(ページ下部に資料があります)
(会議録は後日更新いたします)
参院経済産業委員会は22日、日本工業規格(JIS)を定めた工業標準化法や不正競争防止法等の改定案を賛成多数で可決しました。日本共産党は「JISの信頼を損なう」として反対しました。
改定案は、工業製品に限定していたJISの対象にサービス産業を追加することとし、そのうち道路運送法が禁止する「白タク」を容認するライドシェア事業などの「シェアリングエコノミー」を含むとしています。
反対討論で日本共産党の辰巳孝太郎議員は「JISへの信頼性を損なうのみならず、JISを事業に役立ててきた約8割の中小企業に悪影響を及ぼしかねない」と批判しました。
これに先立つ質疑で日本共産党の岩渕友議員は、シェアリングエコノミーは便利な一方、ウーバーなどプラットフォーム事業形態のものは業法や利用者・労働者保護のルールがなく、安全性・信頼性の担保がない自己責任のサービスだと指摘。フランスでは労働法を改正し同事業の社会的責任を規定したことを挙げ、「シェアリングエコノミーをJISの対象から外せ」と求めました。
世耕弘成経産相は「求められれば、シェアリングエコノミーについても(JIS)認証する」と述べ、除外しない考えを示しました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
加計学園の獣医学部新設をめぐって、昨日、愛媛県から新しい文書が提出をされました。この文書が事実ならば、安倍総理が一年にわたって国会の中で虚偽の答弁を繰り返していたということになります。立法府と行政府の信頼関係が問われる重大な問題です。柳瀬元総理秘書官、加計孝太郎氏の証人喚問を速やかに実現をしなくてはなりません。真相の徹底究明は最優先の課題だということを述べて、質問に入りたいと思います。
政府が二〇一七年六月九日に閣議決定をした未来投資戦略二〇一七は、AIやIoTなどの新たな技術革新、ビッグデータを活用した新ビジネスが今後の日本の産業競争力の源泉になるとして、データ利活用基盤の構築、徹底したデータ利活用に向けた制度整備をその柱として掲げました。これを受けて、今回の一連の法案では、知的財産や標準分野において、データの流通、利活用のための環境整備を行うとしています。
不正競争防止法案は、IDやパスワードなどで管理をされ、会員向けに限定してデータの提供を行う限定提供データの定義を新設して、悪質性の高い不正取得、使用などに対する差止め請求権を創設するとしています。
お配りしている資料の①を御覧ください。データの利活用、保護に関連する取組の全体像を示した表になります。2の部分は、先日議論をした生産性向上特別措置法に当たる部分になります。未来投資戦略では、データ利活用の課題として、パーソナルデータの流通、活用を進める仕組みであるPDS、パーソナルデータストアや情報銀行、データ取引市場を明記して、観光や医療、介護、ヘルスケアなどの分野における官民連携実証事業を推進するとして個人情報の取引市場を具体的に想定をしています。
今回議論をする不正競争防止法案の部分は、この3のところに当たります。データの利活用促進については、二〇一六年に官民データ活用推進法が制定をされて、二〇一七年に策定をされた官民データ活用推進基本計画に基づいて、公共データのオープン化が二〇二〇年までを集中取組期間として推進をされています。公共データの棚卸しや重点分野を中心に、官民対話の場となる官民ラウンドテーブルを設置をして、民間事業者のデータニーズの把握やビジネスモデルの提案などが進められています。
そこで、生産性向上特別措置法の議論の中でも、一回目の官民ラウンドテーブルについて取り上げてお聞きをしました。今日は二回目の官民ラウンドテーブルについてお聞きをしたいんですけれども、この二回目は、三月二十七日にインフラ、防災・減災、安全・安心分野におけるデータ活用をテーマに開催をされています。この中で、株式会社パスコ、主な株主はセコムだそうですけれども、このパスコが提案をしている内容について、概要を紹介してください。
○政府参考人(矢作友良君) お答えいたします。
平成三十年三月二十七日に開催された第二回オープンデータ官民ラウンドテーブルにおきまして、株式会社パスコからは交通事故位置情報、それから自動車の急ブレーキ情報について公開の希望がございました。また、あわせて、防犯上の課題等はあるものの活用する意義が非常に高いとして、小中学校の通学路情報についても希望がございました。
同社からは、これらの情報を組み合わせることで交通事故の多発地帯が特定できるだけでなく、事故は発生していないものの危険な場所が分かり、安全な通学路の設定、見直しができるなど、今まで以上に子供たちの安全、安心につなげることが可能となるとの説明がございました。
○岩渕友君 結果の概要を公表されているんですけれども、それを見ると、提案されたものが実現をすれば、車両の自動走行社会に向けたキラーコンテンツとなる可能性も秘めているということも書かれていました。
それで、今説明をいただいたように、通学路の情報を公開してもらえないかという提案があって、これを受けたのは文部科学省なんですけれども、文科省が、機微な情報も含まれることを踏まえると、通学路に関する情報を持っている教育委員会や学校に一方的に公開しろというのは難しいといった回答があったようです。さらに、教育委員会、学校、保護者等、関係者の理解を得ることが必要であり、まずは公開実績を積み重ねる中で成果を示し、横展開することが有効なのではないかということも見解として述べられているんですね。
先日、新潟で小学生の児童が殺害をされるという非常に痛ましい事件が起きました。こういうことを考えると、この通学路の情報を出せということは非常に心配だなというふうに思ったわけなんですけれども、大臣はこうした提案、どのように感じていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 一般論として、事業者などにとって分かりやすい形でデータをオープン化することによっていろんなサービスを提供するというような機会を創出するということは、これは重要な取組なんだろうというふうに思っています。ただ、一方で、データの種類によっては公開になじまないというものもあるのは事実だというふうに思っています。
今委員御指摘の民間企業の提案については、これは通学路情報と交通事故情報を重ね合わせることによって通学時の交通安全を確保するサービスを創出できないかというアイデアを念頭に置いたものだというふうに認識をしています。これは確かに傾聴に値する話だと思います。あるいは、まさに先ほど新潟のお話をされましたけれども、あのニュースなどを見ていると、やはり、ふだんからこの辺は危ないというようなところもあるから、そういう情報を共有して子供たちの安全を守るというのも一つあり得るのかもしれないと思います。
ただ、一方で、文科省も指摘をしているとおり、そういったデータを万人が見れるような形で広く公開するに当たっては、やはり関係者の理解とか安全性のチェックとか、そういったことは必要だというふうに私も思います。この点については、現在内閣官房のIT室において慎重に議論がなされているというふうに思っています。
経産省としては、この制度の運用や法人情報のオープン化なども積極的に活用しながら、安全性に配慮しながら事業をつくり出すことに貢献するような官民データの共有を進めていきたいというふうに思いますが、安全の配慮も忘れてはいけないというふうに思っております。
○岩渕友君 安全に配慮ということなんですけれども、パスコが当日示した資料の中には、オープンデータ化に向けて幾つかの課題があるということで、データが悪用できてしまう、情報公開による防犯上の安全対策、これが課題だということ書かれているんですね。さらには、今年の二月に、グーグルのストリートビューで探した高級住宅街で空き巣が繰り返された事件についても自身で紹介しているんですよね。
データの利活用というんですけれども、安全、安心が脅かされることがあっては断じてならないと指摘しなくてはなりません。この不正競争防止法案は、限定提供データの定義を新設して、悪質性の高い不正取得、使用などに対する差止め請求権を創設するとしています。
資料二を御覧ください。
これは、どんな場合に不正競争行為の対象になるのかということを示した図なんですけれども、IDやパスワードなど技術的な管理手段を破る行為には不正アクセス禁止法、窃盗罪など、既にある法令による対応が可能です。また、不正取得者や転得者には民法の債務不履行や不法行為責任に基づいて損害賠償を請求することもできます。
現行法の下でもこれ対応は可能なのではないでしょうか。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
今回の法改正を検討いたしました審議会、産業構造審議会の不正競争防止小委員会でございますが、こちらでの議論でありますとか、あるいは、事業者からのヒアリングの過程では、データの不正取得、不正使用等への対応策に関しまして、御指摘のございました不正アクセス禁止法でありますとか、あるいは民法の不法行為や、契約法などによる対応も考えられるのではないかという指摘もございました。
まず、不正アクセス禁止法についてでございますが、御案内のとおり、同法には不正アクセスに対する刑事措置しか規定されてございません。データの不正な流通に対する実効的な救済措置がないという、こういう課題があるわけでございます。
続きまして、民法の一般原則による対応についてでございますが、これにつきましては、データの不正な流通といった不法行為に対する差止めは原則として認められません。また、契約に基づく差止めは直接の契約当事者にしか適用できないといった限界も指摘されているところでございます。
こうした現行の法制度の限界、あるいはその制約に加えまして、知的財産戦略本部新たな情報財検討会におきまして、新たな不正競争行為の追加等の方向で検討を進めることが適当であると取りまとめられたことを踏まえまして、審議会において検討を重ねました結果、今般、不正競争防止法を改正させていただくということにさせていただいたところでございます。
具体的には、御指摘ございましたように、アクセス権限のない者による不正取得行為や、業務委託等を通じて正当にデータを取得した権限のある者による横領、背任に相当するような不正使用行為など、悪質性の高い行為に限って不正競争行為に位置付けまして、民事上の救済措置を導入することとさせていただいたところでございます。
以上でございます。
○岩渕友君 日本経団連は、二〇一七年の十一月二日に、不正競争防止法改正について、取得時に善意の転得者の使用、提供行為については、基本的に不競法の対象とすべきではない、図利加害目的の意味するところが判然とせず、広く解釈されることが懸念される状況では、不競法に基づく係争を過剰に誘発する可能性があることから賛成できないというコメントを行っています。
こうした懸念は払拭されたんでしょうか。
○政府参考人(木村聡君) お答え申し上げます。
今回導入させていただきます新たな制度の検討に当たりましては、平成二十八年十二月から合計十五回の審議会を開催いたしまして、データの提供者と利用者の双方に御参画いただき、議論を重ねていただいたところでございます。そして、審議会における検討の取りまとめに先立ちましてはパブリックコメントを実施し、様々な立場の方から幅広く御意見を求めた上で、データの提供者と利用者の双方の保護のバランスに配慮した制度設計をさせていただいたところでございます。
そうした過程におきまして、データの提供者側からは、データは複製や転送が容易でありますため不正取得や不正使用などへの対抗手段がないと安心して外部にデータを提供できないという指摘がございました。その一方で、データの利用者側からは、データの利活用に萎縮が生じないように、不正競争行為の範囲はできるだけ限定、明確化すべきといった御意見もいただいたところでございます。
これらの御意見も踏まえまして、今回提出させていただきました改正法案では、先ほども御答弁申し上げましたとおり、悪質性の高い行為に限りまして不正競争行為として位置付けまして、民事上の救済措置を導入することとさせていただいたところでございます。
これは、データの不正流通に対する安全弁、必要最小限の措置といたしまして、御指摘もございました経済団体あるいは関係する業界団体の関係者からも相当程度御理解をいただいておりまして、新たな制度の導入によりまして、データ利用者の正当な事業活動が萎縮するとか、あるいは訴訟リスクが不当に高まるといったことはないものと、このように考えてございます。
改正法の施行に当たりましては、どのようなデータが限定提供データとなり、またどのような行為が不正競争行為に該当するかといった点など、制度全般の具体的内容につきまして、現場の実務を踏まえた分かりやすいガイドラインを策定、公表することといたしております。制度に対する理解の不足や誤解によってデータの利活用に萎縮効果が生ずることのないように、その周知に努めていきたいというふうに考えてございます。
以上でございます。
○岩渕友君 日弁連は、二〇一七年十二月二十一日に中間報告案に対する意見書で、不競法にデータに関わる不正競争行為類型を追加して差止め請求権などの救済措置を設けることについては、必要最小限の規律を設けることを基本方針として、慎重な検討がされるべきだと。善意でデータを取得した者が事後に不正行為の介在について悪意となった場合、当該取得者によるデータの使用、提供行為は、その基となった契約による権限範囲の内外を問わず、不正競争とされるべきではないと。この点に関する中間報告案には反対だというふうに述べています。
こうしたいろいろな話を聞いていくと、新たな規制を講ずべき立法事実はないんじゃないかなというふうに思うんですけれども、日本印刷産業連合会は、二〇一七年十二月二十七日に中間報告案に対する意見として、現状では該当する行為がどの程度発生しているか不明であり、立法事実の積み重ねが十分になされていないと、こういう指摘も行っているんですね。
不正競争防止法案は、生産性向上特別措置法のデータ共有、連携制度と一体のものです。脆弱な個人情報保護制度の下で利活用を促進するということは、個人のプライバシーを脅かす深刻な人権侵害をもたらしかねないものです。
EUでは、五月二十五日から一般データ保護規則が施行されると。ここでは、忘れられる権利、データポータビリティー、プロファイリング、重要な権利について規定をされています。日本の個人情報保護法ではこれらの権利について明文で規定されているのかと。これ生産性のときにも聞きましたけれども、個人情報保護委員会からは、同様の趣旨に沿ったそれぞれの規定があると答弁あったんです。
それで、資料の三を見ていただきたいんです。これは、経済産業省の新産業構造ビジョンの資料です。データに関する各国の基本戦略が書かれているんですけれども、これは、経団連が今年の五月十五日に出しているデジタルエコノミー推進に向けた総合的な国際戦略の確立を、この中にも同じ資料が使われています。日本のところを見ますと、紫で囲ってありますけれども、個人データについては一般的な保護だとある。個人情報保護委員会は同様の趣旨に沿った規定だと言うけれども、経済産業省は違うということを指摘しているわけなんですよね。結局は、EUの規定とは似ても似つかない内容になっているということを指摘しなくてはならないと思います。
次に、JIS法案についてお聞きをいたします。
JIS制度は、認証事業者の約八八%を中小企業が占めています。中小企業の品質管理能力の向上や事業機会の確保に役立ってきました。JISは鉱工業製品の公的な規格ですけれども、今回の改定でその対象にサービスを追加するとしています。サービス分野の標準化というのはどういう分野そして業態を想定しているのか、お答えください。
○政府参考人(末松広行君) お答えいたします。
改正JIS法案に定義規定がございまして、「この法律において「産業標準化」とは、次に掲げる事項を全国的に統一し、又は単純化することをいい、「産業標準」とは、産業標準化のための基準をいう。」というふうになっております。
今回でございますが、サービス分野につきましては、「農林物資の販売その他の取扱いに係る役務を除く。」という限定が付きますが、十号として役務の種類、内容、品質又は等級、十一号として役務の内容又は品質に関する調査又は評価の方法、十二号として役務に関する用語、略語、記号、符号又は単位、十三号として役務の提供に必要な能力というものが追加されているということでございます。
○岩渕友君 もうちょっと具体的に答えてほしかったなというふうに思うんですけれども、衆議院の議論の中では、想定しているサービス分野や業態というのは非常に広いんですと。それで、例えば、シェアリングエコノミー関連サービスなど規制が整備されていない中で規範的な役割を果たす、いわゆるソフトローとして標準を整備することによって市場の健全な発展が見込めるような新たなサービスですというような答弁も行われています。
シェアリングエコノミーも入っているということになるわけなんですけれども、このシェアリングエコノミーの定義はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(矢作友良君) お答えいたします。
内閣官房でシェアリングエコノミーの健全な発展に向け必要な措置を検討するため、有識者で構成されるシェアリングエコノミー検討会議を平成二十八年七月から開催し、同年十一月に中間報告を取りまとめたところでございます。この報告書におきまして、シェアリングエコノミーは、様々な分野で新たなサービスが開発され登場する途上にあり、現時点で一義的に定義を行うことは困難であるとし、便宜的に、シェアリングエコノミーとは、個人等が保有する活用可能な資産等、これはスキルや時間等の無形のものを含むとなってございますが、これをインターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動と捉えることとされてございます。
以上でございます。
○岩渕友君 今のシェアリングエコノミーの定義はそうだと。
それで、JISをソフトローとして活用するということなんですけれども、ソフトローの定義というのはどういうふうになっているでしょうか。
○政府参考人(末松広行君) ソフトローについて法律上の定義はJIS法にはございませんが、百科事典によれば、ソフトローとは主として国際法上の概念で、拘束力が穏やかな法ないし実質的に何らかの法的拘束力のうかがえる非法的機関のことを指すとされております。
これを国内の文脈で申し上げれば、ソフトローとは、JISなどの標準のように、規制が整備されていない中で法的な拘束力はないという前提で規範的な役割を果たすようなルールということも言えるのではないかというふうに考えております。
○岩渕友君 新たなサービス分野の準則的な役割をJISに担わせようとするものです。
二〇一七年十月十一日、産業構造審議会は、今後の基準認証の在り方、ルール形成を通じたグローバル市場の獲得に向けてと題した答申を出しています。この答申によれば、JIS法の改定でその対象をサービスに拡大することについて、新たなサービス業態に関して何らかの規制が講じられる前段階から規範的な役割を果たす、いわゆるソフトローを整備することにつながり、技術の社会実装を迅速に行うなどの効果が見込まれるというふうにあります。
シェアリングエコノミーですけれども、利用者の自己責任を原則としたPツーP、不特定多数個人間取引であり、業法によって安全性や信頼性が担保されたものではありません。JISでは業法のような規制の役割は果たせないし、トラブルの抑止にはつながりません。ところが、これでは国のお墨付きを与えて促進するということにつながりかねません。
生産性向上特別措置法の審議では、ライドシェアが論点の一つとなりました。参考人質疑で陳述をされた川上参考人から、シェアリングエコノミーという名の下に仲介サイト企業は労働者に対する雇用責任、利用者に対する安全責任を負わずに莫大な利益を上げる一方で、労働者は個人事業主と位置付けられ、労働法上の権利を否定されて、あらゆるリスクを背負わされているということが指摘をされました。
ライドシェアは元々、道路運送法で禁止をされている白タクを経済産業省がグレーゾーン解消制度を使って相乗りマッチングサービスとして認めているものです。この衆議院の議論では、例えば、ライドシェアについて、事業所管官庁はどこになるのかという質問に対して、JISの制定について主務大臣は決まっていないというようなやり取りがありました。業法がなくて、主務大臣も決まってはいないと。
では、このマッチングの場を提供する事業者、すなわちプラットフォーム事業者に対する規制はあるのでしょうか。
○政府参考人(前田泰宏君) お答え申し上げます。
シェアリングサービスのためのマッチングを行う事業そのものに対する規制は、現在ないものであるというふうに認識しております。シェアリングエコノミーは、先ほど御答弁ございましたけれども、ある特定の業種に限定されない概念でございますので、平成二十八年七月に内閣官房で検討会が立ち上げられまして、シェアリングエコノミーの健全な発展に向けたルールの整備、CツーCサービスの特性を踏まえた安全性、信頼性の確保、消費者が安心して利用できる仕組みの構築等の議論が行われ、自主ルールの整備が重要であるという中間報告を受け、さらにシェアリングエコノミーにおけるマッチングプラットフォーム事業者が遵守すべき事項を規定したモデルガイドラインができ上がっております。
そのモデルガイドラインですけれども、シェアリングエコノミー協会というのが、シェアリングエコノミー認証制度を平成二十九年六月から開始し、その認証制度は一定の安全、安心の仕組みが担保されたシェアリングサービスの差別化を図るということで、現在、十八のシェアリングサービスが認定を受けたというふうに聞いております。
経済産業省といたしましては、業法による規制はないものの、民間による自主的な取組を通じたシェアリングエコノミーの健全な発展を、内閣官房と連携しつつ、必要に応じて後押ししてまいりたいというふうに考えております。
○岩渕友君 大臣にお聞きをするんですけれども、今答弁にあったように、政府はシェアリングエコノミー推進しているわけですよね。けれども、業法も作らずに、JISに肩代わりをさせて、主務大臣が誰になるのか、誰が責任を持つのかということもはっきり決まっていないということなんですよね。
政府がこういう下で、このシェアリングエコノミー推進するということは、そしてこれをJIS化するということは、業法も利用者保護のルールもない自己責任のサービスに国がお墨付きを与えるということになると。これは、JISに対するこれまでの国民の信頼を揺るがして、JISの価値を曖昧にすることにつながるんじゃないでしょうか、大臣。
○国務大臣(世耕弘成君) JISは、品質の改善ですとか生産合理化、あるいは取引ですとか消費の合理化の目的で、法律に基づいてそれぞれの主務大臣が制定する国家規格であるわけですから、それ自体は規制ではなくて、あくまでも任意の制度であります。ですから、シェアリングエコノミーのようなサービスも含め、技術の進歩ですとか業界の発展に迅速かつ柔軟に対応した規格を制定することで、新たなサービスや製品の市場の健全な発展に寄与できるものだと考えています。
一方で、JISはあくまでも任意の規格であって、そのサービスが国民の生命、安全などに関わるおそれがあるような場合は、当然法律で規制が行われるわけであります。あの民泊もシェアリングエコノミーの中の一つでありますけれども、民泊は今法律によるルールが制定をされているわけでありまして、それとは別に、やはりこのJISによって品質を保証することによって、国民が安心してこういったサービスを活用できるという面があるんだろうと思っております。
○岩渕友君 本当に国民が安心して利用できるということになるのかなというふうに思うんですね。先ほども言ったように、業法を作らない、JISにも肩代わりさせるということでね。
それで、大臣に更にお聞きをしたいんですけれども、このJISの対象からシェアリングエコノミーを除外するべきではないでしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 全くそうは考えておりません。サービスに当たるものは、きっちりJISで求められれば、あくまでも任意の制度ではありますけれども、求められれば、サービスの一種であるシェアリングエコノミーサービスについても認証していくということは十分あり得る話だと思っております。
○岩渕友君 シェアリングエコノミーは、先ほども述べましたように、労働者を個人事業主と位置付けるという大きな問題点があります。ライドシェアを例に見ると、先ほども述べたように、サービスを提供するプラットフォーム事業者が自由な働き方をうたってドライバーを集めて、全てのドライバーは個人事業主だということになります。だから、車に掛かる経費であるとか事故の補償などはドライバーの自己責任、自己負担になります。事故や病気などで働けなくなった、そういうときの休業補償も労災もないし、各種社会保障制度への組入れなどもありません。個人事業主ということで、労働組合による団体交渉で労働条件の改善を求めることもできないということになっています。
このような状況に対して海外ではどうかというと、ドライバーの労働者性を問う裁判が多数起こされております。生産性向上特別措置法の参考人質疑で、川上参考人がアメリカであるとかイギリスでの裁判例を紹介しておられました。裁判の結果、労働者性が認められて、最低賃金であるとか有給休暇の支給などが命じられています。
フランスでは労働法が改正をされて、プラットフォーム事業者の社会的責任が定められました。独立行政法人の労働政策研究・研修機構が発行している日本労働研究雑誌というのがあるんですけれども、二〇一七年十月号にも、フランスでは労働法が改正をされてプラットフォーム事業者の社会的責任が定められたということが書かれているわけなんですよね。
一方、日本はどうかというと、何の対応もされていません。そして、プラットフォーム事業者は、ドライバーの労働力によって利益を上げているにもかかわらず、雇用主であれば本来負担するはずの雇用保険、労災保険その他社会保障費などのコストを一切負担せずに、何ら雇用責任を果たさなくていいと。政府はシェアリングエコノミー促進室を設置して、業界団体やプラットフォーム事業者の人をシェアリングエコノミー伝道師に任命をするなど、シェアリングエコノミーをどんどん広げようとしています。けれども、労働者は個人事業主と位置付けられて、労働法制の適用外となって外に放り出される、不安定な地位に置かれるということになります。
これだけ問題があるシェアリングエコノミーをJIS化するということは、国がお墨付きを与えることになり、認めることはできません。このことを申し上げて、質問を終わります。
○辰巳孝太郎君 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。
代表して、不正競争防止法等改正案の反対討論を行いますが、その前に一言申し上げたいと思います。
国民の共有財産ともいうべきデータが公文書であります。この公文書が改ざん、捏造、隠蔽をされてまいりました。いとも簡単にこの公文書を変造する政府が、データを語る資格があるのか、法案審議できる前提条件があるのか、大きな疑問であります。
昨日、国会に提出された愛媛県の文書は、総理の友人が経営する学園に便宜が図られ、行政がゆがめられ、私物化をされたことを如実に示すものであります。反証は政府・与党の責任であります。
一権力者を守るために虚偽答弁が繰り返される、権力者に不都合な公文書は隠蔽され、改ざんされる、これは民主主義ではありません。これ以上、一権力者のために国会が愚弄され、軽視され、その権威を地におとしめられる、これは、この委員会としても、国会としても、与党、野党関係ありません、断固拒否すべきであります。
それでは、法案の反対理由を述べます。
第一の理由は、脆弱な個人情報保護制度の下、内外資本の新ビジネス最優先でデータ利活用を推し進めることがプライバシーなどの人権侵害をもたらしかねないからです。
本法案は、生産性向上特措法と一体的にデータ流通環境を整備するものです。この間、行政機関が保有する個人に関わるデータも含む官民データのオープン化とビッグデータの利活用が促進されてきました。その一方で、個人情報保護ルールは遅れたままです。個人の尊厳の観点から個人情報の自己コントロール権を保障したEUと比べても、極めて脆弱です。たとえ、匿名、非識別加工を施したとしても、データ量が増えれば個人の特定に至る、その危険を一層深刻にするものです。
第二は、迅速化ありきでJIS制定を民間任せにすることが国民生活や産業活動の基盤となる公的規格への信頼を後退させかねないからです。
これまでJISを審議してきた日本工業標準調査会では、制定過程の議事録や資料の公開により、専門性とともに客観性や透明性を確保してきました。ところが、民間認定機関の情報公開はパブリックコメントの募集にとどまります。これでは、JISへの信頼性を損なうのみならず、品質管理能力の向上や事業機会の確保にJISを役立ててきた八割近い中小企業にも悪影響を及ぼしかねません。
第三は、JISにサービス分野のいわゆるソフトロー的な役割を担わせることで、業法による安全性や信頼性が担保されないシェアリングエコノミーが促進されるからであります。
政府、経産省は、道路運送法が禁止する白タクを相乗りマッチングサービスとして容認するなど、業法規制もないプラットフォーム事業を野放しにして、無権利、不安定な労働者を生み出しかねないシェアリングエコノミーを拡大しようとしています。標準化による市場獲得の名の下に、JIS化で一見、国のお墨付きを得たように見えても、トラブルの際は利用者の自己責任が原則で、業法のような規制の役割は果たせません。
七十年掛けて培ってきたJISの信頼の土台を崩すことになりかねない、このことを厳しく指摘し、反対討論とします。