2021年3月25日(木) 参議院 内閣委員会
「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案」
日本共産党の岩渕友議員は25日の参院内閣委員会で、東京電力が柏崎刈羽原発(新潟県)で核物質防護設備の故障を1カ月以上放置していた問題を追及しました。
原子力規制委員会は24日の会合で東電に対する措置命令の方針を決定。措置命令への認識をただした岩渕氏に、更田豊志委員長は「(今回の事案は)命令を出さざるをえないような重大な事案であり、かつ深刻」「起きたことに至るまでの管理体制、原子力事業を運用する組織としての姿勢そのものが問われている」と答えました。
岩渕氏は「原発事故を起こし、事故の反省がみじんも感じられないほど10年間トラブルを繰り返してきたのが東電だ」と厳しく批判しました。
衆院審議で日本共産党の藤野保史議員が設置許可の取り消しを求めたのに対し、更田氏は「議論が出てくることは否定しない」と答えています。「今も変わりはないか」とただした岩渕氏に、更田氏は「現時点で将来設置許可の取り消しをする可能性を否定するものではない」と答えました。
岩渕氏は「東電には原発を運転する資格がない。設置許可を取り消すべきだ」と強く求めました。
(赤字部分のリンクから別ウィンドウで開きます)
質問資料 日本原電 東海第二原発 周辺図【PDF版】【画像版】
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
2021年3月25日(木) 参議院 内閣委員会
「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案」
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
冒頭、規制委員長にお聞きをいたします。
東京電力柏崎刈羽原発で、核物質防護設備の一部喪失が少なくても一か月以上にわたって継続をしていたという、あってはならない大問題が起きました。原子力規制委員会は、昨日、是正措置命令を出すということを決定しています。昨日の決定について簡単に御説明をいただきたいということと、加えて、更田委員長が、原子力規制委員会発足後最も重大な判断だと、東電の姿勢が問われていると、このように指摘をしていますけれども、今回の問題の認識について伺います。
○政府特別補佐人(更田豊志君) お答えをいたします。
昨日の委員会におきまして、核物質防護に関して柏崎刈羽発電所で重大な問題があったことを受けまして、行政処分として何か命令のようなものをということで議論をいたしました。その際、設置許可の取消し、一年以内の運転停止命令、それから核物質防護に係る是正措置、保安規定の取消し、核物質防護規定の取消し、こういった選択肢を挙げて議論を行いました。その議論の結果、是正措置として、柏崎刈羽に、検査区分が一という言い方ですけど、通常の状態に戻ったと確認されるまでの間、核燃料の移動を禁じるという命令を出すという方針を了承いたしました。今後、手続を経て正式に命令を出すことになります。
今回の事案についての認識ですが、重大な事案であって、かつ深刻であると考えています。具体的に起きたこともそうですけれども、その起きたことに至るまでの管理の体制であるとか原子力事業を運用する組織としての姿勢そのものが問われる事案であると考えていて、そういった意味で重大であると考えていますし、今回方針を決定した命令にしても、こういった具体的に核燃料の移動を禁ずるというような命令を出さざるを得ないような重大な事案だというのが原子力規制委員会の認識でございます。
○岩渕友君 重大、深刻ということですけれども、全くそのとおりだというふうに思います。福島第一原発事故を起こして、事故の反省がみじんも感じられないほど、この十年間トラブルを繰り返してきたのが東京電力です。
更に委員長にお聞きするんですが、三月十八日の衆議院原子力問題調査特別委員会の連合審査会の中で、我が党の藤野保史議員が設置許可の取消しについて質問をした際に、更田委員長は、そういった議論が出てくるということは否定をしないというふうに答弁をしています。この立場に変わりはないということでよろしいですね。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 設置許可の取消しに関しても、現時点でそれを、将来設置許可の取消しを行うという可能性を否定するものではありません。これは今後の検査の結果次第でありますし、また東京電力の分析並びにその是正計画、その実行によるものだというふうに考えております。
○岩渕友君 否定するものではないという御答弁でした。
東京電力にはもう原発を運転する資格がないということは明らかです。設置許可の取消しをするべきだということを強く申し上げておきます。
この問題は、本法案の審議にも関わる問題です。原子力発電施設等立地地域振興特別措置法は、一九九九年のジェー・シー・オーで発生した臨界事故を受けて、全国の原発立地地域が原発の新増設に慎重になっていたこと、立地自治体から電源立地地域対策交付金等のほかにも地域振興策を望む声が上がっていたことを背景に、二〇〇〇年の十一月に議員立法で成立をし、二〇一〇年に延長もされています。今回の改正というのは、二〇一一年の三月十一日に発生をした東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後初めてとなります。
私は福島県の出身なんです。福島県は、原発事故によって最大十六万人を超える方々が避難をして、五万人を超える方が自主的に避難をしたというふうに言われています。県の発表でも、今も約三万六千人の方々が避難生活を強いられていて、少なくても、避難されている方、八万人超えていると言う方もいらっしゃるんですね。
今も続いているこの原発事故の被害について、大臣、どのように認識をされているでしょうか。
○国務大臣(井上信治君) 委員も福島御出身ということで、ふるさとに対する大変強い思いがあることと思います。私も、この原発事故の対応の環境副大臣というのを三年やっておりまして、それ以来、もう福島には数百回と通ってまいりました。昨年も、昨年末に双葉町の帰還困難区域ちょっと見てまいりました。
そういう意味では、十年たって着実に一歩ずつ前に進んでいる部分もあれば、しかし他方で、委員がおっしゃるように、まだ三万六千人の方が避難生活を余儀なくされているということで、そういう意味では、これは原発の廃炉も含めて考えると、まだまだどうしても時間が掛かってしまうということで、ここはもう政府が一丸となってしっかり取り組んで、そして一日も早い福島の復興、また原発事故の克服、これに実現するように取り組まなければいけないと思っています。
○岩渕友君 まだまだ時間が掛かるというお話でしたけれども、被害もまだまだ続いているということなんですね。被害者の生活となりわいの再建はこれからです。
福島第一原発では、このほかにも汚染水の問題やデブリ取り出しの見通しが立たなくて廃炉も見通せないという状況でもあります。原発事故後、原発の再稼働に反対する世論と運動が大きく広がって、どの世論調査を見ても、再稼働反対だという声が賛成を上回る状況になっています。原発事故後、十八基の原発の廃炉が決定をして、二〇一九年度時点の日本の発電量に占める原発の割合は僅か六%にしかすぎないという、こういう状況なんですね。ところが、本特措法案は、法律の期限を十年延長するということ以外に見直しを行っている部分がないんですよね。
原発をめぐる情勢が前回の延長時とはもう根本から変わっているという、こういう認識は、大臣、おありでしょうか。
○国務大臣(井上信治君) 原発のエネルギー政策そのものについては、私も所管外ではありますけれども、やはりその上で申し上げれば、福島の原発事故という本当に深刻な事故を経験していろんなことが変わってきたというふうには認識をしております。いわゆる安全神話といったことが覆されて、そしてこのままではいけないということで、原子力発電についても、とにかく安全最優先ということで、原子力規制委員会、委員長つくって、そしてその安全性を最優先にという中で原子力政策を進めているというふうに思っております。
ただ、他方で、この立地特措法に関しましては、これは原発政策そのものとは別に、いずれにせよ、今の状況の中でやはり立地地域に対する支援は必要だと、そして防災インフラの整備あるいは地域の振興は必要だということでこの法律ができておりますから、そのことについては御理解いただきたいと思います。
○岩渕友君 今、安全神話に陥っていたという話ありましたけれども、もしそういうふうに思うのであれば、これ、するべき規制を行っていなかったと、その責任を認めるべきだということだと思うんですね。責任を認めて、今全国で起きている原発訴訟をめぐる裁判いろいろありますけれども、控訴や上告なんて国はやめるべきだということなんですよ。
安全神話に陥っていたと言いながら、特措法第一条の目的は、この法律は、原子力による発電が我が国の電気の安定供給に欠くことができないものであることに鑑みというふうになっているんですね。
目的が何も変わっていないことが安全神話そのものだと思うんです。これ、当然目的を変えるべきではありませんか。
○国務大臣(井上信治君) そういう意味では、この特措法の目的規定にはやはり防災へ配慮ということがしっかりと書かれておりまして、この防災への配慮ということに関しては、これは原発事故の前と後でも変わるものがないというふうに思っています。
ちなみに申し上げれば、原発関係の法律たくさんありますけれども、この福島事故の経験を踏まえた上で目的規定を変えてその趣旨を入れているということは、法律はないというふうに承知しています。
○岩渕友君 あれだけの事故があったわけですよね。あんな事故は起きないという、そういう前提でいるということが新たな安全神話だというふうに思うんですよ。
これ、防災インフラの整備の後押しのために支援措置の継続が必要だというんですけれども、この防災インフラの整備が事故前と同じでいいのかということ問われると思うんです。
原発事故を受けて避難計画の範囲はどのように変化をしたでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 原子力規制委員会は、平成二十四年十月に策定した原子力災害対策指針におきまして、予防的防護措置を準備する区域、PAZですが、おおむね半径五キロ以内、緊急防護措置を準備する区域、UPZですが、これをおおむね三十キロメートルと定めております。
このPAZが三キロから五キロ、UPZが五キロから三十キロというのはIAEA等が示している値を参考にしておりまして、また、福島第一原子力発電所事故が発生したときの際の被害の状況等も考慮に入れて策定をしたものであります。
○岩渕友君 原子力災害重点区域については半径三十キロの範囲にということになっていて、避難計画はこの重点区域を基に作られています。
資料を御覧ください。
避難計画に関わって、三月十八日、日本原子力発電の東海第二原発の運転差止めを命じる判決が水戸地裁で出されています。東海第二原発は福島原発事故で被災した原発の一つであると同時に、運転開始から四十年以上が経過をしている老朽原発です。
判決は、原発の安全性について判断する枠組みについて、深層防護の第一から第五までのレベルのいずれかが欠落し、不十分なことが具体的危険であるとし、第一から第四までのレベルについては看過し難い過誤、欠落があるとは認められないというふうにしたものの、避難計画などの第五の防護レベルについては、原子力災害重点区域であるPAZ、UPZ内の住民が九十四万人にも及ぶにもかかわらず、実現可能な避難計画、これを実行し得る体制が整えられているには程遠い状態であって、この区域内に居住する原告には人格権侵害の具体的な危険があると、こういうふうに判断をしています。
東海第二原発が立地をする東海村の元村長である村上さんは判決を受けて、事故は起きるという前提で考えるべきで、三十キロ圏内の九十四万人が安全に避難できる計画作りなど不可能だと思ってきた、司法も同じ判断をしたということだろうと、こういうふうに述べています。
そもそも、これだけの人口密集地に原発を立地していることが問題ですよね。そして、村上さんがおっしゃるとおり、安全に避難できる計画作りなど不可能だと。仮に避難できたとしても、その避難先というのは住んでいたところとは全く違うんですよね。ふるさとをもう剥奪するのが原発事故なんですよ。それを示したのが福島の事故です。まさに事故は起きるという前提で考えるべきだということです。福島原発事故を見れば、放射線は同心円状に広がるわけではないし、三十キロ以上は広がらない、こんなことはないわけなんですよね。
原発事故後、規制委員会は、原発の安全対策で国際基準となっているIAEAの五層の深層防護に基づいて新規制基準を作っています。IAEAの五層の深層防護について、簡潔に説明してください。
○政府特別補佐人(更田豊志君) 深層防護は一般的な概念ですので必ずしも五層の概念だけではないんですけれども、IAEAが示している五層の深層防護というのは、一つの脅威に対して多重の対策を設けていく、それぞれをレベルに分けています。深層防護の考え方は、一つのレベルを考えるときにその前のものは突破されると考えて対策を考える。これは準備段階の考え方ではありますけれども、例えば故障は起きるものとして次の対策は考える。それから、ミスは、人のミスというのは起きるものなどとして次の対策を考える。防災計画について言えば、委員がおっしゃっているように、事故は起きるものとして考えるというのが第五層に対する深層防護です。
ちなみに、IAEA、一の、最初のレベルは異常の発生防止、二番目は異常が発生したときの事故への拡大防止、三層目は、これは一定の範囲内の事故ですけど、事故の回避とその収束、第四層が新規制基準の一番新たに加えたところで、炉心が溶けてしまうような事故の回避と起きてしまった場合の緩和について定めたのが四層目、そして御指摘の判決等でおっしゃっている第五層の深層防護と言われているのが防災計画に相当いたします。
○岩渕友君 第四層が破られて原発から大量に放射性物質が漏れた場合には、第五層の防災計画、避難計画が発動されるということです。
この避難計画の妥当性については、どこが判断をするのでしょうか。
○政府特別補佐人(更田豊志君) まず、防災計画の策定は、地方自治体が防災計画の策定を行うことになっています。この防災計画策定に当たっては、内閣府の原子力防災等が協力をして計画を策定して、ことになり、その実効性については地域協議会というところで確認をしているというふうに理解をしています。
○岩渕友君 自治体に任されていて、国はきちんとは責任持っていないということなんですよ。
原発事故を受けて、本特措法による振興計画や事業はどう変わってきたのかということを見ていきたいんですけど、二〇一九年度末でどのぐらいの防災インフラ事業が整備中でしょうか。このうち、避難道路に関わる事業はどのぐらいあるでしょうか。
○政府参考人(柳孝君) お答え申し上げます。
原子力立地地域特措法はこれまで多くの立地地域で活用されており、現在も、令和元年度時点で避難道路を始めとする百二十六件の防災インフラ整備への支援に重要な役割を果たしております。そのうち、避難道路を整備する事業は百七件でございます。
○岩渕友君 今、避難道路百七件というふうにありました。事前に配られた表にもそうあったんですけど、これ、道路の全てが避難道路だったかというと、これ結果としてそうなったということだと思うんですよ。
衆議院で、振興計画出してほしいということを我が党求めてきているんですね。ようやく昨晩、私の部屋にも届いたんですよ。それを見ると、避難道路というふうには道路のところを見てもなっていないわけなんですよね。特措法の立地地域の中には、半径三十キロ圏内が入っていないところもあります。
大臣は、防災インフラ整備の支援だということを繰り返しおっしゃっているわけですけど、避難計画は半径三十キロ圏内となっているのに、このこととリンクしていなくていいのでしょうか。
○国務大臣(井上信治君) 三十キロ圏内についても、確かに全て入っているわけではありませんけれども、入っている地域もかなりあって、そのことによって適切な支援が行われているというふうに理解をしております。
立地地域の指定に関しては、これは法に基づいて地域の道府県知事が申出をして、そしてそれを総理大臣が指定していくといったような手続になっておりますので、そこは知事の方が適切に判断をした上で申出をしていただくということだと思います。
○岩渕友君 防災インフラ整備だというわけですよ。そのための法改正だというんだけれども、実際には原発事故後の新しい事態に対応していないという実態あるということなんですね。
三月十四日付けの河北新報は一面で立地特措法について報道しています。特措法の恩恵を受ける自治体の範囲は道府県で差があって、東北で対象地域を持つ青森、宮城、福島では追加の地域指定に関心が高まっているというふうに書かれています。
青森、宮城、福島の特措法の対象地域数についてそれぞれ答えてください。
○政府参考人(柳孝君) お答え申し上げます。
特措法に基づき指定されている立地地域につきましては、青森県は十二市町村、宮城県は二市町、福島県は十四市町村でございます。
○岩渕友君 このうち青森と福島は、原発三十キロ圏内はもとより、原子力施設の立地自治体と隣接しない自治体まで広範囲に指定をされているわけなんですね。でも、一方、宮城県は今でいう女川町と石巻市だけになっているんです。UPZ内でも対象外の自治体があるんですよね。
女川原発二号機の再稼働をめぐっては、多くの県民が反対をしているにもかかわらず、知事、立地自治体である石巻市長と女川町長の同意をもって地元同意だというふうにされてしまっているんです。
これ、防災インフラの整備ということから考えれば、宮城県も対象地域が広がるということになるんでしょうか。
○国務大臣(井上信治君) 立地地域の指定については、先ほど申し上げたように、道府県知事が申出をしまして、そしてその立地会議での審議を経て総理が指定をしていくといったような手続になっております。その際、国の方も政省令やあるいは通知ということで一定の言わば基準を設けておりまして、それを参照にして知事の判断で申出をしていただくということになって、その結果、今の三県の状況になっているんだと思っています。
もしこれを変更すべきだといったような道府県知事の申出があれば、それは当然適切に対応するということになります。
○岩渕友君 やっぱり新たな事態に対応はしていないということなんですよ。
女川原発から三十キロ圏に掛かっている美里町の相沢町長は、事故が起きても広域避難が安全にできるとは言えないと反対意見を述べています。この声に応える状況になっていないということなんですね。防災インフラ整備と言いながら、結局、立地地域も変わらないままずっと来ているんですよ。立地会議そのものがもう十年以上開催されていないわけなんですね。
本特措法による財政支援を受ける事業は、都道府県知事が計画案を作って、内閣総理大臣が原子力立地会議の審議を経て振興計画決定するということになっています。変更する場合にも同様の手続が必要です。
本特措法に基づいて指定された立地道府県で振興計画が決定されたのはいつか、また見直しがいつ行われたか、お答えください。
○政府参考人(柳孝君) お答え申し上げます。
各道府県の振興計画の策定状況については、福井県、島根県につきましては平成十四年三月十二日、愛媛県につきましては平成十四年十月十八日、青森県、宮城県、茨城県、新潟県、鹿児島県、石川県、静岡県、大阪府、佐賀県につきましては平成十五年四月一日、北海道、福島県につきましては平成十六年三月二十二日に決定されている状況でございます。
なお、振興計画の見直しにつきましては、これまで行われてございません。
○岩渕友君 今答弁いただいたとおりなんですよ。直近で振興計画が決定をされたのは平成十六年だと、つまり二〇〇四年だということなんですね。見直しも、先ほど確認をしたように、行われてきていないと。だから、防災のためだと言いながら、結局これだけ長い間、そして原発事故も経ているのに何にも変わっていないということなんですよね。
しかも、先ほども言いましたけれども、衆議院でこの振興計画、提出してほしいというふうに求めていたわけですよ。それが提出をされずに、ようやく昨晩、私のところに届くわけですよね。でも、求めていた衆議院の審議はもう終わっちゃっているわけなんですよ。さらに、特措法七条、八条、十条による財政支援について、特措法施行後の年度別、自治体別の額も、これ、衆議院でもう五か月近く前からずっと求めてきているんですけど、提出されていないんですね。
これ、法改正だと言うんですけど、これらが示されなかったら、事業や財政支援どうだったのかということを検証できないんじゃないでしょうか。
○国務大臣(井上信治君) 実績の件につきましては、令和元年度までの十年分については、道路、義務教育施設等の事業別かつ十四の立地地域の道府県別の表の形でホームページに公表を行っています。
他方、法施行以来の詳細な実績については、立地自治体における確認に時間を要することから公表に至っておりませんけれども、今後作業を進めて、可能なものから順次公開していきたいと考えています。
○岩渕友君 今後と言うんですけれども、法案審議のやっぱり大前提なわけですよね。だから、普通だったら、法案審議する前に出してもらって、それを見ながら議論するというのがこれ当然のことだと思うんですよ。
さらに、企業誘致だというふうに言うわけですけれども、どんな企業がどこに進出をしていて、どんな効果があったのか、これも是非とも示してほしいんですよ。いかがでしょうか。
○国務大臣(井上信治君) 企業誘致に関して、不均一課税、この制度について、実績については、令和元年度は八億四千万円、それまで直近五年間の平均で七億六千万円と。また、支援対象件数については、令和元年が三百九十件、それまで五年間の平均で約四百件の支援を行っております。
企業に関しては、いろいろ個人情報等々もありますので、そういったことをしっかり確認した上で、問題がなければ公表するということになります。
○岩渕友君 問題がなければ公表をするということなんですけど、これやっぱり国が関わっているわけですよね。だから、やっぱり国民の皆さんにも明らかにしなくちゃいけないと思うんですよ。
今、金額についても件数についてもまとめて答弁されたわけなんですけれども、やっぱりそれ、中身が詳細に分からなかったら、さっきと同じことで、これ、法案の審議の大前提の問題になるわけですよね。出てこなければ十分な審議できないということだと思うし、この実績と効果が分からなかったら検証できないということだと思うんです。
委員長にお諮りしますけれども、本特措法が施行されて以降の特措法第七条、八条、十条による財政支援について、年度別、市町村別の具体的な実績を本委員会に提出するよう求めます。
○委員長(森屋宏君) 後刻理事会において協議いたします。
○岩渕友君 いわゆる電源三法に基づく交付金や補助金が原発や核燃料サイクル施設が立地する自治体に限定されているのに対して、本特措法は、範囲を立地自治体に加え、周辺自治体にまで広げています。立地自治体のみならず、周辺自治体が原発依存から抜け出す妨げとなって、財政的に自治体の原発依存体質を温存させるということになります。
関西電力の原発が立地をしている福井県の高浜町、おおい町、美浜町の二〇二一年度当初予算案、これ出されていましたけれども、これはいずれも原発関連の国の交付金などが一般会計歳入見込みの五〇%前後を占めるということが分かったんですね。
原発関連の歳入には、発電所の固定資産税、原発立地地域対策交付金、核燃料税交付税、寄附金などいろいろなものがあるわけですけれども、高浜町は約六十四億円で、全体に占める割合は五二・九%にもなると。おおい町が最も多くて、約六十五億円で五五・六%。そして、美浜町が約四十二億円で四八・六%というふうになっているんですね。
高浜町の野瀬町長がこんなふうに言っています。公共施設の統合などを進めないといずれ破綻すると、今のうちに中長期的な課題を考える必要があると、こういうふうに言っているんですね。美浜町の戸嶋町長も、原発以外の企業誘致や農業の人材育成などで町づくりを進めたいと、こういうふうに述べているんですね。だから、町長さんたちももういろいろ悩んで考えているということなんですよね。
原発立地市町村の普通建設事業の割合というのはすごく大きくて、結局、土木に偏る産業構造がずうっと続いているということになっているわけですね。財政的に原発依存をせざるを得ない状態から抜け出すためにも、これ原発ゼロを是非とも決断するべきだし、市民や地域が主体となった再生可能エネルギーへの転換こそ必要です。
そのことを強く求めて、質問を終わります。
2021年3月26日(金) 参議院 内閣委員会
「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案」討論
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特措法の一部改正法案に反対の討論を行います。
本法案は、二〇〇〇年に成立、二〇一〇年に期限延長となった本特措法を更に十年延長するというものです。
二〇一一年に起きた東京電力福島第一原発事故によって、原発をめぐる状況は一変しました。とりわけ、安全神話が崩壊し、原発は事故が起きることを想定した立地地域の対策が求められています。その認識に立った検証を何もせずに、原発が電力の安定供給に不可欠とする法の目的もそのままに十年もの延長を行うことは、原発再稼働と核燃料サイクル政策の推進につながるものだと言わなければなりません。
本特措法に基づく各県の振興計画は非公表とされていて、参議院での審議が始まってから初めて一部の議員に提出されました。質疑では、振興計画によってあたかも避難のための道路や施設の整備が行われているがごとくの答弁がありましたが、振興計画には原子力防災や避難についての具体的な記述は皆無です。この計画に基づいてどのような財政支援がなされたかも全く分かりません。
しかも、各県の計画は、二〇〇二年から二〇〇四年にかけて作成された後、一度も見直しが行われていないことも明らかとなりました。事故が起きないという安全神話の上に、事業所集積、基幹道路や箱物の建設への財政支援が原発推進とともに行われてきたと言わざるを得ません。これらは、立地周辺自治体の原発依存を温存し、いわゆる原発麻薬から抜け出す妨げにもなっています。
これまでも、原発立地交付金など多額の原発推進財源が過大な公共事業や施設整備に投じられてきました。この維持管理費が、今や自治体財政を圧迫しています。福井県高浜町の元助役が長年関電役職員に金品を送っていたという原発マネー還流が明らかになりましたが、原発立地自治体にゆがみをもたらすやり方はやめるべきです。
柏崎刈羽原発でテロ対策が行われていなかった問題で、東京電力は原発事業者としての資格がないと言われる事態です。東海第二原発は、避難計画に実効性はないとして、運転差止めの判決が出されました。
原発立地地域に求められるのは、原発を廃炉にすることで住民の命と故郷を守ること、現実的な避難計画を持つこと、そして原発に頼らずに地域と産業の振興を支援することです。そのために我が党も力を尽くすことを表明し、反対討論を終わります。
○委員長(森屋宏君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
○委員長(森屋宏君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。