2023年5月31日(水) 参議院 本会議「原発推進等5法案(GX電源法)」討論と採決
テーマ:安全神話復活の原発推進法案許さない
(議事録は後日更新いたします)
原発推進法が成立/安全神話復活/60年超運転も可/事故教訓にも被害者にも背/岩渕氏が反対討論/参院本会議
原発事故の教訓を投げ捨て原発回帰に大転換する原発推進等5法(GX電源法)が31日の参院本会議で、自民、公明、維新、国民の各党などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党と立民は反対。日本共産党の岩渕友議員は反対討論で、原発事故被害者の思いも事故の教訓も踏みにじり、国民的な議論もないまま改定を強行することは「断じて許されない」と厳しく批判しました。
岩渕氏は、原発事故で避難を余儀なくされた被害者が「(ふるさとは)私にとって『生きている』と実感できる場所」との声を紹介。「原発事故はこの大切な場所を今も奪い続けていることを忘れてはならない」と強調しました。
原発推進等5法では、改定原子力基本法に原発の活用を「国の責務」と明記。運転期間の規定を、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法から削除し、推進側の経済産業省が所管する電気事業法に移し、60年超運転をも可能とします。
岩渕氏は、改定原子力基本法がエネルギーの安定供給と脱炭素を口実に「原発を最大限活用し、その利用を将来にわたり固定化、永続化するもの」と指摘。原子力産業の安定的な事業環境整備などを国の「基本的施策」とすることは「日本原子力産業協会など原発利益共同体の要求を丸のみしたものだ」と強調しました。
また、「原発事故の根源的な原因は規制当局が電気事業者のとりことなっていたことだ」と述べ、「本改定は原発事故の反省と教訓を踏みにじるものであり、新たな『規制のとりこ』、安全神話の復活ともいうべきものだ」と批判しました。
岩渕氏は、原発推進政策が省エネと再生可能エネルギーの大量導入を妨げていると指摘。国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、再エネに比べ原発はコストが高く、CO₂排出削減効果が小さいことが示されているとし、一刻の猶予もない気候危機に「原発ゼロを決断し、再エネ最優先への転換を強く求める」と述べました。
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
2023年5月31日(水) 参議院 本会議
「原発推進等5法案(GX電源法)」討論と採決
○岩渕友君 私は、日本共産党を代表して、原子力基本法、電気事業法、原子炉等規制法、再処理法、再エネ特措法を改定する原発推進5法案に断固反対の討論を行います。
東京電力福島第一原発事故から12年余りがたった今も、事故も被害も終わっていません。
その多くが避難地域である浪江町津島地区の方は、春夏秋冬の移り変わりを体全体で感じることのできる津島の豊かな自然、年中行事を通じた地域の住民との交流、先祖代々受け継がれる歴史と文化の重み、津島の生活は厳しい面もありましたが、私にとって生きているという実感を日々感じることのできる場所と、ふるさとへの思いを語っています。原発事故はこの大切な場所を今も奪い続けていることを忘れてはなりません。
本法案は、もう二度と自分たちと同じ思いをする人をつくりたくないという被害者の思いも、原発事故の教訓も踏みにじり、原発回帰の政策に大転換するもので、断じて許されません。
反対理由の第1は、エネルギーの安定供給と脱炭素を口実に、原発を最大限活用し、その利用を将来にわたり固定化、永続化するものだからです。
原子力基本法の改定は、基本法に細目にわたって条文を追加する異例のものであり、その内容も極めて重大です。国の責務を新設し、原発を電源の選択肢として活用し続けるとしています。
電力会社には、原発の安定的な利用を図る観点から、本法案で電気事業法に定める60年を超える原発の運転期間のルールに従わなければならないことまで義務付けています。
さらに、国が取るべき基本的施策を新設し、原子力産業の安定的な事業環境の整備や原発技術の維持と開発の促進などを行うとしていますが、これは大手電力会社と日本原子力産業協会など原発利益共同体の要求を丸のみしたものです。本法案の目的が、エネルギーの安定供給でも脱炭素でもなく、原子力産業を保護する政策だということを示しているものにほかなりません。
しかも、法改定に向けて内閣府と資源エネルギー庁との面談が重ねられ、内閣府の担当者が経済産業省に籍を置く出向者であることも明らかになりました。原発を推進する側の経産省が主導して法改定が行われたのではないかという疑念は、昨日の高市大臣の答弁によっていよいよ深まったと言わざるを得ません。
反対理由の第2は、原発事故の反省と教訓から生まれた原発の運転期間を40年とする原則を投げ捨て、推進と規制の分離を踏みにじるものだからです。
国会事故調の報告書は、原発事故の根源的な原因を、規制する立場とされる立場の逆転関係が起き、規制当局が電気事業者のとりことなっていた、いわゆる規制のとりこの構造があったことだとしています。ところが、本法案は、運転期間の定めを、原子力規制委員会が所管する原子炉等規制法から経産省が所管する電気事業法に移すとしています。
原発事故があったことを背景に、国民的な議論を経て原発の運転期間が安全規制として導入され、40年と定められました。総理が運転期間の制限は安全性の観点から設けられたと答弁しているにもかかわらず、山中規制委員長は、運転期間は安全規制ではないという誤った答弁を繰り返していることは、議論の前提を崩すものです。
さらに、原発の停止期間を運転期間から除くことができるとして、60年、70年を超えても運転可能となる仕組みとします。停止期間を運転期間から除くことは、大手電力会社や原子炉メーカーなどが会員となっている原子力エネルギー協議会、ATENAなどが求めてきました。規制委員会はこの要求を時計の針は止めないとはねつけてきましたが、本法案はこの要求を丸ごと受け入れたものであり、新たな規制のとりこ、安全神話の復活ともいうべきものです。
経産大臣が停止期間を運転期間から除く判断基準は、経産省に白紙委任されます。審査はブラックボックスであり、到底認められません。
しかも、法改定に当たっては、エネ庁と規制庁の面談が行われていました。昨年7月から規制庁のトップ5人が初めて経産省出身者で占められ、推進と規制の分離どころか、一体となってしまっていることも明らかになりました。
ほとんどの原発の原子炉圧力容器などの設計寿命は40年であり、原発が停止している間も経年劣化は進み、安全上のリスクは増大します。政府は、規制委員会が運転開始30年から10年ごとに設備の劣化に関する技術的評価を行うから大丈夫だと言いますが、これまでも行われている審査を法定化するだけです。それどころか、点検項目を減らすことができるなど、むしろ後退させるものであり、これでは到底老朽原発の事故の危険性を減らすことにはなりません。
反対理由の第3は、あらゆる選択肢を確保することが重要だとして原発を推進することが、省エネと再生可能エネルギーの大量導入を妨げるものになるからです。
ほぼ100%輸入に頼っている化石燃料の価格高騰が、電気料金の大幅な値上げを招いています。エネルギーの安定供給と自給率向上に大きな力を発揮するのが再エネです。本法案では、地域と共生する再エネの最大限の導入拡大支援を掲げながら、稼働していない、完成もしていない原発で送電線の利用枠を押さえる原発空押さえのルールを温存していることが、出力抑制という形で再エネが発電した電気を活用できないという事態を招いています。これほどの愚策はありません。送電網の利用ルールを原発最優先から再エネ最優先に抜本的に変えるべきです。
国連IPCCの最新の報告書では、CO₂の排出を削減する効果について、再エネと原発を比較すると、太陽光と風力の効果が圧倒的に大きく、コストが安いのに対し、原発はコストが高い上に効果が小さいことが示されています。さらに、報告書は、今のペースで温室効果ガスを排出し続ければ2030年に排出限度に達すると警告しており、もはや一刻の猶予もありません。
先日、院内で行われた集会で発言した大学生は、GX基本方針について、原発や化石燃料の使用を長引かせ、再エネの導入を妨げる中途半端な見せかけの気候変動対策だと感じる、気候変動の被害に既に苦しんでいる人の声、将来世代の声に耳を傾けてほしいと訴えました。
こうした声を聞くべきであり、原発と石炭火力に固執し、そのツケを将来世代に回すことはやめるべきです。被害者の声を聞くべきだと求められた福島での地方公聴会も開かず、国民的な議論もないままに本法案を強行することは断じて許されません。
国民の願い、世界の流れは、原発からの撤退であり、石炭火力発電の全廃と徹底した省エネ、再エネの大量導入です。原発ゼロを決断し、再エネ最優先への転換を強く求め、反対討論とします。(拍手)