2023年12月7日(木) 参議院 経済産業委員会「一般質疑」(野党のみ)
テーマ:原発、火力優先で再エネ捨てる出力抑制問題
(議事録は後日更新いたします)
今年度、再エネ抑制7.2倍/岩渕氏、電力大手を批判
史上かつてない猛暑、洪水、干ばつ、山火事など深刻な災害が世界を襲っています。「地球沸騰化」といわれる気候危機に、各国は対策を求められています。国連気候枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える世界目標の達成に向け、グテレス国連事務総長が化石燃料の「段階的な廃止」を訴えています。ところが日本政府は化石燃料の使用に固執。国際NGOなどからも批判の声が上がっています。
再生可能エネルギーの急速な導入拡大が求められる中、7日の参院経済産業委員会で日本共産党の岩渕友議員は逆行する実態を明らかにしました。電力大手が今年度の再エネの出力を大幅に抑制し、その量が前年同時期比で7.2倍にもなっていました。
電力大手は、需給バランスの調整のためだとして再エネ電力を捨てる「出力抑制」を行っています。原子力発電には行っていません。
岩渕氏の求めに応じて経済産業省が提出したデータによれば、2023年4~10月に電力大手9社が行った再エネの出力抑制量は15億710万㌔㍗時でした。22年同時期は6電力で計2億1000万㌔㍗時でした。また出力抑制の日数は、23年4~12月で226日となり、22年同時期から約3倍に増えました。
市民団体は、23年度の再エネの出力抑制予測量(経産省)が約41万世帯の年間消費量に相当し、家庭の平均電力料金に換算すれば約475億円に上ると試算しました。
岩渕氏は、出力抑制に対する再エネ事業者への補償とともに、原発から撤退し、石炭化発を廃止し、再エネ主力電源化にふさわしいエネルギー政策への転換を主張。西村康稔経済産業相は「火力発電の最低出力を少しでも減らしたい」として化石燃料固執の姿勢を示しました。
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2023年12月7日(木) 参議院 経済産業委員会
「一般質疑」(野党のみ)
○岩渕友君
日本共産党の岩渕友です。
ドバイで開催をされているCOP28では、深刻化する気候危機をいかに食い止めるかが差し迫った焦点になっています。産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える世界目標達成のために、再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに世界全体で三倍にする目標に日本を含む118か国が賛同をいたしました。
日本は、元々再エネの導入量も目標も低いので、大幅に引き上げる必要があります。ところが、再エネによって発電した電気を捨てる出力抑制が今年度急増をしています。今ある再エネさえ生かすことができず捨てているということは、これ大問題です。
2021年度、22年度、そして23年度の4月から10月末までの再エネの出力抑制電力量はそれぞれ合計で幾らになるでしょうか。
○政府参考人(井上博雄君)
お答え申し上げます。
本年11月の集計時点では、2021年度は九州エリアでのみ発生しまして5億3489万キロワットアワー、2022年度は北海道、東北、中国、四国、九州、沖縄エリアの合計で5億7325万キロワットアワー、2023年度4月から10月末までは北海道、東北、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄エリアの合計で15億710万キロワットアワーとなっております。
○岩渕友君
資料の一を見ていただきたいんですけれども、今の答弁の中身が資料として提出しています。今年度は10月末までなんですけれども、答弁にあったように大幅に増えているんですよね。既に、前年同時期と比較をすると、何と7倍以上にも上っているんです。
資料の二も見ていただきたいんですけれども、出力抑制の日数で見ても、直近のデータで前年同期比と比べて3.5倍になっているんですね。昨年度の実績を見れば、今年度更に増えるということが予想をされます。実際、23年度の出力抑制予測では17.6億キロワットアワーというふうになっています。市民団体によれば、これは約41万世帯分の年間消費量に相当をするもので、家庭の平均電力料金で試算をすると約475億円もの価値を捨てているというふうに指摘をされています。諸外国と比べても再エネ導入率が低いのに、これほど高い抑制力、抑制率の国はありません。
大臣、再エネの出力抑制を減らすための対応、これがすぐにでも求められているのではありませんか。
○国務大臣(西村康稔君)
まさにおっしゃるとおり、再エネの更なる導入拡大に向けては、この出力制御する量を可能な限り抑制することが重要だということで、私も就任以来強い問題意識を持っておりまして、事務方にももっとできることがあるんじゃないかということを指示してきたところであります。
そうした中で、これまでも、需要、供給両面での対策、それから系統増強ですね、足りていないところに送ればいいわけですので、これも含めてこれまでの対策を更に深掘りした出力制御対策パッケージを年内に取りまとめる予定にしております。
具体的には、需要面の対策において、まず蓄電池をできるだけ導入支援していきたいと、これも補正予算で一定程度確保しております。また、需要家のディマンドレスポンス推進のための電気料金メニューの多様化、これも、制御しなきゃいけないときに、例えば洗濯とか、ふだん夜やるものをそこでやれるものがあればやっていただけるとうまく需給がバランスできますので、電気料金メニューの多様化も推進していきたいと思います。予算と制度面両方の対応をしていきたいと。
また、供給面では、この火力の、火力発電の最低出力の引下げ、これを私も指示、検討を指示して徹底をしていきたいというふうに考えております。また、地域間の連系線の整備、系統増強、こうしたことにも取り組んでいきたいと思います。
いずれにしても、切れ目ない対策を講じることで再エネの出力制御量の最大限抑制に取り組んでいきたいというふうに考えております。
○岩渕友君
今答弁の中で、火力の最低出力の引下げについても要請しているというお話だったんですけれども、既設の火力の引下げについては協力のお願いにすぎないというのが実態なんですね。また、既に最低出力を30%まで下げているところが多いというふうにも聞いています。この程度の対応では、再エネの出力抑制を減らす効果上がらないというふうに思うんですね。
今年3月の検討会の資料を見てみますと、供給対策として、電源ⅠからⅢの火力発電設備の最低出力を20%というふうに仮定した試算が行われているんです。全ての火力について最低出力の深掘りが必要であり、出力が大きく減らせない旧式の石炭火力は止めるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
先ほど少し言及しましたその対策パッケージにおける供給面の対策として、新設火力の最低出力について、現行の50%から30%に引き下げると。それから、既設の火力についても同等の引下げを求めることとしております。こうした対策の実効性を確保するために、2024年度中のガイドラインの改定を待たず、本年9月に資源エネルギー庁から発電事業者に対して協力依頼の文書を発出しております。今後、審議会において状況のフォローアップを行うなどしながら、各社における対応を徹底していきたいと考えております。
そして、御指摘の石炭火力についてでありますが、他の火力発電と同様に、停止した場合に再起動に時間を要するために、出力制御が発生する昼間に停止をすれば太陽光などの発電がない夕方から夜間にかけて安定供給に支障が生じる可能性もあるということでありますので、このため完全に停止することは困難でありますけれども、再エネの出力制御のその量の抑制に向けて最低出力の確実な引下げを求めていきたいというふうに考えております。
○岩渕友君
COP28でも、いつまでも化石燃料にしがみついているというその姿勢に世界から厳しい批判が寄せられているわけですよね。そのCOP28で日本は既に二回も化石賞を受賞しているわけです。その受賞理由は、岸田首相が演説で世界の脱炭素に貢献をするんだと、こういうふうに言いながら石炭火力でアンモニアを混焼する方針を掲げている、そして石炭火力を使い続けるということを宣言したからです。さらに、このアンモニア混焼を東南アジアの国々に売り込むアジア・ゼロエミッション共同体を拡大する意向を明らかにしたということも、東南アジアの国々の再エネへの移行を遅らせるんだということで厳しく指摘をされています。
出力抑制での原発の扱いについてどうなっているのかと伺いたいんですけれども、優先給電ルールに基づく対応では、原発を含む長期固定電源の出力抑制は最後ということになっています。原発の出力抑制を行った実績はあるでしょうか。
○政府参考人(久米孝君)
お答え申し上げます。
原子力につきましては、水力や地熱と同様に、現状では短時間での出力制御は難しいという技術的な特性等がございますため、優先給電ルールにおいて太陽光や風力よりも後に出力制御をすることとしてございます。その上で、原発の出力を下げて出力制御を行った場合、出力が回復するまでの間、代替の火力発電で需要を賄う必要があり、CO₂やコストが増加するといった課題もございます。
そういったことも踏まえまして、これまでのところ、我が国で原子力の出力制御を行った実績はございません。
○岩渕友君
今の答弁にあったとおり、実績はないということなんですよね。
国際的に見ると、このベースロード電源という考え方は古くなっています。日本では出力抑制は技術的に困難だというふうになっているんですけれども、フランスでは日常的に行われているというんですね。ドイツでも行われてきたと。日本と何が違うかというふうに言えば、再エネを中心に据えるかどうか、ここが重要になっています。ドイツなどでは限界費用の高い順に出力抑制が行われています。現状では再エネだけが電力会社の止めたい放題になっているということです。
内閣府の再生可能エネルギー等規制等総点検タスクフォースというものがありますけれども、ここでも、停止費用が高い電源には発電継続を認め、起動、停止費用が低い再エネを出力抑制し、しわ寄せしているというふうに指摘をされて、負の市場価格を導入し、現行の優先給電ルールに基づく出力抑制を徹底的に廃止することが提言をされています。これを真剣に検討をするべきです。
資料の三を見ていただきたいんですけれども、これは広島県福山市内の方の事例なんです。再エネの出力抑制によって電力購入金額が大きく減少をしています。個人も事業者も出力抑制が増加していることで収入が激減をして、返済、融資の返済も困難になっていると。実際に太陽光発電施設の売却が急増をしているんだという報告を受けています。同様の出力抑制が続けば今後10年の売電収入が2億から3億円吹っ飛ぶとか、九州電力管内では、電力12万円販売しても、実際入金は2万円のみなど、その事業の見通しが持てずに手放さざるを得ない事業者も増えています。
大臣、これでは再エネの導入を増やすことができないと。出力抑制した分を補償するべきではないでしょうか。
○国務大臣(西村康稔君)
再エネの出力制御は、供給が需要を上回ると見込まれるときに電力システム全体の安定供給を支えるべく、需給のバランスを保つために行われるものであります。
まずは、地域間の連系線を活用した市場取引を通じて余剰再エネを広域的に最大限活用していくと。その上で、地域内の蓄電池それから揚水によって余剰電力を有効活用する。さらには、先ほど来御議論になっております地域内の火力の出力を最大限制御するということ。そして、地域間連系線を通じてもちろん他地域にも送電をすると。それでもなお供給が需要を上回る場合に再エネを出力制御するものであります。
そして、上記のようなこうした工夫をしてもなおエリア全体で電気の余剰が発生している場合に、余剰電力を供給することができず経済的価値が付かない状況であり、国民負担により余剰電力に補償するということは妥当ではないと考えております。
なお、この発電事業者と一般送配電事業者の系統接続時の契約においても、出力の制御により生じた損害を補償しないということになっております。
ただ、いずれにしても、一方で再エネの拡大を図っていかなければなりませんので、出力制御量を可能な限り抑制することは重要でありますので、先ほど申し上げた、年内に取りまとめる出力制御対策パッケージに基づいて対策を徹底していきたいというふうに考えております。少しでも出力抑制がないように取り組んでいきたいというふうに考えております。
○岩渕友君
FIT制度で優遇しているじゃないかというような話もあるんですよ。でも、元々FIT制度は、再エネ事業者の内部収益率を一定にするという原則に基づいて買取り価格や買取り期間を定めた制度です。出力抑制に対する補償がなければ、その前提が崩れてしまうということなんですね。
原発事故の後、危険な原発ではなくて、脱炭素に逆行する火力発電でもなくて、再エネで地域経済に貢献をしたいという思いで取り組む方の話を伺いました。地域に貢献したいということで基金を拠出していたんだけれども、困難になったという声も聞いています。出力抑制をするということは、こういう方々の思いを踏みにじることにもなるんですよね。
先ほど紹介をした内閣府のタスクフォースの再エネ提言が、現行の優先給電ルールは、停止費用が高い電源ほどより有利な投資収益をもたらす効果を持っている、このため、結果的に原発など長期固定電源の投資対象としての評価を再エネに比べ有利にしていると指摘をしているとおりなんですね。一方、原発は、GXの電源法によってこれまで以上に事業環境整備が進められているということで、再エネの投資対象としての評価を更に下げることになります。これでは、幾ら再エネの主力電源化というふうに言っても、再エネ導入を増やしようがないんですよね。再エネに取り組んでいる方々が事業から撤退をする、退出をせざるを得なくなるような事態は絶対に避けるべきです。
経済界からも日本の脱炭素の姿勢に注文が付けられているというような報道も今日されていましたけれども、原発から撤退をして、石炭火力発電を廃止をして、再エネの主力電源化にふさわしいエネルギー政策への転換を求めて、質問を終わります。