参院農林水産委員会は23日、米の安定供給の責任を生産者に押しつける食糧法改定案の参考人質疑を行いました。改定案は、政府の役割としていた「生産調整」に関する規定を削除し、代わりに「(農家による)需要に応じた生産」を明記しました。
意見陳述で、農民運動全国連合会(農民連)の長谷川敏郎会長は改定案について、農家に「需要に応じた生産」を主体的に行えと努力義務を押しつけ、国家の責任を肩代わりさせようとするものだと批判。「令和の米騒動」は、長年の「需要に応じた生産」政策の失敗にほかならず、「この反省もなく『需要に応じた生産』を明記するのは恥の上塗りだ」と述べました。
国が需給と価格安定の責任を持つと定めた現行法に対し、改定案は「需給の安定を図り、これを通じて価格の安定化を図る」と変更されていると指摘。需給が安定すれば、価格も安定するだろうという無責任な考えだと批判しました。
武本俊彦新潟食料農業大学名誉教授は、政府の責任で需給調整をする規定を削り、生産者が需要に応じて生産するとの努力義務規定を置くならば、「予想できない価格変動による経営への打撃を緩和する措置を政府は行うと公言したほうがいい」と述べました。
日本共産党の岩渕友議員は、昨年収穫の米価が高かったにもかかわらず離農が続いているとし、農家や米作りの現状について質問。長谷川氏は見通しが立たないと述べ、「所得補償や価格保障が5年、10年と続く保証があって初めて、今日の事態は打開できる」と強調しました。
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221-参-農林水産委員会-012号 2026年06月23日
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
三人の参考人の皆様、今日は貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございます。
初めに、長谷川参考人にお伺いをしたいと思います。
参考人が、中山間地域で農業をされていると、お米作りもされているというようなお話だったと思うんですけれども、昨年、出来秋の米価、非常に高かったわけですけれども、それにもかかわらず、それでも離農が相次ぐという事態になっています。
その農家、農村、そして米作りの現状について農家の立場からどのように見ていらっしゃるか、お伺いできればと思います。
○参考人(長谷川敏郎君) 現在、農業者、基幹的農業従事者の平均年齢が七十前後、そして八十歳以上がもう二十何万人、百万人のうち四分の一。ですから、全員長生きはしてほしいし元気に頑張ってほしいとしても、そうした年齢の問題が出てくることは確実で、生産基盤が後退しています。
ですから、昨年、若干というか大きく農協等の買入れ価格も向上しましたけれども、だからといって、今年も来年ももっと頑張ろうという形には単純にはならない。去年高くなった分は、これまでの赤字を何とか穴埋めできたということが一番多い、新規投資をできるようなお金ではなかったということも含めて、やっぱり先行きの見通しが立たない。毎年こういう乱高下が起こるのであれば、もう作れないということだと思っています。
そうした意味では、本当に、この前も私どもの集会で話していたときに、俺、農業やめるぞと言ってやめる人はいないよと、静かにやめていく、そういうのが今農村の現実だというふうに思っています。
○岩渕友君 今お話しいただいた農家や農村の実態を踏まえて、お三方にお伺いをしたいんですけれども、今回の食糧法の改正案ですけれども、今お話をいただいたような農家の現状を解決するものになるかどうか、それぞれの参考人のお考えをお伺いしたいと思います。
○参考人(西川邦夫君) 御質問ありがとうございました。
今回の食糧法の改正案によって、直接的にそういった、現在、農業、農村が置かれている状況が劇的に改善をしていくというふうな性質のものではないというふうに考えております。
ただ、この改正案には、現在の稲作の抱える最大の問題は、やっぱり需要の減少だと私も思っておりますので、それを反転させるような政府の責務が盛り込まれたというふうなことは、やはり大きな進歩ではないのかなというふうには評価しているところでございます。
○参考人(長谷川敏郎君) 現在の出ている改正案では、基本的には全く解決しません。
やっぱり所得補償、価格保障をした上で、そうしたことが五年、十年と先も続くという保証があって初めて今日の事態は打開できると思っています。
○参考人(武本俊彦君) ありがとうございます。
結論的に言えば、今おっしゃった御質問の趣旨は、やはり基本法に遡って、どうするんだという、こういう議論をしない限りは、やっぱり中長期的に日本農業を、国がどうやって、どういう方向に持っていきたいのか、そのための手段として何を用意するんだということを示さない限りは、いつまでも続けられるかよという状態に多分なっているんで、単年度の価格がどうなったかということで結論を出しているわけでは農家はないんだろうと思うわけです。ですから、そこのところをどうするかというのが非常に重要だと思います。
それを前提にした上で、少なくとも食糧法改正案について言えば、新しい五条の規定ぶりについては、過度に生産者が何か負担感を持つような、需給調整を任務として負わされるのではないかという危惧の念を持たさせないようにするための趣旨を明確化することと、政府はその代わりに何をやるんだということのその保証を出さない限りは、米の安定流通は担保できない。その意味でいうと、食糧法として最低限の国の役割はそこにあるんだろうなということで、まあ文言はいろいろ変えてもいいと思いますけど、つまり、政府としては非常事態に対してきちんと対応しますよという方針を示さないと、多分今の流れは止まらないと私は思っています。
以上です。
○岩渕友君 貴重な御意見いただきまして、ありがとうございます。今後の法案審議にも是非生かしていきたいというふうに思っています。
それで、前回の法案審議、既に一回やっているんですけれども、その中で私の方から、制度として備蓄米の出し入れで需給の調整をしてはどうかという提案をしたんです。
お三方にお伺いをしたいんですけど、米が不足している場合には備蓄米の放出ができるわけですけれども、米が過剰な場合の買上げについては法には書いていないということで、その買上げが必要だというふうに思うんですね。今日もう既に少しこの問題についてやり取りあるわけですけれども、改めて、お三方がどう考えるかということについて教えてください。
○参考人(西川邦夫君) 御質問ありがとうございました。
先ほども回答差し上げましたけれども、その民間備蓄の基準というのを、不足じゃなくなったときに戻すところで一定程度引締め効果というのは期待できるのではないかなというふうに考えております。
その上で、先生がおっしゃった、ほかの例えば政府備蓄ですとかそういったところでの買上げを増やしたらどうかというふうな御趣旨の御質問だと思うんですけれども、なかなかやはり、どういった基準で、じゃ、放出するのか、若しくは買い上げるのかというところがかなりやっぱり難しいなというふうには思っております。
と申しますのも、それによって、要は、例えば政府が買い上げてくれるかもしれないとか政府が放出するかもしれないというふうなところで、やはりマーケットに対しては、何といいますか、不安定感というものをやっぱりそこでどうしても発生させてしまうわけなんですよね。なので、例えば政府が何かを匂わせることによって、それで価格が変動するというふうなことは、やはり生産者の経営安定ですとか消費者の生活等を考えると余り望ましくはないのかなと。だから、そこはやっぱり慎重に扱う必要があるのかなというふうに考えているところでございます。
○参考人(長谷川敏郎君) お米の供給安定の基本的な問題として、生産者の生産調整、量も作物も含めて生産調整していく、備蓄の出し入れをする含めて、また輸入もありましたけれども、そういう柱があるわけですよね。それはもう基本に決まっているわけで、過剰なときには買入れしないなんということは書いていないわけです、機動的に運営すると書いてあるだけなので。
やっぱり、そういう意味でも、過剰なときになったら政府がちゃんと買い入れる、そして不足のときには出すという、これはきちっとやっていただきたいし、それと価格の保障というものを含めて、やっぱり多様な手段を政府がちゃんと使って安定させるということを今改めてこの審議の中では確認をしていただきたい、明記していただきたい。それがない限りはやっぱり駄目だと思うんですね。
民間備蓄の問題も先ほど話がありましたが、実際には、いざというときにはこれは適用除外なんですね。ですから、いざというときには、幾ら持っていなさいということはもう、数字減らしますとか適用しませんということなので、いざというときには何も役に立たないみたいなことも明確にされていますし、区分管理もしなければ現物確認もしないし、やっぱりこれでは、それを調整に使おうというのは無理です。
○参考人(武本俊彦君) 御質問ありがとうございます。
備蓄の関係は私の冒頭の説明でも申し上げましたように、そもそも今回の改正案は、国家備蓄についてどうするんだということは全く言っていないわけですよね。だから、機動的に運営すると言うのなら、機動的運営の中身をまずは最低限書かなきゃ駄目だろうと。
そのときに、要するに、端的な話は、今は不足のときに放出をするということは分かっているわけだから、放出するときはどういうふうに放出するんだというのを言わなきゃしようがないですよね。そうすると、今の棚上げ備蓄方式しか書いていないその基本指針だと何もやらないことになっちゃうんですよ。だから、棚上げ備蓄そのものもやめるのか、こういうときには棚上げ備蓄を回転備蓄に変えるとか、何かその考え方の基準を示す必要があるんじゃないんですかと私は思います。
多分、多くの先生方がそう思っておられるのかなと思うのは、暴落したときにどうしてくれるのというときに、少しでも買ってあげたらいいじゃないかという議論ですよね。備蓄として買ってあげたらいい、隙間があるんだからという話だから。それやるんだったらやるで、今の指針には少なくとも書かないとできないと思いますよ。
それは、だって、財政の影響は余りにも大き過ぎるし、もしそれをやるとすると、競争入札のやり方じゃなくて多分随意契約で、この値段で買ってあげるかみたいな形をやれるようにしなきゃしようがないんですよ。そうすると、もう会計法の改正というか、特例法を作るという話に多分なるはずなんですよね。
だから、そういうことをまず議論をして、それを食糧法の条文としてどういう書き方をするかというのがあって、その上で、もしかしたら特例法の、会計法の特例に関する法律を作らなきゃいけないかもしれないしという話になっていくんだろうと思うんです。
それから、あと暴落対策として備蓄を使えという話は、備蓄の定義を変えていくという話になってきますから、そこは、本気になってそれをやるんだというんだったら国会で決めればいい話だと思いますよ。
多分一番困るのは、食管法のときの教訓に学ぶと、野方図に買わされることになるんですよ、政府は、かわいそうだからといって。だから、たが、たがというか歯止めをどういうふうに掛けるんだ。そうすると、備蓄運営ルールじゃないけど、売り渡した隙間の分だったらそこまで買っていいでしょうというところまでは何とか言えるかなとかね。その議論をやってもらわないと、多分政府だけでは決められないと思いますよ。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、これもお三方にお伺いしたいんですけど、予測できない事態に対するセーフティーネットというお話も今日あったと思うんですけれども、天候であるとか需要の変動だとか国際情勢などによってその需給が予測できないという事態が起きるわけですよね。備蓄米の出し入れだけでは対応できずに農家が赤字になるようなことがあった場合に直接支払がやっぱり必要なんじゃないかというふうに思っているんですけれども、参考人の考えをお聞かせください。
○参考人(西川邦夫君) ありがとうございます。
直接支払、私も別にあってもよろしいのかなというふうには思っております。ただ、これも先ほど申し上げた点ですけれども、その直接支払の、やっぱりそれ、どこにその直接支払の基準を設けるのかという点がやはり非常に難しいかなと思っております。
ですので、例えば直接支払をするのであれば、固定払いのようなもの、単価をあらかじめ決めてしまうような、そういった方が生産者の経営判断等に対しても中立的な形になってくるのかなというふうには思っているところでございます。
○参考人(長谷川敏郎君) 直接支払は、基本的にその価格の調整の問題の価格保障とは違って必要だというふうに考えています。
そしてまた、先ほどの話で、備蓄の問題では、私の参考資料に食糧部会の資料も載せていますが、二〇一三年、一四年から九十一万トンでぴったり動いていないんですね。こういう運用の仕方はどこで誰が決めたのか分からないんですよ。本当に備蓄の在り方は、武本先生おっしゃるように、それまでは、多いときにはたくさん買い、生産が少ないときには出すということもやってきた歴史があるわけですね。これがどこでどう変わって、なぜこうなのかというのは国民に示されていないと思うんです。是非よろしくお願いします。
○参考人(武本俊彦君) ありがとうございます。
今の御質問は、多分、その備蓄を暴落対策で使うというところに踏み出して、なおかつ直接支払という話には多分ならなくなってきて、つまり、余計な在庫を政府に抱えさせることをやるぐらいだったら、元々余計なんだから処分してもらった方がいいんですよ。つまり、餌とかなんとかに、本当に米粒として存在しないようにしてもらうというのが手っ取り早い。それに対しては膨大な財政負担が掛かります。
だから、その上で、政府が抱えるという話とかそういう話とは切り離して、再生産の観点に立つのならば、直接支払で整理をし、過剰な部分について、本当に困っているんだったら、生産調整が残っているんだったら生産調整の面積拡大というのがあるんだけど、それもないということになれば、過剰がどこかで民間にたまっちゃうという話ですから、そこをどうするんだという話になってくると、多分それは餌の方に売却するように補助金出すしかないかもしれない。
だから、その辺りの話を、どこまで財政が負担していくんだという話になってきますので、トータルで一回議論をしていただいた方がいいだろうと、政治の場でと思います。
○岩渕友君 ありがとうございました。以上で終わります。
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