テーマ:巨額利益を上げる石油元売大手への補助金について
/方針大転換の原発運転期間延長について
(議事録は後日更新いたします)
岩渕友議員は6日の参院経済産業委員会で、原発の運転期間を最長60年以上にする原発政策大転換の問題を取り上げ、福島第一原発事故の教訓を放棄することになると批判しました。
資源エネルギー庁は11月、原子力政策の行動計画案を提示。同案は「既設炉の最大限活用」をうたい、原発の停止期間を運転期間から除外することを盛り込んでいます。
岩渕氏は「原発の運転期間は最長60年だが、これでは60年以上の運転を認めることになる」と指摘。岸田文雄首相が国会審議で、福島原発事故の反省のもと原子力の推進と規制を分離し原子力規制委員会が設置され、原発運転期間を40年とし、1回に限り20年以内の延長とする法改正が実現したと答弁したことに言及し、「この立場を変えることになるのか」と追及しました。西村康稔経産相は「利用政策の観点から議論を進めている」としてまともに答えませんでした。
岩渕氏は、山中伸介原子力規制委員長が先月、運転期間延長に関し「利用政策側が判断される」(衆院原子力特別委)と答弁したが、更田豊志前委員長は「立法政策の場において決められるべきだ」(2020年12月、同委)と答えていた事実を示し「判断の主体に対する認識が違っている」と矛盾点を突きました。
山中委員長は「検討主体について発言は控える」と述べるにとどめました。岩渕氏は「方針を大転換して原発回帰するのはただちにやめるべきだ」と迫りました。
質問資料1 燃料油価格激変緩和事業の推移 【PDF版】/【PNG版】
質問資料2 巨額の利益をあげている石油元売大手企業(売上高、純利益、利益剰余金) 【PDF版】/【PNG版】
質問資料3 上がり続ける電気料金(東北電力) 【PDF版】/【PNG版】
質問資料4 経産省「アクションプラン(案)」は原発政策の大転換(新聞各紙報道) 【PDF版】/【PNG版】
質問資料5 原発運転期間延長に係る規制委員長の答弁(更田前委員長、山中委員長) 【PDF版】/【PNG版】
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
2022年12月6日(火) 参議院 経済産業委員会
「一般質疑」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
お配りしている資料の1をまず御覧ください。
ガソリン価格の高騰に伴って、小売価格を抑えるために石油元売への燃油補助金が1月から始まっています。これ延長を繰り返して、12月末分までで措置した予算額は累計で3兆円を超える規模になっています。
財務省は、3月から7月の補助金額とガソリンの市場価格を精査して、この期間に投じた、投じられた補助金5577億円のうち約110億円分について抑制効果がなかったという判断を行っています。
そこで、大臣に伺うんですけれども、この財務省の調査結果踏まえて、経産省自ら検証を行うべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘の財務省の調査でありますけれども、本年3月から7月の補助金額5577億円のうち実際の抑制額は5467億円で、110億円の乖離がある旨指摘されたと承知をしております。
本調査は、予測価格と実際の、実際の平均小売価格の差を機械的に試算したということでありますが、本事業では補助金額も毎週変化をしておりますし、各ガソリンスタンドの在庫の状況によって小売価格への反映にも時間差も生じるということから、正確な効果を測定するにはより精緻な分析が必要と認識をしておりまして、この点についても財務省とも意見交換を行っているところであります。
卸売価格については、委託先の事務局で適切に確認が行われるよう、経産省としても確認方法、手続をしっかりと監督するとともに、一部のデータについて抜き打ちの確認を行っております。具体的には、石油元売業者からの補助金の申請書とそれぞれのガソリンスタンドに対する日付、油種ごとの売上明細を比較し、全額が卸売価格に反映されているかどうかについて確認を行っているところであります。
また、小売価格につきましては、本事業の趣旨を踏まえた価格設定がなされるよう、引き続きガソリンスタンドへの全数電話調査、それから抜き打ちでの現地調査、これを行うとともに、業界団体を通じた周知徹底にも引き続き努めてまいりたいというふうに考えております。
○岩渕友君 資料の2も御覧をいただきたいんです。
石油の元売大手3社、ENEOS、出光、コスモですよね。ここについて、今年1月の補助金の支給開始を挟んだ2020年度、そして2021年度、そして今年度の半期で見ても、当期利益が2倍から8倍増えていると。内部留保である利益剰余金も1.5倍から2倍にも増えて、巨額な利益になっているんですよね。
財務省の調査の中では、ガソリンスタンドを運営する事業者の人にも話を聞いていて、そこの中には、小売価格に転嫁せずに、自分の、自社の利益、赤字補填に充てた事業者がいるということも分かっています。
これ、同じようなことを元売事業者もやっていないかどうか、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) まず、これ仕組みなんですけれども、元売事業者から補助金の支払申請があった、請求があった場合には、補助金支給の単価相当額の全てが卸売価格に反映されたことが確認できた場合のみ補助金を支払うという事後精算の仕組みとしており、そもそも元売事業者を支援する補助金ではないということをまず申し上げたいと思います。
それから、ガソリンスタンド側への支援ではないかということでありますけれども、各社共通の支給単価に基づいて各社個別の販売量に応じて、値下げ分のその原資、原資分を補助金として支払うものであるということでありますので、元売各社においても、まず卸売価格に全額を反映する方針で臨んでおりますし、先ほど申し上げたように、事後的な精算でする仕組みとなっております。
この補助金がガソリンスタンドの経営改善に使われたのではないかという御指摘でありますが、本制度による補助金は元売から卸価格に全額が反映まずされており、その補助金の一部が小売価格に反映されていないとの、まあ先ほどの財務省の調査でありますけれども、在庫の関係で補助金の効果が反映されるまでに若干のずれが生じているということが原因と認識をしております。
制度の趣旨について改めて業界団体を通じて周知を行ったところでありますし、引き続き適切な、適正な執行に努めていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 ガソリン価格が上がっている中で、この問題は非常に関心高くなっているわけですよね。その大手元売がこの資料のように巨額の利益上げているんだけれども、その一方で、じゃ、中小・小規模事業者の皆さんどうかというと、値上げすること難しいとか、価格への転嫁もできないということで、その経営が深刻な事態になっているわけですよね。
ところが、前回の当委員会の質疑の中で大臣に聞きましたけれども、その元売各社への補助金についての資料の提出してほしいと、やっぱりちゃんと検証するべきだというふうに求めたんですけど、大臣は、現時点では最終的な支給額が確定をして精算が終了しなければ提出できないんだという答弁だったんですね。
補助金がこれ来年の9月まで延長になりました。更に3兆円つぎ込まれるということになりますけれども、これ精算が済んでからということでは余りにも遅過ぎると言わなくてはならないわけです。精算は少なくても支給開始から1年とか年度末には行うべきだと、で、直ちに調査をして資料を出すべきだということを改めて求めたいんですね。
次に、第2次補正予算の目玉とされている電気料金の負担軽減についても、負担軽減の補助についても質問します。
大手電力10社全てが、標準的な家庭、規制料金の契約で既に最高額になっています。資料の3を見ていただきたいんですけど、このグラフは東北電力のものなんですけれども、電気料金が上がり続けていると、来年4月にはもう更に大幅な値上げになるわけですね。
政府は、来春以降の各社の値上げを想定して、低圧で3割分、高圧で2割分の補助になる見通しだというふうにしていますけれども、値上げを申請している各社の値上げ幅というのは、3割以上、4割以上のところもあるんですね。現状では、補助だけでは負担増の分をカバーできないということになります。同時に、来年9月以降この補助をやめるということになれば、昨年最も安い月との比較で月6000円から8500円高くなる電力会社もあるんですね。
中国電力、中部電力、九州電力、関西電力によるカルテル、これ問題になっていますけれども、電力自由化の目的でもある電気料金の低廉化、選択の自由、これを阻害する地域独占にしがみつこうとするものです。これ、電力各社は、電気料金の値上げについて、経営努力では追い付かないというふうに言っているわけなんですけれども、本当に努力されているのかということで、多くの国民の皆さんが疑念を持っています。
このカルテルが行われるような状況の下で規制料金を値上げするということは国民の納得が得られるものではないと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 今月1日に、公正取引委員会が、中部電力、中国電力、九州電力に対して、カルテルに関する処分案の事前通知を行ったというふうに承知をしております。
一般論で申し上げ、今まだ審査中であり、調査中ということでありますので、一般論で申し上げれば、電力の自由化によって競争を促進して、そしてより経営を効率化し、安定的な価格、より低い価格にしていく、この方向性は非常に重要だというふうに認識をしております。電力各社によるこうした公正取引を妨げ得る行為は、電力システム改革の趣旨に反するということで、極めて遺憾なことだというふうに認識をしております。
今後、公正取引委員会による手続を注視した上で、独禁法による、基づく処分が正式に決定した後に、経産省としても適切に対応していきたいというふうに考えております。
一方で、今般の電力料金による、電力会社による規制料金の値上げの申請につきましては、まさにウクライナ情勢などに伴って燃料価格が高騰し、電力各社の経営状況が極めて厳しい中で行われたものというふうに承知をしております。申請がなされておりますので、今後厳格な審査を行っていきたいというふうに考えております。
具体的には、経営効率化の取組がしっかりと行われているかどうか、保有資産の活用が適切であるかどうか、そして今回の要因の大きなものであります燃料調達の費用見込み、これが妥当であるかどうか、こうした点をしっかりと確認をしていきたいというふうに思います。その際には、当然のことですけれども、この料金の原価に、先ほど、もし課されることになれば、なるとしたとしても、その課徴金を含めることはございません。
こうした審査のプロセスにおきましては、電気事業法に基づく公聴会あるいはインターネットなどを通じた国民の声、こうしたものなど、当省に寄せられた御意見などをしっかりと踏まえながら議論していきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 カルテルについては厳しい指導が必要です、ですし、この電力システム改革全体の検証が必要だと言わなくてはなりません。電気料金への補助は、もうまるで来春の規制料金の値上げをしやすくしようとしているようにも見えるんですね。さらに、原発再稼働の口実にもしているということは、これはとんでもないことだと厳しく指摘をしておきます。
次に、原発の運転期間の延長について質問します。
11月28日に行われた総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会で、エネ庁から今後の原子力政策の方向性と実現に向けたアクションプラン案が示されました。この中で、既設炉の最大限活用ということで停止した期間をカウントから除外をする、まあ算入しないとしています。原発の運転期間は原則40年、1回に限り20年の延長可能、つまり、最長60年となっているわけですけれども、60年以上の運転を認めるということになります。
10月24日の予算委員会の中で、運転期間を原則40年としたことについて総理に質問をしたのに対して、総理がこんな答弁しているんですね。東京電力福島第一原発事故の深い反省の下に、原子力利用の推進と規制を分離し、規制行政を一元的に担うため独立した原子力規制委員会を設置するとともに、規制の強化を行うために、平成24年6月、原子力規制委員会設置法案が議員立法で国会に提出され、原発の運転期間を40年として、1回限り20年以内で延長できるとする改正が成立した、こういう答弁だったんです。
大臣、この立場を変えるということなんでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) 御指摘のように、東京電力福島第一原発事故、このことへの真摯な反省、これは原子力政策のまさに出発点でもあり、この点は全く変わるものではございません。
一方で、ウクライナ情勢あるいは電力需給の逼迫、まさにこの昨今のエネルギー情勢、エネルギーをめぐる内外の情勢の変化、これを踏まえれば、国民生活やあるいは経済活動、産業の基盤を守っていくという意味でも、エネルギーの安定供給、これも万全なものにしていかなきゃいけないわけであります。
したがって、将来にわたって我が国のエネルギー安定供給を確保していくためには、原子力を含めて、先ほど来御議論あります再エネの最大限導入もそうであります、あらゆる選択肢を追求していくということが極めて重要であると認識をしております。
こうした中で、現在、経産省におきましては、GX実行会議における岸田総理の御指示も踏まえまして、運転期間の在り方について利用政策の観点から審議会における議論を進めているというところであります。
その上で、御指摘のように、福島第一原発の教訓であります規制と利用の分離は大前提でありますので、高い独立性を有する原子力規制委員会により安全性が確認されなければ、発電所、原発の運転ができない仕組みというのは、もうこれは大前提でありますので、そうした下で利用する側から様々な議論、整理、いただいている御意見を整理しながら議論を進めているところでございます。
○岩渕友君 立場を変えたのかということに対しては、直接答弁なかったわけですけれども。
資料の4を御覧ください。
アクションプランを受けて、新聞各紙も方針の転換というふうに報道しているんですね。実際、方針の大転換だし、立場変えたということなんですよ。アクションプラン案には、再稼働に当たって、東京電力福島第一原子力発電所事故の最大の教訓である安全神話からの脱却を不断に問い直していくというふうにあるんですね。安全神話がなぜ起こったのか。国会事故調の報告書では、歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の逆転関係が起きて、規制当局は電力事業者のとりことなっていた、その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊したと見ることができるというふうにしているんですね。だから、推進と規制を分離したわけです。
この11月28日の小委員会で出された意見の中では、運転期間は利用政策が決めるものだとして、運転期間規制を再度推進官庁である経産省に帰属するものとすることは、利用と規制の境界を変更するものにほかならず、福島第一原発事故の教訓を放棄するものであると、こういう意見もありました。
この方針の大転換はまさに福島第一原発事故の教訓を放棄することになるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) まさにこの福島第一原発事故の反省、深い反省を踏まえて、それに基づいて、政府としてまず高い独立性、専門性を有する規制機関の設立ということで原子力規制委員会ができたわけでありますし、また、自然現象の想定を大幅に強化し、また万一の重大事故発生時の対策についてもしっかりと進めていく、まさに世界で最も厳しい水準の規制基準、この策定などの対策を進めてきたところであります。
今回の検討に当たりましても、この規制の在り方については原子力規制委員会による検討が行われると、そちらに委ねるということでありまして、私どもの利用政策の観点の検討とは厳格に区別をして行ってきております。私どもの利用政策の観点からは、これまでの検討を踏まえて、震災前からの原発依存度低減という従来の方針も踏まえて、運転期間の上限を引き続き設けることとしております。
いずれにしても、規制委員会での安全確認というものがなされないと動かせないわけでありますので、この安全性の確保を大前提としながら、私ども引き続き、開かれた形で様々な専門家の御意見をいただきながら、年末に結論を得るべく検討を進めているところであります。今後、適切なタイミングでパブリックコメントなども行いたいというふうに考えております。
いずれにしても、国民の皆様の幅広い御理解もいただきながら検討を進めていきたいというふうに考えておりますが、いずれにしても、利用、規制と利用、これ厳格に分けて議論を進めているところでございます。
○岩渕友君 この運転期間の問題について、一体誰が判断するのかということが問題だと思うんですね。
資料の5を見ていただきたいんですけれども、今日は山中規制委員長においでいただいていますけれども、委員長が、運転期間に関する定めについて、2020年7月29日の規制委員会の見解を理由にして利用政策側が判断することだというふうに述べているんです。更田前規制委員長も同じような答弁、国会でしているんだというふうに委員長述べているんですけれども、更田前委員長は、立法政策の場において決められるべきだと、こういうふうに述べているんですね。
利用政策側というのは経済産業省ですよね。立法政策の場というのは国会のことです。運転期間の定めというのは、この成り立ちからいっても国会で決めたものになるわけなんですよ。この運転期間について、判断の主体に対する認識が委員長、間違っているんじゃないでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
原子力規制委員会は、令和2年7月29日に、運転期間の定めについては立法政策として定められたものであり、原子力利用の在り方に関する政策判断にほかならず、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないとの見解を決定しております。
そのため、原子力利用の在り方に関する政策判断により運転期間の定めがどのような制度になろうとも、原子力規制委員会は意見を申し述べる立場にはございません。
いずれにいたしましても、法案となれば国会で審議されるものでございますので、更田前委員長の答弁と私の発言には相違がないと考えております。
○岩渕友君 それであれば、なぜその利用政策側の判断だというような言い方されたんでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 原子力利用の在り方に関する政策判断と考えております。原子力、政府内で検討されるといたしましたら、利用政策を担っている省庁であると考えております。
見解にございますように、私ども原子力規制委員会は、運転期間について意見を述べる事柄ではないとしておりますので、その検討主体についても発言は控えるべきと考えております。
○岩渕友君 時間が来ているので終わるんですけれども、推進と規制、もうほとんど一体になっちゃっているんですよね。これまでの方針をやっぱり大転換して原発回帰するということは直ちにやめるべきだと、このことを厳しく指摘して、質問を終わります。