テーマ:脱炭素に逆行する大企業の化石燃料拡大への支援策について(討論あり)
(議事録は後日更新いたします)
岩渕友議員は10日の参院経済産業委員会で、液化天然ガス(LNG)の供給が不足する万が一の事態にそなえ、大臣が独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に調達を要請できるなどとしたガス事業法等改定案について、「事業者が果たすべき役割をJOGMECに肩代わりさせるもの」と批判しました。
岩渕氏は、経産省のLNG政策が近年「第三国へのビジネス展開」を重視し、公的支援を受けた大企業は莫大な利益をあげてきたと指摘。アジアなど海外向けに供給する「外・外取引」が取引全体に占める割合は2018年度16%から2021年度35%に倍増したと告発しました。
「『万が一』の事態になれば大企業に役割を果たさせるべきだ」「転売分を国内に最優先に振り向けるべきではないか」との岩渕氏の追及に、西村康稔経産相は、今後エネルギー供給にひっ迫のおそれが生じた場合でも、「供給先について事業者が適切に判断していくもの」と無責任な答弁に終始しました。
岩渕氏は、国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開かれていることにふれ、先進国である「日本は化石燃料への依存と開発をやめる責任がある」と強調しました。
本法案は11日の参院本会議で賛成多数で可決・成立しました。日本共産党は反対しました。
質問資料1 LNG政策〝第3国へのビジネス展開〟を重視 【PDF版】/【PNG版】
質問資料2 (株)JERA 長期契約を減らし、短期/スポット契約を増やす計画 【PDF版】/【PNG版】
質問資料3 日本企業のLNG取扱量内訳の推移(2018年度~2021年度) 【PDF版】/【PNG版】
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2022年11月10日(木) 参議院 経済産業委員会
「ガス事業法及びJOGMEC法改正案」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
6日に開幕をしたCOP27を前に国連機関が公表をした各国の温室効果ガス排出量の削減目標を集計した報告書によれば、現段階の目標を達成しても今世紀末までの気温上昇は産業革命前と比べて約2.5度になるおそれがあるとして、パリ協定の1.5度目標の達成に向け、とりわけ先進国の対策強化を求めています。
待ったなしの課題となっている化石燃料への依存と開発をやめる必要性について、まず大臣の認識をお聞きします。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、政府としても、2050年のカーボンニュートラルに向けて、実現に向けまして脱炭素社会への転換を加速して、化石燃料への依存、これを低減していくことは極めて重要であります。他方で、先ほど来御議論ありますように、今回のロシアによるウクライナ侵略のように様々な不確実性が存在する状況において、エネルギーの安全保障、エネルギー安定供給、この確保に一切の妥協は許されません。必要な資源を確保することは国家の責任、私どもの、政府の責任ということであります。よく言われるように、Sプラス3Eを満たす、全てを満たす完璧なエネルギーがない現状で、あらゆるエネルギーの選択肢を追求していくと、この姿勢も重要であるというふうに考えております。
特に天然ガスに関しましては、燃料として利用する際に他の化石燃料よりもCO2排出量が少ないと、また発電においては再エネの導入拡大に必要不可欠な調整電源としての役割も果たすということであります。と同時に、将来的にはCCSと組み合わせることで水素やアンモニアの原料としても期待される資源でもあります。こうした性質から、カーボンニュートラルへの移行期において重要な資源であると考えております。欧州でも、ロシア産ガスの代替としてLNGの需要が急激に伸びる見込みであります。LNGへの上流投資を行わなければ中長期的にも需給が逼迫するおそれがあります。
したがって、LNGの安定供給確保の重要性は変わるものではないということであります。我が国として、LNGの上流開発に向けた支援、資源外交、引き続き推進してまいりたいと考えております。
○岩渕友君 そもそも、2030年度に13年度比でCO2の排出46%削減する、これ日本の目標ですけれども、この日本の目標というのはIPCCが示した目標よりも低いものなんですよね。今答弁ありましたけど、日本には化石燃料への依存と開発をやめる責任があるわけですよ。それにもかかわらず、本法案は、LNGの市場の拡大、これを前提としたものです。
日本は世界最大のLNG輸入国だと。輸入量の6割が電力、3割が都市ガスに利用をされています。先ほどもいろいろ議論ありましたけれども、あの2021年1月の電力需給逼迫時には都市ガス会社からLNGの融通を受けて乗り切ったということがありました。電力が需給逼迫したときも、ガスは逼迫どころか電力への融通行っていたということになります。ガスでLNGが不足するような事態が起きるとすれば、その前に電力で不足をするということになるわけですよね。
欧州では、家庭向けの電気料金が3割から5割程度、家庭向けのガス料金は5割から9割程度上昇をしていると。でも、その一方で、日本では2割程度の上昇に抑えられているんですね。電力、ガス共に長期契約によるLNGの調達の比率が高いということで、現在の国際的なスポット価格よりも安価に調達できているということでいいかどうか、確認をします。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、日本のLNG調達における長期契約の比率はおおむね8割程度と承知をしております。欧州に比べて極めて高いということで、足下では世界的にスポットのLNG価格が高騰していますけれども、長期契約が多い日本では欧州と比べ安定的に、相対的に安定した価格でLNGを購入できておりますので、その結果、日本のガス料金は欧州よりも上昇幅が小さく迎えられているものというふうに認識をしております。
他方、電力料金は一定の上限を設けております。規制料金については上限を設けておりますので、そこに全て張り付いてそれ以上上げれない中で電力会社がその分を言わば負担をする形で、赤字、大きな赤字の中で価格が抑えられているという面があることも事実だというふうに思います。
いずれにしましても、これまでこのガスの、LNGの供給源の多角化、そして取引しやすい柔軟なLNG市場の整備など取組を行ってきたところでありますけれども、今後とも、様々な資源外交の取組を通じてLNGの安定供給図っていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 お配りしている資料の1を見ていただきたいんです。
これ経産省のLNG政策なんですけれども、当初はこのステージⅠということでLNGの輸入を重視をしていたと。そこに、ステージⅡということで開発など上流に投資をする上流権益への参画が加わって、現在はそれにとどまらず、ステージⅢということで第3国へのビジネス展開が重視をされていて、日本のLNG関連技術を第3国に展開をしたり、上流から下流までサプライチェーン全体にわたる需要家のビジネス展開を支援するという政策目的が示されています。
資料の2も御覧をいただきたいんですけれども、じゃ、事業者の計画というのはどうなっているのかということで、LNGの調達で日本一のJERAですよね、このJERAの事業計画見てみると、この示している資料は2016年に発表されたものなんですけれども、2030年度の事業計画ではLNGの長期契約を減らしてスポット契約の割合を増やすというふうになっています。
そこで、大臣に伺うんですが、経産省の政策としても長期契約からスポット契約を増やすという方向で進めてきたということでいいかどうか、確認をします。
○国務大臣(西村康稔君) 経産省として、我が国の安定的なエネルギー、特にLNGの今御議論ですけれども、LNGの供給を確保するために、市場の流動性や柔軟性の向上を通じたLNGの需給価格の安定化、これを目指してきたところであります。具体的には、需給調整や緊急時の融通が行いやすくなるよう、先ほど来御議論あります、第3者への自由な転売を禁止する仕向地制限、これの緩和、撤廃に取り組みつつ、調達先の多角化等を進めてきたところであります。不確実性が高いエネルギー市場の中におきまして、長期契約を含めてより柔軟かつ多様なLNG調達の選択肢を担保することが重要であります。事業者においても、価格の決定方法や契約の期間、調達先など、バランスの良いLNG調達を行うことが重要であります。
最近の短期契約、スポット比率の高まり、これは電力・ガス市場の自由化に伴う調達方法の多様化などが背景にあるものと考えております。LNG市場の流動化を、流動性を高める政策が直接的に事業者のスポット調達比率を高めるとは考えておりません。いずれにしましても、電力・ガス事業者がLNGをより調達しやすく、安定供給につながる市場環境の整備に引き続き取り組みたいというふうに考えております。
ちなみに、LNGの市場も、シェール革命、アメリカで生産が非常に増えて、1時期は非常に価格が安かった時期があります。このJERAのこの報告書も、ちょっと確認しなきゃいけませんけど、16年、2016年でありますし、最初の私どもの資料をベースに作っていただいた資料も2018年ということで、今のロシアのウクライナ侵略など、こうしたもう極めて需給が逼迫したような状況以前の比較的緩んでいた時期のものではないかというふうに思いますけれども、いずれにしても、LNGの安定供給につながる市場の整備、しっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 状況の変化はいろいろあるとは思いますけど、経産省の戦略としては、そのLNGをめぐる内外の市場環境というのは変革期にあるんだと、で、日本がそのグローバルな市場形成を主導していくチャンスだということで、長期安定や量の確保から、柔軟性、弾力性の確保や市場の活用へと重点移してきたというのが経産省の戦略ですよね。
で、資料の3を見ていただきたいんですけど、さらに、第3国に、第3国向けに供給される外―外取引が増加をしてきたということで、日本企業のLNG取扱量について、LNG取扱量全体に占める外―外取引量の割合は、2018年度と2011年度と、それぞれ何割でしょうか。
○政府参考人(定光裕樹君) お答え申し上げます。
LNG取扱量は、国内事業者が日本国内で消費するために調達したLNG数量と、第3国向けに取引を行ういわゆる外―外取引の数量を合わせたものでありますけれども、御指摘の調査結果、JOGMECがやっております調査結果によりますと、2018年度では、取扱量9552万トンのうち、外―外取引が1497万トンでして、割合としては約16%、2021年度では、取扱量が約1億957万トンのうち、外―外取引が3811万トン、割合としては約35%となっておりまして、外―外取引の数量は増加傾向にございます。
○岩渕友君 見ていただければ分かるように、答弁にもあったように、倍以上に増えているわけですよね。
経産省と事業者のこういう戦略の下で何が起きているのかということですが、都市ガス大手4社が9月の中間連結決算を発表しました。最終利益、通期最終利益見通しは、東京ガス、東邦ガス、西部ガスホールディングスで増益となりました。
東京ガスは、7年ぶりに過去最高益を更新して、前年比で、最終利益で2.6倍、通期最終利益見通しは23倍となる見通しです。東京ガスは、円安と資源高によって、オーストラリアで手掛けるLNG開発など資源開発事業の権益を売却をして利益を上げているということなんですね。
こうしたLNGの権益というのは、JOGMECからのリスクマネーの供給を始めとして、JBICであるとかNEXIなどを通じた公的支援によって実現をしてきました。
大臣、万が一の事態になれば、公的支援を受けてこの莫大な利益を上げているその大企業に役割を果たさせるべきです。その転売分を国内に最優先に振り向けさせるべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 国際情勢、様々変化する中で、今後、LNGの供給について逼迫のおそれが生じた場合であっても、まずはガス事業法に基づく供給責任を負う各事業者が最大限調達努力を講じることが基本であります。
その上で、需給が逼迫するような局面においては、事業者による代替調達あるいは電気・ガス事業者間のLNG融通を促していくとともに、必要があれば、資源国の交渉を含め、官民で連携した対策を最大限講じていきます。
事業者は、こうした取組を行う一環として、保有するLNGの供給先について、ガス事業法の供給責任なども踏まえつつ、自身で適切に判断していくものと考えております。ただし、必要があれば、国としても事業者間での適切な代替調達や融通を求めていくということであります。
今回の法改正は、それでもなお対応し切れない異常な事態への備えとして措置を講じていくものと考えております。
○岩渕友君 本来、電力・ガス事業者が負うべきビジネス取引のリスクをJOGMECを通じて国民に肩代わりさせるべきではないと申し上げておきたいと思います。
最後に、ガソリン、灯油などの価格の抑制をめぐって石油元売への補助金事業がありますけれども、これをめぐって財務省が、販売価格に補助金の全額が反映されていない可能性があると指摘をしました。今、この問題、非常に国民的な関心が高いんですよね。財務省がこういう指摘もしているということもあるので、じゃ、補助金が販売価格に反映されているかどうかということを検証する必要があります。
そこで、34社の元売各社にどれだけの補助金が支払われているのか、私たちのところで資料の提出、この間ずっと求めてきているんですけど、いまだにその資料出てきていないんですね。
大臣、これ当然明らかにするべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 本事業につきましては、もう先ほど来御議論ありますけれども、本来200円を超えるところを、ガソリン、レギュラー価格170円程度に抑制をしてきております。
事業の仕組みにつきましては、各社共通の支給単価に基づいて、各社個別の販売量に応じて値下げの原資分を補助金として支払うものであります。透明性の高い仕組みであると認識をしております。
現時点では最終的な支給額が確定しておりませんので具体的な金額の公開は困難でありますけれども、今後、確実に申し上げられるのは、精算が終了して正確な金額が確定次第、各社の支給実績を公表したいというふうに考えております。
○岩渕友君 透明性と言うのであれば、明らかにするべきなんですよ。そして、これからも事業続くので、中身がどうかということをちゃんと見ていかなくちゃいけないと。
当然公表するべきだということを求めて、質問を終わります。
2022年11月10日(木) 参議院 経済産業委員会
「ガス事業法及びJOGMEC法改正案」
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、ガス事業法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
気候危機の深刻化により地球規模で壊滅的な被害が発生し、気温上昇を1.5度未満に抑える対策は待ったなしです。開催中のCOP27では、2030年までの温室効果ガス排出削減の加速が求められています。とりわけ先進国の責任が問われる下で、本法案はアジアを始め海外におけるLNG市場の拡大を前提としたもので、一刻の猶予もない脱化石燃料の要請に逆行するとともに、先進国最低のエネルギー自給率を悪化させるものです。
反対理由の第一は、LNGを開発、輸入する電力、ガス、商社などの大企業が負うべきビジネス取引のリスクをJOGMECを通じ国民に肩代わりさせるものだからです。
質疑の中で、日本企業が政府のLNG戦略に基づき取扱量全体に占める第3国向け供給を年々拡大し、その結果、上流・中流権益とともに市場間取引で大きく利益を上げていることが明らかになりました。リスクマネーをJBIC、NEXIとともにJOGMECによって支援してきたものであり、第3国への転売分を国内で必要なLNGの調達に振り向け価格を低廉に抑えることは、莫大な利益を上げている大企業の責任で行うべきです。
我が国に輸入されるLNGの6割が電力、3割が都市ガスに利用されています。万一のLNG不足の際には、政府は公共インフラを担うこれら関係大企業に対し、まず供給責任を求めなければなりません。
第二は、政府自身が都市ガスの逼迫は生じていないと認めながら、エネルギーの争奪戦、需給逼迫による万一の危機とあおり、原発再稼働と運転期間延長を推進する口実にしているからです。西村大臣が、原発1基動けばLNG輸入が100万トン減ると繰り返していることは絶対に許せません。東京電力福島第一原発事故から11年半が過ぎても、ふるさと、人生を丸ごと奪われ、被害が拡大していることを直視すべきです。
IPCCの試算では、1.5度目標達成のためには、ガスを含む新規の化石燃料インフラを導入する余地はありません。エネルギー危機、脱炭素を口実に政府が推進するアンモニア混焼による火力発電の延命、LNGの開発は、国内外の若い世代、NGOなどから厳しく批判されています。
エネルギーの安定供給のためには、徹底した省エネと、地域と共生する再生可能エネルギー中心のエネルギー政策に転換することこそ必要であることを述べて、反対討論といたします。