日本共産党の岩渕友議員は22日の参院資源エネルギー・持続可能社会調査会で、原発に義務付けられているテロ対策施設(特定重大事故等対処施設=特重施設)の設置期限を延長する原子力規制委員会の方針を批判し、撤回を求めました。
特重施設は、新規制基準で設置が義務付けられました。猶予期間が設けられましたが、完成が間に合わなければ運転中でも原発を停止しなければなりません。原子力事業者が期限の延長を繰り返し要求し、規制委は期限の起点を営業運転開始時に変更する方針です。東北電力女川原発2号機(宮城県)は今年12月の設置期限が延び、運転停止を免れます。
特重施設の設置は「安全性向上の観点からだ」と述べた山中伸介規制委員長に対し、岩渕氏は「今回の変更で、本来停止するはずの原発が稼働し続けることができる。特重施設はなくてもいいと言っているのと同じだ」と指摘。規制委での議論で、運転時にリスクが上昇するため特重施設が未完成の状態での運転期間を大幅に増やさないことが前提だとしていることと矛盾するとして、「安全よりも事業者の都合を優先させるもので、規制緩和にほかならない」と追及しました。
山中委員長は「規制の実効性の適正化だ」などと弁解。岩渕氏は、東京電力福島第1原発事故の教訓は「規制する側が電力会社に取り込まれる『規制の虜(とりこ)』の構造に陥っていたことだ」として「同じ過ちを繰り返すのか」と批判しました。
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221-参-資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会-003号 2026年04月22日(未定稿)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
東京電力福島第一原発事故後に施行された新規制基準では、特定重大事故等対処施設、特重施設と言われていますけれども、この設置が義務付けられました。
この特重施設とはどういうものでしょうか。また、設置を義務付けたのはなぜでしょうか。
○政府参考人(金城慎司君) お答え申し上げます。
まず、新規制基準では、故意による大型航空機の衝突やテロリズムなどによって炉心の著しい損傷が発生した場合などにおいても、原子炉格納容器の破損による敷地外への放射性物質の異常な水準の放出を抑制するため、可搬型設備を中心とした重大事故等対策を求めています。
御質問の特定重大事故等対処施設でありますけれども、その重大事故等対策の信頼性を向上させるためのバックアップという位置付けの設備、施設であります。
東京電力福島第一原子力発電所事故の重要な教訓の一つは、継続的な安全性の向上を怠ってはならないということです。新規制基準において、特定重大事故等対処施設の設置は、重大事故対策の信頼性を向上させるという継続的な安全性向上の観点から設置を求めたものであります。
○岩渕友君 いわゆるテロ対策施設というふうにも言われていますけれども、我が党は、テロなどが発生する可能性、それはいつでもあるわけなので、運転開始時までに特重施設が設置されていなければならない、そうでなければ運転は認められないというのが本来の在り方だというふうに考えています。
ところが、設置を義務付けたにもかかわらず、新規制基準が施行された二〇一三年の七月八日から五年間の経過措置期間が定められました。特重施設が完成していなくても運転してもいいという猶予期間ということです。二〇一六年に経過措置規定が改正をされて、経過措置期間の起算点が本体施設の設計及び工事の計画の認可が行われた時点へと見直されました。
その後、二〇一九年に事業者側から現地工事の大規模化、高難度の工事といった状況変化が生じているということを理由に経過措置の延長を求められましたけれども、規制委員会はこれを拒否している、ですよね。そして昨年、原子力事業者やメーカーなどでつくるATENAが建設業界の労働環境の変化を理由に経過措置期間を三年延長するよう要求した際にも、他律的要因として、要因としては認められないというふうにしていましたし、今年二月の規制委員会でも、事業者側からの申出は認められないというふうにしました。ところが、経過措置期間の起算点を本体施設の使用前確認日、言い換えれば運転開始の日とするということに変更をされました。
委員長に伺うんですけれども、認めないというふうにしていたものをなぜ認めたのでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) お答えいたします。
特定重大事故等対処施設につきましては、本年二月、働き方改革というものは他律的要因に当たらないと判断をいたしまして、特定重大事故等対処施設の経過措置期間の延長そのものについては認めることができないと判断をいたしました。この点につきましては、二〇一九年に、やはりその工事が困難であるということで特定重大事故等対処施設の経過措置の延長は認められないとした判断と同等でございます。
一方、過去十年間の工事の実績を原子力規制委員会の方で確認を行いました。その結果、電気事業者が昼夜を問わず現場工事等を実施するなど努力をしたにもかかわらず、経過措置期間内で工事が完了したプラントがほとんどなかったという実績がございました。この実績を踏まえまして、規制の継続的改善という観点から、現行の特定重大事故等対処施設の経過措置の考え方を見直すことといたしました。
○岩渕友君 今、答弁で、過去十年間の実績を見ればその経過措置期間内に設置が完了したところがほとんどなかったんだというふうにおっしゃっていたわけなんですけれども、これ、期間を守らせるのが規制委員会の役割だというふうに思うんですよね。決めた以上はやっぱりこれ守らせる必要あるというふうに思うんですよ。
このことによって、本来停止するはずの原発が稼働し続けることができるということになります。現在稼働中の原発で特重施設が設置をされていない原発に、女川原発の二号機があります。現状の設置期限と完成予定はいつなのか、教えてください。
○政府参考人(金城慎司君) お答え申し上げます。
東北電力女川原子力発電所二号炉の特定重大事故等対処施設の法定の設置期限は二〇二六年十二月の二十二日であります。一方、事業者が公表している完成予定時期は二〇二八年八月と承知しています。
○岩渕友君 今答弁にあったように、まさに今回の変更によって、特重施設が設置をされていなくても稼働を停止しなくてもいいということになるわけなんですよね。特重施設がないということは、バックアップ施設がないまま運転し続ける期間が長くなるということになります。これ、何のために設置を義務付けているのかということになるんだというふうに思うんですね。
特重施設はなくてもいいと、バックアップ機能はなくてもいいというふうに言っているのと同じことになるんじゃないでしょうか。規制委員長、いかがでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) テロに対するリスクというのは可搬型設備などで十分対応可能であり、特定重大事故等対処施設がバックアップ施設であるという位置付けから、これは明白でございます。特定重大事故等の位置付けというのはみじんも変わりませんが、再稼働の前提となるSA設備によって、重大事故のリスクは極めて低いレベルまで低減をされております。
特定重大事故等対処施設というのは、そこから故意の航空機衝突といった極限状態に備えるバックアップの設備でございます。本体稼働後に、このバックアップが完成するまでの期間、仮設、可搬型設備等の重層的な配備でリスクを管理するということは、科学的、工学的にも合理的な判断だというふうに考えてございます。
○岩渕友君 二月の十八日に行われた規制委員会の中で規制庁が、特重施設は信頼性向上のためのバックアップ対策であり、その有無によってリスクに大きな変化はないと、こんなこと言っているんですよね。
今も答弁ありましたけれども、新規制基準に適合したプラントであれば、その可搬型の設備によって重大事故対策は取られているので、特重施設は可搬型の対策の信頼性を上げるものという発言もやっているわけなんですね。こんな理屈ないというふうに思うんですよね。やっぱり公設の施設が必要だということだと思うんですよ。
一方で、同じこの委員会の中では、運転時にリスクが上昇をするので、特重施設が完成していない状態での運転期間を大幅に増やさないことが前提だという話も出てくるんですよね。
今回の変更というのは、この前提と矛盾する中身だというふうに思うんですね。今回変更することになった議論というのは、事業者側に求められたことがきっかけとなっています。安全よりも事業者の都合を優先させる規制の後退だ、こういう声も上がっているんですよね。
今回の変更は規制を緩和させるものにほかならないんじゃないでしょうか。委員長、いかがですか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 今回の特定重大事故等対処施設の経過措置の考え方の変更の決定といいますのは、二〇二六年の起点の見直しから、十年間の運用の実績、今、十二基中の十一基が期限を守れなかったという客観的事実に基づいた規制の実効性の適正化であるというふうに受け止めております。原子力規制の根幹というのは、常に最新の知見を取り入れるバックフィットにあります。しかし、その要求が現場の実態と乖離をして達成不可能なものになっていたのであれば、それは規制としての評価改善が機能していないことを意味します。設工認の認可ではなく、使用前確認日を起点とすることで、安全対策の質を落とさずに確実に施設を完成させるという現実的な道筋を示したものでございます。
バックフィットという強い権限を持つ原子力規制委員会であるからこそ、その行使には自制的であるべきだというふうに考えているところでございます。
○岩渕友君 改善というふうに言うんですけど、これもう実際には改悪ですよ。黒を白と言っているのと同じことだというふうに思います。これ規制緩和にほかなりません。
三月の予算委員会で、総理が施政方針演説で原子力規制委員会により安全性が確認された原子炉の再稼働を加速するというふうに述べているけれども、原発の安全性の確認というのは規制委員会が行っているのかというやり取りを山中委員長としました。覚えていらっしゃるというふうに思います。
改めて伺いたいんですけれども、規制委員会はこの原発の安全性の確認を行っているのでしょうか。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 電力会社は、原子炉等規制法に基づいて、原子力発電所を規制基準に適合するよう維持する義務が課せられております。これらの基準に適合していない原子力発電所は運転することはできません。原子力規制委員会は、規制基準への適合性について、審査、検査を通じて厳正に確認をしております。
こうした規制基準への適合性が確認された原子力発電所については、法律に基づいて、運転に当たり、求めてきたレベルの安全が確保できていることを確認、監視することが我々原子力規制委員会の責務であると考えております。
○岩渕友君 今答弁にあったように、規制委員会はあくまでも規制基準に適合しているかを確認しているということなんですよね。
委員長は、その予算委員会でのやり取りの中で、規制基準への適合はリスクがゼロであることを保証するものではないということも併せて答弁をしているんですね。こういう認識でいいかということを改めて確認をしたいと思います。
○政府特別補佐人(山中伸介君) 安全確保の実施あるいはその活動というのは、一義的に事業者に責任がございます。委員お尋ねの規制基準への適合というのは、リスクがゼロであるということを保証するものではございません。一〇〇%の安全を保証するというものでもないという認識に変わりはございません。
○岩渕友君 リスクがゼロであることを保証するものではないということです。
規制基準に適合をしたからといって、原発が抱える危険がなくなったというふうには言えないわけですよね。ほかの基準、ほかの技術とは違って、やっぱり一〇〇%の安全が求められるのが原発だというふうに思うんですよ。
これなぜかというと、東京電力福島第一原発事故、そしてその被害を見れば、今も数万人の方々が避難を強いられていて、事故の調査さえ立ち入って行うことができないというのが現実なわけですよね。廃止措置どうするのかということさえも決めることができていないわけなんですよね。
原発事故の最大の教訓は、原発を推進する経産省の中に規制する役割を持った当時の原子力安全・保安院があったこと、規制する側が電力会社に取り込まれる規制のとりこの構造に陥っていたということにあります。
ところが、事業者側の求めに応じるように、規制基準で求めている特重施設が設置されていなくても、運転できる期間延ばすことになる決定が行われているわけですよね。これ、同じ誤り繰り返すのかということだと思うんですよ。これで規制委員会が独立していると言えるのかということも甚だ疑問だと言わなくてはなりません。
規制を緩和させるようなやり方は今からでも見直すべきだということを求めて、質問を終わりたいと思います。
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