(会議録は後日更新いたします)
参院国民生活・経済調査会は18日、子ども・若年者をめぐる格差への取り組みについて参考人質疑を行いました。
日本共産党の岩渕友議員は、6野党共同で提出した「子どもの生活底上げ法案」を紹介し、憲法25条や、子ども・若年者の貧困をめぐる問題が引き続き大きな焦点であると主張。東京都足立区が子どもの貧困対策について「実施計画」を策定し取り組むなかで、自治体の努力だけでは解決せず、国の責任で行う必要があると考えている問題について質問。参考人として出席した秋生(あきう)修一郎・同区地域のちから推進部長は「所得や労働対策は、国がきちんとやらないと難しい。(自治体への)財政的支援をやってほしい」と述べました。
また岩渕氏は、参考人の阿部彩・首都大学教授が、子どもの貧困は教育や福祉政策のみで解決できず、労働、医療、住宅など多岐の政策の結果として現在の貧困・格差社会が生み出され、子どもたちに影響が出ていると述べていることをあげ、あらためて労働問題についての認識を問いました。阿部氏は「非正規増加だけではなく、長時間労働など労働条件全体の問題もある」と応じました。
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○会長(増子輝彦君) 国民生活・経済に関する調査を議題といたします。
本日は、「あらゆる立場の人々が参画できる社会の構築」のうち、「豊かな国民生活の実現」に関し、「子ども・若年者をめぐる格差への取組」について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
御出席をいただいております参考人は、足立区地域のちから推進部長秋生修一郎参考人、矢吹町教育委員会子育て支援課長山野辺幸徳参考人及び首都大学東京人文社会学部人間社会学科教授阿部彩参考人でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
御多忙のところ本調査会に御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
本日は、皆様方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。
本日の議事の進め方でございますが、まず秋生参考人、山野辺参考人、阿部参考人の順でお一人二十分程度御意見をお述べいただいた後、午後四時頃までを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いいたします。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、秋生参考人からお願いいたします。秋生参考人。
○参考人(秋生修一郎君) 足立区の秋生でございます。よろしくお願いします。私、下町の育ちなので、時々言葉が乱れるかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。(資料映写)
足立区、どんなところかというのは、お手元の資料にございます。「未来へつなぐ あだちプロジェクト」、子供の貧困対策の実施計画をこのような名前で呼ばせていただいております。足立区の位置、人口、面積、財政状況の資料でございます。
何で足立区が子供の貧困対策に取り組んできたのかというところのお話ですが、お手元のこのページが足立区が持たれているイメージ、少し前の話になるんですが、街頭インタビューをしたときのイメージです。
現首長、区長、任期今三期目なんですが、一期目から様々な課題取り組んできて、その中で二期目になるときに、足立区にボトルネック的課題があると。これを解決しないと正しい評価が得られない、どんなにいい政策を打ってもなかなかイメージ、先ほどのこのようなイメージを抜け切れないということで、ボトルネック的課題として、治安、学力、健康、貧困の連鎖というボトルネック的課題を設定し、それぞれ取り組ませていただきました。
例えば治安ですけれども、警視庁から発表される犯罪認知件数については市町村別に、二十三区の区別に出ます。ただ、人口、面積、規模に関係なく総件数で公表されるので、どうしても総件数が多いと危ない町ではないかというような評価を受けてしまうと。いや、人口規模にすると、面積規模にするとといっても、マスコミに発表されるのは総件数だけですから、何となく言い訳に聞こえてしまうと。であれば、総件数を減らすしかないんでしょうということでいろいろ取組を始めさせていただきました。
地域と組んでいろんなことを、ビューティフル・ウィンドウズ運動という形でいろいろやらせていただきましたけれども、それで改善の兆しが見えてきている。体感治安も改善してきている。
学力についても、全国学力テストの結果が二十三区の中で一番低いみたいなことをちらっと言うと翌日に新聞記事になってしまうとかいうような話の中で、取組は、いろんな取組をして基礎学力の定着なり何なりと、取組をして成果は現れてきています。
健康についても、平均寿命が二十三区の中で一番短いと。事実ですが、それについても総花的にやるのではなくて、糖尿病に特化して取り組もうと。野菜から食べようと、ベジファースト、一口目は野菜というような取組をすることによって、ヘモグロビンA1cの値七%以上の区民の割合が確実に減ってきているというような取組のいろんなものが成果を見せてきています。その結果で、足立区を誇りに思うという区民も増えてきている。
このような結果が出てきてはいるんですが、国が子供の貧困対策大綱を発表した段階で区の方でもいろいろボトルネック的課題に取り組んできたけれども、その成果は現れてきているけれども、もしかしたらそれは対症療法的なものによって現れてきている数字かもしれないと。元々その根っこでつながっているのが貧困の連鎖、世代を超えた貧困が連鎖をしている、親から子へ、子から孫へというその連鎖のところが実は根本的な課題だったのではないかという意識の下に、トップから、子供の貧困対策について、法的には市町村には計画の策定の努力義務も何もありません、都道府県には計画の策定努力義務がございますけれども、区としてもこれは取り組まなきゃいけないと、本腰を据えて取り組まなきゃいけないという決断をしたことで子供の貧困対策の取組が始まったと。子供の貧困の連鎖を断つことが足立区の将来につながるんだということの意識でございました。
区の状況はそうですが、もう既に皆さん御存じのとおり、これは日本財団が推計した、二〇一三年時点で十五歳の子供、その世代だけで、いろんな介入をした場合と現状の場合の経済的損失二・九兆円、税収も含めて一・一兆円、四兆円の減、社会的損失のある社会的な問題ですよということが出ております。
もう一つ、これは大阪大学の志水宏吉先生、教育社会学の先生ですが、よくマスコミ等でも取り上げられている経済資本、所得と学力が連動する云々という記事を目にしますけれども、決して所得だけではないと。学力のことでお話をさせていただいておりますけれども、経済資本が学力に影響するのと同じぐらい、親の社会関係資本、要するにコミュニティーだとかつながりだとかそういうもの、文化資本、本を読める環境にある、博物館や動物園に行かれるなりなんなり、そういう経験のものも含めて、学力に経済的なものだけではないと、こういうものです。
子供の貧困についても同じようなことが言えるということで、私どもとしては、経済資本、社会関係資本、文化資本。経済資本、所得だとか雇用については、実は市町村レベルで取り組めるものはそんなにいっぱいはないかなと。何もできないわけではないんですが、やはり国の税制なり社会保険、保障制度そのものだったりというところの部分が大きいと思っています。市町村レベルでできることということで、社会関係性資本だとか文化資本、経験、体験、つながり、この辺を通して子供の貧困対策に取り組んでいこうということになります。
計画を立てる段階で、足立区は細かい基礎調査をしたわけではございません。ただ、今持っている情報の中から子供の状況って分かるのではないかという資料がこの辺のものです。
就学援助率ですとか、児童扶養手当についても所得制限がございますので、その受給状況、あるいは学力の足立区の中の状況。高校は都道府県立がほとんど、公立は、ですけれども、都立の高校、区内にある都立の高校の中退率、中退者数だとかそういうものです。
それから、虫歯についても、東京二十三区って競うように子供の医療費の無料化、しかも現物給付、償還払いではなく現物給付でやってきましたので、虫歯について、一年生の段階で虫歯の判定を受けた子供がこれだけあるわけですけれども、未処置の子の割合というのがこれだけまだ残っていると。医療費がただでも、虫歯を未処置のまんまという現実があると。これ、いろいろあったんですが、保健師に関わってもらって、行った家庭については、親にいろいろ話すると、親から返ってきた言葉が、どうせ乳歯なんでしょう、抜けちゃうんでしょう、だから行かなくてもいいと思っていたと、自分もそうやって育ってきたというような親だった。あるいは、前歯五本以上ぼろぼろになっている子供の家に行って親に会うと、親も同じような状態だったと。まさに、貧困の連鎖、健康格差の連鎖につながるのかなというところです。
何で歯医者に連れていっていないかというお話なんですが、追加の調査を次年度掛けました。そのときに返ってきた言葉が、ただなのは分かっているんです、時間がないという回答だったということです。ただ、都市部にあって、歯医者については、歯科医については土日も営業しているところが出てきています。うちの区内にもございます。平日仕事が忙しくてなかなか時間がないというのも分かりますが、土日に開いているところもあるというところの情報が伝わっているのかどうなのか、あるいは親の気持ちとして大変だからということなのかというところまでは分かり切れていません。
区が取り組んだ「未来へつなぐ あだちプロジェクト」の検討体制ですとか、学識の方にも御協力いただいております。今日一緒に出席いただいている阿部先生始め、先ほどの大阪大学の志水宏吉先生等です。
その中で、計画を作っている中で、一番目、基本理念の一番目が、生まれ育った環境に左右されることなく。よく町場に行っていろいろお話しすると、それは本人の努力が足りないんだよとか、それは親が悪いんじゃないのという言葉を聞きます。でも、先ほどの例、虫歯の例のように、子供がそのまま育ってしまうと、自分で虫歯のままでいいという感覚だと、自分が子育てをするときに同じことをやる。だから、決して子供のやる気スイッチが付いていないわけではなくて、それを、磨いてこなかった云々、それは子供の責任ではないですよね。よく自己責任論と言ってしまいますけど、自己責任論には陥らないという言わば宣言みたいなものです。
二番目、生き抜く力。そうは言っても、子供たち、長い人生の中でいろんな壁にぶつかりますので、それを乗り越える力、それは、目に見えるペーパーテストの学力の点数だけではなくて、非認知能力なりなんなり、経験、体験、つながり、そういうところも大事、そうじゃないとその壁を乗り越えていく力にならないだろうということです。
三つ目は、どうしても貧困という言葉はきついです。経済的な要因だけで捉えられやすい。経済的要因もちろん大きいんですが、それだけで捉えられる、単純な低所得者対策をすればいいというふうに捉えられがちです。以前、NHKが特集で子供の貧困対策をやったときに、その後、女子高生のブログが炎上した云々ということについても、経済的なことだけで見るとどうしてもそういう形になると。我々が取り組んでいるものについては、経済的な困窮だけで捉えないで、孤立だとか健康上の問題など、生育環境全般にわたる複合的な課題として捉えていますよということです。
取組については、どうしても、市町村レベルですので、経済資本よりは先ほど言った予防、連鎖を断つというところに重点を置いている。そのために、早期のきめ細やかな施策、子供のうちから、親を変えていかなきゃいけないのは承知です、でも、そこにばかり資源を投入していると、子供はどんどん成長してしまいます。親を変えるのに十年掛かれば、子供は十歳になっちゃう、十歳の子は二十歳になっちゃいますので、子供にも直接早期の段階からいろいろ関わりを持っていこうということです。
学校プラットフォームということについては、学校も限界がございますので、言わば教員の労働時間云々ということで課題にもなっております。学校だけに全てを任せるのではなくて、学校という場が情報のキャッチアップになる、子供たちが日中、ふだんいる時間が長い時間ですので、そこで変化や何かが把握しやすいという意味で、学校の中だけで解決するのではなくて、外からの力を入れてということになります。
当然、子供の貧困対策、連鎖が止まったかどうかというのは、本当は、ワンジェネレーション、ツージェネレーション、三十年とか三十五年とか七十年とかたたないと結果は見えてきませんけれども、それを少しでも早い段階で把握していこうということになります。そのためには、国は国の役割、都道府県は都道府県の役割、市町村は市町村の役割があるんでしょうと。その中で動いていく、ただ行政体だけでもできないと思っております。それはいろんな価値観の変化、核家族化等あるいは地域コミュニティーの希薄化等いろんな課題が出ておりますけれども、そういうものを踏まえての話なので、地域、NPO、企業にも協力していただかないといけないというように考えております。
あとは、個々の施策についてはどのようなことをやってきたのかの参考資料ですので、個々の事業についてはまたお問い合わせいただければ、少しいろいろお話をさせていただきたいと思います。
もう一つ、全庁体制というのは先ほどございますけれども、どうしても子供の貧困対策というと教育と福祉の間の話だよねという話が出てまいります。そうではなくて、足立区の場合については全庁体制というものを取り組んでおります。窓口をつなぐということもそうですし、例えば町づくりに関わる部分でも、公園でキャッチボール大会をやったことがございます。これは公園の、まあキャッチボールなかなかできる公園がないだとか、あるいは子供たちの投力、投げる力が衰えているだとかいうことを元に、公園が一区画を区切って、近くの学校に呼びかけて、土日で野球連盟と組んでキャッチボール大会やりました。結構にぎわっていました。
授業終わってから公園部隊に、せっかく学校に行くんであれば、例えば、本当に例えばですけれども、母子家庭のうちの男の子、で学校側は分かっているわけで、そういう経験、体験がなるべく少なそうな子に積極的に声掛けてあげてくれませんかというぐらい頼めないかと。別に特別な予算が必要なわけではない、気持ちというかどういうふうに考えるかで済むことなので、そういうことの取組、経験、体験、つながりをつくるという意味では、福祉と教育の世界だけではなくて、環境、産業、町づくり、それぞれのところでできるものがあるでしょうということです。言わば、職員の意識改革というのが後ろに控えておりますけれども、それにも取り組んできていると。その結果で、例えば物づくり展を児童養護施設、一人親家庭、まあ学習支援を兼ねた居場所づくりの子供たち専用の日を設けてもらったりだとかいうようなことも取り組ませていただいています。指標についても設定させていただいています。
それからもう一つ、調査ですが、基本的な調査を計画の段階ではやりませんでしたが、同時並行的にやっております。これは小学校一年生を対象とした基礎調査です。衛生部が取り組んだので、健康の面から、先ほどの、糖尿病で大人になってからでは遅いと、子供のときにどんな状態だったのかを調べるために小学校一年生の全数調査をやりました。それに、子供の貧困対策にも役立てようということで、所得だとかいろんなものを聞いています。
その調査、二〇一五年に小学校一年生、二〇一六年に小学校二年生、一年空けて小学校四年生、今年小学校四年生をやりました。小学校六年生、中学二年生、追跡調査です。この世代の追跡調査。その二というのは、それの比較対象となる一部抽出調査です。追跡調査の間に小学校一年生を一年ごとにやっていく、定点調査です。今年生まれた子供に対して打った施策が、六年後にはその子供たち一年生になりますので、その結果がどうだったかということにも見れる。定点観測と追跡調査と組み合わせてやっているということです。個人情報の取扱い等については、そこに少し記載されております。
この中で、子供の貧困対策との関係ですが、所得等を調査したものの中から、貧困という言葉きついので、生活困難世帯というものを区分けしております。その基準が、年収が三百万未満の世帯、生活必需品の非所有、支払困難、この三つのどれかに当たれば生活困難世帯とみなすと。
例えば、世帯主が五百万なり六百万なり年収あったとしても、それを家庭のために使わないで自分の趣味、ばくち等に使っていると家庭の中にお金が回ってこないということになるので、生活必需品、最低限の貯金五万円以下しかないだとか、家賃だとか光熱費の滞納があるというものが生じてまいります。だから、所得だけで見ないと、実際に家計が回っているか回っていないかというところで見ようという工夫をさせていただいて、生活困難世帯という分類をしています。
足立区の中で、小学校一年生ですけれども、二五%程度ございました。それの中で、その他、非生活困難世帯と生活困難世帯を比較したものがその後です。これを御覧いただきたいと思うんですが、親に相談相手がいるかいないかで子供の心の発達、思いやりや気遣いのある子供の発達の懸念される子供の割合です。親に相談相手がいると青いところ、相談相手がいないと赤いところ。いない方がリスクが高いというものが生活困難世帯でも非生活困難世帯でも同じように出ています。
ただ、本当は、一番見てほしいのは、非生活困難世帯でも、赤いところは、相談相手がいないと二〇・六%のリスクです。でも、たとえ生活困難世帯であっても、相談相手がいるとそのリスクは一四・三%に下がると、こちらの方が低いと。で、相談相手がいる、要するに社会関係資本がいかに大事かと。所得だけではないと、お金が回っている、回っていないだけではなく、つながりがいかに大事かというのがこういうところからも見えてくるということになります。
細かい説明、そのほか省略させていただきますけれども、このような調査結果をそれぞれの計画に反映をしていくということをもって改革をブラッシュアップしていくというような形で取り組んでいる中身でございます。
ちょっと時間オーバーめになりましたが、私からは以上でございます。
○会長(増子輝彦君) ありがとうございました。
次に、山野辺参考人にお願いいたします。山野辺参考人。
○参考人(山野辺幸徳君) それでは、矢吹町の取組についてお話しさせていただきたいと思います。(資料映写)
まず、矢吹町の位置でございますが、福島県の南部に位置しております。東北自動車道や東北新幹線、福島空港など、交通体系に恵まれております。首都圏、全国へのアクセスの良さは抜群というところでございます。
人口についても、一万七千三百二十四名、世帯数にして約六千世帯というところで、小さな町でございます。矢吹町の出身の著名人としましては、元巨人軍、横浜ベイスターズの初代監督であります中畑清氏の出身でもございます。
続いてが町の予算規模でございます。約、平成三十年度は八十六億円というような一般会計の予算でございます。町づくりとしましては、東日本大震災を体験し、震度六弱といった地震も体験しました。そうした中、現在、震災前以上の町づくりを目指しているところでございます。
それで、こちらが矢吹町の組織でございます。子育て支援課、教育委員会に属しております職員数は九名というような体系でございます。教育委員会というところで児童福祉の分野があるというところで、組織体制としては、教育と福祉のつなぎが実現しているといったところで、組織内の横断的な情報共有、連携は容易であると、うまくいっているというような状況でございます。
それで、本町は一昨年、国の交付金を活用した貧困の計画作りに取り組みました。貧困について、本町の実態を知ること、非常に大切な視点と思い、交付金の方を手を挙げたというところが経過でございます。
それでは、矢吹町の子供の人口も中ほどにございますが、こちら、子育て支援事業計画からの数字抜粋ですが、予定を上回るスピードで減少に入っているといったところでございます。
それで、市町村の子供の貧困率というのは、就学援助を受給する世帯の割合と近い数値であるということが言われております。実態調査では、世帯の所得について聞き取りを行いまして、本町でどのような結果になるかを調査いたしました。
それで、子供の貧困対策の検討体制ということで、新たに計画策定機関を立ち上げる時間的な余裕もない、会議の回数もそう多くはしたくない、委員の負担になると。それと有識者がいないというような厳しい現状もございます。
そうした中、資料の左下にございます矢吹町要保護児童対策地域協議会という、虐待を取り扱う協議会がございます。比較的、虐待と貧困というリンクする部分もございますので、委員の方々には非常に理解されやすいのかなというふうに思いました。それに加えまして、地域のネットワークの形成というところで、行政区の区長さんだったり、社会福祉協議会、あるいは民間企業の代表者さんを委員にしてございます。
また、役場内に計画策定のための、既存事業の把握と洗い出し作業を既存の部会を活用しました。あわせて、組織内からは、保健福祉課、教育振興課、幼稚園に対して支援者のヒアリングを行ったというところでございます。
それで、子供の貧困対策のキックオフ元年ということで、福島県の計画策定の中でも、キックオフ元年と言っている程度といいますか、ちょっと遅れているというような状況もございます。さらに、本町におきましても、子供の貧困対策を目的とした施策化された事業はございません。本当に始まったばかりというようなところでございます。さらに、支援団体もないというような現状を抱えております。
検討会の会議の中では、批判的なコメントといいますか、計画を策定する必要があるのかという意見もありました。現場や地域に携わっている検討委員会委員からも、貧困に対する理解は不足しているというところで、相対的貧困と絶対的貧困の認識がずれているといったところが現状でございます。
それと、年三回の会議では、子供の貧困に対する理解を深めつつ、情報共有と地域ネットワークの形成に向け、グループワークで共通理解を深めたといったところでございます。それで、会議自体は、なかなか難しい、時間も掛かった、事務局としましても手探り状態、試行錯誤の中で計画策定に当たったというところでございます。
それで、アンケート調査を実施しました。対象については記載のとおりでございます。それで、アンケートの設問としましては、家庭の職業の状況だったり年収の状況、さらには健康状況だったり、子供が置かれています生活環境、学習環境などを、アンケートで設問項目として設定をいたしました。
それで、アンケートの結果としましては、貧困層にある子供の割合が一三・一%といったところの数字がございます。既存事業で申しますと、就学援助を受給する世帯の割合が一一・六、幼稚園入園世帯の非課税世帯が一四・三、保育園入園世帯の非課税世帯一五・九ということで、この実態調査を通しまして、厚生労働省の国民生活基礎調査による子供の貧困率一三・九%と、各市町村が実施する既存の事業からも、その市町村の子供の貧困率が、就学援助受給する割合と市町村の子供の貧困率というのが近い数値というふうに言われておりますが、ある程度、今回のアンケートからも推測できる結果が出てきたというような状況でございます。
それで、具体的な施策といったところで三つの柱を設けております。一つには、学び育つ環境づくりでございます。それと、二点目が教育と福祉をつなぐということの視点。そして、三つ目としましては、関係機関、地域、企業、NPO、自治体などのつなぐ地域ネットワークの形成というところでございます。
それで、小さな町だからできること、支援者みんなの顔が見える関係にあるといったところで、どの支援者がどのような支援を行ってきているかというのが分かっているという状況もございます。それと、できること、できないことがはっきりしているということで、こちらの支援については今後見極めてまいりたいなというふうに思います。
それで、一つの学び育つ環境づくりについては、主なもの、幼稚園・保育園保育料の無料化事業だったりというところで、記載してあるとおりでございます。
それで、既存の取組を見直すというところが必要であるなというふうに思いました。それで、行政としまして、全ての子供、課題のある子供、この二層へのアプローチが必要であるということで、これまで取り組んできた制度や各種施策について、貧困対策及び支援等が必要な子供と家庭の支援という視点での見直しを行い、支援策についても、すぐに効果が出るものではないことを理解しまして、長期的な視点で実施する検討を始めたところでございます。
貧困に関しては、関係のない部署はないという意識を持って既存の事業の視点を変えること、各課でもしかしたらこれも貧困対策になるかもしれないといったところの視点も持つことも大事なのかなというふうに思っております。
それと、行政は、組織の構造上、縦割りとなりがちでございます。福祉部門につきましては、生活困窮者自立支援法などの施策がありますが、そういった情報はなかなか入ってこないというような状況にございますので、情報共有と連携を図る必要があるなというふうに感じたところでございます。
あと、事業については見ていただきたいと思います。
それで、ネットワークの形成についてということで、大きくは、先ほど申しました要保護児童対策地域協議会、さらには青少年サポート事業連絡協議会というところの組織もございます。青少年サポート連絡協議会につきましては、中学校を中心とした高校の不登校生徒、中途退学者、中学校卒業後、進路が決まらない者、引きこもり、義務教育修了後の段階で問題を抱える子供の支援を目的としまして設置されている協議会でございます。それと、三つ目に、子どもの貧困対策支援部会ということで、子供の貧困対策に関する関係者相互のネットワークづくり及び支援体制の確立ということでございます。
こうした子供の貧困に視点を当てた既存の取組、事業による支援策の充実と既存のネットワークの横断的な取組により、連携を深めながら、子供の行動範囲は限られておりますので、地域の連携で乗り越えるため、本町では、コミュニティーや地域ネットワークの中で子供が生き抜く力を育て成長していくことを目指しまして、学校教育、家庭教育、生涯学習が連携した取組といったところで、今後、子供と子育て家庭を支援する体制を構築してまいりたいなというふうに思っております。
最終的な目標としましては、地域ネットワークの構築、地域全体で経済的に厳しい状況に置かれた子供の支援というところで、見えにくくなっています子供の貧困、子供たちとどこからつながっていくことができるか考えてまいりたいなというふうに思っております。
以上、発表を終わらせていただきたいと思います。
○会長(増子輝彦君) ありがとうございました。
次に、阿部参考人にお願いいたします。阿部参考人。
○参考人(阿部彩君) 首都大学東京子ども・若者貧困研究センターのセンター長を務めております阿部彩と申します。今日は、お時間ありがとうございます。
お手元に資料を配付してございますので、それに基づき御報告させていただきたいというふうに思います。(資料映写)
まず、一ページ目ですけれども、これは皆さんも御承知のとおり、厚生労働省が発表しております相対的貧困率、ブルーの方が国民全体、オレンジの方が十七歳以下のお子さんの貧困率となります。最新値が二〇一五年のものなんですけれども、それはその前の、二、三年前の二〇一二年に比べて大きく子供の貧困率については下がりました。これ自体は、私自身は非常に喜ばしいことというふうに思っております。
ですけれども、長期的に見ていただきますと、オレンジの方のラインというのはかなりジグザグがあります。これは景気の変動を表しています。ブルーの方のラインは高齢者の方々も含まれますので、高齢者の方々は年金所得が主な源泉となりますのでそれほど景気に左右されないんですけれども、オレンジの方は子供の親御さんの所得を一番反映しておりますので、そうしますと景気の変動というのがございます。
そうしますと、八五年、これが国民生活基礎調査での一番古いデータなんですけれども、から見ますと、やはり貧困率が下がった時期というのはございます。これはやはり景気の動向であるかなというふうには思いますが、そういった意味で見ますと、景気の良いときと悪いときを比べるだけではなくて、景気がいいとき、いいとき、いいときと、ですので、山、山、山、谷、谷、谷同士を比べるという視点も必要で、それを見ていただきますと、前回の谷が一三・七%、その前の谷が一二・二%、その前の谷が一〇・九%といったことで、三十年というスパンで見れば必ずしも、今、三年前からか、改善したことはすばらしいんですけれども、安心できる状況ではないなというふうに思えるのではないかなというふうに思います。
厚生労働省はこのような数値しか発表していないんですけれども、国民生活基礎調査を二次利用申請いたしまして、私の方で性別また年齢層別に計算したものがその次のページになります。
赤く囲んであるところが若者層と言われる十五歳から二十四歳の値になります。見ていただければ分かりますように、日本のライフスパン、人々のライフスパンを見ますと、今貧困率が高いのは、高齢期とこの二十―二十四歳をピークとする若者期と子供期という二つの山がございます。特に高齢期については女性の貧困率がまだまだ高いんですけれども、一生を通じて見ても、男性の貧困率で見ると、今、若いときの貧困のリスクと高齢期の貧困のリスクというのはほぼ同じ状況になっています。
これをちょっと三十年のスパンで見ていただきたいなと思って持ってきたものが次になります。このグリーンのラインは、一九八五年のときの男性の年齢別の貧困率です。二〇一二年、このときが一番高かったわけなんですけれども、二〇一二年のときが青いもので、赤が二〇一五年の一番最新の、最新といってももう今から比べると四年前になるんですけれども、の数値になります。
そうしますと、見ていただければ分かりますように、三十年間の間において高齢期の貧困率は大きく下がりました、男性に関して言えば。これは公的年金が成熟してきたことによる、やはり社会保障の成功例というふうに見ていただいてよろしいかなというふうに思います。
ですけれども、一方で、若年層を山とする貧困率の上昇というのが、やはり三十年というスパンで見ますとまだまだ高い状況にあるといったことで、やはりこの貧困の構造というのがかなり変わってきている。この三十年間というと一九八五年で、私なんかはそれほど昔という感じはしないんですけれども、かなり大きく日本の社会が変容しているといったことが言えるのではないかなというふうに思います。
次のグラフは女性の貧困率に限ったものですけれども、女性で見ますと、高齢期の貧困率がまだまだ下がっていないというのが現状になります。ですので、昨今、高齢者における所得保障が拡充されてきておりますけれども、それはその一つの根拠になるんではないかなというふうに思っております。
子供という観点からは、二十歳未満の子供の世帯タイプ別に見ますと、御承知のとおり、やはり一人親と未婚子のみという世帯タイプが一番高くなっております。ですけれども、夫婦と未婚子のみという世帯においても貧困率は徐々に上昇しているといったことは、御覧いただければ分かるかなというふうに思います。
また、三世代世帯といった世帯で見ても徐々に高くなってきております。実は、三世代世帯というのは推奨されるべき世帯というふうに思われていることがすごく多いんですね。子供のケアをする人が増えるですとか、所得の源泉、所得を稼いでいる人が二人以上いる可能性があるですとか、そういったことですけれども、実は貧困率で見ますと、三世代世帯の方が二世代世帯よりも高いです。
これは、サザエさんちのような、おじいちゃんとお父さんが二人とも現役世代といったような三世代世帯がだんだん少なくなってきているからですね。高齢化によって、それが二世代目になってきますと、例えば三十歳で子供を産んでいるというのはもう全く当たり前ですけれども、三十歳、三十歳で二世代続きますと、初孫が生まれるのがもう六十歳ですので、おじいちゃんは現役世代じゃなくなってくるわけです。ですので、このような世帯がどんどん増えていきますので、三世代世帯というのは、今後、私は、非常に大きなダブルケアの問題を抱える世帯になってきて非常にリスキーな世帯だと、タイプだというふうに思っております。
それをおきまして、もう一つやはり忘れてはいけないのが、夫婦と未婚子のみという核家族世帯、圧倒的に数が多いということです。数が多いので、貧困率が少なくても、じゃ、貧困の子供の世帯タイプ、先ほどの一三・九%の子供たちの世帯タイプはどうかというのを見てみますと、半数以上は夫婦と未婚子のみの、御夫婦そろった世帯の核家族世帯です。
この世帯に対しては、今、現状では、子供の貧困対策としての所得保障ですとか、様々なサービス保障といったものがほとんど行っていない状況になります。もちろん生活困窮者自立支援法ですとか生活保護ですとかいった一般的なものはございますけれども、母子世帯や父子世帯に対する様々なサービスですとか様々な給付といったようなものは、こちらの世帯については手が届かないサービスになっています。
この上で幾つか、私からの私案ですけれども、政策提言と現状というのを申し上げたいと思います。
まず一つ、近年の子供の貧困率の上昇は、特に中高年以上の年齢層が高いということがあります。下がってはきてはいますけれども、二〇一五年ですけれども、それでもやはり二十―二十四歳、十五歳―十九歳といった年齢層の子供たちの貧困率、を持った世帯の貧困率が、三十年間で見るとやはりすごく上がってきていると。この世代に対するやはり支援というのが必要になってくるのかなというふうに思います。
また、今、先ほど二つの自治体さんからすばらしい取組の御紹介がありましたけれども、基礎自治体で取り組んでいる場合が多いんですけれども、基礎自治体はどうしても中学生までが対象となります。というのは、それ以上となると、その子供たちがその自治体外の学校に行ってしまったりですので現状が分からないという状況になってしまいます。ですので、国がやる対策としては、この年齢層に対しては非常に力を入れていただきたいと思います。
もう一つが、家計というものをもう少し見ていただきたいということなんですね。
これ、次のグラフをお見せしますけれども、これは、私どもが、東京都の四つの自治体です。東京都ですので、決して日本の中で一番経済的な状況が悪い地域ではございません。でも、そこでの子供たち、小学校五年生、中二と、それと高校二年生の年齢の悉皆調査、四つの自治体で行ったんですけれども、の中で、過去一年間に金銭的な理由で、金銭的な理由ですよ、で、例えば電気料金が払えない、それからガス料金が払えない、それから水道料金が払えない、家賃が払えないといった子供たちが約二%から三%ございます。二%から三%って大した数字じゃないと思われるかもしれませんけれども、この年齢層の生活保護率は二%よりはるかに低いです。
そういったことを考えますと、こういった基礎的な支払さえできないような家庭というのが、もうかなり存在する。五十人に一人ですので、一学年でいえば一人二人いても、一つの学校にですね、いてもおかしくない状況です。
これ東京だけではありません。実は、先ほどの御紹介にもありましたように、今様々な自治体さんで子供の生活の実態調査を行っておりますけれども、これは私がほんの抜粋して全く同じ質問で行ったものを持ってきたんですが、愛知県はもう四%、五%、沖縄県になりますとこれもう一割を超えます。北海道でも約一割といったような状況になりますので、日本全国的に見れば、かなりの多くの子供たちが家庭においてこのような支払が滞っている状況があります。
大阪府さんと沖縄県さんの調査においては、実際にこれらのライフラインが止められたことがあるかということを聞いております。過去半年の間で、大阪府の三十市町村では一・〇%の子供たちがライフラインを止められたことがあると言っている状況です。学力格差がどうのこうのとか言いますけれども、電気が止められている家で勉強しろと言うんですかということなんですね。このような状況というのは、沖縄県は過去十年間でちょっと長めになるんですけれども、それでも約一割、状況になります。
ですので、戻りますが、私としては、やはりもう支援案として家計の支援をする。例えば、光熱水道費と家賃に対する扶助というのは先進諸国の多くにはもう既に制度化されてあります。ですけれども、日本にはこれらの制度ありません。ですので全くの民間で定められた費用を払っているわけですけれども、こういったものについての何か制度というのを考える時期に来ていると思います。それから、子供がある世帯では光熱費を止めないですとか法律で作っていただくことができないのかと、是非思います。
もう一つが再分配の強化です。
先ほど、貧困率が全体的に下がったというふうに申し上げましたけれども、この下がったというのは市場前所得、つまりお給料の方が上がったということで、経済状況が良くなったことの反映です。ですので、再分配がされたかとか強化されたことによって下がったわけではないんですね。
それを見ていただくために、次のグラフは再分配前と再分配後の貧困率の差、男性で見たものです。皆様も、二〇〇〇年代の中旬まで子供の貧困率で見ると再分配前の子供の貧困率の方が再分配後よりも低かったというのを御承知かというふうに思いますけれども、その後、児童手当等が拡充されて大分その状況が良くなったんですけれども、今でもゼロ歳から四歳、それから五歳から九歳に関しては、再分配前の貧困率の方が再分配後より高いといった状況があります。そのほかの年齢層でも貧困率の差分がそれほど多いとは決して言えない状況です。その次が女性になりますけれども、女性でも全く同じような状況というのがございます。
その次のグラフは母子世帯だけに限ったものなんですけれども、母子世帯も二〇一二年から二〇一五年にかけては非常に貧困率下がりました。ですけれども、それは、見ていただければ分かりますように、再分配前の貧困率が下がったからであって、再分配の機能が高まったからではございません。もちろん、再分配前の貧困率を下げるというのも政府の機能としては重要なものです。これは市場所得ですので、景気対策といったことで貧困率に一番効いてくる政策だと思います。
ですけれども、景気というのは必ず循環しますので、今度悪いときが来るわけなんですね。そのときまでに再分配機能をきちんと高めておかないと、せめてほかの先進諸国並みぐらいにしておかないと、これらの層はまたぐんと下がってきてしまうというのがもう目に見えているかなというふうに思います。
その次が、今様々なところで言われている学校のプラットフォームとする子供の貧困対策ということなんですけれども、この次のグラフは東京都の四自治体の調査での、ここでは私どもも生活困難層というのを困窮層、周辺層、一般層の三つに分けております。これは、後ほど御紹介しますけれども、世帯の中にどういったものがあるかですとか、どういった経験することができているのか、例えば、海水浴に行けるかですか、お小遣いがもらえているかとかそういったことと所得等をクロスしてつくった層なんですけれども、約五、六%の子供が該当します、東京都では。そうしますと、やはり学力差がすごく大きいと、学校の授業が分からないと答えている子供がすごく多いということが分かるかなと思います。その次のグラフは中学校二年生ですけれども、中学校二年生だとその差が更に大きくなってきております。
ですので、これから言えるということは、まず、学力というのが家庭の状況にすごく左右されているということ。でも、実際問題として、これは東京に特に顕著にある問題かというふうに思いますけれども、全国的にもあるかなというふうに思います。
先ほどのその困窮層といった層は、ガス料金を止められていたり、払えなかったりですとか、そういったことが三割以上あるような世帯なんですね。そのような世帯においても、四割は私立の学校にお子さんを行かせているということですね、高校二年生になりますと。ですので、現実問題として、裕福な子供たちだけが私立の高校に行っているわけではないということです。
さらには、今、奨学金を借りている率がすごく多くなりますけれども、高学歴を、かなりの家計の厳しい御家庭でも行って、お子さんを高学歴を付けさせようとしていると。それを家計に無理をしてでもやっている。
その背景がというのが、これはこの東京都の調査でですけれども、その学校を選んだ理由というのを聞いております。下の丸を付けたところを御覧ください。これを見ますと、私立に通っている高校二年生のお子さんで困窮層のお子さんの五割は、もう圧倒的な多数なんですけれども、公立高校に受からなかったから私立に行かざるを得なかったという選択をしているんですね。つまり、公立高校に受からなかったときに、就労をするというオプションが残されていないわけです、今の子供には。ですので、ここが、無理をしてでも私立高校に行くというようなことになり、借金漬けになってしまうといった状況になります。
ですので、学校全体として何をしていくのか。
もう一つは、小中学校の間から学力格差を付けさせない何かの方法というのが必要ではないかなというふうに思います。
戻りますが、支援案としては、特に課題の多い学校への資源の投入というのをしていただきたい。これは小中学校の公立の部分です。高校以上になりますと、やはり一番厳しい層というのは定時制に行っています。ですので、定時制の子供たちの生活を支えながら学習を学べるような制度をつくって、きちんとサポートしていただきたい。
例えば、今、定時制の高校においては、給食というのが廃止の方向で各自治体では動いています。ですけれども、定時制のお子さんたちは、食事とか一回ぐらいしか食べられていない子供が非常に多いんですね。これは私どもの調査でも出てきています。一日に一回しか食べていない。そんな状況で、しかも定時制で学べといっても、非常に難しいものがあります。特に、ですので、定時制ですとか底辺校と言われるような、高校以上ですね、自治体、基礎自治体が小中学校をやってくださるということであるのであれば、高校以上のところに、そこに資源が投入できるように国として働きかけていただきたいなというふうに思います。
最後に、一点だけ、指標についてお話をさせていただければというふうに思います。
先ほどのお話にもありましたように、今、各自治体さんで子供の生活の実態調査というのを非常にやってくださっています。これは内閣府からの補助金が付くといったこともありまして、私どものところでも非常にたくさんの自治体さんから様々なアドバイスをいただきたいといったような御依頼があります。ですけれども、そうといっても、日本の中の自治体数というのは莫大な数がありますので、多くの自治体においては、何らの、そうですね、専門家が入らずに実態調査をやるといったようなことがございます。
先ほど、一番私が懸念しているのが、貧困率の計算なんですね。貧困率というのは、厚生労働省がやっている国民生活基礎調査の所得票というのを、二十ページもあるようなのを家庭の中の全ての人に書いてもらって、おじいちゃんの年金額から、児童扶養手当の額から、養育費から、それから社会保険料も一人一人全部把握をして算出されるものであって、決して、自治体が、おたくの世帯の所得は幾らですか、どれか一つにチェックを付けてください、百万円から二百万円、二百万円から三百万円といったもので比較できる数値ではないんですね。
データについての問題点というのは、この頃、昨今も非常に話題となっておりますけれども、このように比較のできない数値を作り出して、一三・九%と比べてどうのこうのというのは、これは非常に危険なんです。なので、私としては、やはりこれはきちんとしたデータを国の方で作っていくべきだと考えますし、又は、自治体さんでも計算できる方法というのをきちんと確立していく方法があるかなと思います。
その一つが、その裏のページで、これは東京都の方で使わせていただいたものなんですけれども、子供の所有物とか体験といったものを聞いていく方法。これはマル・バツ式ですので間違えることがほぼなく、欠損率もほぼないので、かなり正確な数値が出ます。こういったような物質的な剥奪、これはEUでもう既に公的な貧困指標として取り入れられておりますけれども、といったものを使うですとか、又は、自治体さんが持っていらっしゃる税務データがございます。これを使うことによって一三・九%と比較可能な数値をはじき出すことができます。そういったものの使用を認めていただく、そしてそれを推奨していただく、やり方を公開していただくということをしていただければ、各自治体さんでも、自分の自治体のところで貧困率というのが計算できるようになるのではないかなというふうに思います。
これは、地方自治体においては非常に重要な課題なんです。というのは、地方の議員さんは、皆さん、それぞれの議会で、うちのところの貧困ってどうなのよと、貧困率、一体幾らなんですかというような質問をなさっているんですね。それで、自治体の方々が困って、いや、議員さんにそう言われるんですけど、うちじゃどうやって計算したらいいか分からないんですというのが一番私のところに来るので多い質問になります。
そこで、全く経験のないようなコンサルさんですとかそういったところに依頼をしてしまうわけなんですけれども、でも、そうではなくて、きちんとしたやり方で、これが正しいやり方で、少なくとも比較可能なやり方というのを全国的に広げる必要もあると、これは私の日々の非常に思っていることですので、この場で申させていただきました。
御清聴どうもありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
二月の調査会で、今日もテーマになっている子供の貧困、そして若年者の貧困について参考人質疑を行いました。
それ以降、こども食堂安心・安全向上委員会が、子供食堂が全国で二千か所を超えたというような実態調査の結果を公表しました。また、三月二十九日には野党六党が、子供の生活底上げ法案を共同で提出するということがありまして、子供そして若年者の貧困をめぐる問題は、引き続き大きな焦点になっていると思います。
憲法二十五条は、全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとしていて、国は社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上と増進に努めなければならないということをうたっています。国と社会の責任で子供たち一人一人を大切にして未来に希望を持って生きていける社会の仕組みをつくるということは世界の流れであるということを改めて確認をしたいと思います。
その上で参考人の皆さんにお伺いするんですが、まず秋生参考人にお聞きをいたします。
足立区は、先ほどお話をいただいた「未来へつなぐ あだちプロジェクト」の基本理念の中に、生まれ育った環境に関わりなく、将来に希望が持てる地域社会の実現というのを掲げていらっしゃって、そこの実現に向けて、貧困の予防と連鎖を断つことを主眼に置いて、全国の自治体にも先駆けて子どもの貧困対策実施計画を策定されるなど、子供の貧困対策を推進してこられた自治体だと思います。
この対策に取り組む中で変化を実感していることがあれば教えていただきたいということと、あと、自治体の努力だけでは解決しない問題がおありかなと思うんですけれども、国の責任で行う必要があるとお考えのことがあればお聞かせください。
○参考人(秋生修一郎君) 変化については、先ほど自己責任論の話もしましたけれども、少しずつですけれども地域の御理解も進んできています。子供食堂についても十数か所に増えてきています。ただ、毎日のようにやるというところのパワーまではまだいっていないというところになりますかね。だから、継続的にこれをやっていけるかどうかがこれからの勝負になるかなと。何も子供食堂だけではなくて、居場所だとか体験だとか経験というのは特定の場所がなくてもできるものですので、そういうところについても少しずつ増えてきているかなという実感がございます。
それから、もう一つが、何だっけ。
○岩渕友君 済みません、国の、国の責任と。
○参考人(秋生修一郎君) 国のということで、先ほど少しお話しした経済資本、文化資本、社会関係資本という中では、自治体とすると、経済資本のところ、所得ですとか労働のところの部分というのは、まるっきり関われなくはないですが、根本的なものにならない。ここはきちんと国にやっていただかないと難しいかなと。文化資本、経済資本のところの部分については、都道府県あるいは市町村でもできるところがあるし、そこが住民に一番身近なところですので、そこの関わりやすい、行政府だけでもなかなかできない、当然、地域を巻き込まないとできないというところですので、地域を巻き込む、そのための予防だとか経験、体験だとかいうところの部分については市町村のところの方が国よりもやりやすいというところは出てくると思います。
国は、そこへの財政的な支援ですとか、そういったようなものも含めてのことをやっていただければと思っています。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続いて、山野辺参考人にお聞きします。
子供の貧困対策について、福島の地元紙の福島民友社が行った市町村アンケートによると、福島県内で独自の行動計画を策定している自治体は県内で二つだと、そのうちの一つが矢吹町だというふうに報道されていました。
先ほど説明いただいた資料の中に「矢吹町の子どもの状況等」という部分がありますけれども、そこの中で、矢吹町の生活保護の保護率は県内でも高い水準にあって、こうした状況があることで様々な問題を抱えるリスクが高まるんだというふうに書いてあります。
お聞きしたいのは、具体的にどのようなリスクが高まるということを懸念されているのかということと、あと、県内でも先駆けてこの行動計画の策定されたということで、策定をして良かったと感じていることがおありであれば教えてください。
○参考人(山野辺幸徳君) リスクということでは、生活保護世帯、矢吹町については県内でも高い数字を示しております。さらには、生活保護世帯ばかりではなく、一人親世帯というところも矢吹町は多い状況にあるというところで、こうした一人親世帯だったり生活保護世帯というところで、貧困のリスクといったところやら、どうしても虐待やらといったところの生活の事情を抱えている家庭が多いというような分析といいますか、どうしても同じような世帯の方々が虐待に出てきたり貧困に出てくるケースが多いといったところで把握しております。
それと、よろしいでしょうか、今みたいな回答で。はい。
それと、策定してよかった点というのは、非常に策定して関係者から、当初は理解度が低いというところで、相対的貧困を貧しい家庭というような捉え方を持っていた委員の方も多くおりました。生きづらさというところを非常に強く訴えたかったというのもございますし、一番策定してよかったというのは、これ、関係者にこういった計画を作ることによって事業展開しやすくなるのかなといったところでございます。一番はやっぱり、先ほどの説明の中でも申しましたが、学校教育、学校ですね、あとは家庭教育、あとは生涯学習というところが連携した取組が必要なのかなというふうに思っております。
それで、今回、事業展開するに当たって、貧困世帯だけを絞った事業展開はできないというところで、その視点については全体、全員の子供を対象にした事業展開というところでは、学校やら、また同じ話になりますが、生涯学習というのがキーワードになってくるのかなというふうに思っております。
どちらにせよ、策定してよかったと思っております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
阿部参考人にお伺いします。
事前に配られた資料の中で阿部参考人がインタビューに答えているものがあるんですけれども、その中で、今日における子供の貧困は教育政策のみ、福祉政策のみでは解決できないと、労働政策や医療政策、住宅政策など多岐の政策の結果として現在の貧困格差社会が生み出されて、最も弱い子供たちにその影響が積み重なっているんだというふうに参考人お話しされておられて、私もそのとおりだというふうに思いました。
この中で参考人は、この問題の本丸は親の労働問題だというふうに述べられているんですけれども、この問題について改めて教えてください。
○参考人(阿部彩君) 労働問題については、恐らく私より熟知していらっしゃる先生方もいっぱいいらっしゃるというふうに思いますけれども、ただ単に非正規労働率が増えたといったことだけではないなというふうには思っております。
今回、子供の生活の実態調査を東京都でやりましたところ、まず、その親御さん、両方とも朝早くからいない、つまり、九時から五時の定型労働以外の時間帯で働いている親御さんがすごく多かったということにも驚きましたし、また土曜日、日曜日も働いていらっしゃる親御さんもすごく多くなったといったようなこともありますので、労働時間の問題の話もあるかなというふうに思います。
ですので、低賃金とかいわゆる非正規だとかいった待遇の問題ですといったような労働問題として特に扱われているような問題だけではなく、お子さんのある労働者という観点からすれば、労働時間ですとか労働の定期性ですね。例えば、定期的に何時から何時まで働いていなきゃいけないというのが分かっていればそこに何か保育の手当てもできるんですけれども、それがいつ単発的に入ってくるか分からないというような仕事ですとそこの手当てができなくなってしまうといったようなこともありますので、そういった労働条件といいますか、の問題もあるかなというふうに思います。
○岩渕友君 以上です。ありがとうございました。