2023年9月8日(金) 参議院 経済産業委員会、農林水産委員会連合審査会「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水に関する件」(閉会中審査)
テーマ:約束破りの海洋放出はただちに中止を
汚染水の海洋放出めぐる閉会中審査 汚染水減らす対策こそ
東京電力福島第一原発事故の汚染水(ALPS処理水)の海洋放出をめぐる閉会中審査が8日、衆参両院の経済産業・農林水産委員会の連合審査会として行われました。日本共産党の高橋千鶴子衆院議員と岩渕友参院議員は、政府と東電が漁業者との約束を踏みにじり、海洋放出を強行したことに断固抗議。ただちに中止すべきだと迫りました。
岩渕氏は、約束した文書のなかで東電は「多核種除去設備(ALPS)で処理した水は発電所敷地内に貯留する」と記載していると指摘。「東電は今回の放出は『関係者の理解を得た』と判断したのか」と迫りました。
東電の小早川智明社長が「政府の方針に沿って放出を開始した」と答弁したのに対し、岩渕氏は「約束も守らず、当事者でありながら判断も示さず政府任せにしている。あまりにも無責任だ」と批判しました。
岩渕氏は、「福島県の沿岸漁業の水揚げ量は事故前の約2割、漁獲高は約4割で、震災前の5割以上の回復を目指し、試験操業を経てようやく本格操業へと向かおうとしている。こうした努力に水を差すのが海洋放出だ」と強調。「約束を守るということはちゃんと対策を取るということだ。海洋放出は今すぐ中止するべきだ」と求めました。
汚染水の海洋放出は漁業者との約束を反故にしているうえに、いつまで放出が続くのか、放射性物質の総量がどのくらいになるのかもわかりません。岩渕氏は、溶け落ちた核燃料デブリに触れた汚染水にはALPS処理後もトリチウム以外の放射性物質が残り、いまあるタンクの約7割はそれらの濃度が排出基準を上回っていると指摘。さらに、現時点で毎日約90トンの汚染水が生じているとして、今後放出する放射性物質の総量と放出期限をただしました。
東電の小早川智明社長は「規制基準を満足した上で放出作業がなされる」などと述べるだけで、放射性物質の総量は答えませんでした。
岩渕氏は、地下水が流れ込んでデブリに触れるのを防ぐ広域遮水壁の設置など、専門家や市民団体が提案する対策で汚染水を抜本的に減らす必要があると強調。また、汚染水を固めて長期保管するなど海洋放出以外の方法も提案されているとして、「汚染水を抜本的に減らす対策、海洋放出以外の方法を実現することにこそ、真剣に取り組むべきだ」と迫りました。
西村康稔経産相は「いまも約束は果たし続けている」と答弁。岩渕氏は「約束を守るということは、ちゃんと対策をとるということだ」と主張し、海洋放出はいますぐ中止すべきだと訴えました。
質問資料1 福島県漁連と東電および政府との約束 【PDF版】/【PNG版】
質問資料2 福島県の沿岸漁業の漁獲高推移(2010年~2022年) 【PDF版】/【PNG版】
質問資料3 東電福島第一原発敷地写真 【PDF版】/【PNG版】
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2023年9月8日(金) 参議院 経済産業委員会、農林水産委員会連合審査会
「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水に関する件」(閉会中審査)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
政府と東京電力が漁業者、国民との約束を破って海洋放出を強行したことに断固抗議をし、海洋放出の中止を求めるものです。
8月31日、ふくしま復興共同センターの皆さんが海洋放出の中止を求め、そして7万筆を超える署名を政府に提出をいたしました。福島県農民連の事務局長さんは、東京電力福島第一原発事故からの12年余り、農家の方々がどんな思いで田畑を除染し、米や野菜や果物を作り、検査をして消費者に届けてきたか、また同じ思いをしなくちゃならないのかと涙ながらに訴えました。
漁業者だけでなく、農家も事業者もなりわいを再建させるためにどれだけの努力を重ねてきたか。被害者が生活の再建のためにどれだけ苦労をしてきたか。原発事故によって避難を強いられて、同じ被害者が分断をされて、損害賠償を打ち切られ、国と東京電力の責任を認めさせるために裁判をせざるを得ないなど、被害者はこの12年余り何重にも苦しめられてきました。更に苦しみを強いるのが海洋放出です。
資料の1を御覧ください。
2015年の8月に政府と東京電力は、福島県漁連からの、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わないこと、この要望に対して、関係者の理解なしにはいかなる処分も行わないというふうに約束をしました。東京電力は、さらにタンクに貯留するとまで約束をしています。
東京電力に伺います。
東京電力は、関係者の理解は得られたという認識なのでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
2015年に福島県漁連様と交わした文書では、漁業関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うことを約束しており、これまでも県漁連様には廃炉・汚染水・処理水対策の内容につきまして定期的に御報告、御説明をさせていただいてまいりました。
2021年4月に政府がALPS処理水の処分に関わる政府方針を定めた以降も安全かつ慎重に作業を進め、御理解醸成活動につきましても継続して取り組んでまいりました。
当社は、ALPS処理水の海洋放出について、この度、政府が関係者からの一定の御理解が得られたと御判断されたことを大変重く受け止め、政府の方針に沿って慎重に放出を開始いたしました。
当社といたしましては、実施主体として果たすべき役割である設備運用の安全、品質の確保、迅速なモニタリングと正確な情報発信、IAEAレビュー等を通じた透明性の確保、そして何よりも風評対策、損害が発生したときの適切な賠償を廃炉の期間を通じて遂行し続けることがこの一定の理解の前提になっていると受け止めており、重い責任を感じております。
関係者の御懸念の本質は、風評被害により安心してなりわいが継続できなくなるのではないかということを御懸念されていることだと認識しております。私どもといたしましては、先ほど申し上げた取組を廃炉の期間を通じて徹底し、ALPS処理水の海洋放出が完全に完了したその先にしっかりとなりわいが継続していることをもって理解が完了したことになると考えております。
当社は、実施主体として責任と役割をしっかりと果たすべく、引き続き、廃炉が終わるそのときまで緊張感を持って一つ一つのプロセスを積み重ねる努力を継続してまいります。
福島県漁連様と当社が交わした文書の内容につきましては、引き続き、廃炉の期間を通じしっかりと遵守してまいる考えでございます。
私からは以上でございます。
○岩渕友君 私は、東京電力としてどういうふうに判断したのかというふうに聞いたんですよ。けれども、今、答えがないわけですよね。約束も守らないと。当事者でありながら判断も示さないで政府任せにしていると。これ、余りにも無責任なんですよね。それで実施主体だから責任持って取り組むんだといっても、これとても信用できないということだと思うんですよ。
これ、ますます不信が募るということになるんじゃないんですか。東京電力、いかがですか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
関係者の御懸念の本質は、風評被害によりなりわいが子々孫々まで継続できなくなることだというふうに認識しております。私どもとしては、実施主体としての役割や責任を廃炉の期間を通じて徹底し、ALPS処理水の海洋放出が完全に完了したその先に子々孫々までしっかりとなりわいが継続していることをもって理解が完了したことになると考えております。
福島県漁連様と当社が交わした文書の中身につきましては、引き続き、廃炉が終わるそのときまでしっかりと遵守し、しっかりとこの役割を責任を持って果たしてまいる所存でございます。
○岩渕友君 約束の中身を勝手にねじ曲げないでほしいんですよ。
全漁連も県漁連も、海洋放出に反対であることにはいささかも変わりはないというふうにコメントを発表しているわけですよね。
同じように、岸田首相は、これ数十年の長期にわたろうとも政府が責任を持つと言っているんです。でも、約束も守れないのに、責任持つなんという言葉を信じることできないわけですよね。しかも、政府と東京電力は、国会でも約束は遵守するということを繰り返し答弁してきたんですよ。漁業者との約束だけではなくて、国民との約束を破ったということになります。最初から政府の考えは決まっている、これが民主主義かと思う、こういう怒りの声が上がっています。放出の強行は民主主義を壊すものです。
岸田首相は、海洋放出直前の8月20日、福島第一原発の視察に行ったにもかかわらず、漁業者と会いませんでした。野村大臣は、海洋放出の後、漁業者に会いに行ったのでしょうか。私は、放出の後、自分たちは海洋放出に納得していない、子供や孫が漁業を続けられるようにしなくてはならない、こういう話を聞いてきました。
大臣は、放出を受けて、漁業者のどんな声を聞いてきたのでしょうか。
○国務大臣(野村哲郎君) お答えを申し上げたいと思いますが、私自身、ALPS処理水の海洋放出開始後の8月28日に福島市で開催されました27回の原子力災害からの福島復興再生協議会に西村大臣共々出席をしました。その場に漁業関係者の出席はありませんでしたけれども、内堀知事を始めとする市町村長や、あるいはまた県議の皆さん、あるいはまた団体の皆さんからは、やはりこの水産物のモニタリングについての説明を、私からはモニタリングの話の説明を行いましたが、これとは別に、8月24日と31日の2回にわたり水産庁の担当者が現地に伺い、福島漁連が開催した会議に出席して漁業関係者と意見を交わしておりますし、その前も2回ほど、昨年から私も伺いまして、福島の漁連の会長さんなんかともお話合いをさせていただいたところであります。
福島の漁連の漁業者の方々には西村大臣が1番お会いされておりまして、各組合長さんや県連の会長さんなんかとお会いされましていろんな意見をお聞きいただいておるところでございます。
○岩渕友君 西村大臣が聞けばいいって話じゃないんですよ。野村大臣、自分もちゃんと聞かなくちゃ。
資料の2を御覧いただきたいんですけれども、何で聞いてほしいかというと、これ、福島県の沿岸漁業の水揚げ量は事故前の約2割、漁獲高は約4割なんです。震災前の5割以上の回復目指して、試験操業を経てようやく本格操業へと向かおうとしているんですね。こうした努力に水を差すのが海洋放出なんですよ。
西村大臣にお伺いするんですけれども、先ほども言ったとおり、全漁連も福島県漁連も反対であることはいささかも変わりないというふうにコメントしているんです。西村大臣はこれで理解が得られたという認識なのでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君) まさに全漁連の坂本会長、福島県の野崎会長を始めとして漁連の皆様、本当に不安に思っておられる、そしてまさに苦渋の、苦しい胸のうちと申し上げていいのか、本当にいろんなことを組合員の皆さん方とも議論をされて、私ども、そして岸田総理と会われたんだろうというふうに思いますが、そのときの、坂本会長は、政府のこの漁業者のなりわい継続に寄り添った姿勢、この政府の姿勢と安全性を含めた対応について我々の理解は進んできていると考えているとのお話をいただきましたし、福島県漁連からは、漁業者と国、東電は復興と廃炉という共通の目標に向けて同じ方向を向いて進んでいる、したがって、約束は果たされていないが、破られたとは考えていないとのお声をいただいたところであります。
最終的に理解が完了して約束を果たし終えるのは、まさに廃炉を終えて、そしてその時点で海洋放出も終えて、漁業のなりわいが継続されていることが確認されて初めて理解は完了する、約束は果たされたという御理解であります。私どもも同じ思いでありまして、今約束を果たし続けている、そういう状況だと思います。
安全と安心の間は違う、安全と安心は違うというお言葉もいただいていますので、まさにその間を埋めるべく、今回の207億を追加して1,007億の予算を含めて、安全性については理解が進んできているけれども、安心はまだまだだという、そうした声に応えていくべく、漁業者の皆さんに寄り添って対応していきたいと考えておりますが、以上のようなことから一定の理解は得られているものというふうに考えて判断をしたところであります。
○岩渕友君 いささかも反対の立場に変わりないということですから、大臣も約束をねじ曲げないでほしいんですよ。
じゃ、どうして理解が得られないのかということですけれども、溶け落ちた核燃料であるデブリに触れた汚染水にはトリチウム以外の放射性物質が含まれていて、ALPSで処理しても残ったままです。実際、今あるタンクの約7割はトリチウム以外の放射性物質の濃度が排出基準を上回って残っています。東電は、放出前に二次処理をして基準値以下にするというんですけれども、それでも残っていることに変わりはないんですね。しかも、その二次処理の性能についてIAEAの報告書は評価をしていないんです。
そこで、東京電力に聞くんですけれども、現時点で毎日約90トンの汚染水が発生をしています。今後放出する放射性物質、トリチウムだけではありません。その総量がどのぐらいになるのか、また、いつまで続くのでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
まず、浄化が必要な水につきましては、浄化処理を確実に実施し、実際に放出する前に測定、確認用の設備においてトリチウム以外の放射性物質について確実に告示濃度比総和が1未満であることを確認いたします。その上で、ALPS処理水につきましては国の定める規制基準を満足した上で放出してまいります。
なお、規制基準を満足した上で放出管理がなされるため、放射性物質の総量は、IAEAの包括報告書が結論付けているとおり、人や環境に対し無視できるほどの放射線影響しか生じないと評価をいただいております。
今、もう一つ先生から御質問いただきました、いつまで続くのかということにつきましては、ALPS処理水の海洋放出は、2021年4月の国の基本方針に基づき、一度に大量に放出するようなことはせず、トリチウムの半減期なども考慮し、廃止措置に要する期間を有効に活用しながら放出する計画としております。
具体的な放出計画につきましては、毎年度末に翌年度の放出計画を策定し、公表してまいります。
私からは以上でございます。
○岩渕友君 総量については答弁ないわけですよね。
それで、廃炉のためにデブリの取り出し不可欠だというんですけれども、1グラムもまだ取り出せていないんですよ。それで、凍土壁が十分な効果を上げていない下で、地下水が流れ込んでデブリに触れる、それを防ぐ遮水壁を設置するなど、専門家や市民団体などが提案する対策で汚染水抜本的に減らす必要がありますし、海洋放出しか方法ないかといえば、モルタル固化など固めて長期に保管するなどの方法も提案されているわけですよね。私も繰り返し求めてきました。その場所は資料3にあるようにあるんですよ。
西村大臣に聞きます、最後に。
汚染水を抜本的に減らす対策、海洋放出以外の方法を実現することこそ真剣に取り組むべきではありませんか。
○委員長(吉川沙織君) 時間来ておりますので、端的にお願いいたします。
○国務大臣(西村康稔君) はい。
サブドレーンあるいは御指摘があった凍土壁などで雨水、地下水の入り込む量をかなり減らしてきているのは事実であります。これを更に減らすべく、表面が、フェーシングといいますが、コンクリートで覆って、アスファルトで覆って地下に入らないようにする、こういったことを含めて、いわゆる地下水、雨水がデブリに触れる量、汚染水の量を減らしていくこと、取り組んでいきたいと思いますし、科学の進歩はありますので、20年、30年のうちに何か画期的な技術が出てくるかもしれませんし、私どもとしては、基本はこれまでの経験、専門家の知見を結集して、そしてIAEAも認めてくれておりますこの海洋放出で進めてまいりたいと思いますが、不断のそうした科学技術の進化、進歩、これは見ていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君 約束を守るということは、ちゃんと対策取るということです。
海洋放出は今すぐ中止するべきだということを求めて、質問を終わります。