2021年2月10日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通したテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「子どもをめぐる課題」について
女性の支援拡充必要
参院国民生活・経済に関する調査会は10日、「困難を抱える人々への対応(子どもをめぐる課題)」について参考人質疑を行い、日本共産党の岩渕友議員が質問しました。
岩渕氏は、コロナ禍のもと未成年者がSNSを介して性被害にあう事例が増えているとし、ワンストップ支援センターやシェルターの拡充が必要だと指摘。相談などに対応するために必要なものは何かを質問しました。
NPO法人ピルコンの染矢明日香理事長は、相談支援の体制が限られるため公的な相談機関につなぐことになると説明した上で、「各相談機関でも差がある」「家庭環境が必ずしも安心・安全な場所ではないという子どもたち向けに、一時的に避難できるような場所の拡充も必要」と答えました。
岩渕氏は、ジェンダー問題がさまざまな問題の根底にあると指摘。染矢氏は「海外と比較すると日本は、重要な意思決定に関わって男性の意見が主で、女性の声が反映しづらい状況がある」「いろいろな性別の在り方がある中で、男らしさや女らしさの思い込みに自分たちが自覚的である必要がある。差別や不当な扱いに対してノーと言える社会づくりが非常に重要」と応じました。
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東京都調布市立飛田給小学校校長・山中ともえ参考人 意見陳述
○参考人(山中ともえ君) それでは、よろしくお願いします。(資料映写)
私、調布市立飛田給小学校の校長をしておりまして、校長歴としてはもう十一年目となります。校長歴長いんですが、私、元々は障害のある子供の通級指導を教員として担当しておりまして、その後、教育委員会の方、都の教育委員会の方に指導主事として入りまして、行政職に十年ほどおりましたが、ちょうどそのときに特殊教育から特別支援教育へという転換の時期を迎えまして、それに関する仕事に携わってまいりました。その後、小学校の校長として出たのですが、特別支援教育をもう推進するという時期でしたので、インクルーシブ教育システムということでの研究協力校もしたりして現在に至っております。
その過程の中で、私の経歴、そういった経歴がありましたので、全国に特別支援学級や小中学校に設置されている通級による指導教室の校長先生の会があるんですけれども、全国で一万八千校余りが加盟しております。略して全特協と申しておりますが、その会長の方を昨年度までさせていただいておりましたので、その経験なども併せて今日お話しさせていただければと思います。
このような会、障害のある子供について先生方がこのような勉強会、委員会している中に私を参考人として呼んでいただいたこと、大変有り難く思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
インクルーシブ教育ということで、済みません、私が持ってきたの、どうしてもきちっとしたものをと思って、文科省の資料の中から取ってきていますので、もう先生方も御存じのものばかりだと思いますが、日本の教育制度って今はこういうような、上に行けば行くほど重い子供ですが、というふうな形になっているんですけれども、日本の教育制度というのはこういう形になっていて、もちろん小中学校で通常の自分の行くべき学校、ところで学んでいる。けれども、障害がある程度によってはだんだん、本当に自宅にいて、本当に重くて学校にも行けない子供もいます。そういった形は訪問教育というような形で、日本の場合は全員とにかく就学するということは、ほかの国に比べてとても私は勝っているところだと思います。どんなに重い子でも、必ず子供は成長する、そこに必ず教員を配置するという考え方でやってきています。
インクルーシブ教育ということで、多分、特別支援学校とか、場を別にしているところですね、そこのところが課題になるとは思うんですけれども、別に差別とかということではなくて、その子たちが一番伸びる状況というのを考えた場合の多様な学びの場だと思っています。それにしても、その特別支援学校とかだけではなく、小中学校の中に特別支援学級、特別支援学校、場を別にしたところに行くほどではないんだけれども、同じ学校の中でそういう場をつくって、そこで特別な教育課程を組めるというような学級ですとか、それから、ほとんど通常の学級にいるんですけれども、一部特別な指導を行うという通級指導ですね、私の学校には通級指導が設置されているんですけれども、そういった通級指導ですとか、あとは、今いろいろな支援の手が各学校に入っているところです。
この教育制度も、今インクルーシブ教育システムということで進んできているんですけれども、日本は元々、明治の時代から京都盲唖院というものが設置されていて、まだそのときは全員対象とかということではないんですけれども、視覚障害や聴覚障害に対する指導というのはずっと行われてきて、ずっと脈々と継承されています。それが養護学校から特別支援学校になって、養護学校時代には全員就学とか、そういうような過程を経て今に至ってきていると思います。
今、障害者の権利条約を批准して、合理的配慮だとか、それから障害者差別解消法の中で合理的配慮を学校は提供することというようなことが進んできているわけなんですけれども、そこの辺の周知だとか進んでいく行き方にまだ課題が大きくあるかなというふうに思っています。
障害者権利条約の関係で、その委員会からの初審査が今年度あるんですね、もう多分先生方、皆さん御存じだと思うんですけれども。それでどういう評価が日本に対して下されるか、その評価に対してまたどういうふうに次進んでいかなければいけないのかというような、今そういう時期に来ていると思います。
これも御存じだと思うんですが、これも文科省の資料なんですけれども、特別支援教育を受けているというんですかね、子供の割合というか人数だったりするんですけれども、これ十年前と比較して、黄色の矢印が十年前と比較した数字なんですけれども、特別支援学校も特別支援学級も通級指導も全部増えているんですね。今、子供の数、日本全体では減っている、減少しているわけなんですけれども、こういう特別支援教育を受ける子供は増えていると。特に、特別支援学級と通級による指導、ここがやっぱり増えているわけですね。通級指導というのはやっぱり、平成五年に制度化されたんですけれども、通常の学級にいて一部やっぱり特別な指導を受けられるというようなことが保護者も選択されるということかなというふうに思っています。こんな形で増えているんだよということですね。
インクルーシブ教育という、場を、必ず場を一緒にするというようなところになってきますけれども、交流及び共同学習ということで、これはもうずうっと前から推進されています。特別支援学校とあと小中学校が学校間交流であったり、それから東京都は副籍と言ったり、埼玉の方では支援籍なんというふうな、籍ですね、言い方しているんですけれども、特別支援学校のお子さんが居住地の学校に行くというようなことがなされたりしています。
ただ、やっぱりここのところの課題があって、じゃ、そんなにたくさん交流及び共同学習、交流の時間が持てているかというと、なかなか、例えば学期に一回程度であったりというようなことがあります。そこのやっぱり難しさというのは、周りの理解であったり、それからそういうそのようなお子さんが行くときにひっついていく人がいないとか、そんなような課題もあろうかなと思います。それから、ずっと言われているんだけれども、まあちょっとなかなか進んでいないかなというようなところがあります。
これは文科省の方も交流及び共同学習のガイドなんというのを改訂して出していただいたりしているんですけれども、これも、何というんですかね、なかなかちょっと進んでいない状況があるかなと思います。
ただ、特別支援学級は、同じ小学校、中学校の中にある学級ですので、そういったところでは、例えば給食だったり行事だったり、授業以外のところでも交流はしやすい状況にあります。
それから、今回いただいているテーマがインクルーシブ教育ということなんですけれども、このインクルーシブ教育システムは、平成二十四年の、ちょっと長いんですけれども、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進という報告が中教審の初等中等教育分科会の方から示されて、これがやっぱり示されたときは、結構学校は、まあ大きいショックというんですかね、あっ、変わっていくんだなという状況ではあったんですけれども。この中でも、多様な学びの場ということで、特別支援学校や特別支援学級が必要ではないということではないんですね、必要ではないわけではないんだけれども、教育委員会とか上の方からあなたはここに行きなさいというふうに決めてそこに行くということではなくて、就学相談をきちんとして、保護者も合意した上で、合意形成に基づいて学校を選択していきましょうという動きがあります。
ただ、そうはいっても、まだ全国ではなかなかそこのところが周知が進んでいなくて、保護者や本人とのやり取りがうまくいっていないというような部分も散見されます。
これがそのときに変わった就学相談の仕組みで、ちょっと細かいんですけれども、要するに、簡単に申し上げますと、上から決めるのではなくて、早期から障害のある子の場合は相談を充実させていって、保護者と十分な合意形成を経て就学先を決定していきましょうと。その後、就学先を決定した後もなんですけれども、きちっと、転学したりとか、学びの場、柔軟な学びの場ということで、ここに示されているんですけれども、現状ではなかなか、例えば特別支援学級や特別支援学校に就学した場合に、その後またじゃ通常の、良くなったから通常の小中学校に行こうねというような動きは、全くないわけではないんですけれども、まだまだ状態として多いということではありません。この辺もちょっと、柔軟な就学相談の仕組みというようなところも大切かなと思っています。
これ、ほかの県では、この就学相談に関わる方がやっぱりかなりいろいろスキルがないと、保護者ときちんとお話をしたりとか、いろんな場があるよとか先の見通しとかということを保護者ときちっと相談していくのに、そういった適切な人材がやっぱりなかなか配置されていないという状況は、この前のちょっと校長同士の集まりの中でもやっぱりそういった意見が出されました。
それから、これが特別支援学校に就学する基準ですね。学校教育法施行令の二十二条の三という言い方を私たちしていますけれども、この中には視覚障害云々、聴覚障害云々というふうにあるんですけれども、今は、例えば医療的ケアの話がよくあるんですけれども、医療的ケアを受けていて、この基準でいったら特別支援学校に行くことが相当なんだけれども、例えば看護師さんを付けたりして小中学校に入っているですとか、車椅子でしたらバリアフリー、施設をバリアフリー化して通常の小中学校に行くとか、かなりそういったことは進んでいます。
ただ、施設にしてもその看護師の配置にしてもやっぱり予算の伴うことなので、なかなかその予算がうまく、適切に人材配置とかにつながっていかないというようなこともあります。なかなか全ての学校に今エレベーターがあるという状況ではないので、車椅子のお子さんなんかも難しいなということもあります。ただ、視覚障害なんかの拡大教科書ですとか点字教科書の配付、そんなことはなされてきています。
今ここに、就学相談における課題というのは今ちょっとお話をしてきたところなんですけれども、この保護者の意見、意向を尊重した就学相談というところがまだまだ、言われているんですけれども、実際、当事者の保護者の方々からは自分たちの意見がうまく聞いてもらえなかったというような話がよくあります。
ただ、特別支援学校とか別な、多様な学びの場に行ったからすごく成長した、そこを選んで行くという方ももちろんいるわけなんですね。だから、特別支援学校とか特別支援学級、やっぱりそこが良かったということももちろんあるわけです。そこを選んで行くための専門知識のある相談員の配置だとか、こういったところが課題だというふうに思います。
ちょっとこの辺はちょっと見ていただいて。
それからあと、ここからはちょっと、今小中学校でこんな状況ですよということなんですけど、ちょっとこれは自分の学校の例を取ってきているんですけれども、例えば、今は発達障害のお子さんとか、通常の学級、通常の小中学校に国の方の調査で大体六・五%くらいはいるよねというと、一クラスに二、三人はやっぱり対象となる子供、発達障害と、はっきり発達障害と診断が出る子もいますけれども、出ない子もいます。そういう中で、学校ではいろいろちょっとレベルを考えて対応しているわけですね。
ユニバーサルデザインなんというふうによく言われていますけれども、そういった授業の仕方で、まず先生が全員が配慮していこうと、それから、その後は少し支援員だとかボランティアとかそういったものを付けましょうと、それから、更にそれでもちょっと難しければ通級を活用しましょうとか、それから特別支援学級行きましょうとかと、そういうレベルがあるので、そういったレベルを、個別の指導計画を作って、特別支援教育コーディネーターが中に介在して、この校内委員会というところで進めていっています。
ただ、この特別支援教育コーディネーターというのがかなりキーパーソンになるんですが、これは全然、今普通の教員がただそれを任命されているだけで、時間軽減だとか特別な人がこれに当たっているわけではないんですね。この辺がイギリスなどではもう特別支援教育コーディネーターとしてきちっと専任の人が配置されていたりして、まあなかなか、日本の場合だとコーディネーターが学級担任もしながらこのコーディネーターもやるというのはなかなか難しいねというような話はよくあります。
それから、今言った分かりやすい授業を目指してと、一番ベースのところではこのユニバーサルデザインなんというふうに言われていますが、こういった形でやっています。ただ、これも、ユニバーサルデザインという言い方をしているんですが、アメリカとかできちんと法的な制度があったりというわけではありませんし、こういうことをするから予算が付くということでもないので、これも学校の今自助努力に頼っているというようなところです。
それから、先ほど言いました障害者差別解消法の中で、合理的配慮というのはもうしなければいけないよ、提供しなければいけないよということなんですけれども、今学校でできている合理的配慮というのは、ちょっとノートにルビを振ってあげたり、一行物差しなんて言っているんですけれども、こんなことをしたり、ここは本当にこれぐらいだったら学校でできるかなというレベルのことなんですけれども、ただ、これすらもまだ保護者から言ってきたときに対応できないというんですかね、なかなか対応していない学校もあります。ただ、本当は、もう合理的配慮といったときに、保護者がこういうふうに言ってきました、じゃ、保護者、当事者も交えてきちんと相談をしてこうしましょうといったときに、調整に入る調停機関というものもちょっとはっきりしないなというのが現状であります。
それから、これは校内の体制の、まあこんなようなのを、これも本当自分の学校ですけど、支援員だとかスクールカウンセラーとかボランティアとかいるんですけれども、これが制度としてあるところと、まだきちんと制度としてないところがあります。
それから、こういった人をコーディネートしていくのも一つの役割かと思うんですけど、なかなかコーディネートする人材、さっきのコーディネーターのお話しましたが、学級担任をやりながらコーディネーターをするというのはなかなか難しいかなと思います。
今こんなやって、あと算数少人数だとか、小学生、三十五人学級の話ももう進んできましたので、やっぱりより丁寧に少ない人数でやっていくとか個別指導とか補習とか、こんな体制も学校できちっと組織的にできればいいんですが、なかなかこれも組織的にできていない学校もまだあるというような状況です。
それから、先ほどお話ししましたが、通級による指導というのは部分的に、例えば週に一回だったり二回だったりというようなことで指導を受けられる、発達障害のお子さんなんかが主なんですけれども、ということで、これはインクルーシブ、自分は通常の学級にいて、本当に時々通うという意味ではとても効果的かなと思っています。ただ、障害の程度が重いお子さんはやっぱりこの通級だけでは時間的には足りないということがあるので、特別支援学級、さらにはもっと専門的な教員や専門家のいる特別支援学校を選んで行くということも大事なことかなと思います。
それから、障害のある子の場合、通常の小中学校で受け入れても、関係機関と連携していくことはもう非常に大事です。学校だけでやっぱり抱えていくことはできないんですが、こういった関係機関ですね、この辺もチーム学校としてどこまで今できているかなというところです。私の学校は、自分のところと関係する機関というものを把握しておいて連絡取ったりというようなことをしていますけれども、なかなかできていないというところもあります。最近は放課後等デイサービスを利用している方もすごく増えてきています。
それからあと、当事者についてもなんですけれども、インクルーシブ教育を進めていくためには周りの子供の理解を進めていくということがすごく必要だと思っているんですが、なかなかこれも、障害者理解、障害理解というふうに言われていますけれども、系統的に学校でそういう教育が進んでいるとは言えない状況があります。これもすごく大事なことかなというふうに思っています。今、オリンピック・パラリンピック教育なんかでも障害者理解言われているので、そういうことと併せて、さらに周りのこの多様性を尊重する子供の育成ということも併せて必要かなと思います。ここもまだ進んでいないところかななんというふうに思います。
ちょっとここは飛ばしますが、ちょっと最後に、コロナ禍における課題ということなんですけれども。ちょっと全国の校長先生全てではないんですけど、各地区の代表の方にちょっと特別支援学級や通級による指導を受けている子供の状態だとか課題を聞いたんですけれども、やっぱり子供の状態が落ち着かないとか学習意欲がなかなかとかというような状況が報告されています。
ただ、特別支援学級の子が比較的通級による指導を受けている子供より状態が良かったというふうに校長先生は感じられているんですね。それはやっぱり、特別支援学級がしっかり多様な学びの場として子供にやっぱりきちっと対応しているからかなと。通級による指導を受けている子供は通常の学級にいるので、通常の学級でなかなか大勢の中でいろんな、何というんですかね、気持ちになったり、そこを担任の先生がなかなか全部サポートするというのは難しいのかななんというふうに思ったところです。
これから児童生徒一人一人にGIGAスクール構想でタブレットが配付されますので、これを今後どういうふうに活用していくかというのは大変に大きな課題だというふうに思っています。
以上で私の話は終わらせていただきます。
NPO法人ピルコン理事長・染矢明日香参考人 意見陳述
○参考人(染矢明日香君) どうぞよろしくお願いいたします。(資料映写)
NPO法人ピルコンの染矢明日香と申します。本日は大変貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
私は、大学生のときに思い掛けない妊娠と中絶を経験したことをきっかけに、日本の性教育の問題に関心を持ちました。大学を卒業した後、民間企業の勤務を経て、二〇一三年に性の健康教育の普及啓発を行うNPO法人ピルコンを設立し、現在、年間約一万人の中高生や保護者の方を対象とした性教育講演ですとか、あとはウエブサイトでの情報発信、海外の性教育教材の翻訳等を行っております。
本日は、性被害予防、性教育の必要性ということで、こういった構成で進めていけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
皆様、こちらの数字が意味するものは御存じでしょうか。十三歳になるんですけれども、こちらは日本の刑法で定められた性交同意年齢、つまり性行為の同意能力があるとみなされる年齢になります。多くの先進国では十六歳から十八歳に設定されていますが、日本では、こちら、明治時代に制定されたまま変わっていません。
そもそも、この性行為に同意するかどうかという性的同意について学ぶ機会が子供たちにも大人にもありません。性的同意が取れている状態は、対等な関係性の中で言葉等によって明確に確認されるものです。沈黙や曖昧な返事は同意ではなく、不平等な力関係によって言わされた同意は真の同意とは言えません。
今まさに日本の刑法の見直しが進んでいますが、性行為において暴行、脅迫や抵抗できる状態ではなかったことが証明できなければ犯罪と認められていないという課題があります。十三歳の子がレイプをされたとき、殴られたり脅されたり怖くて抵抗できなかったと証明できなければ、性行為に同意したとみなされてしまうのです。
先日、中学校での講演で生徒さんから質問をいただきました。性暴力は性犯罪になりますか。この質問に対する答えは、同意のない性行為は全て性暴力に当たります。けれど、日本の刑法では全ての性暴力を性犯罪とすることはできないというふうになります。このような回答しかできない日本の現状が子供たちに申し訳ないと思います。
性暴力の現状を見ていきますと、無理やり性交等された被害経験を持つ人は約二十人に一人の割合で、女性が多い傾向がありますが、男性にも被害者がいます。性被害に遭った時期を見ていくと二十代以下の若年層が多く、また、性被害に遭ったとき、警察、医療機関、支援機関への相談につながるのは僅かです。相談しないという回答が六割。相談できた人でも割合が最も多かったのは友人でした。けれど、若い世代の友人が必ずしも性暴力についての正しい知識を持っているとは限りません。若い人には限りませんが、周囲の無理解な言動でセカンドレイプ、つまり被害者の心の傷を更に深めてしまうという二次被害で苦しむ人もいます。
SNSを通した子供の性被害は年々増加しています。こちらも事件化したものの数字なので、暗数を含めると膨大な数になるかと思います。
そして、性被害に遭った子供たち自身が不用意で問題があるのでしょうか。是非その背景に目を向けていただきたいと思います。
性と生殖に関わる様々な社会的リスクは連鎖し得るものです。子供たちの生きづらさの背景には家庭の不和や虐待があり、その背景にはDVや思い掛けない妊娠があるかもしれません。もし性被害から妊娠に至れば、産むにしても中絶にしても大きな負担が当事者に掛かります。生後間もない乳児遺棄の事件も後を絶ちません。
性被害に限らずにはなりますが、日本の人工妊娠中絶件数は年間約十六万件、予定外妊娠の数は年間約六十一万件に及ぶと推計されています。中絶の罪悪感で苦しむ人は多く、ケアもまだ十分とは言えない状況です。このような負の連鎖を断ち切り、必要なケアや支援につなげていくことが必要です。
性被害の予防策として、まずは性被害の発生を防ぐ一次予防として、何が性暴力に当たるのかという性的同意に関する知識普及が必要です。また、性的同意を学ぶことは子供たちを加害者にしないことにもつながります。さらに、万が一性被害が発生した場合、早期に発見し対応するための二次予防として、支援先、避妊の知識の普及、緊急避妊薬のアクセス改善、性感染症の検査、治療につなげること。そして、性被害による長期的影響を最小限に抑えるために、三次予防として、妊娠、性感染症やトラウマへの適切な治療、サポート、二次被害を生まない社会への啓発も重要だと考えております。
続いて、コロナ禍において見えてきた諸課題についても触れさせていただきます。
弊社では、性の健康に関する無料相談メールを助産師などと連携して実施しております。中高生向けの性教育講演のアフターフォロー的な位置付けで細々と始めた相談窓口ではありますが、二〇二〇年のコロナの休校措置が行われてから、十代の月当たりの相談件数がこれまでの約二倍に増加しました。特に多かったのは妊娠したかもしれないという相談で、十代の妊娠、避妊に関する相談に限ると、これまで約十件程度だった相談が月四十件ほどと約四倍に増えました。ほかの妊娠相談に関わる自治体であったりとかNPOの窓口でも十代の妊娠相談の増加の報道が相次ぎました。それも氷山の一角のように感じています。私たちが運営しているピルコンにんしんカモ相談というLINEの自動応答による相談サービスがあるんですが、こちらは月当たりの相談メッセージが一万件を超えるということもありました。
若年女性のメール相談の典型的な相談事例としては、こちらのスライドにお示ししたとおりなんですが、一部組み合わせておりますが、生理が遅れて妊娠したか不安である、避妊が不十分であった、性被害を受けたなどの相談が相次ぎました。
背景には、性に関する知識の不足、コロナによる不安増、休校による性交渉機会の増加などが推察されました。また、自粛期間中、ステイホームと言われる家が子供たちにとって安心、安全な居場所であるとは限りません。親との不和や同居している家族からの性暴力、またパートナーとの不平等な関係が見受けられる事例もありました。緊急避妊薬のハードルや、経済的困窮によって数百円程度で買える妊娠検査薬すら買えない、避妊具が買えないという声も見受けられました。
私たちは、妊娠の不安に対し、緊急避妊薬が入手できないという声も多く聞いておりまして、二〇一八年から緊急避妊薬、いわゆるアフターピルのアクセス改善を求める活動をしてきました。そして、コロナ禍において、国際機関や他国では、家族計画はエッセンシャル、不可欠なものであり、緊急避妊薬はふだんの避妊の重要なバックアップとして、緊急避妊薬のアクセスを薬局での入手の検討を含め確実にというような勧告が出ている中、また若年層の予期せぬ妊娠不安の声が高まる中、今こそ声を届けたいと思い、産婦人科医や市民活動団体の代表者とともに、緊急避妊薬を薬局でプロジェクトというものを立ち上げました。
こちらのプロジェクトでは、二十五の市民活動団体に御賛同いただいた要望書と約十一万筆の賛同者を得た署名を厚労相や橋本聖子男女共同参画担当大臣にお渡しさせていただきました。そして、昨年末、第五次男女共同参画基本計画の中で、緊急避妊薬を処方箋なしに薬剤師を介し薬局で得られるように検討する方針が盛り込まれました。市民の声が政治を動かしたと胸が熱くなるとともに、当事者の声や科学的根拠に基づき緊急避妊薬の市販化を具体的に早急に検討していくことが次の課題だと思っております。
緊急避妊薬の国内外でのアクセスを比較すると、日本では医師の診療、処方箋が必要で、価格も自由診療で高額です。この年末年始には、緊急避妊薬の診療費として五万円を請求する医療機関もあったと聞いています。一方、世界の約九十か国では緊急避妊薬が薬局で販売されており、価格も安価で、若者には無料で提供する国もあります。
高額過ぎて買えない、人目も気になり産婦人科には行きづらい、夜間や土日祝日は病院がやっていない。なぜこんなに日本では緊急避妊薬が手に入りづらいのかという声を多くいただいています。私たちが約千五百名に実施したアンケート調査では、緊急避妊薬の入手にハードルがあると答えた方は九六%でした。
緊急避妊薬に関する厚労省の検討会の中で、若い女性は知識がない、日本では性教育が遅れていて適切な使用ができないという発言もありました。しかし、こちらのスライドでもお示ししているとおり、WHOでは、全ての女性及び少女には緊急避妊にアクセスする権利がある、そして、アクセス改善によって性的リスク行動は増加しないと結論付けています。また、妊娠は女性だけの問題なのでしょうか。妊娠には同じ数の男性が関わっており、男性とともに、そして社会全体で考えなくてはいけない問題です。
もし緊急避妊薬が薬局で買えるようになったら、悪用や不適切な使用につながるのではという懸念の声をいただくこともあります。しかし、その一方で、既にSNS等を通して安全性の担保できない海外製の薬が売買されているという現状があります。先日も、当時十三歳の少女が、避妊薬を譲ることを条件に四十代の男性から児童買春をさせられたという事件が起きました。この容疑者はネットで避妊薬を入手したと言います。背景には、緊急避妊薬、避妊薬の海外との価格差、入手しづらさがあると感じています。
性教育が先という声もありますが、性教育の充実を待っていてはいつまでも救われない人がいます。知識を持っていても、入手できる環境がなければ知識は生かされません。安全に入手できる正規ルートを増やすこと、そして、性教育や適切な情報の啓発によって正しい認知を広めることを両輪で進めていくことが必要です。緊急避妊薬のアクセスを適切な支援や情報を得られる機会として広げていくことも重要だと思っています。
そして、性教育についても現状と課題についてお話しさせていただきます。
元々、日本では、戦後、女子の貞操を守るとの観点から、純潔教育として性に関する教育が始まりました。八〇年代、エイズ患者が確認されたこともあり、九〇年代に性教育の関心が高まりました。しかし、二〇〇〇年代になると、そのバックラッシュが起こります。
有名な一例として、知的障害のある子供に人形を使って体の仕組みなどを教えていた東京都立七生養護学校での事例があります。この学校で行われた指導が不適切だという都議会での批判があり、メディアでも性教育バッシングが巻き起こりました。東京都教育委員会は教員の停職や減給などの処分を下しました。その後、訴訟になり、この都議会議員や東京都教育委員会の対応は不当な政治介入であったと判決が出たものの、その影響が今も尾を引いている現状があります。
二〇一八年に再び都議会において公立中学校で行われた性教育を問題視することがありましたが、このときは時代が少し変わっていました。様々な性情報が氾濫していることを背景に性教育は必要という声が多く上がり、私たちも二万名ほどの署名を教育委員会に届けました。翌年、東京都の性教育の手引が改訂されましたが、保護者の理解等の要件の下、学習指導要領を超えた内容も指導を容認するというような記載が加えられました。
今まさに性教育は過渡期にあると感じています。
現在の保健体育の指導内容は、小学校から始まって、このようにまとめられています。文部科学省が最低限の学習基準として定めている学習指導要領では、いわゆる歯止め規定と言われる記載があります。例えば、小学校五年の理科、人間が母体内で成長して生まれることを取り上げる際、人の受精に至る過程は取り扱わないとの記述があります。また、中学校の保健体育では、思春期における生殖機能の成熟を扱う際に妊娠の経過は取り扱わないとされています。これは一読して意味が取りづらいですが、要するに性交を教えないと解釈され、現場の教員からは性交や性行為はNGワード、どこまで具体的に教えていいか分からないと戸惑う声も聞いています。
中学校では性感染症が出てきますが、性的接触により感染するという分かりづらい説明になり、避妊、中絶が扱われません。高校になっても性行為や性的同意の扱いはなく、教科書には中絶をしないためにも確実に避妊が必要と記載がありますが、避妊具の入手方法や適切な使用に当たっての具体的な解説は十分にありません。
また、思春期になると異性への関心が芽生えるという記載があり、いわゆるLGBT、性の多様性についての解説はありません。性的マイノリティーの当事者からも、自分は存在してはいけないように思え、つらかったという声も多くいただいていることを申し添えておきます。
私たちが高校生に行ったアンケート調査では、性や妊娠に関する知識が十分に定着していない現状があります。こちらの表でもお示ししているとおり、分からないを選ぶ子が非常に多いです。
こういった中、性情報の主な情報源になっているのは、友人や先輩、インターネット、またアダルト動画、漫画といった不確かな情報源になっています。
性教育の国際スタンダードと比較しても、日本の性教育が質、量共に不十分なことが明らかです。世界の多くの国では、性に関する教育が生物や健康の科目を中心にカリキュラム化され、毎年十二時間から二十時間程度、幼い年齢から人権教育として性に関することを幅広く、詳しく学ぶことになっています。国際スタンダードでは五歳から学習目標が設定されており、先進的なオランダの性教育では国の定める学習のカリキュラムはゼロ歳から始まります。
国際スタンダードである国際セクシュアリティ教育ガイダンス、ガイダンスとも略されますが、ユネスコらが国際機関と連携し、世界中の性教育実践や研究調査を基にまとめられています。ジェンダー平等を基盤に幅広い内容をカリキュラムに基づき体系的に学ぶ点、科学的に正確な情報、多様な考え方に触れながら主体的、対話的に学ぶ点が重視されています。これは、他者を尊重しながら、自分で考えて自分でどう行動するかを選択できる力、性的自己決定力を育むことに注力されているためです。知識を身に付けるだけではなく、健康な選択のためのライフスキルを獲得し、健康と幸せの実現につなげていくことが目標として位置付けられています。
こちらはガイダンスの内容の一部抜粋ですが、生殖だけではなく、ジェンダーに基づく差別や偏見の問題、性交渉における相手との同意といったコミュニケーションなども習うべき項目として取り上げられています。九歳から十二歳の学習目標で、性交、妊娠の確認方法、避妊が出てきますし、十二歳から十五歳で、性と生殖に関する健康に影響する権利や法律について議論する、また責任という言葉も出てきます。十五歳から十八歳で、意図しない妊娠は起こるもので、全ての若い人は必要なサービスや保護を受けられるべきであると出てきます。日本の学習指導要領は、このようなガイダンスに基づくものにはなっていません。
では、家庭で性教育が十分にされているかというと、二〇〇七年の内閣府の調査では、家庭で性教育を行っている割合は二三%となっています。ガイダンスでは、全ての子供たちに性の学習機会が保障されるためには学校の役割は極めて重要とされています。家庭、地域とも連携し、学校を中心とする性教育の基盤づくりが求められます。
包括的性教育によって、性的なリスクを減らし、自己肯定感を高めるという結論が出ています。性に関することを教え過ぎると関心を高めてしまうというような、いわゆる寝た子を起こすという神話から、科学と人権に基づく性教育が必要です。
国内でも、例えば自治体単位での成功事例として、秋田県で医師会と教育委員会が連携し、中高生向けに性教育講座事業を実施しているという事例があります。元々、十代の中絶率が全国平均より高いものでしたが、事業を開始してから約三分の一に減少しました。このような自治体単位での成功事例を全国的に広げていくこともできるのではないでしょうか。
また、最近の性犯罪・性暴力対策強化に関する政府の動きとして、令和二年度から四年度までの三年間を教育、啓発の強化を含めた性犯罪・性暴力対策の集中強化期間と決定されました。
命の安全教育という名称で、性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないよう、各段階に応じた取組が明示されたのは大きな一歩だと感じています。また、その一方で、指導する教員の十分な研修機会もどのようにしていくのかという課題もあります。実績のある民間団体と連携するなど、学習効果を高めていくための施策の必要性を感じています。
これまでの課題整理と今後求められる取組をまとめさせていただきます。
学校、家庭、地域での性教育の質、量共に不足している課題に対する施策として、包括的性教育を実現する学習指導要領の見直し、教員の研修機会の充実化、地域におけるPTAや多職種連携の強化が挙げられます。
また、緊急避妊薬の入手のハードルに対して、薬局で販売するなど更なる入手の改善、避妊に関する周知の強化が求められます。
最後に、性に関するトラブルを抱える子供の支援として、北欧や欧米で普及するユースクリニックのような若者に寄り添う相談機関、支援の充実、またその周知が求められます。
子供は性について無知のままでいい、若しくは性被害や妊娠を女の子の自己責任とする社会の風潮を、私たち大人が変え、社会を変えていく必要があります。私は、日本の教育や医療の水準は非常に高いと思っていました。しかし、事性と生殖に関する健康と権利、セクシュアル・リプロダクティブヘルス・アンド・ライツの分野では非常に遅れていると言わざるを得ない状況があると感じています。女性たちの声を軽視してきた社会の責任は重いです。バイアグラは半年で承認されたにもかかわらず、低用量ピルの認可には日本は世界で最も遅いと言われる四十四年の年月が掛かりました。声を上げて変わっていくのが十年、二十年、四十年先では遅過ぎます。
今の子供たちに、日本に生まれたから仕方ないよねではなく、私たちの声で社会をもっと良く変えていけると言える社会にできるよう、一人の母親としても、これから皆さんと考えていけたらと思っております。
御清聴ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
お二人の参考人、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
まず初めに、山中参考人にお伺いをいたします。
先ほど、国連の障害者権利条約についても触れられていました。この条約では、障害のある人が障害のない人と分け隔てなく人権を保障されて、豊かに生きられる社会の実現のためにインクルーシブ教育が提唱されていると。日本の教育でもこの内容を実現するということが非常に重要だというふうに感じました。
まずお聞きをしたいのは、通級指導教室についてなんです。
生徒数が増えているということが紹介もありましたけれども、希望しても入ることができないといったような話もお聞きをしました。それで、潜在的なニーズがどれぐらいあるのかということも含めて実態を明らかにして、それに基づいて教室であるとか教員を増やすなどの改善が必要だというふうに思うんですけれども、実態と課題についてお聞かせいただけますでしょうか。
○参考人(山中ともえ君) 通級の方は、例えば発達障害に関する文科省の調査がありまして、小中学校で平均すると六・五%ぐらいは発達障害の可能性といいますか支援を必要とする子供がいるという数字が出ています。その六・五%が全部通級が必要かというと、そうではないと思うんですけれども、発達障害がはっきりしてきてというか周知されてきて、保護者の方が、子供がうまくいかない理由が、あっ、発達障害かもというようなことで診断を受けたり支援を受けるようになったりしている例が非常に増えているというふうに思います。通級指導を受けることが、自分にとってプラス、子供にとってプラスになるというふうに考える方がすごく増えているんだと思います。
そういったところで増えていて、この辺の割合なんですけれども、東京都の場合は、通級指導を自分の学校で受けられるという、教員の方が巡回する形にしていますので、数としては急激に増えています。そろそろちょっともう落ち着くかなと思うんですけれども、やっぱり自分の学校で受けられるということになると、じゃ、行きたいなという形は増えてきているんだと思うんですね。改善して指導を終わりにしている子もいるので、確実に成果は出ていると思います。
その辺の割合はちょっと自治体によって違うんだと思うんですけれども、じゃ、通級による指導がそれだけいいねということになっても入れないということなんですけれども、このことについては、国の方が、文科省の方が、通級の担当の教員を、それまでは加配、平成三十年より前は加配という形だったんですね、基礎定数化されていなかったんですけれども、平成三十年度だったと思うんですけど、以降基礎定数化されて、子供が十三人いれば通級の先生を配置しますよというふうに法令的に改正していただいたので、ただ、それが順次、十年間だったかな、増やしていくというふうになっていますので、なかなかいきなり増えないということは、計画的に増やしていくということはあるかと思います。なので、通級は多分今後全体的にまだまだ増えていくだろうし、教員の方は増えていくと思います。
今、ただ、通級の対象のところが、今ちょっと知的障害のお子さんどうするかというようなところがあって、知的障害というのも、はっきり分かられているお子さんもいるんですけれども、そこのところははっきりしていないお子さんもいたりして、そこのところが課題になっているというようなところはあるかと思いますけれども、今後、法制化されたので順次増えて、インクルーシブという意味では通常の学級に行って必要な部分だけ受けられるので、いいのじゃないかなと、今後増えていってほしいなというふうに思っています。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて、山中参考人にお聞きをします。
特別支援学校についてなんですけれども、先ほども話がありました。在籍するお子さんがどんどん増えていて学校数が足りていないということで、一つの教室をカーテンで仕切って二つの教室として使うというような実態が問題になって、その背景に設置基準がないということがあるじゃないかということで現場の声が上がって、国会でもいろんな議論がされる中で、今、設置基準の策定に向けた動きが始まっています。
その教育環境の改善につながる基準の策定というのが大事だと思うんですけれども、これ、策定をするに当たってどんなことが必要だというふうに考えるか、参考人の考えをお聞かせください。
○参考人(山中ともえ君) 通常の小中学校と違って、一学級当たりの人数というか、その辺のところは違うので、まず、その子たちの活動が、人数少ないので通常の教室の広さは当てはめられないと思うので、施設、設備的に、その広さだとか、障害のある子にとって活動がやっぱり十分にできるというところを考えていただきたいなというのと、それから、障害があるので、まあちょっと教育課程の話になるんですけど、自立活動という、障害に特化した、そこの状態を改善するという領域が特別支援学校にはあるんですけれども、そこがやっぱり特別支援学校の一つ肝でもある、障害の改善というところがあるので、その自立活動というか、その障害の状態改善していくというようなところも施設の中に盛り込んでいただきたいなというふうに思います。通常の小中学校とはかなり大きく違うのではないかと思います。
○岩渕友君 なるほど、ありがとうございました。
次に、染矢参考人にお伺いをします。
コロナ禍の下で、妊娠したかもしれないなども含めて、性に関する相談が増えているというお話が先ほどもありました。性暴力の被害も増えていて、ワンストップ支援センターへの相談も増加をしていると。
それで、家が安全、安心な場所ではないという話も先ほどあったんですけれども、未成年者が家にいづらくなって、SNSを介して性被害に遭うケースもあるんだと聞いています。
このワンストップ支援センターであるとかシェルターの拡充などが必要だというふうに思うんですけれども、コロナ禍で子供たちの不安だとか相談に対応するためにどんなことが必要だというふうに考えるか、お考えをお聞かせください。
○参考人(染矢明日香君) 御質問ありがとうございます。
相談支援におけるリソースというところでは、やはり私たちの相談の窓口ではメールのみの対処というふうになりますので、もし何か被害があったときに付き添ってどこかに行ったりとかというところまではできないという状況があるんですね。そのため、既にある社会資源や相談機関につないでいくということになるんですけれども、やはりそういった信頼関係を築いていくとか、直接的なもっと深い支援をやっていくというところに各相談機関でも差があったりとか、何というんでしょう、手厚さの違いであったりとか方針の違いというのがあるかと思います。
あとは、自粛している、ステイホームと言われる家庭環境が必ずしも安心、安全な居場所ではないという子供たち向けに、やはりコロナにおいても、感染症対策を気を付けた上での居場所であったりとか、一時的に避難できるような場所の拡充というのも必要だと思っております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続けて染矢参考人にお伺いをするんですけれども、国際セクシュアリティ教育ガイダンスについて御紹介をいただきました。このガイダンスがジェンダー平等とか多様な性の在り方など人権教育について性に関することを幅広く学ぶものだということで、この考え方が非常に重要だなというふうに感じたんですね。
何で日本ではこうした考え方が取り入れられていないかという理由で、文化が違うからだというふうに言われたという話があって、ちょっと驚いたんですけど、このガイダンス、非常に重要だということで、先ほど触れられなかったところで大事だと思うこと、もう少しちょっと詳しく教えていただけないでしょうか。
○参考人(染矢明日香君) 御質問ありがとうございます。
こちらの国際セクシュアリティ教育ガイダンスというのは、ユネスコが様々な国際機関と連携した上で作成して発表したものになっておりまして、二〇〇九年に初版ができて二〇一八年に改訂をされています。日本語訳も今出ておりまして、書籍もあるんですけれども、ウエブサイト上で全て無料で閲覧もできますので、もし御興味のある方、是非御覧いただけたらと思っております。
やはり、こちらの特徴としては、非常に幅広く多岐にわたる性に関する課題というのを各年齢層に応じて学習目標が設定されているということになります。こちらと日本の学習指導要領を比較した資料も私たちで作ったこともあるんですけれども、やはり全体的に、例えばジェンダー平等のこと、性の多様性のことであったりとか、あとはメディアリテラシーについて、性暴力について、非常に足りていないような状況というのがあります。
ただ、先ほどの発表の中でもお伝えしたとおり、性暴力対策強化の動きというのは非常に進んできているものではありますので、そういった流れの中で、ただ、そのガイダンスの全てのカリキュラムをカバーするものではないので、更にこの効果を高めていくというためにも、より幅広い範囲での教育の時間の確保であったりとか、また先生方の研修機会の確保、先生が難しいという場合であれば、こういった民間の団体との連携した取組であったり、オンラインの活用というのが求められるのではと思っております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次も染矢参考人にお伺いをするんですけれども、ジェンダーの問題が性暴力を始めとしていろいろな問題の根底にあるんだというふうに思うんですね。
ところが、最近でいうと、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森会長の女性蔑視発言が世界でも大問題になって、日本のジェンダーギャップ指数が世界で百二十一位ということで、世界と比べてもこの分野は圧倒的に遅れているというのが実態だと思うんですね。
それで、ジェンダー平等を実現をする重要性について、参考人の考えをお聞かせください。
○参考人(染矢明日香君) 御質問ありがとうございます。
このジェンダーの不平等というのは、日本において非常に重要な問題と私自身も感じております。
日本で生きているとこの今の状況が普通だと思ってしまうんですけれども、海外と比較すると、やはり政治に関わるとか重要な意思決定に関わるところで男性の意見というところがメーンになってしまっていて、女性の声というのがなかなか生活や社会の中で反映しづらい状況というのがあるのではないかと思っております。そういったことが日本のセクシュアル・リプロダクティブヘルス・アンド・ライツ、性と生殖に関する健康と権利の遅れというところにも非常につながっているのではないかと思っております。
ただ、この性に関する問題というのは、虐待のこととかDVのこと、性暴力のこと、非常に多くの問題とリンクしているんですね。ジェンダー不平等を解消しジェンダー平等を実現していくことで様々なその付随する社会問題の解決にもつながっていくものとして、SDGsの中でも重要視されているかと思います。
そこで、やはりいろいろな性別の在り方があるという中で、男らしさ、女らしさの思い込みであったりとか、そういったことにまず私たちが自覚的であるという必要があると思いますし、差別であったり不当な扱いに対してノーと言える社会づくりというところが非常に重要であると思っております。
○岩渕友君 じゃ、最後に染矢参考人にお聞きするんですけど、今日の冒頭に、日本の性交同意年齢が十三歳と、ほかの先進国と比べて低いことや、性的同意に関わって、刑法では、性行為において暴行、脅迫や抵抗できる状態ではなかったことが証明できなければ犯罪とは認められないという話もありました。
同意のない性行為は違法だというふうにすることやその同意年齢の引上げが必要だというふうに思うんですけれども、参考人、この問題についてもう少し詳しく教えてください、お考えを聞かせてください。
○参考人(染矢明日香君) こちらの性交同意年齢が十三歳というのは、学習指導要領で性や生殖について教える内容が限られているというのと非常に矛盾していて、その結果、やはり若い世代、特に女の子たちにしわ寄せが行っていると感じています。
もし妊娠した場合に、自分が性行為を断れなかったから悪いんだとか、避妊について知らなかったから悪いんだとか、あとは、妊娠してしまってどうしよう、親にも絶対言えなくて毎日泣いて過ごしていますというようなメール相談の切実な声もいただいています。もう本当にその子だけの問題ではなくて、やはり社会としてきちんと、自分の身を守る方法があるとか、あなたが受けていることは暴力であってすごく不当な扱いであるんだよということを知らせてこなかった責任も非常に重いと感じています。
これからの世代のために、女の子で生まれてきたから仕方ないよねとか、我慢するしかない、夢を諦めるしかないというふうな社会ではなくて、やはりその子たちの意見に耳を傾けて、若い人たちを力のない存在としてみなすのではなくて、一緒に未来をつくり上げていくような貴重な声として共に生きていく、まあインクルーシブというところにも関わってくるかと思うんですけれども、社会の一員としてより良く全ての人が生きやすい社会にしていくために巻き込んでいく、また声を取り入れていくということが重要であると思っております。
○岩渕友君 以上で終わります。ありがとうございました。