脱炭素などを口実に原発回帰に大転換する原発推進等5法案の参考人質疑が25日の参院経済産業委員会で行われました。
NPO法人・原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、国が「福島の声に全く耳を傾けてこなかった」と批判し、いまだ数万人もの避難者がいるもとで「非常に大きな問題だ」と強調。被害者を招いた公聴会の開催などを要求しました。
また、新設原発の建設期間は長期化傾向にあり、G7で合意している「2035年までの電力部門の脱炭素化」にも間に合わず、「全く役に立たない」と断言しました。
日本共産党の岩渕友議員は、国民の声を聴くべき理由を質問。松久保氏は、自身も原発事故に大きな衝撃を受け「原子力と人類は共存できない」との思いを述べ、福島や国民の声を聴かないことは「非常に残念だ」と語りました。また、若者も気候変動への危機感を持ち、脱炭素社会を遅らせる原発推進政策に「憤りを持っている」と語りました。
岩渕氏は、「脱炭素というのであれば、世界の流れを見ても再生可能エネルギーの導入を進めるべきだ」とし、原発と再エネのコストについて質問しました。
松久保氏は、原発は新設も既設もコストが上昇している一方、再エネのコストは下落し、原発は競争力がないと述べ、「電力会社が原発の巨額の新設コストを負担できず、経産省は建設費などを消費者に転嫁する方針を示している」と指摘しました。
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2023年5月23日(火) 参議院 経済産業委員会、環境委員会連合審査会
「原発推進等5法案(GX電源法)」
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公益財団法人地球環境産業技術研究機構理事長、東京大学名誉教授:山地憲治参考人 意見陳述
○参考人(山地憲治君) 御紹介いただきました地球環境産業技術研究機構、RITEの理事長を務めております山地でございます。
私は、今はほとんど卒業しましたが、20年以上にわたって総合資源エネルギー調査会の様々な審議会に関与させていただきました。その経験も踏まえて、略称ですけど、GX脱炭素電源法、この法案について、お配りしております意見メモ、本当1枚物の簡単なメモですが、それに沿って参考人として発言させていただきます。
まず、本法案の位置付けについてですが、本法案は、GX実現に向けた基本方針に基づいておりまして、既に成立した、これも略称ですけど、GX推進法とともにGX実現のために不可欠な法案と考えております。
重要なことは、我が国のエネルギー政策の基本であるSプラス3Eのバランスを回復することです。最近のエネルギー政策は、2050年カーボンニュートラル実現という野心的な目標が掲げられたことで気候変動対策に偏っていたと思います。そのような状況の中で、ロシアのウクライナ侵攻によってエネルギー安全保障やエネルギー価格の安定の重要性がハイライトされました。つまり、エネルギー安定供給確保を前提としたGXに向けた取組が必要です。そのためには、再生可能エネルギー、原子力など、エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限に活用する必要があり、本法案はその政策を明確にしたものと考えます。
本法案は大きく、再生可能エネルギーの導入支援と原子力の活用、この2つで構成されていると思います。
まず、再生可能エネルギーについては、規律ある再生可能エネルギーの主力電源化が必要ですが、これまでの政策について、2012年から施行されているFIT、固定価格買取り制度の導入以降を振り返ってみたいと思います。
劇薬と呼ばれたFITには功罪があります。劇薬と言われたのは、効果も大きいが副作用も大きいと懸念されていたためです。FITの導入によって、特に太陽光発電が急速に拡大し、今では8000万キロワット以上、以前の、第5次のエネルギー基本計画の2030年目標はもう既に上回っています。また、太陽光発電の発電量は水力の発電量を超えました。
一方で、FIT賦課金というような国民負担が2017年度に年間で2兆円を超えまして、昨年度まででの累積で17兆円という巨大なものに膨れ上がっております。しかも、残念なことに、国民が負担したお金の多くは国内で回らず、太陽光パネルのほとんどは中国からの輸入という状況でございます。
ここ10年ほどで太陽光や風力など自然条件によって出力が変動する電源が急速に増大して、へき地とか洋上など需要地から遠く離れた位置に設置されていたために、電力需給バランスの維持のために、発電コストに加えて、調整力の調達や電力系統整備などの系統の統合費用と呼ばれる発電に加えた外部コストが発生しています。また、FITによって投資リスクが大幅に低下しまして、リスクの低い小規模太陽光案件が乱立して、設備認定の権利を転売するなどの行為も多発しております。これに伴い、景観の悪化や土壌流出など、地域社会とのトラブルとか不十分な管理による災害なども発生しております。
このような状況に対して、2017年から運用を始めた改正FIT法、それから2020年に成立して順次運用が始まっているエネルギー強靱化法による対応が行われました。
改正FIT法では、健全な再エネ事業促進に向けて、それまで設備認定ということでやっていたんですけど、事業認定ということに変えまして、認定時期の変更を行って運転開始期限を設定しました。これは太陽光パネルの値下がりを待って建設や稼働を遅らせる未稼働案件への対応です。また、FIT対象事業者に設備管理や情報開示などを義務付けました。そのほか入札制度の導入等も行われました。
エネルギー強靱化法、これは束ね法案ですけど、その中で再エネ特措法の改正、電事法の改正があるんですが、ここでは市場価格に一定のプレミアムを上乗せする市場連動型のFIPという制度を導入を定めました。フィード・イン・プレミアムと申します。また、再エネのポテンシャルを生かすため、送電網の増強費用の一部を賦課金方式で支える制度、それから太陽光パネルなど設備の廃棄を適切に行わさせるために廃棄費用の外部積立てを原則義務化としました。また、認定後も一定期間内に運転開始しない場合には認定を失効させるということが可能になりました。
このような対応を踏まえた上で、今回のGX脱炭素電源法が準備されたわけです。今回の法案では、地域と共生した再エネの導入拡大支援として大きく3項目設定されています。既に説明されていると思いますけれども、系統整備のための制度、それから再エネの追加投資の促進、それと事業規律の強化です。いずれも今までの対応を更に充実させるものです。系統整備では、マスタープランとも呼ばれる整備計画の認定、それから工事に着手した段階からの交付金の交付などがあります。
また、追加投資促進では、追加投資部分に既設部分と区分した新たな買取り価格を適用する制度が導入されます。従来は、既設部分も含めて新たな買取り価格を適用していたわけですが、買取り価格は時間とともに低下されますので、既設部分に対しても低い買取り価格が適用されるということで追加投資のインセンティブがなかったんですけれども、インセンティブを付けるようにした。
それから、事業規律強化では、法令等への違反をした事業者に対してFIT・FIP交付金の一時留保、それから違反が解消されなかった場合は交付金の返還措置、それから認定要件として、周辺地域への事前の周知が追加されております。
今回の改正法案、審議会での議論も踏まえて、今までの対応をより充実させて実効性のあるものにするということで、規律ある再エネの主力電源化に向けて高い意義を持つと考えております。
次に、原子力の活用についてですけれども、私自身は関連する審議会での議論には関わっておりませんので、断片的になりますが私見を述べさせていただきたいと思います。
今回の法案は、原子力活用の意義の確認と活用のための制度整備に向けたものと受け止めております。
まず、2011年3月、福島原子力事故後、原子力政策は極めて曖昧な状態が続いていたと思います。最新の第6次エネルギー基本計画でも、2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応というところにおいてこう書かれている。原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくと、こう記述されているんですけど、その上で、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減するとも記されているわけです。
また、2050年を見据えた2030年に向けた政策対応についても、原子力は長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源であると記してはおりますが、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進めると記されています。
結局のところ、原子力の価値は認めつつも、安全性が確認された原子力発電所の再稼働を進めると書かれているだけで、原子力の未来が開かれていないと感じておりました。
これに対して、今年2月に示されたGX実現に向けた基本方針では、再生可能エネルギー、原子力などエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源を最大限活用するとしておりまして、その上で、地元の理解を得た原子炉の再稼働を進めるに加えて、次世代革新炉の開発、建設に取り組むとか敷地内での次世代革新炉への建て替えに言及しておりまして、運転期間についても、原子力規制委員会による厳格な安全審査を前提に、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めるとしております。
今回の法案は、このGX実現に向けた基本方針に沿うもので、冒頭にも述べましたが、Sプラス3Eのバランスの回復に向け意義あるものと考えております。
ただ、運転期間について、原則40年を維持していることには科学的観点から違和感を持っております。現行の原子炉等規制法の運転期間制限と、これを電事法に移管して柔軟性を持たせたこと自体は改善だと考えておりますけれども、そもそも、現行の炉規法における運転期間制限は政治的に決められたことであって科学的根拠はないと私は考えておりますので、そのことは指摘しておきたいと思います。
それから、ロシアのウクライナ侵攻以降、世界的な原子力復活の動きがありますが、この動向に沿って我が国でもというのではなくて、そもそも、エネルギー政策の基本方針であるSプラス3Eのバランスある実現のために我が国では原子力活用が必要だという認識を持っていただきたいと思います。
最後に、今回の法案に廃炉拠出金制度が含まれておりますが、電力自由化の中で原子力活用を進めるためには、この制度も必要だと思っております。原子力の電源としての経済的特徴は、投資が巨大、つまり固定費が高くて燃料費などの運転費が安いということです。また、原子力への懸念を持つ方が多くて、巨額の投資には大きなリスクが伴います。したがって、新設投資の回収リスクを下げる対応が必要です。今年から実行される長期脱炭素電源オークションで対応できるかどうか、ここについては見極めが必要と考えています。また、原子力には、運転後あるいは運転終了後も使用済核燃料とか廃炉とか、負のバックエンド資産が残ります。これに対応しなきゃいけない。今回の法案における廃炉拠出金は、このような負の残存資産に対応するものとして適切と考えております。
私からは以上でございます。
東京大学生産技術研究所教授:岩船由美子参考人 意見陳述
○参考人(岩船由美子君) 東京大学生産技術研究所の岩船と申します。
こちらの資料を基に御説明させていただきます。
私の今日のお話は、GX脱炭素電源法、この議論には直接触れるものではないですけれども、1つの大きな柱が再生可能エネルギーの主力化ということですので、その文脈で、かつそれを実際に進めていくためにはどうすればいいかという視点で、山地先生と一緒ですけれども、3EプラスSという視点を重視してお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、2枚目になります。
3EプラスSの実現ですけれども、よくよく考えると、確かにこれを同時実現したいのは事実なんですけれども、やはりトレードオフがあるなと。しかも、優先順位がある。先ほどもお話ありましたけれども、やはりその安定供給をマストとして、環境も今回の、今の方向性ではマストだとすると、やはり経済性の面でどこまで負担できるかという視点で考えなくてはいけないと思います。経済的な負担をどこまで受け入れられるか、受け入れられる水準に収めるためには、やはりエネルギーシステム、電力システム全体の全体最適化、効率化が私は重要だと思っております。
3ページ目お願いいたします。
私は、元々は山地研究室を出まして山地先生の弟子ということもありまして、各種の国の委員としても参加させていただいております。そこで、方々でこれまで言ってきたことを一通り整理してみたいとここで思いました。
まず、1つ目のポツです。費用対効果の良い順にやはり政策は進められるべきだろう。ここは、もちろん取る時間軸ですとか技術の分解に、解像度によって何がいいかというのを決めるのは非常に難しいんですけれども、長期的な見通しというのは不確実性も大きいですので、手前ではなるべく最大限、確度の高い既存技術の導入を進めるべきではないかと思っております。
次の2つ目が、GXで経済が潤い、国民負担を増やすことなくカーボンニュートラルができるというのは、やはり私は幻想だと思っております。もちろん、ここは丁寧な分析は必要です。でも、恐らく、確実に国民は痛みを伴うので、ここは政治的にしっかりした説明が必要ではないかと思います。カーボンニュートラルに対する国民の取組をなるべく促すような支援が必要だと思います。
3つ目です。系統運用の効率化が非常に重要だと思っております。自由化によって様々な市場が乱立しているような状況でありますけれども、市場が必ずしも適切に機能するわけではないと思います。非効率な運用になっていないか、もちろん市場の監視はたゆまなく続ける必要があるんですけれども、もっと良い運用の仕組みがないかということを常に考えるべきではないかと思います。ここで今、もうちょっと先になりますけれども、キロワットアワー、前日のスポット市場とデルタキロワット、調整力市場ですね、これを今、同時約定していこうという方向になっていますので、これは非常に、効率化という観点から見ると適切だと思います。
4つ目、長期脱炭素電源オークションの導入がこれからされますと。ということは、電源確保というのは、結局のところ、まあFITもそうなんですけれども、基本、総括原価的な方向に向かっていると思います。そうしなければ、そもそも脱炭素は難しいですし、安定供給も難しい状況にあると思います。ですので、じゃ、競争して何がうれしいかということを、もう少し競争の価値というものをこの辺りで立ち止まって考えるべきではないかと思います。
次が電化です。
電化というのは、カーボンニュートラル政策にとっては非常に重要だと思うんですけれども、昨今の電気代高騰もありまして、今余り人気のないメニューになっております。ですけれども、柔軟性向上、脱燃焼という視点からは非常に重要だと思います。これは、ただ黙っていても電化は進みませんので、何らか促進のドライバーが必要かと思います。電化できる分野は電化で対応し、電化できない分野で、例えば水素ですとかそういう高いオプションを入れていくというような対応が必要かと思います。
下から2つ目、これはまた何度かこの後も述べるんですけれども、電力の市場価格をやはり小売価格に連動させるような仕組みが必要だと思います。
最後ですけれども、今は一律のエネルギー料金補助のようなかなり巨額な補助がされているわけですけれども、それも一定は必要ではあるんですけれども、やはりそのカーボンニュートラルに向かう方向を支援するようなめり張りのある政策をお願いしたいと思います。
こんな感じです。
4枚目なんですけれども、これは再エネ関連に関して私がこれまで述べてきたことです。
やはり再エネ、小さいものがたくさんできる、で、事業者も本当に多数です。そういう小容量の発電設備がもう何万、何百万と増加する中、管理のためのデータベースをまずはしっかり作るべきではないかと。駄目な事業者がいれば、やはりその地域の、地元の再エネに対する風当たりというのは非常に強くなります。今、あちこちで反対運動が起こっているのも管理が不十分なものも多いからと認識しております。そういうデータベースが作れば、そのデータベースを管理に生かすこともできると思いますので、是非ここはもっと進めていただきたいと思います。
先ほどマスタープランのお話もありましたけれども、基本的には、今電源は固定、電源の位置は固定で、それに対して最適なネットワークという視点でマスタープランは検討されております。ただ、本来は、ネットワークと電源配置というのはセットで全体最適の観点で私は検討されるべきではないかと思います。
これは何かといいますと、やはり需要に近いところに電源が立地誘導できると余分なネットワーク増強が要らないということがあります。もちろん、気候的に、風が強い北海道とかに再エネの賦存量がたくさんあることは分かるんですけれども、例えば千葉の辺りの洋上風力をもっと増やすとか、そういうことによって需要地に近い方向に電源を立地誘導してくるという視点も私は重要かと思っております。
太陽光発電は、やはり地面型は、かなりもう非常にその景観ですとか、あとは様々な土地利用の観点から難しくなってきておりますので、建物屋根上のPVの設置というのを後押しする制度が必要で、今そちらの方には向かっていると思います。
あとは、これも後ほど話すんですけれども、抑制ありきでの制度設計をお願いできないかと思います。太陽光の抑制が今非常に問題になっておりますが、それ自体はそこまで、それ自体が問題ではなく、抑制はなるべく避けたいんですけれども、ただ一定抑制していくことを見越した上で太陽光が入っていかないと、2050年のカーボンニュートラルにはとても届かないのではないかと思います。
4ページ目は、系統の柔軟性確保のために需要側のデマンドレスポンスが重要で、制度設計と技術開発が必要という点でございます。
ちょっと時間的にもしかしたら厳しいのかもしれないんですけれども、5ページ目には、そのカーボンニュートラル実現のための、少しでも経済性を良くするような仕組みですね、それについてリストアップしたものでございます。
ここは、まあ繰り返しになる部分もありますけれども、基本的に需要側の仕組みをうまく取り込んでいく必要があるのではないかと思います。
5ページで、これまで言っていないことで強調したいのは、スマートメーターですね、例えば日本ではもう全ての需要家にスマートメーターが付くという、非常に価値高いわけですけれども、このデータ利用に関してはかなり制約があります。
もちろんプライバシーを懸念される需要家さんが多いことは理解できるんですけれども、ただそのために、全く研究者ですらこのデータが扱いにくいというような状況に今なっておりますので、プライバシーには配慮しつつ、もう少しうまくデータを活用していくような方向、デジタル化にも資すると思いますので、そこを何とか進めていけないかと思います。
一番下の既存技術の徹底的な活用ということでは、これまでにもお話出ているような気もするんですけれども、従来型の電気温水器のヒートポンプ式へのリプレイスですとか、既にあるヒートポンプ給湯器の昼運転化への補助、あとは建物の性能向上というのが非常に重要な視点かと思います。
6ページがその出力抑制の議論なんですけれども、こちらは当然、経済産業省さんの方でも対策の検討は進んでおります。
系統対策、連系線等の増強、供給対策、火力発電、バイオマスも含むですね、最低出力の引下げ、そして需要対策、これは電池への補助とかそういうものでございます。
ただ、非常にこちら頑張っていると思うんですけれども、それでも、特にこの春ですね、物すごく抑制量が増えて、また、もっと抑制量何とかしてくれという強い要望はあるようなんですけれども、出力抑制の抑制のための過度な費用負荷というのは、増加というのは私は避けるべきではないかと思います。
基本的な視点に立ち返れば、そもそも需給が一致しなければ不要なものは不要ですと。例えば、水力発電でも、水が多いときは水あふれちゃって使えないわけです。でも、それはもったいないとは誰も言わないわけですね。ということもあります。
PV、太陽光発電の過積載というのは、全て、ほとんど今の事業者さんみんなやっていると思います。パネル容量に対してパワコンの容量が小さくて、パワコンの容量に対してパネル容量が1.5倍とかになっているんですけど、その分というのは実は捨てているわけですね、そこを、ある意味。なので、事業者判断でそういうところは捨てているのに、系統側の理由で進める、捨てることに関しては物すごくネガティブな印象を持たれるということがあります。
出力抑制自体は悪ではなくて、ある意味調整力とも言えるわけです。カーボンニュートラルの実現レベルには、需要を大幅に上回るような再エネが必要です。一定程度、出力抑制前提で経済性が成立するコスト水準が必要かと思います。
それでも、ただ、まだ再エネは増やしたい、たとえ九州のようなところでも増やしていきたいというのであれば、かつコスト低下が最近止まっている感じもありますので、やはり出力抑制を含めた事業性成立のための支援というかなり高いレベルの支援が必要になるかと思われます。
次のページが、再エネ出力抑制緩和のための需要対策として、これは今年の四国電力の4月27日の需給バランスとスポット価格を示したものです。黄色い部分が太陽光発電です。黒い線が需要です。上の茶色い部分がこれ太陽光が抑制された部分ということになります。
私がこれで一番言いたいことは、実は、四国電力は非常に、これ中国電力もそうなんですけど、電気温水器がまだ多い。ヒートポンプ給湯器でもなくて電気温水器が実は多くて、下に数字あるんですけれども、環境省さんの統計から持ってきているんですけれども、電気温水器が12.7%の普及率、ヒートポンプ給湯器が3割なので、夜中にそれが動いているんですね。
このグラフの中で、赤い枠で囲った部分が電気温水器、これはヒートポンプ給湯器と電気温水器両方なんですけど、の需要で、私がその出力から推計した矢印の長さが恐らく夜中に動いている部分だと思われます。これだけの、今、夜中にわざわざ動いて、しかも昼間はPV捨てているというのが四国電力さんの現状なわけです。これは四国電力さんだけじゃなくて、今、電気温水器、ヒートポンプ給湯器は基本夜に動かすように設計されていますので、これが昼間にもしシフトできれば非常に価値が高いわけです。
しかも、今、スポット価格見ると、下の図です、これ48こまになっていますので30分単位の価格なんですけれども、昼間ずっとゼロ円になっているわけですね。という状況ですので、このスポット価格が適切に小売料金に連動できれば、この赤い部分の需要を、まあ最初はその制御機能ないので難しいですけれども、シフトできる可能性はあるのではないかと私は思います。
当然、電気温水器を制御付きのヒートポンプにするインセンティブを与えれば、この赤い部分というのは大分削除されて、このオレンジの、上の茶色のその部分が削減できるというようなこともあり得ると思います。
8ページになります。八ページは、需要の柔軟性向上ということで、EV、ヒートポンプ給湯器、電池の、この辺りの制御価値について申しております。
これからEV、電気自動車、ヒートポンプ給湯器たくさん入ってきますので、それらが入ってくると大型発電所数十基分の調整力になります。料金メニューによる誘導というのができると、それに、そういう機器を、小さい機器もうまく活用することができると思います。
9ページが参照にすべきと思われるカリフォルニアの例でして、カリフォルニアでは、州内の五大電力会社に対して地域ごとにダイナミックなプライシングを義務付けるような新基準を設定して、それを、データベースで価格を管理するというような仕組みがあります。こういったものを参照していくべきではないかと思います。
済みません、まとめます。
10ページが最後に申し上げたいことでして、産業政策的視点はこのとおりなんですけれども、やはりエネルギー政策的な視点は、供給対策だけじゃなくて需要対策を、それが再エネをうまく活用することになると思います。ここにあるように、これまで安定供給、安定供給と言ってきたんですけれども、需要もうまく活用して安定需給へ向かうべきではないかと思っております。
NPO法人原子力資料情報室事務局長:松久保肇参考人 意見陳述
○参考人(松久保肇君) NPO法人原子力資料情報室の松久保肇と申します。
原子力資料情報室は、1975年から脱原発を目指して研究活動を行っている市民シンクタンクです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
資料の方、お手元の資料をおめくりください。
本日、テーマ、GX電源法でございますけれども、大きく4点の問題点があると考えています。第一に、福島の教訓がないがしろにされているということです。
おめくりください。
今回、法改正に当たっては、国や国会は福島の被災者の声に全く耳を傾けてきませんでした。私、原子力小委員会という経産省の委員会の委員も務めていますけれども、その場でも全く福島の声は聞いていません。国策民営の果てにあったあの事故から12年たった今でも故郷に帰ることができない人々が数万人単位でいるという中で、これは非常に大きな問題だと思います。
原子力基本法改正案では、福島事故を真摯に反省するという記述があります。であれば、今からでも遅くはないので、被災者を招いたヒアリングなど、参議院で行われてはいかがでしょうか。
おめくりください。
また、この間、国会議論を拝見していますと、運転期間制限は利用政策で導入されたと言わんばかりの答弁が繰り返されています。しかしながら、運転期間制限が福島原発事故の教訓を踏まえて安全規制として導入されたことは、当時の政府資料や答弁を見れば明らかなことです。例えば、2012年の内閣官房の資料には、経年劣化等により安全上のリスクが増大することから、運転することができる期間を制限というふうに明記されています。
おめくりください。
また、2012年の高市早苗議員の質問主意書に対し政府は、安全上のリスクを低減するため発電用原子炉の運転期間を制限とか、現行の制度においては運転期間を制限していない点が十分ではないというふうに答弁しています。
運転期間規制が導入された際、安全規制としてこれ導入されたことはもう明らかなことです。運転期間規制が利用政策だというのであれば、それはそれで構わないんです。でも、であれば、原子力規制委員会はそう判断した理由を示すべきだと考えます。
そもそも、世界に存在する最高齢原発、54年です。まだ60年の原発は存在しません。また、例えばフランス規制当局、ASNというものありますけれども、こちら、2021年の年次報告書では、原発の運転期間延長について、現時点では原子炉の50年を超える継続運転に関する結論を導き出すことはできないとか、一部の原子炉の特殊な特徴のために現在の方法では60年までの運転能力を実証することはできない可能性などという記述があります。
60年超原発の審査基準まだ決まっていない中で、なぜ原子力規制委員会、六十年超の原発の劣化状況を確認できるというふうに断言できるのでしょうか。余りに前のめり過ぎるのではないでしょうか。
おめくりください。
もう1点、福島事故の大きな教訓は規制と推進の分離でした。運転期間規制は安全規制として導入されました。だから、推進から分離した規制当局が運転期間を認めるということになったわけです。
今回、法改正では、原子力規制委員会が認可していた運転期間延長を電事法に移管して、経産省が認可するというふうにしています。これは、推進と規制の分離への大きな逆行だと考えます。国際的に見ても、運転期間を認可しているのは多くが規制機関であり、それ以外の国でも規制機関が安全性を確認した上で認可しているという状況です。電事法改正案では、運転期間の認可に当たって原子力規制委員会は何ら関与しません。最低でも原子力規制委員会に何らかの関与をさせるべきだと考えます。
おめくりください。
今回、法改正の検討過程では、原子力規制庁と経済産業省が運転期間延長に関して事前に調整を行っていたことが明るみに出ました。この経緯、昨年12月、私ども原子力資料情報室に情報提供いただいたことで明らかになったわけですけれども、その中でいろいろおかしなことが出てきています。中でも、規制庁と経産省の答弁に矛盾が出ているというところが問題だと思っています。
昨年7月以来、経産省と事前協議を規制庁は行っていたわけですけれども、その中で、経産省側から示された資料について、規制庁は、協議とは関係のないメモを受け取った資料に書いてしまったということで、経産省から再度霞ケ関駅でその資料を受け渡すという怪しげなことまでして入手して、既存のものは破棄したというふうに説明しています。ところが、経産省側は国会での答弁で、規制庁は面談時に説明した内容を書き込んで、そのメモを書き込んでしまったので、きれいなものが欲しいといって渡したというふうに説明しています。つまり、規制庁側と経産省側の答弁に矛盾が生じているわけです。どちらかが間違った説明をしていることになります。なぜこんなことになっているのでしょうか。
おめくりください。
7月27日に岸田首相が原子力に関する政策的課題を示すように指示した翌日、経産省は運転期間規制の改正イメージを規制庁に説明しています。その中にこのような資料がありました。運転期間規制、制限は利用政策、規制庁が提案者とならない法構成が必要、安全規制が緩んだように見えないことも大事などという記載です。内容自体もおかしく、他省庁に示すのは極めて不適切なものだと思います。実際、西村経産大臣も個人的なイメージやメモだと答弁されています。
しかしながら、経産省は、省として他省庁に他省庁が所管する法の改正を申入れする際に、担当管理職の個人的なイメージやメモを上司との相談なく勝手に説明しに行くものなのでしょうか。元々規制庁は、経産省傘下の原子力安全・保安院でした。規制庁の現在のトップファイブは全て経産省出身者となっています。であればこそ、経産省は規制庁に対して慎重な距離感が必要なはずだと考えます。規制庁はそのような口出しに対して問題視しているようにも見えません。高い独立性が求められる規制庁と推進官庁である経産省の間になれ合いの関係性があることも示しているのではないでしょうか。
電事法改正案では、運転期間延長認可は脱炭素や電力安定供給に資することが要件だというふうにされています。つまり、経産省は、脱炭素、電力安定供給にこの原発が必要だから運転期間を延長を認可するわけです。一方で、原子炉の劣化状況に、ここまでが安全とかここまでが危険という明確な境界線というのはなかなか見出しにくいところがあります。
そういった不確かさの中で、人間が総合的にいろんな状況を判断して評価することになります。こういった微妙な判断をするときに、原発が脱炭素、安定供給に必須という推進側からの圧力が存在する中で、推進側と更になれ合いの関係がある中で、規制委は安全側の判断ができるのか、非常に疑問だと考えています。
おめくりください。
次に、時間軸の問題です。おめくりください。
世界気象機関が最近出した報告書によれば、今後五年間で世界の平均気温が産業革命前と比べて1.5度以上になることは六六%の確率で発生するというふうに報告されています。パリ協定の達成目標は実質的にほぼ不可能になったということです。極めて危機的な事態だと考えます。
おめくりください。
2022年のG7で、2035年までに電力部門の完全又は大部分の脱炭素化というものが合意されまして、今回のG7でも確認されました。
この間、原発の建設期間は長期化傾向にあります。中には10年を超えるものも全く珍しくありません。今回お示ししているのは原発の建設期間の中央値ですけれども、これは完成したもののみをお示ししています。建設中のものを含めると更に長期化しています。政府は2030年代前半に革新軽水炉を建設開始するという計画示していますけれども、2035年の脱炭素化には原発新設は全く役に立ちません。
おめくりください。
1995年以降、風力、太陽光、原発の設備容量の推移を見ると、この30年近く、風力、太陽光は著しく成長している一方で、原発は各国の強力な支援があったにもかかわらずほとんど成長していません。成長、将来の予測を見ても、風力、太陽光の飛躍的な伸びと比べて、原子力鈍いことが分かります。
なお、このグラフですね、国際エネルギー機関の資料を基に作っていますけれども、国際原子力機関の資料では、近年の原発の設備容量は減少傾向にあるということがあります。
おめくりください。
新設原発はこういった問題があるわけですけれども、既設原発にも多くの問題があります。特に、多くの原発再稼働できていないということもそうですけれども、再稼働できても使用済燃料貯蔵能力という問題があるからです。原子力事業者は対策取っていますが、現状のままであれば、近い将来、各原発、貯蔵能力の限界を迎えます。つまり、再稼働しても数年でまた止まってしまうということになりかねないということです。
おめくりください。
原発、CO₂排出量が比較的少ない電源だというふうにされています。しかし、CO₂排出量だけで原発を選択するべきではありません。原発建て替えや運転期間延長を考えると2100年を見据える必要があるからです。気象庁によれば、日本沿岸の海面水位は上昇していき、浸水被害は増加、極端な水位の評価も必要。さらに、豪雪が増加したり、台風の強度が強まるといった可能性も指摘されています。原発立地の多くは1970年代に、1970年までに選択されました。つまり、今から50年前に行われたわけです。つまり、気候変動への評価は全く行われていません。
原子力基本法改正案では、原子力利用が脱炭素社会の実現に資するよう、国が措置をとる責務があるというふうに記載されています。原発が単にCO₂を排出しないから脱炭素だというのは誤りだと考えます。気候変動が現実のものとして存在する以上、例えば極端気象と事故の重ね合わせや安全性、例えば原発の温排水などによる環境影響などが考慮されてしかるべきだと考えます。
おめくりください。
この間、原子力政策、高い目標を立てては失敗するということを繰り返してきています。新設は期待できず、再稼働も安全性や地元理解の観点から限定的だと思います。今回、原子力基本法では、原発推進を国の責務だというふうにしています。しかし、これでは政策の柔軟性を失うことにつながります。既にエネルギー政策基本法の中で、エネルギー安定供給や温暖化対策などは明記されているところです。原子力という単一の電源にこのような責務を明記する必要は全くないと考えます。
現行エネルギー基本計画では、2030年に原子力で20から22%を賄うというふうにしていますけれども、同じ失敗を繰り返しているようにも見えます。もう原子力に政策資源を投資、浪費しているような余裕はないんだと考えます。
おめくりください。
一方、最新のIPCC報告書によれば、CO₂削減効果では、太陽光、風力が圧倒的に大きく安価だということになっています。一方、原発や例えばCCS、CCUSは、高価で削減効果はそれほどないというところです。
おめくりください。
環境省の報告によれば、日本の現在の発電、発電電力量の二倍という豊かな再エネポテンシャルが日本には存在します。また、太陽光や風力は導入が比較的短期間にできるというメリットもあります。これを使わない手はないと考えます。
おめくりください。
次に、原発のコストになります。
おめくりください。
この12年間、多くの原発が稼働しないまま、それでも維持費は電気料金に計上されて消費者が負担してきています。原発で、この間1キロワットアワーも発電しなかった事業者の原発維持費を各社の有価証券報告書から分析しました。そうしたところ、12.62兆円、私たち払ってきているということになります。結果、電気料金、原発維持費分上昇しているということです。今後も再稼働状況を見通せず、それでも消費者は負担を強いられているということになります。一体あとどれだけ負担させるつもりなのかということです。どこかで損切りを考えるべきだと考えます。
おめくりください。
この間、国内外で発電コスト試算が何度も行われてきています。ここでは、経産省の試算と米国の投資銀行ラザードのものを示しました。原子力の発電コストは上昇、再エネの発電コストは下落著しいことが分かります。以前から、電力会社は原発の巨額の新設コストを負担できないというふうに言ってきており、経産省は、建設費などを事業環境整備だと称して電力消費者に転嫁する方針を審議会などで示しています。
おめくりください。
他方、国のエネルギー関連の研究開発支出を見ると、1974年から2021年の累計で16.6兆円、そのうち原子力関連が11兆円と、圧倒的に原子力が優遇されてきたことが分かります。事故後ある程度減少していますけれども、それでも最大の支出先はいまだ原子力であります。今後、政府はGX債で捻出した資金を用いるなどして原子力への支出を増やす方針ですけれども、原子力にそこまでの価値があるのか考えるべきだと考えます。
おめくりください。
最後に、核燃料サイクルについてお話しします。
おめくりください。
政府は、高速炉サイクルが実現すれば、使用済燃料の有害度が減るまでに、そのまま処分すると10万年掛かるところを高速炉サイクルでは300年になるのだと説明しています。
ですが、高速炉サイクルの実現には2つの要素があります。高速炉と再処理です。そしてこの2つがいずれもまだ成立していません。
高速炉は、1960年代には70年代に実用化だというふうに言っていたものが、いまだ完成していないものです。世界で唯一高速炉が動いているロシアでは、高速炉で27回のナトリウム漏れ事故、14回のナトリウム火災事故があったと報告されています。このようにハイリスクな施設を日本は許容可能なのでしょうか。
再処理にしても、1993年に建設が始まった六ケ所再処理工場が、1997年に完成するはずが、26回の延長を重ねていまだ完成していません。しかも、完成してもこの工場はプルサーマル、この工場はプルサーマル後の使用済燃料、使用済MOX燃料ですね、は再処理できません。
六ケ所再処理工場の事業費は現時点で13.5兆円とされています。使用済MOX燃料を再処理する場合、これをもう一つ造る必要があるということです。
おめくりください。
高速炉は再処理、実用化できるかですね、実用化できても商業的には成立可能か未知数です。MOX再処理はできても非常にコスト高です。一方、プルサーマル後に出る使用済MOX燃料の放射性毒性は通常の使用済燃料に比べて高いのが特徴です。なので、使用済燃料の十万年時点の毒性が、使用済MOX燃料の百万年時点の値とほぼ同等になっているわけです。
つまり、高速炉サイクルが実現しなければ、私たち300年どころか百万年の使用済燃料を大量に抱え込むということになるわけです。将来世代の責任を言うのであれば、せめて高速炉サイクルの技術的、商業的な実現可能性が見えるまで再処理やプルサーマルは停止するべきだと思います。
おめくりください。結論申し上げます。
福島第一原発事故の教訓や反省をうたうのであれば、まず福島の被災者の声を聞くべきだと思います。
炉規法や電事法改正も明らかな規制の後退ですので、改正案は廃案にするべきだと思います。少なくとも、運転期間延長に当たっては規制委員会の関与を明記するべきだと考えます。
原子力基本法で原発推進を国の責務だとすることは、国の政策判断の自由度をなくすことです。
○委員長(吉川沙織君) 松久保参考人、恐れ入りますが、時間来ておりますので、おまとめください。
○参考人(松久保肇君) はい、分かりました。
屋上屋を重ねる必要はないと、ここに書かせていただいているとおりの内容ですので、お読みいただければと思います。
以上になります。済みません。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
参考人の皆様、本日は貴重な御意見をいただきました。ありがとうございます。
松久保参考人に幾つかお伺いをしたいと思います。
今日お話をいただいた冒頭に、福島の声を聞くべきだと、被災者の声を聞くべきというお話がありました。私は福島県の出身なんですけれども、東京電力福島第一原発の事故の被害が今も続いているという状況の下で、本法案は原発に回帰をするというようなその大転換の中身になっているんですね。そうしたことはあってはならないというふうに考えています。
それで、どういう思いでこの福島の声を聞くべきだというふうに御提案をいただいたのかというのを教えていただきたいというのが1つ。
そして、この法案に関わって、自分たちの未来の問題だと、将来の問題だと、そこに関わる問題だということで、若い方たちからも声が上がっているんですけれども、そうした若い方たちの思いについて、もし御存じだったら御紹介いただきたいなというふうに思います。
○参考人(松久保肇君) 御質問ありがとうございます。
私は原子力資料情報室という団体に入ったのが2012年なんですね。それまでは東京金融取引所という取引所で市場の監視とかそんなことをやっていた人間なんです。なので、先ほど来市場の話があってすごく気になっているところではあるんですけれども、それはまた別にして。
やっぱり、その当時ですね、福島第一原発事故と東日本大震災で非常に私もショックを受けて、皆さんショックを受けられたと思うんですけれども、私も非常にショックを受けて、もうこの原子力というシステムはやっぱり人間と、人類と共存できないシステムであるというふうに思って転職をしたんですね。なので、今回のこの原子力に回帰していくという政策自体、非常に憤りを持って見ています。
この間、私、原子力小委員会なんかで、国民の声を聞くべきだということを繰り返し申し上げてきましたけれども、一度もそういった機会設けていただくこともできず、非常に、まあ正直申し上げて、非常に残念だと思っていますし、また申し訳ないなというふうにも、委員としてですね、申し訳ないなというふうにも思っています。
2点目の未来の問題ということですけれども、次世代の方々、例えば私ももちろん若い方々とお付き合いなんかもしているんですけれども、彼ら、特に気候変動の問題に非常に危機感を持って取り組んでいらっしゃいます。
もう現実に、先ほど申し上げたとおり、1.5度目標というもの自体が非常に危機的な状況になっているという中で、彼ら、既に発生している気候危機に対する被害というものも目の当たりにしている中で、今回日本の政策はもう明らかに気候危機に対して後ろ向きであって、既存の産業とか、例えば原子力とかでカーボンニュートラルと言っているわけですけれども、それは現実的にはそのカーボンニュートラルを遅らせるにすぎないものだというふうに理解されています。なので、そういったものに対して非常に憤りを持って見ていらっしゃる状態だと思います。
○岩渕友君 ありがとうございます。
私も、やっぱりこれだけの大転換があって、あれだけの事故があったのに、福島の声を聞く機会がないというか、その被災者の声を聞く機会がないというのは非常に問題だというふうに思っていて、やっぱり意見を聞くべきだというふうに思っています。
それで、続けて松久保参考人に伺うんですけれども、今回その脱炭素ということで原発を進めようということが法案の中身になっているわけなんですけれども、脱炭素ということでいえば、今世界の大きな流れは再生可能エネルギーの導入を進めようということで、その導入が進んでいるということですよね。脱炭素というのであれば、原発ではなくて再生可能エネルギーの導入を進めるべきだというふうに思うんです。
それで、先ほどお話の中で原発のコストのお話があったかというふうに思うんですね。このコストの問題は、国民の負担にもなるし将来世代の負担にもなっていくということで非常に重要だというふうに思うんです。それで、原発のコスト、そして再生可能エネルギーのコストについてもちょっと改めて教えていただきたいなと思います。
○参考人(松久保肇君) ありがとうございます。
原発のコストですけれども、既設と新設でちょっと分ける必要があるというふうに思います。
既設に関し、あっ、新設に関しては、もう既に国際的ないろんな調査が行われていますけれども、もうまあ勝負ありという状態になっているのは明らかなんですね。原子力は高い、再生可能エネルギーは安いという状況になっている。
一方で、例えばその系統を、再生可能エネルギー入れるためには系統に何か増強しなきゃいけないとか、あとはその変動性、再生可能エネルギーの多くは変動性なのでその変動性を対応しなきゃいけないということで、例えばその、そういったものを考慮して統合コストという考え方なんかも導入されているんですけれども、でも、こういったものも余り過大評価するべきでないというふうな国際的な議論が行われているという状況だと思います。つまりは、再生可能エネルギーの方は安いと、既設に関してはですね、という状況です。
一方で、既設に関しては、状況によって安いものと高いものというものが出てくると思います、再生可能エネルギーと比較したときに。例えば、先ほどちょっと申し上げたかもしれないんですけれども、東京電力柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働によってどれぐらい電気料金安くなるかというと、東京電力の試算だと900億円というふうに表明されているんですね。これが一家庭当たりで、一世帯当たり大体どれぐらいになるかといったら、月当たり122円という状況なんです。
一方で、原発の維持費にどれぐらい使っているかというと、700円ぐらい使っているんですね、その原発を再稼働するのにどれぐらい使うかというとですね。700円ぐらい使うということになります。つまりは、原発の維持費は異常に高くて、価格競争力はほぼほぼもうないと。つまり、再稼働した原発によっては、あるものもあれば、例えば長いこと再稼働できていない原発なんかはもう価格競争力はそもそも存在しないという状況になっているものもあるという状態だと思います。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて松久保参考人にお伺いをします。原発の運転期間についてお聞きをしたいと思うんですけれども、先ほどお話をいただいた中に運転期間の制限は安全規制として導入をしたんだというお話がありました。この間、国会審議いろいろ続けてきているんですけれども、山中規制委員長は、運転期間のこの規定は安全規制ではないという答弁を衆議院でもそして参議院でもずっと繰り返しているんですね。
それで、運転期間が設けられた経過、そしてこの設けられたということの意味について、御存じのことがあれば教えてください。
○参考人(松久保肇君) ありがとうございます。
私もちろん政府にいたわけではないので、外から見ていたということになってしまうわけですけれども、そういった観点で見ていても、やっぱり、先ほどお示しした資料にあるとおりなんですけれども、運転期間規制は安全規制として導入された。
一方で、例えば米国の運転期間の規制に関しては競争政策上導入されたというふうに、アメリカの、何ですかね、運転期間規制に関する文書を読んでいるとそういうことが書いてあるわけですね。ただ、それって決まったのが1954年とかそれぐらいのレベルの話なんです。その当時、原発はもうずっと使えるんだという電力会社側と、あと、原発の運転期間はある程度決めておきたいという政府側の考えがあって、そのせめぎ合いの中で40年とかという設定が行われたわけですね。
ただ一方で、その40年という設定を行ったがために、機材の寿命、設計寿命を40年というふうに設定して原発を造ったのも事実なんです。なので、競争政策上、例えばアメリカでは競争政策上そういう年数を決めたんだけれども、だからそれを前提として設計寿命を40年で原発を造ったということも事実なんです。
つまりは、物事って何でもそうですけれども、機械ってその設計寿命を設定して建設するわけですね。そうすると、その設計寿命期間が来れば、バスタブカーブといって、寿命が末期に来れば来るほど機械の故障率が高くなっていくというのも、これもう理の当然な話なんですね。なので、やっぱり原発には寿命があるというのは、それもう科学的な知見だというふうに思います。
○岩渕友君 ありがとうございます。
この運転期間に関わってもうちょっとお聞きしたいんですけれども、この法案の中では、原発を60年超えても運転できるようにするということになるわけなんですけれども、この老朽原発の危険性ということについて教えていただけないでしょうか。
○参考人(松久保肇君) ありがとうございます。
特に問題になってくるのは、原子炉の圧力容器の中性子照射脆化という問題です。これ、何が起きているかというと、原子炉の中で核分裂が起きるわけですね。そうすると、中性子がたくさん出てくるわけですけれども、これが原子炉の炉壁にぶつかって、金属なんですけれども、その金属にぶつかってその金属の分子的な構造を変えてしまうわけですね。劣化していけばいくほど、金属って元々粘り強い性質、ぱりんと割れない性質があるんですけれども、これがだんだんぱりんと割れる性質に変わっていく、中性子照射脆化ということなんですね、これが。
例えば、何かしらの原子炉で事故があって、原子炉を急速に冷却しなきゃいけないというときに冷却水を入れますよね。そうすると、その原子炉の中と外で温度差がすごく出てしまうわけですね、急冷するために。そうすると、場合によっては原子炉がぱりんと割れてしまうということになりかねないわけです。そうすると、冷却水入れても冷やすことができない、まあ漏れていくわけですから冷やすことができないという状況になってしまいかねないわけですね。それ、非常に危機的な状況だというふうに思います。
ほかにも、最近、高浜原発で明らかになったところですけれども、原発を造ったときに施工不良なんかがあって、ケーブルが、ケーブルの問題なんですけど、ケーブルがほかのケーブルに覆いかぶさってしまっていて、それがためにハンダ付けが緩んでしまって電気信号がうまく送れなくなって制御棒が入っちゃったというふうな問題があります。
これは、制御棒が入ったからまだよかったんですけれども、安全側の事故だったのでよかったんですけれども、危険側に、例えば制御棒を入れようと思っても入らないような問題だってあり得るかもしれない。そういった水平展開、きちんとできているのかどうか。
それ、施工時にそういう施工をしてしまったがためにそういう事故が起きたわけですけれども、ただ、それから40年近くたってそれ分かっていなかったわけです。ずっとその施工状況がずっと続いていたわけですね。それが見付からなかった、40年間、というのが非常に問題だと思うんですね。
原発の老朽化の評価というのは、原発が完璧に施工されたことを前提にして評価を行っています。ということは、でも、そういった完璧に施工されたということはまああり得ないわけですよね。何かしらの人為的なミスというのは当然あり得るわけで、そういった事故は、事象はきちんと評価できているのかというのはやっぱり非常に懸念されるところだというふうに思います。
○岩渕友君 ありがとうございます。
その60年超の運転に関わってちょっと更に聞きたいんですけれども、その六十年を超えて運転をするというその認可の申請について、そこで求める追加点検の考え方ということが規制委員会の中で了承されたということなんですけれども、その内容についてどんなふうに見ていらっしゃるか、教えてください。
○参考人(松久保肇君) ありがとうございます。
基本的には、これまでやってきたことと同じことをやりますよと言っているにすぎないと思います。
○岩渕友君 安全性の担保っていう点ではどんな、どのように御覧になりますか。
○参考人(松久保肇君) そうですね、やっぱりどんどん古くなっていけば古くなっていくほど、例えば設計が古くなっていくとか、そういったことだって当然あり得るわけですよね。福島第一原発事故なんかのときには、地下にディーゼルジェネレーターがあったことによって津波で問題になったということがありましたけれども、そういったあからさまな事象じゃなくても、どんどんどんどん古くなっていきますので、そうすると、新しい知見でこれ問題になるよねといったところが出てくるわけですね。
一応バックフィットというものはあるわけですけれども、ただ、それが厳密に活用されるかどうかというのはやっぱりその規制委員会の覚悟が問われているというふうに思うんですけれども、その辺り本当にどうなのかなということを先ほど来ちょっと申し上げているところです。
○岩渕友君 ありがとうございます。
時間になったので終わりたいと思うんですけれども、山地参考人と岩船参考人にはお尋ねできずに申し訳ありませんでした。本日は本当にありがとうございました。
以上で終わります。