2021年6月1日(火) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」参考人質疑
産業競争力強化法等改定案の参考人質疑が1日の参院経済産業委員会で行われました。日本共産党の岩渕友議員は同改定案が事業再構築を通じてリストラや中小企業の淘汰(とうた)・整理が進むのではないかとの懸念の声もあるとして参考人の見解をただしました。
岩渕氏は、中小企業白書2020年版では中小企業の生産性が向上しないのは、大企業に比べ価格転嫁力が弱いためであるとしていることを指摘。そのため、利益を確保することができないのではないかと質問。日本商工会議所の伊藤光男・中小企業経営専門委員会共同委員長は「(中小企業の)製造業で生産性は本当に低いのか。価格が安い(ためだ)と考えており、適正な取引は重要だ」と答えました。
また、岩渕氏は「規模の拡大だけを求めることで、重要な役割や技術を持っている中小企業がなくなれば、日本経済にとっても大きなマイナスではないか」と質問。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「規模が大きくなることで失われてしまう特性もある。業種・企業によって状況は異なる」と答えました。学習院大学の滝澤美帆教授は「差別化できている財であれば必ずしも規模を大きくする必要はない」と答えました。
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2021年6月1日(火) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」参考人質疑
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日本商工会議所中小企業経営専門委員会共同委員長・川口商工会議所会頭・伊藤光男参考人 意見陳述
○参考人(伊藤光男君) 日本商工会議所の中小企業経営専門委員会共同委員長で川口商工会議所会頭の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いします。
埼玉県川口市で従業員九十名の鋳鉄製品を作る伊藤鉄工株式会社を経営しております。本日は、このような貴重な機会を賜りまして、御礼を申し上げる次第でございます。
最初に、商工会議所の概要について申し上げます。
商工会議所は、今から百四十三年前の一八七八年に渋沢栄一翁が東京商法会議所を設立したのを皮切りに、現在では全国に五百十五か所設立されております。会員は、商店街のお店から上場企業まで、規模や業種を問わず、地域内の事業者を包括した公的性格を持つ地域総合経済団体です。地域に密着した民間組織でありながら、国や県など行政が進める施策を代行する役割を担っており、全国百二十二万の総会員を擁しております。
私が所属する川口商工会議所は、埼玉県川口市にございます。江戸時代から鋳物や植木などの産業が盛んで、その後、住宅都市化が進み、本当に住みやすい街ランキングで二年連続一位を受賞した、人口六十万の中核都市です。
川口商工会議所には約八千の会員がおりまして、全会員に今回のコロナで緊急調査あるいは電話による聞き取りを実施し、現状把握と支援に努めております。こうした対話を通じて、各給付金や補助金など支援策の案内、利用促進を図っているところです。
また、コロナ禍の影響で売上げが五割以上減った事業者が業種を問わず半数以上あり、直近三月末の調査でも商業、建設業は依然厳しく、製造業では仕入価格の上昇を危惧するなど、先行きを不安視する事業所が多数でございます。このほか、資金繰りや商談、販路拡大施策などの要望を受けております。
こうしたニーズに応えるため、川口商工会議所では、コロナ対策のガイドブックをこれまで四回発行し各種施策を紹介するとともに、個別相談窓口を設置して、事業所に寄り添った支援を続けてまいります。
私が社長を務めている伊藤鉄工は、経営理念に、徳をもって業を成し、信をもって営むを掲げ、日本での物づくりにこだわりを持って、鋳鉄を主材料に自家製品の製造、販売を行っております。
弊社の経営課題は大きく三つございます。
一つ目は、市場規模が全盛期の六割の大きさへと縮小していく中、いかに経営していくかです。弊社では、一、新市場に向けた商品開発、二、現市場の新商品開発、三、現商品の販売地域の拡大を行い、何とか二五%程度の売上げ減でとどまっております。市場縮小への対応としてMアンドAなどの企業再編も視野に入れておりますが、中小企業にとってはハードルが高いと感じております。
二つ目は、老朽化した設備の更新に伴う資金調達です。今年八月の更新に向けまして、現在、政府系金融機関に相談をしております。
三つ目は、デジタル化に伴う人材、資金不足です。設備投資を含め生産性向上には必要不可欠なことではありますが、すぐには解決できない課題です。
現場の中小企業からお願いしたいのは、ものづくり補助金やIT補助金の増額、グリーン対応補助金の新設など、各種補助金の拡充、新設です。特に弊社では、キューポラから電気炉への変更など、脱炭素効果の高い設備への転換補助金の新設を希望しております。
なお、弊社の紹介など、お手元の参考資料に詳しく記載しておりますので、後ほど御覧いただければ幸いでございます。
次に、現下の中小企業の業況について申し上げます。
新型コロナウイルスの完全な収束が見通せない中、地域経済社会の基盤として雇用のみならずコミュニティーを支える中小企業・小規模事業者は、昨年来、未曽有の影響を受け続けており、極めて厳しい経営環境に置かれています。
コロナ禍の影響が長期化し、緊急事態宣言等が更に延長される中、度重なる営業時間の短縮や休業要請を受けている飲食店、大型商業施設などとその取引先、さらに国民の消費や外出、移動意欲の減退などの影響を受ける観光、サービス業などにおいて業績回復が見込めず、疲弊感が増しており、先行き不透明な状況が続いております。
中小企業の経営者の心が折れずに事業継続に希望を持つことができるよう、切り札として期待されるワクチン接種の加速化や医療体制の早急な充実化を含め、感染症対策と経済活動の両立により一層取り組んでいただくことが急務です。何よりの経済対策はワクチン接種だと思います。加えて、中小企業の事業と雇用の継続を支えるため、自治体の協力金や支援金、資金繰り支援等による事業継続支援が何より不可欠です。
こうした観点から、最低賃金につきましては、昨年度と同様に現行水準を維持すべきと考えます。また、企業自身も、コロナ禍からの再起に向け、外部環境の変化や新しい消費者ニーズに対応するため、ビジネスモデルの転換や生産性向上に積極果敢に挑戦していかなければなりません。さらに、アフターコロナに向けた我が国の競争力強化を見据え、カーボンニュートラルや、さらに加速するデジタル革命、海外へのビジネス展開に中小企業が対応できるよう、後押ししていただくことも極めて重要です。
続いて、中小企業政策に関する基本的考え方を申し上げます。
中小企業の実態はまさに多種多様です。きらり光る技術や製品を持ち、サプライチェーンの中で重要な役割を担ったり、グローバル展開していたりする大きめの中小企業もあれば、逆に、外部環境の変化に小回りを利かせ機敏に対応するため、あえて規模的な成長を追求せず、事業の持続的な成長を図りながら、身の丈に合った経営を選択している中小企業も多くいます。
中小企業庁は、先般、こうした多種多様な中小企業を、持続的成長を志向し地方創生を支える地域コミュニティー型と地域資源型、そして、中堅企業に成長し海外での競争を目指すサプライチェーン型とグローバル型の計四つの類型に整理し、それぞれの役割や機能に応じた成長や支援の方向性を示したところです。
民間調査によると、中小製造業ではサプライチェーン型とグローバル型を目指す企業が合わせて約半数ありますが、中小非製造業では地域コミュニティー型を目指す企業が半数強あり、小規模事業者に至っては地域コミュニティー型と地域資源型を目指す企業が大多数の八五%を占めております。
また、業種によっても生産性の傾向は異なっています。製造業や情報通信業では従業員規模が大きいほど労働生産性が高くなりますが、小売業や飲食・サービス業では従業員規模が大きくなってもそれほど生産性は変わらない傾向にあります。
中小企業政策においては、こうした多種多様な中小企業の実態を十分踏まえた上で、各施策のバランスを取りながら、地域経済と雇用の担い手である中小企業の持続的発展と足腰の強化に向けて、力強く後押しいただくことを期待します。
次に、今回の法律案について意見を申し上げます。
まず、産業競争力強化法関係についてです。
グリーン社会への転換やデジタル化への対応について、今般、認定企業への税制措置や金融支援が盛り込まれたことは時宜を得たものと考えます。中小企業にとって使いやすい制度となるよう期待するとともに、今後、中小企業向けの予算措置を充実いただければ幸いです。
次に、事業再構築についてです。
コロナ禍において、経営改革に取り組む企業向け繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例や金融支援もまさに時宜を得ているものと考えます。事業再生の円滑化について、事業再生ADR等の私的整理手続から法的整理手続への移行の円滑化は、今後、コロナ禍の影響を受けた企業における私的整理の増加が想定され、本措置が盛り込まれたことを評価いたします。
なお、法律事項ではありませんが、中小企業の事業再生の円滑化に向けて、中小企業の実態を踏まえた私的整理ガイドラインの早期策定や、債務整理時に経営者が個人破産に陥らないようにするための経営者保証ガイドラインの廃業特則が必要と考えます。
続いて、中小企業等経営強化法関係についてです。
新たな支援対象類型の創設により、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業群を新たに支援対象に加えることは、企業規模拡大を志向する中小企業にとって心強い制度だと思います。また、中小企業経営資源集約化、いわゆるMアンドAの税制や、中小企業とともに連携して事業継続力強化に取り組む中堅企業向け金融支援なども時宜を得たものと考えます。
最後に、下請中小企業振興法関係についてです。
下請取引の適正化に向け、今般の法改正とともに、執行の強化を期待しています。
なお、法律事項ではございませんが、取引適正化に向けた取組を個社ごとに自ら宣言するパートナーシップ構築宣言について、弊社も昨年七月にいち早く宣言いたしました。現在、約千百五十社が宣言しておりますが、政府が掲げた今年度中の二千社の目標に向けて、官民挙げて周知や働きかけを実施する必要があると思います。
例えば、先ほど言及した繰越欠損金の控除上限の特例を利用する企業は、コロナ禍の影響で赤字に陥った厳しい経営状況にありながら、事業再構築に挑み、黒字転換して成長することを目標にしています。是非、こうした企業が特例を利用する際に、パートナーシップ構築宣言の公表を推奨して、グリーン化への取組やデジタル化への対応を応援していただきたいと存じます。
結びに、全国五百十五の商工会議所では、経営支援力を更に向上させつつ、行政、議会やほかの支援機関との連携を強化し、中小企業・小規模事業者の活力強化と地域経済の活性化に尽力してまいる所存でございます。引き続きの御支援をお願い申し上げます。
私からの発言は以上です。ありがとうございました。
2021年6月1日(火) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」参考人質疑
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株式会社野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト・木内登英参考人 意見陳述
○参考人(木内登英君) よろしくお願いします。
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内です。どうぞよろしくお願いいたします。
本日は、このような貴重な機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
私は、エコノミストという肩書を持っていまして、長い間、経済見通しを作るようなそういう仕事、あるいは金融市場の予測、そして日本銀行に五年間勤務しましたときには主に金融政策を見ていたということで、どちらかというとマクロ経済と金融が専門でありまして、本法案に関連します分野に特に専門性があるわけではないですけれども、お役に立つかどうか分かりませんが、精いっぱいよろしくお願いいたします。
さて、本案については、正直お話をいただくまではそんな詳しくは承知していなかったんですけど、改めて確認させていただきますと、時宜を得た非常に良い内容なのではないかなというふうに思っております。コロナ禍という比較的短期の課題への対応と、ポストコロナの成長、日本経済の再生という、少し中長期の課題を、一体的な対応をして課題を解決しようという発想自体は非常に共感できる部分がございます。
私も、こういった観点から、コロナを、コロナという逆風を逆手に取ってむしろ日本経済強くしていこうと、できるんじゃないかということを昨年辺り言ったこともありました。
例えば、デジタル化、法案にも関係しますが、デジタル化、特にデジタル通貨などは経済の効率化に貢献するんではないかなと思っています。
それから、政府が長年取り組んでこられた東京一極集中の是正と。これもコロナをきっかけに動き出したという面がありまして、これも日本経済全体からすると生産性を高める効果があるというふうに思っています。
それから、サービス業あるいは中小企業の構造改革と。これもコロナによる打撃を受けている業種でありますけれども、むしろそれを逆手に取って構造改革を進めていくことで日本経済全体の生産性を高める、人々の暮らしを良くするということに貢献していくというふうに思っています。
この三つには含まれておりませんが、本法案でも非常に深く関わっておりますカーボンニュートラルの実現とそれを支援していく施策というのは非常に重要だというふうに思っています。地球温暖化対策は、もはや選択するものではなくて、当然やらなきゃならないという課題だというふうに思います。それは日本だけじゃなくて、世界の人々が将来にわたって安全に生活をしていく、自然災害ですとか生態系の変化などで我々の、国民の生活が脅かされることがないように将来にわたって地球への負荷を和らげていくという観点から非常に重要だと思っていますし、それに取り組むことは将来の世代にツケを回さないという観点から重要な現代世代の、我々の世代にとって重要な責任であるというふうに思っています。
ただ、二〇五〇年カーボンニュートラル、あるいは二〇三〇年度CO2排出量四六%削減という目標は非常に意欲的であって、簡単に達成できないということも確かであります。例えば、再生可能エネルギーの利用拡大のため、しかもコストを下げる形で利用拡大を進めていくためには、今ある技術、イノベーションじゃないものが出てこないと、もしかしたら五〇年カーボンニュートラルの達成は難しいかもしれないと。そういう意味でいいますと、本案に含まれていますように、関連する投資を支援するということは重要だと思いますし、さらに、水素、アンモニアの発電ですとかCO2の回収処理技術など、まだ今の時点で分からない技術をいかに引き出していく、そういう支援をするかという、少しミクロになりますけども、そういう政策も目標達成のためには非常に重要なのかなというふうに思っております。
そして、企業の対応はかなり、カーボンニュートラル、地球温暖化対策については非常に前向きになってきております。これは株主からの要請、圧力もあるということでありますが、政府の掲げる目標以上に前倒しでカーボンニュートラルの達成を目指すという企業が非常に多く出てきております。
企業が積極化してきているというのは非常によろしいわけですけども、一方でやっぱり国民の理解も高めると、これも必要ではないかなというふうに思います。カーボンニュートラルの達成のためには、電化を推進することと再生可能エネルギーでの発電を拡大する、この二つが重要だということであります。
ただ、再生可能エネルギーは、いろんな理由から日本での再生可能エネルギーでの発電はコストが高くなっております。こういう中で電化を進める、そして再生可能エネルギーでの発電の比率を高めていくということになりますと、少なくとも近い将来はかなりコスト負担が高まる、コスト増になっていくと。それは、固定価格買取り制度の下では国民の負担になっていくということですので、やはり国民の理解も必要だと。また、環境ですとか景観の観点から、太陽光、風力発電、地熱発電には住民の厳しい目もあるというのが現実だということを考えますと、やはり国民の理解を高めるというのもこれから非常に重要になっていくというふうに思いますし、それについての政府の取組にも期待したいというふうに思っています。
温暖化対策は一時的なブームで終わっては決していけないものでありまして、次の世代の活動にいかに引き継いでいくかと、これも重要な点かなと、非常に長いプロジェクトになるわけですので、この点も非常に重要だと。そうした観点からしますと、先般、改正地球温暖化対策推進法で二〇五〇年のカーボンニュートラルが明示されたということは非常に評価できることではないかなと思っております。
さて、お手元の資料に少し沿って残りの時間でお話をさせていただきたいと思います。
一ページ目を御覧いただきたいと思いますが、日本経済が直面する最大の問題は、生産性上昇率が低下する、潜在成長率が低下を続けていると、この点にあるのではないかなと思っています。これは推計方法いろいろありますが、ここのグラフにありますのは日本銀行の推計している潜在成長率とその内訳になっております。
潜在成長率が低いと、例えば企業の先行きの成長期待が下がるわけですので、設備投資も抑えてしまう、雇用も抑えてしまう、賃金も抑えてしまうと、結果的に物価も上がらないという状況につながってくると。そして、生産性、労働生産性上昇率が高まらないとなりますと、我々の先行きの生活が余り明るい展望は持てないと。我々の何か物を買うときの購買力、実質所得、実質賃金で決まると。実質賃金の上昇率は分配に変化がなければ労働生産性上昇率で決まるということですので、この労働生産性上昇率が、高めていくというのが一番重要な課題なのではないかなというふうに思っています。
生産性を高めるというと、市場主義、市場至上主義とか批判を浴びることもあるんですけど、そうではなくて、全ての人が先行き明るい展望、将来に明るい展望を持つためにはやっぱり生産性を高める必要があるというふうに思っています。
こちらのグラフで御覧いただきますと、潜在成長率が下がっている大きな理由は、実は人口減少ではなくて、この赤い部分、TFPと書かれていますが、全要素生産性、つまりイノベーションとか労働者の質などによる生産性上昇分が近年かなり下がってきているということがあります。もちろんこれ、計算上は残差で出てきますので、誤差もあるので、すごく強い答えは、結論は得られないんですけれども、恐らくそういうことは起こっているんだろうというふうに思います。ですから、そこを高めるというのが非常に重要になっていくというふうに思っています。
ちなみに、金融政策ではこの生産性上昇率を高めることはできませんし、財政でも、一時的な需要増加ですと一時的な効果に終わってしまう、あるいは、将来、先行きの需要を前借りするというような効果にもなってしまいますので、そういう政策ではなかなか生産性上昇率を高めることができないということでありまして、もう少し構造改革あるいはミクロの政策が重要と、この点が本法案が深く関わっている部分ではないかなというふうに思っています。
二ページ目を御覧いただきたいと思います。
先ほども少し申しましたが、コロナを奇貨として生産性を高めるというのが非常に重要で、三つ掲げております。つまり、コロナという逆風を生かして、逆手に取って、むしろ将来の成長につなげていくと、生産性の上昇、あるいは潜在成長率の上昇につなげていくという発想が重要だと。
デジタル化はこれは既に政府が取り組んでいることでありますが、中でも、やや私の専門分野に入っていくんですが、キャッシュレス化とか、あるいは信用力が高い中銀デジタル通貨の発行などを通じてキャッシュレス化を前に進めていくというのも一つ重要な生産性向上策になっていくのかなと思います。
三ページ目に海外の研究結果を載せておりますが、現金を廃止して全てキャッシュレス化を進めていくということになりますと、GDPの一・二%ぐらいのコスト削減になってくるという計算もあります。もちろん、現状ですと、キャッシュレス化を進めることによって感染リスクを下げるというような効果ももしかしたらあるかもしれないというふうに思っています。
デジタル通貨というのは重要かなと思っていますが、ただ、多くの人がまだまだ利用していないというのが日本の現状でありまして、その一つの理由が、信用力の低さであったり、ITリテラシーの低さだったり、そういうところだと思います、があると思いますので、中央銀行が発行することによって信用を高めると、あるいは、多くの人が取り残されないように、使うように支援すると。これはなかなか民間のビジネスとしては難しいので、その観点から、中銀デジタル通貨の発行は検討すべきだというふうに思っています。
五ページ目を御覧いただきたいと思います。
二つ目が、東京からの一極集中の是正ということでありまして、昨年の春以降、東京からの人口流出が進んできていると。ただ、非常に強い、太い持続性のあるトレンドかどうか分かりませんので、まだまだ支援が必要じゃないかなと。
例えば省庁の地方移転などは、それに伴って企業が移転する、人が移転するということにもつながってきます。あるいは、ネットワークを各省庁間でつないでいくということになれば、物理的に近くにいる必要もありませんので、地方への省庁移転が促され、大企業もあるいは学校もそれに従っていくという形になるのではないかなと期待しています。
六ページ目になりますが、人口が余り集中すると生産性が落ちてくるというような研究があります。OECDで見ますと人口七百万人がその分岐点とされていまして、東京はもう既に人口はその倍になってきているということからすると、あるときまでは人口が集中することによって生産性を高め、実質賃金が上がるということで、東京が日本をリードする、日本経済リードするという局面はあったと思いますが、現状は、むしろその時期は越えて、右側のグラフになりますが、むしろ生産性は頭打ちになってきているということだと思いますので、地方にまだ眠っているいろんな生産資源、人的資源も含めてですが、活用していくというのは、日本経済の活性化にとって非常に重要だと思います。
そして、最後になりますが、七ページ目になります、サービス業・中小企業の生産性、まあこれはお二方の参考人、お二方が御専門ということなので多くは申し上げませんけど、一点だけ、少しだけ申し上げたいと思います。
このサービス業、あるいはサービス業は中小企業の割合が高いということなのでサービス業・中小企業と申し上げますが、これはコロナで一番打撃を受けている業種ということなんですが、この一番打撃を受けている業種は、国際比較で見ても非常に生産性が低い業種だというふうにされてまいりました。ですので、ここのカテゴリーの企業の構造改革といいますか、生産性を高めることによって、日本経済全体の生産性を高めて、人々の生活の見通しを明るくするというのは重要かなと思います。
こちらのグラフにありますのは、アメリカと比較した場合の各業種の日本の生産性上昇率ということで、非常に低いわけでありますが、例えば卸、小売、飲食、宿泊でいいますと、アメリカとの差は非常に大きいんですが、四分の一を埋めるだけで日本全体の生産性は八・三%も上がると。まあこれは単純計算でありますので、単に人を減らして失業者を増やせばいいということではもちろんなくて、新たに生まれる需要に対して人も迅速に動いていって高い生産性を維持するというようなことが重要でありますが、単純計算からいっても、この生産性の低い分野の生産性を上げることで日本経済の生産性全体を高める近道になっていくのではないかなと思っています。
八ページ目になりますが、最低賃金の引上げについては、私はちょっと慎重に考えた方がいいんじゃないかなというふうに思っていまして、やはり雇用への悪影響とかも考えられるところであります。
あるいは、最低賃金を引き上げて中小企業を淘汰していくような議論もありますけれども、それは非常に乱暴な議論だと思います。低い賃金で成り立っている業種の中にも我々の生活に欠かせないビジネスも多いということですので、ここについては慎重に考えるべきであって、むしろ生産性が高まることによって自然に賃金が上がってくる、それに応じて最低賃金も適切な水準まで上げてくるという流れが非常に重要だと思っています。
最後の九ページ目になりますが、中小企業が退出というか廃業していく場合には、生産性が低いからというふうに考えられがち、生産性上昇率が低いからと考えられがちなんですけれども、実は、退出していく中小企業の生産性上昇率は残された企業よりも高いという研究結果があります。つまり、それが退出することによって中小企業全体の生産性上昇率が下がってしまうというマイナスで出てくるということがあります。
これは仮説ではありますけれども、やはり優良な中小企業であっても、後継者不足などによって廃業を余儀なくされているというケースが多いと。ということは、中小企業の生産性向上の一つの策としては、優良企業がそういった後継者不足などの問題によって廃業を強いられるということがないようにしていくということも非常に重要で、本法案にも含まれておりますが、MアンドAによって、MアンドAをサポートすることによって経営資源を集約化していって、生産性、競争力を高めていくというのも非常に重要だなと思っています。
あるいは、民間の取組としては、地方銀行などもこのマッチングを非常に積極的にビジネスの中に取り組んでおります。現在、地方の銀行も広域連携によっていろんな情報を交換する、共有するということが増えてきておりますが、まだまだ十分ではないということですので、日本全体で情報を共有することによって適切なMアンドAあるいは事業承継が進むということもこの生産性向上には非常にプラスだというふうに思っています。この観点からも、本法案の考え方あるいは施策には非常に重要な点が含まれているのではないかなと思っています。
以上になります。
2021年6月1日(火) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」参考人質疑
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学習院大学経済学部教授・滝澤美帆参考人 意見陳述
○参考人(滝澤美帆君) 学習院大学の滝澤美帆と申します。本日は、このような機会をいただきまして、どうもありがとうございます。
私の専門、マクロ経済学でして、主に生産性に関する研究を行っておりますため、本日は、産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案に関しまして、主に生産性の観点から意見を述べさせていただければと思います。
お配りいただきましたレジュメの一ページ目の1)、日本の生産性という箇所を御覧ください。
産業競争力とはという定義を確認したんですけれども、産業活動において、高い生産性及び十分な需要を確保することにより、高い収益性を実現する能力というふうに定義をされています。そのため、生産性の改善というのがこの産業競争力を向上させるための主たる方策と考えることができると思いますが、御承知のとおり、日本の生産性は低迷しております。
生産性、非常にシンプルな指標でして、インプットとアウトプットの比率というふうに計測されますけれども、何をインプットと取るのか、何をアウトプットと取るのかで幾つか種類がございます。最もよく用いられますのが、付加価値を労働投入量で割った労働生産性というものです。
一国全体の付加価値の総和であるGDPを人口で割った国民一人当たりGDP、こちらも労働生産性の指標の一つですけれども、こちらにありますように、日本生産性本部が公表している労働生産性の国際比較二〇二〇によりますと、日本の国民一人当たりGDPはG7の中で最下位が続いています。さらに、就業者一人当たりで計測すると韓国にも抜かれている状態です。
お配りしたレジュメの一ページ目の下の部分の図ですけれども、こちらは産業別の労働生産性水準をアメリカと比較した結果をお示ししております。こちらを見ますと、ほとんどの産業でアメリカの労働生産性水準を下回っていること、製造業の水準はアメリカの七割程度、サービス業についてはアメリカの五割にも満たないといった結果がデータにより示されております。一国全体のデータを見るだけでは分からないことが、このような産業別のデータを見ることで分かってまいります。特にサービス業、この図では青で示していただいていますけれども、この青い部分、サービス業といっても水準はそれぞれであるということも分かります。
ここまでの話をまとめますと、産業競争力を向上させるには生産性を向上させる必要がありますが、近年生産性が低迷していること、特に、先ほど木内参考人も御指摘でしたけれども、サービス業においてはアメリカと比較するとその差が大きいということが分かります。
しかしながら、サービス業の生産性を国際比較するときは、サービスの質を調整できていないのではないかと、日本のサービス業の提供するサービスに関する質というのは非常に高くて、人をたくさん使ってきめ細やかなサービスを提供することで、結局は分母の労働投入量をたくさん投入しますので、計測上労働生産性が下がっているだけで比較するに値するのかといったような議論もございますけれども、ただ、サービスの質だけでは埋めることができない歴然たる差が存在しているということも分析を進める中で分かってまいりました。
つまり、この結果というのは、生産性を向上させる余地が日本においてはまだ十分にあると言い換えることができると思います。
続きまして、一ページおめくりいただきまして、二ページ目です。2)、日本におけるビジネスダイナミズム指標という箇所を御覧いただければと思います。
近年、欧米諸国は、日本よりは状況は良いとはいえ、成長は鈍化していると言われています。こうした先進国における低成長、いわゆる長期停滞とビジネスダイナミズムの関係に注目が集まっています。
簡単に申し上げますと、過去数十年のトレンドとして、市場の集中度、マークアップ、利益率、労働分配率、新規参入率、退出率、そういったものがどうなっているのかを分析するのがビジネスダイナミズムに関する研究です。
ニューヨーク大学のトマス・フィリポン教授は、市場集中度の上昇、つまりは、これは市場での企業間競争、企業間における競争度合いの低下を意味しますけれども、これに加えて、平均的な利益率の上昇など複数のビジネスダイナミズム指標を確認しながら、アメリカ経済における停滞の主因が一部の大企業のシェア拡大が過度に進んだことにあるといった指摘をされています。
重要な事実として、こうしたアメリカにおけるビジネスダイナミズムの停滞の主因として指摘されております市場競争度の低下というのは、日本においては基本的には観察されていないということです。
二ページ目には市場集中度の指標でありますハーフィンダール指数をお示ししております。完全に市場が独占状態であるとこの指数一〇〇〇〇になりますけれども、値が大きいほど市場が集中している、つまり競争が低下しているといったように解釈できる指標です。この日本のハーフィンダール指数はこの十年で低下しています。つまり、アメリカの結果と異なり、競争度合いが高まっているということです。
これに関しましては更に分析を現在進めているところではございますけれども、日本では、産業の集中度と生産性の伸び率の間に正の関係が認められています。この結果につきましては、メカニズムをこれから解明する必要があるものの、私どもといたしましては、良い集中の余地が多く残されている、日本企業には残されている可能性を示唆するものではないかと考えています。
先ほど申し上げましたフィリポン教授の研究においても、例えばウォルマートの例を基に、集中度の上昇が生産性の改善につながったという事例が示されています。しかしながら、一方で、アメリカにおいては行き過ぎた集中がイノベーションと成長を阻害しているというのが彼の主張です。
ですから、このように、日本は競争度合いが上がりながらも経済が低迷しているという一方で、アメリカは市場が集中していることで経済が低迷しているという結果が示されているので、日本とアメリカの状況の違いというのを理解した上で産業競争力の強化に向けたあるべき政策の検討を進めることが重要と思われます。
そうしましたら、次のページ、三ページ目を最後に御覧ください。
産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律案に関連しまして、その他幾つか私の研究とも関連するポイントを述べさせていただきます。
まず、一、グリーン社会への転換、二、デジタル化への対応ですが、御承知のとおり、日本は設備投資、長らく停滞しております。これにつきましては、金融緩和政策を長く続けてきた日本で資本蓄積を刺激する更なる緩和余地が乏しいとか、大企業が貯蓄の使途として生産の海外移転などが進んだと、そういったような要因が指摘されていますが、なぜ投資が増えないのかと、そういう因果関係については今後詳細な分析が望まれている分野です。
ただ、投資を促進して資本ストックの蓄積を進めることで経済の供給力が高まることが期待されますので、設備投資促進税制、DX投資促進税制、金融支援などによって設備投資が促進されることが必要であろうと思います。しかしながら、前提として、こうした税制ですとか金融支援策の効果を正しく評価した上で政策立案に活用するという姿勢が同時に求められるものとも思われます。
また、設備投資によって新しい技術が体化された資本を効率的に使用する必要があります。設備の年齢をビンテージという言葉で申しますが、日本はこのビンテージが上昇しているというデータがございます。つまり、平均的には古い設備で財やサービスの供給が行われているということです。新しい技術を体化した設備を用いることで効率的に財やサービスをつくることができます。特に中小企業では資本装備率の低さがかねてより指摘されておりますので、設備を増強することで労働生産性を上げる余地は十分にあると考えています。
また、設備だけでなくて新しい技術を使いこなすことができるように、人への投資、人的資本の蓄積も同時に重要になってくると思われます。
次に、三、新たな日常に向けた事業再構築についてです。
日本は、これまでも、必ずしもアメリカなどと比べて新規参入率等が高かったわけではないのですが、かつては高い経済成長率を実現してきました。その成長の要因の一つが既存企業の製品開発力であったと言われています。既存の企業が製品転換を行ったり、生産する製品を新たに加えたりする活動が成長の源泉であったとも言われています。例えば、フィルムメーカーだった企業がデジタルカメラを製造するようになり、化粧品まで作るようになったりと、そういった具合です。こうした機会が数多くもたらされるような事業再構築の支援が期待されます。
そして、最後に四番目ですけれども、中小企業の足腰強化についてです。
こちらは言わずもがなですが、先ほど伊藤参考人の御発言の中にもありましたが、中小企業といっても様々で、それぞれのタイプに適した支援が必要となります。中小企業支援策は数多くございますけれども、政策的な資源、非常に限られている中で、支援の際にはまず事業の計画がしっかり立てられているかなど、適切なスクリーニングが重要と考えられます。
そして、コロナ禍においてエビデンスに基づかない政策立案がいかに世論に受け入れられないかを見ても明らかですけれども、こうした支援を行うだけでなくて、支援の後にはデータを用いた適正な効果分析を行って、それに基づく政策立案を行うという一連のサイクルの確立が重要と思われます。
私からは以上です。御清聴ありがとうございました。
2021年6月1日(火) 参議院 経済産業委員会
「産業競争力強化法等改正案」参考人質疑
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
本日は、参考人の皆様、本当にありがとうございました。
まず初めに、伊藤参考人、木内参考人、滝澤参考人にそれぞれ三つの点についてお伺いをしたいと思います。
本法案で、先ほど来話題になっている中小企業の足腰の強化が掲げられていて、コロナ禍を奇貨とした産業の新陳代謝が掲げられていますけれども、事業再構築を通じてリストラであるとか中小企業の淘汰や整理が進むんじゃないのかといった懸念の声もありますよね。
日本の中小企業の実質労働生産性が世界でもトップクラスだということで、社会経済的存在意義というのが非常に大きいものがあると思います。中小企業政策審議会制度設計のワーキンググループの中でも、中小製造業の実質労働生産性の伸びは年率三から五%を記録していて大企業の伸びと遜色ない水準だと、こういうふうにもなっています。なんですけれども、二〇二〇年度版の中小企業白書を見ますと、中小企業の生産性向上を妨げているのは、大企業に比べて価格転嫁力が弱くて利益を確保することができないことに原因があるんだというふうにしています。
これ、価格転嫁力がないのはどうしてなのか、その原因をどういうふうにお考えになるか。構造的な問題があるのではないかというふうに思うんですけれども、考えをお聞かせいただきたいというのが一つ。
そして、生産性を上げるということであれば、中小企業、立場が弱いので、価格転嫁できるように大企業であるとか親企業への規制を強化するべきだと思うんですけれども、どのようにお考えかというのが二つ。
そして、三つ目なんですけれども、中小・小規模事業者は、非常に厳しい地域を支えたり業界を支えたりしていて、もうかるかどうかということではなくて、やっぱり必要とされている、非常に重要な役割を果たしています。冒頭、伊藤参考人もちょっと触れられていたんですけれども、小さくてもきらりと光る技術で海外でも認められるような中小企業もありますし、小規模だからこそ多様なニーズであるとか需要の変化に対応することで社会に貢献をしている事業者も多くいます。
中小企業の生産性が低いのは規模が小さいことに原因があるんだと、規模拡大が見込めない小規模企業は退出するべきだと、こういった意見もあるんですけれども、規模の拡大だけを求めるということでその重要な役割や技術を持っている中小企業がなくなるようなことがあれば、それは日本経済にとっても大きなマイナスになるんだというふうに思うんですね。この点で参考人がどうお考えになるかという、この三点についてそれぞれお聞かせください。
○委員長(有田芳生君) では、まず伊藤参考人。
○参考人(伊藤光男君) まず、中小企業の伸びで、価格転嫁の話ですけれども。
私は、サービス業はちょっと違うかもしれませんけれども、製造業において生産性が低いのは、本当にそうなのかなと思うんですよ。やはり価格が安いんじゃないかということで考えています。そういうことで、今回、適正な取引ですか、それはやっぱり重要なことだと思います。ですから、もちろんその親会社の国際競争力というのもあるわけで、じゃ、無尽蔵に高くていいというわけではないですけれども、やはりその辺が重要だと思います。
それで、その三番目とも関係してくるんですけれども、規模の関係ですけど、例えば鋳造業でいうと、ドイツと日本は大体生産量一緒なんですよ。でも、ドイツは、ドイツの鋳造会社というのは日本の半分。だから、規模が倍ということですよね。規模がある程度大きいと何でいいかというと、価格交渉力が出るわけです。というのは、その親会社に対してのその下請さんのシェアが大きければ、やっぱり話合いになるわけですよ。でも、シェアがちっちゃければ、別にやめられたって構わないよというと、価格交渉力ない。ですから、やはりある程度の規模というのも必要かもしれない。でも、それは、じゃ、そうじゃないところをやめさせるんじゃなくて、やっぱりMアンドAだとかそういうので統合する、そのマーケットによってはそういうことも必要だというように思います。
それで、適正取引でその売上げを上げるというのは非常に重要だと思うんですけれども、ただ、それは役所が指導するのはいいですけど、法律でつくったりとか、これは自由競争ですから、やはりそこまで規制を強化するというのはちょっと自由主義の経済の基本にそぐわないというように私は思っていますけれども。
○委員長(有田芳生君) 次に、木内参考人。
○参考人(木内登英君) 新陳代謝自体は健全な経済活動の結果として常に起こり得るということだと思いますけれども、政策的にそれを強く推し進めるのはやっぱり慎重に考えなくちゃいけない点もあると思います。
最初にも申し上げたんですけれども、例えばこういう意見もあるわけですね、最低賃金を引き上げることによって低い賃金でしか成り立っていない企業は退出を促すと。ただ、これはやっぱり非常に危険な考え方で、それぞれ業種によって生産性も違いますし、仕事のタイプも違うわけでありますので、一律に賃金の水準で企業の生死を決めていく、政策的に決めていくというのは、これは非常にリスクのあることなのかなと。むしろ、これも最後に申し上げた点なんですけれども、プレゼンテーションの中で申し上げた点なんですけれども、退出する企業の生産性上昇率は残された中小企業の生産性上昇率よりも高いという結果が出ていますので、優良な競争力を持つ企業が倒産に追い込まれる、廃業に追い込まれる、これを防ぐというのが非常に重要な生産性向上策になっていくということだと思います。それについては、例えば後継者不足だったりということであれば、それを後押しするような政策の助けは必要なのかなと思っています。
価格競争力については、価格競争力を助けるというよりは、価格支配力を助けるというよりは、競争力を高める、生産性を向上させること自体が価格支配力を高めていくということですので、そちらの方を後押しするというのが重要だと思います。
規模については、これは業種、企業によって多分違うと思います。規模を大きくすることによって競争力、生産性を高めることもできるし、規模が大きくなることによってむしろ失われてしまう特性もあるということですから、業種、企業によって状況は異なるということだと思いますが、ただ、規模が大きくなることを妨げるような税制になっているんであれば、そこはやっぱり再考の余地はあるんじゃないかなというふうに思います。
以上です。
○参考人(滝澤美帆君) 私から申し上げることで一つ重要なキーワードがあるとすると、差別化だと思います。
基本的に差別化できているような財であれば、ある程度バーゲニングパワーは持てると思いますので、ユニークな財、差別化された財というのを生産する努力というのが必要です。ただ、ここで、長い取引慣行の中でそうした価格を抑えられているといったような状況があるのだとすると、そこは変えていく必要があると思います。経路依存性があってその取引慣行が変えられていないというのであれば、今、先ほど来話に出ていますけれども、パートナーシップ構築宣言等で変えていく必要があろうというふうに思います。
二点目、大企業の規制を強化すべきかという件に関しましては、私は反対です。なぜなら、そうした規制を強化することで大企業は更に海外に進出する可能性もあります。世界で見て生産拠点をどこに配置すればいいかということを、最適化考えるはずですので、日本の中でそうした規制を強化することというのは、優良企業は海外に出てしまう。その結果、更に大企業からのスピルオーバーが起きないといったような悪循環に陥りますので、規制を強化するよりはサプライチェーン全体で、大企業、中小企業、協力するという体制が必要だと思います。
三点目、規模が大きくなればいいかということ、私、そうは思いません。やはり差別化できている財であれば需要が付くと思いますので、必ずしも規模を大きくする必要はなくて、そうした差別化された財で、国内だけではなくて海外からの需要も呼び込む、中小企業であってもそうしたポテンシャルはあるというふうに考えております。
以上です。
○岩渕友君 以上で質問を終わります。ありがとうございました。