上げた第三者認証というのを持続可能性について取得しまして、それが前提で認定ということになります。
それ以前の案件につきましては、これ、それ以前の案件についても後で認定は取っていますけれども、その後に持続可能性の認証を取ることを求めておりまして、これを二〇二一年の三月三十一日までということで進めてまいりました。ただ、コロナ等の影響でこれを一年延長しまして、二〇二二年の三月三十一日までに第三者認証の持続可能性の確認を今猶予しているというところであります。
それ以降については、現時点では、更なる延長含めて今そうした検討をしている事実はございませんけれども、今後、引き続き第三者認証機関における審査の状況などを注視していく必要があるというふうに認識しています。
○岩渕友君 資料の三を見ていただきたいんです。
これ、燃料種別、産地ごとのライフサイクルGHGの排出量の試算だということなんですけれども、そもそも、今ずっと出ている第三者認証で確認をしたとしても、産地への負荷があって、生産方法によってはこの温室効果ガスもLNGより高くなる問題もあるんですね。
今後、パーム油、新規燃料共にますます厳しい基準が求められていますけれども、その場しのぎの説明をしている事業者の姿勢の問題、さらに、燃料の輸送のための道路が児童の通学路で危険だということを指摘をされて、石巻市に道路の拡幅をお願いしているというふうに事業者言っているんですけれども、自治体はこの計画に反対をしていて、実現する見通しもないのに無責任な対応だと言わざるを得ないです。こんないいかげんな対応、そして、地元住民や自治体に真面目に説明をしない事業者との間に、長期にわたる発電事業になりますよね、これを続ける信頼関係築けないと、FIT認定取り消すべきだということを改めて求めたいと思うんです。
EUでは、大規模な再エネを進めるときには地域住民の合意が大前提となっています。本来、再エネはその地域住民の利益につながるように進めるべきだということを求めて、質問を終わります。