2021年2月24日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通したテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「新型コロナウィルス感染症による国民生活・経済への影響」について 参考人質疑
商店援助強化求める
参院国民生活・経済に関する調査会は2月24日、「困難を抱える人々への対応(新型コロナウイルス感染症による国民生活・経済への影響)」について参考人質疑を行い、日本共産党の岩渕友議員が質問に立ちました。
岩渕氏は、青森市内の事業者から聞き取った声などを紹介し、地域に根差した商店街の果たしている役割と実態について質問しました。全国商店街振興組合連合会の山田昇副理事長は、災害時の炊き出しや客への目配りをあげ、「みなさんに価値を分かっていただけないのは大変歯がゆい」と述べるとともに、個別の店への援助強化を求めました。
岩渕氏は、フリーランスについて「コロナ禍で問題点が浮き彫りになった」と指摘。参考人陳述したプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事の“企業にも政府にも頼らず自助で生涯現役”は幻想だという意見に賛同した上で、国民健康保険など恒久的な制度の必要性について質問しました。
平田氏は、「国民健康保険の問題は一番多く寄せられている課題。中でも傷病手当が非常に大きい」「公共的に支えなければいけない部分は(税金も含めて)補填(ほてん)するのが望ましい」と答えました。
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全国商店街振興組合連合会副理事長・山田昇参考人 意見陳述
○参考人(山田昇君) 全国商店街振興組合副理事長、山田でございます。
全国商店街振興組合連合会は、四十七都道府県の連合会を直接の会員とし、傘下に約一千六百の商店街振興組合等を擁する全国団体でございます。本日は、商店街及び中小小売商業者の置かれている状況につきまして御説明をさせていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。また、御列席の先生方には日頃より商店街、中小小売商業者の振興に御支援と御尽力を賜り、この場をお借りして心より御礼を申し上げます。
昨年より世界中が新型コロナウイルス感染症に翻弄される状況が続いております。国内感染者数も、春頃の第一波、夏頃の第二波に続き、昨年十一月以降も新規感染者数が急増をいたしました。多くの方が亡くなられました。心よりお悔やみを申し上げます。
地域の商店街と中小小売商業者も新型コロナウイルス感染症による影響を受け、今まで経験したことのない厳しい状況に直面しております。少しお時間をいただき、現状等につき御説明を申し上げます。
これまでの地域商店街、中小小売商業者は、地域住民の方々の日々の生活を支えるだけでなく、地域社会に深く関わり、雇用機会の提供、祭りなどの地域文化の伝承、防犯活動などの安全、安心の確保、災害時の復旧支援活動、高齢者の見守り、地域住民の子育て支援活動、町の美化活動など、多種多様な形で地域社会や雇用を支えてまいりました。
こうした中、令和元年十月に実施されました消費税率の引上げによる消費者の購買意欲の落ち込み、相次ぐ台風等の自然災害の発生に加え、昨年から新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるインバウンド需要の消失と国内の自粛ムードの継続により、国内消費の落ち込みに直面をいたしております。
初めに、新型コロナウイルスの感染拡大による需要面の影響が継続している点につき御説明を申し上げます。
昨年十月に大阪府の商店街にアンケートを実施したところ、七割から八割の商店街から、イベントの中止、来街者の減少、売上低下、店舗休業や閉店といった影響を引き続き受け続けているという回答がございました。新型コロナウイルス感染症の影響が継続する中、前年に比べた来街者の減少傾向も続いております。売上げも三割から五割程度の減少とする事業者が多く、特に飲食と衣料品販売が厳しい状態でございます。その他の物品販売も減少しているものの、飲食等に比べ減少率は小さい結果となっております。
こうした中、私ども商店街におきましても、感染防止対策ガイドラインを作成、周知するとともに、各店舗の事業継続支援に関する情報を逐次提供するなど、感染拡大防止と事業経営の両立に向けた取組の支援を行ってまいりました。
例えば大阪の場合、新型コロナウイルス感染症の発生当時から感染症拡大防止に迅速かつ効果的に取り組んだ商店街が五五%、店舗ベースで見た場合は六一%でございました。その後も、新型コロナウイルスの感染状況を踏まえた国、自治体の指導に従い、また、各種支援をいただきながら、消毒液設置を含む安全対策、街来者の啓発活動、キャッシュレス化を含むデジタル化などの推進による事業経営と両立支援を進めております。具体的には、啓発ポスターの掲示、共有スペースの消毒液の設置、感染症防止宣言のステッカーの掲示などを取り組むことで、消費者が安心して来街できるよう努めております。
こうした結果、九割近い商店街で来街者の周知度が高まりました。また、買物時の安心感が高まったとの声を聞いております。さらに、自治体の特設ホームページやSNSによる感染症対策や需要喚起の情報発信も行っておりますが、来街者の認知度も高く、消費者の安心感につながっております。
約九割の商店街が、身近にある商店街の良さを知っていただき、積極的に利用していただく消費者を更に増やしていきたいと考えております。新しい生活様式を踏まえた取組を推進することにより、更にお得意様を増やしていくことが重要でございます。約九割の商店街が来年度におけるイベント等の需要喚起事業の実施を希望する一方で、約八割の商店街は感染症対策が課題としております。再度の緊急事態発令もあり、将来への漠然とした不安を抱えているというのが現状でございます。
次に、統計データから全国の状況をお伝えしたいと思います。
小売業の状況につきまして、日本銀行の業況判断DIを見ますと、昨年六月より大きく落ち込みましたが、政府の各種支援の効果もあり、十二月には持ち直しの動きが見られました。
総務省の家計調査によりますと、緊急事態宣言が発令されました昨年四月、消費支出は前年同月比でマイナス一一%でございました。そのうち、食料は減少幅が比較的少なく、一定の消費者は取り込めたと思われます。一方で、外食や娯楽サービスなどは大きく減少し、衣服等も減少幅が大きい結果となっております。外出自粛、営業時間の短縮、テレワークの推進などによる来街者の減少の影響を受けたものと思われます。
その後、政府の各種支援策の効果があったためと思われますが、減少傾向は続くものの、徐々に減少幅は小さくなり、十月頃には持ち直しの兆しが見られました。こうした中、昨年十一月頃から、感染拡大に伴い、外食、娯楽サービス、衣服等が減少に転じており、今後の動向に不安を感じている業者が多いと思われます。
次に、小売業の資金繰りにつきまして、中小企業基盤整備機構の中小企業景況調査では、昨年の四月から六月期を底に、十月から十二月期には持ち直しの傾向にあります。小売業はサービス業と並んで悪い傾向にあることから、今回の緊急事態宣言の再発令を踏まえて手当てをいただきました金融支援につきましても迅速に実施していただくようお願いを申し上げます。
なお、昨年一月に民間の調査機関が公開しました調査結果では、コロナ禍の収束が長引いた場合に廃業を検討する可能性があると回答した中小企業の割合は約八%、可能性があるとした中小企業、業種別に見ますと、飲食業では四割、生活関連サービス業では約三割が可能性があると回答をしております。さきに申し上げましたが、家計調査での支出動向でも同様の傾向が見られており、営業時間の短縮、外出自粛等の影響を強く受けていることがうかがえます。
雇用面につきまして、厚生労働省の調査結果におけます雇用調整の可能性がある事業者数について、政府の支援効果もあり、飲食業と小売業では五月から七月をピークに徐々に減少傾向を示しております。
以上、統計データの指数から現況を説明させていただきましたが、それぞれ統計を見ましても、小売業の全体の傾向、業種としての傾向など、いずれも同様の傾向を示していることが分かります。
昨年の緊急事態宣言の発令直後は落ち込んだものの、御列席の先生方に大変な御尽力いただき、新型コロナウイルス感染症の収束に向けた各種の対策を講じていただくとともに、持続化給付金、家賃支援給付金、民間企業における特別融資、雇用調整助成金等の支援、国税等の納税猶予等の支援、自治体を通じた各種支援策などを実施していただきました。また、感染予防対策を講じた上でのGoTo商店街事業の実施等も、個人消費喚起策も講じていただきました。こうした各種の支援策の活用が功を奏し、全体として持ち直しの傾向は現実味が出てきたものと、この場をお借りして感謝を申し上げます。
民間の調査会社によると、調査に回答した中小企業のうち、新型コロナウイルスに関した国や自治体、金融機関の各種支援策を利用したのは約六割とのことです。そのうち、資金繰りの支援策の利用企業を業種別に見ました場合、飲食店が約九五%、衣料等小売業は約八七%と、高い比率になっております。また、利用した資金繰り支援対策としましては、民間金融機関の実質無利子無担保融資、雇用調整助成金及び持続化給付金等が半数近い利用率となっております。こうした支援措置により、先の見えないコロナ禍の中での事業継続を可能なものにしていると言えます。
今般の感染拡大に伴います再度の緊急事態宣言により、改めて先行きの不安を生じております。飲食店等に対する営業時間の短縮、外出や移動の自粛要請により影響を受けている中小零細事業に対し、資金繰り支援を中心とした支援策に万全を期していただくようお願いを申し上げます。あわせて、今後におけます不安解消に向けての御支援として、令和二年度第三次補正予算の迅速な実施と令和三年度当初予算の早期成立により、各種支援策が確実に実施され、事業者への影響が大きくならないようお願いを申し上げます。
地域社会に深く関わり、地域社会が抱える多くの課題解消に向けた商店街の活動を促進させるためにも、地元の店舗、そして商店街が持続的に発展することが重要でございます。地元や商店街等の良さを再認識し、地域社会の価値を見直すきっかけとなる取組を支援するGoTo商店街事業につきましても、昨年十二月までに約五百事業が採択されております。
さきに述べました大阪での調査結果におきましても、需要喚起事業への支援要望は強く、GoTo商店街事業への期待も大きいことがうかがわれます。感染拡大の現状を踏まえ、昨年十二月末より集客を伴うイベント等の実施を全国一斉に一時中止しておりますが、感染症の収束傾向を踏まえました緊急事態宣言の解除等を見据えた取組の再開に期待するとともに、第三次予算でのGoTo商店街事業の実施に大いに期待をしております。
次に、感染拡大防止と事業経営の両立に向けた取組を進めるに当たり解決すべき課題について御説明申し上げます。
初めに、地域中小零細事業者にとり、先の見えないコロナ禍での事業経営は大変苦しい、厳しい問題でございます。国におかれましては、新型コロナウイルス感染症の早期収束に引き続き御尽力をいただくとともに、影響の長期化を視野に入れました各種支援の充実、特に、官民金融機関によります特別融資の継続、返済期限の延長等、地域の中小・小規模事業者への支援継続、強化を是非ともお願いをいたします。
新型コロナウイルスの影響により、各地域も厳しい経営状況が続いております。感染症収束時におきましては、これまでも述べてまいりましたように、地域経済活性化に向けた商店街への来街効果を高める支援としまして、GoTo商店街事業、個店での直接購買ができる、期待をできるプレミアム商品券事業等の個人消費への需要喚起策の実施を是非ともお願いをいたします。
最後となりますが、地域の商店街が新型コロナウイルス防止対策と両立させる形で地域社会の課題解決に向けた各種活動を単独で進めることが難しくなっている状況でございます。地域の実情を踏まえた商店街の各種活動への御支援を是非ともお願いをいたします。
我々商店街におきましても、感染症対策ガイドラインに沿った取組を確実に実施し、地方自治体と連携を図りながら万全の体制で来街者を迎え入れたいと考えております。そのためにも、感染症に関する情報発信をこれまで同様に適宜適切に実施いただきますようお願いを申し上げます。
本日は、地域の現状につきましていろいろと御説明をさせていただきました。商店街、中小小売商業者が現在の厳しい状況から早期に脱却し、持続的に発展することが地域の繁栄と地域住民の皆さんのより良い暮らしにつながります。御列席の先生方には引き続き御支援を賜りますようお願いをいたしまして、私からの説明を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会代表理事・平田麻莉参考人 意見陳述
○参考人(平田麻莉君) ただいま御紹介いただきましたフリーランス協会の平田です。本日は、貴重な意見の場をいただきまして、誠にありがとうございます。(資料映写)
私からは、新型コロナウイルス感染症によるフリーランス、個人事業主への影響ということで、データも踏まえてお話しさせていただきたいと思います。
まず、私たちの協会について少しお話しさせていただきますけれども、現在、二月時点でフォロワー数四万五千人を超えていまして、国内最大規模のフリーランスネットワークということを自負しております。中には副業されている方や個人商店の方なども一部含まれておりますけれども、主にはビジネス系フリーランスの方ですとかアーティストの方などが中心になっている、いわゆるフリーランスの協会になります。
フリーランスの定義ですけれども、諸説ありますが、私たちの協会では、特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で御自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る方というふうに定義しております。つまり、雇用ではなく業務委託若しくは自営で働く方々ですね。大きく分けて、兼業している独立系のフリーランスと、会社員でありながら業務時間以外で業務委託のお仕事をしている副業人材といますけれども、今日は、主にこの左の独立している雇用関係を持たない方々についてお話しさせていただきます。
現在、広義のフリーランスは四百六十二万人と試算されておりますけれども、ギグエコノミーの発達などによって年々増えているというふうに考えられています。
前提なんですけれども、私たちはフリーランスは事業者であるというふうに考えておりますので、基本的には事業リスクを負う責任と覚悟を持った自律的な働き方というふうに考えています。一部、本来あるべき自律性ですとか、経済的な自立性だったり働き方としての自律性を持っていない方もいらっしゃいますので、そういった準従属労働者については労働政策上の保護も検討が必要だとは思っていますけれども、本日は、あくまでこの自律した自営業者として働いているフリーランスについてお話しさせていただきます。
これまで、二〇〇七年、私たちの協会立ち上がりましたけれども、それ以降、経済産業省、厚労省、公正取引委員会、内閣官房などの関係省庁において様々なテーマでフリーランスの関連政策の検討を進めていただいて、数々の御支援、御協力を賜っております。この場を借りて改めて御礼申し上げたいと思います。
直近ですと、例えばフリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインということで、これは昨年末に案が公表されてパブコメ募集が終わり、もうすぐ公開されるものですけれども、我々の協会でも契約トラブルの実態について問題提起を従前から行っておりまして、それに対してのガイドラインというのを今まとめていただいているところです。
また、ハラスメントなどの問題も、実態調査を行って、それに基づく提言させていただいていましたけれども、これもきちんと防止措置の中にフリーランスや就活生も入れていただくというようなことをしていただきました。
また、契約トラブル、いろいろなお仕事上のお困り事に対する公的な相談窓口というのもこれまでございませんでしたので、こちらも昨年末に運営を開始していただいております。
また、労災保険の特別加入制度の対象拡大というのも、議論、昨年行っていただきまして、これは引き続き対象職種を拡大する方向で御検討いただけるというふうに伺っております。
また、新型コロナウイルス感染症対策に伴う支援ということでいいますと、昨年、私たちの協会からも実態の速報調査とともに緊急要請というのを出させていただきまして、総理大臣始め大臣級の方々にお話しさせていただく機会もいただいたんですけれども、結果、御列席の先生方の御尽力もありまして、おかげさまでフリーランス向けの支援策、たくさん出していただくことができました。これは本当に私たちの協会の会員からも非常に助かったという声が多く寄せられていまして、改めて御礼申し上げます。
ということで、これがこれまでフリーランスに関連する課題として二〇一八年の厚労省の検討会で挙げられた検討事項なんですけれども、そのうち業務トラブル対策については比較的対策が進んでいるというふうに考えております。
一方で、ライフリスクの対策ですとか、あとは、これはフリーランスの中でも賛否両論ありますけれども、事業リスクの対策、特に失業ですとか仕事を失ってしまったというところに対するセーフティーネットというところが今後検討が必要な部分なのかなというふうに考えております。
特に、ライフリスク対策というのは、新型コロナウイルス感染症の拡大の中でも、多くの方がフリーランスは労災にも入っていないですし、傷病手当金も出ないというようなことから非常に不安を感じていらっしゃったというところで、しかも、会社員の方々は休業などで休業補償がされていますけれども、フリーランスに対してはそういった補償はないという中で、そういった傷病手当金のようなセーフティーネットがない中でも働きに出なければいけないと、そういう方がたくさんいらっしゃったというふうに聞いております。
また、グラデーション化する働き方というスライドを入れていますけれども、このコロナの中でテレワークが大分進んだということですとか、副業希望者が増えているとか、また、今年の四月から施行されます七十歳就労機会確保の努力義務化などで会社員とフリーランスの境界線というのはますます曖昧になっていくというふうに考えられています。なので、全ての働く人に中立なセーフティーネットというのがより一層求められるようになっているのではないかなというふうに感じております。
そういった背景がありながら、このコロナの感染症拡大を迎えているわけですけれども、フリーランス白書という毎年出している実態調査の最新版、まだ非公開なんですけれども、速報として本日はその一部データを御紹介したいと思います。
今年の調査では、主に三つのテーマについて聞いております。コロナ禍の影響、それから社会保険の加入ニーズ、そして定年に関する理想と現実ということですね。
まず、母集団ですけれども、私たちの四万五千人のフォロワーに対してインターネットで調査を行っております。今年御回答くださったのは七百十五名ですけれども、私たちの協会の元々の母数として、割とオンラインでもお仕事ができるエンジニアの方ですとかデザイナーの方ですとか、そういった方が少し多めのビジネス系のフリーランスに寄ったパネルになっているということはあらかじめ御了承いただければと思います。
就業形態でいうと、七五%が個人事業主ということで、一部法人成りしている方や、開業届、出していない方も含まれますけれども、大半は個人事業主の意見だと考えていただければと思います。
これは毎年、定点観測で聞いているデータですけれども、今の働き方を始めた理由、フリーランスになった理由というところでいうと、自分の裁量で仕事をするため、働く場所、時間を自由にするためなど、御家庭や御自身の体調に合わせて自分のペースで働き続けるためにフリーランスになったという方が非常に多いのかなと。これは毎年変わらない傾向でございます。一方、失業者ですとか、いわゆる企業勤めが難しい方の受皿にもなっているということも明らかかなと思います。
そういったフリーランスの方々が今後働き続ける上での課題という設問も、これも毎年取っていますけれども、昨年の調査では、収入がなかなか安定しないという項目、五五・一%だったんですけれども、今年はコロナの影響もあってか、六四・二%の方が収入が安定しないということを困っていることの一番に挙げていらっしゃいます。
実際、コロナが影響与えた内容というところですけれども、取引先の業務自粛による取引の停止ですとか、お客様が減少してしまった、御自身で業務自粛をしなければいけなかったなどの影響が上位三位に来ております。参考で、右下に二〇二〇年五月、ちょうど去年の緊急事態宣言下で取った調査も載せておりますけれども、そのときと少し影響の出方は変わってきているのかなと思います。
この調査、昨年末から今年の頭にかけて取ったんですけれども、現時点での、今年度とありますが、二〇二〇年度の収益の着地見込みを二〇一九年度と比較した場合の増減割合で教えてくださいという設問を取りました。結果、減ったという方が五五・〇%、四割以上減ったという方に限ると三二・七%が減ったというふうに回答しています。
これも御参考ですけれども、去年のゴールデンウイーク、緊急事態宣言下で取った調査ですと、その時点では、コロナの影響があると答えた方が八七・三%、収入が減ったという方が七四・四%でしたので、持続化給付金のおかげですとか少しずつ皆さん創意工夫されて、去年のゴールデンウイークの時点よりかは収入が減ったという方は減っているのかなと思いますけれども、依然として半数以上の方が収入が減ったというふうに答えられているということですね。
しかも、これは職種による差が非常に大きい部分になっておりまして、オンライン化ができるかどうかというのが一つの大きな境目になっているのかなと思います。オンライン中心での業務が可能な職種に限りますと、減ったという方、四七・八%ですけれども、オンライン化が難しい小売ですとか、あとは通訳翻訳系ですとか、営業とかアーティストの方とか、そういった方々というのは七割の方が減ったというふうに回答しています。
しかも、オンライン化をこの方たちも試みる中で実際格差がすごく広がってしまっているという実態がありまして、元々近所の飲食店に行っていた方が有名店のデリバリーでお取り寄せをするようになったり、近所のヨガ教室とか習い事をしていた方が人気講師のオンライン講座を、別の地方の方の講座を受けるようになったり、地元のライブハウスとか地元のイベントで演奏していたアーティストの代わりに有名な人気アーティストの演奏をユーチューブで聴くというようなことが起こって、いわゆる商圏が消滅してしまっていますので、ウイナー・テークス・オールの理論で、人気のある方はどんどん収入が増えるけれども、そこでうまく対応できない零細企業というのがどんどんオンライン化してもなかなか収益が回復しないというようなことが実態として起こっています。
自由回答もいろいろ載せていますけれども、まあ本当に職種問わずいろいろな影響が出ているということが明らかになっています。
こちらの自由回答ですね、改めて後ほど詳しく御覧いただければと思いますけれども、メディア系の方とかも、もうお仕事が全く、フリーランス全員契約停止されてしまったですとか、あとは技術開発系の方とかも、恐らくオリンピック関連でデジタルサイネージとかそういったデバイスの開発をされていた方だと思うんですけれども、持ち出しで準備していたものが全て赤字になってしまったですとか、あとはアーティストの方はライブが中止になるとか、習い事の先生とかも生徒が減ってしまった、あとは催事販売を行っていたような方も開催期間がなくなってしまったことで売上げが減少されている、あとは海外とお仕事をされていた方とかも海外渡航できなくなったために実施不可能になったとか、いろいろな影響が出ております。
ページ進みますけれども、こちらもあらゆる職種での影響について書かせていただいております。
下の方、下から二つ目のポツのところですけれども、減額しながらも持続化給付金のおかげで金額的に例年と変わらなかったというような方もいらっしゃるんですが、やはり二〇二一年どうなるか分からないという不安を抱えている方もいらっしゃいますし、少し計画の足の長い広告関連のお仕事をされている方とかですと、昨年の頭の段階で取っていた予算については消化されているので昨年のお仕事は大丈夫だったけれども、実際コロナが発生して以降の企画が止まっているため、十二月以降、最近になってから徐々に影響が出始めているというような方もいらっしゃいます。
一方、次のページは、増えたという方もいらっしゃいましたので、その方々の回答を載せていますけれども、多くがリモートワークに元々対応されていたとか、これを機に対応したという方々になっています。
そういった影響がある中で、医療保険ですとか失業保険ですとか、セーフティーネットへの関心というのも高まっているわけなんですけれども、社会保障のニーズというものを聞いている結果がこちらです。
働き方の違いにかかわらず社会保障が提供される必要性を感じているという方は九五・七%いらっしゃいます。一方で、実際に保険料を払うシミュレーションに基づいて、その保険料を払う前提で入りたいですかという質問もしています。雇用保険、会社員と同じぐらいの金額を払うとしたら加入したいですかという質問になると、入りたいという方は六八・一%に減っています。その理由、自由回答も載せていますけれども、加入したい方の多くが、育児休業給付金ですとか介護休業給付金、それから教育訓練給付金のようなものが必要なんじゃないかという方が結構多いのかなと思います。また、コロナのような不測の事態で失業保険に代わるようなものを欲しいという方もいらっしゃいます。ただ一方で、フリーランスの中でも、どちらとも言えないとか全く加入したいと思わないというふうに答えている方の中には、やはりその失業保険の定義、失業の定義がフリーランスの場合非常に難しいので、そこが私たちの働き方に合わないんじゃないかというふうに考えている方はいらっしゃるようでした。
もう一つ、健康保険と年金に関してですけれども、これも、私たち個人事業主でも法人成りをすれば協会けんぽと厚生年金へ入ることができるんですけれども、これもシミュレーションに基づいて入りたいですかということを聞いたところ、加入意向ある方は半数以下という形になりました。社会保障の必要性感じている方は九五・七%であるにもかかわらず、協会けんぽ、厚生年金への加入意向となると減少する背景としましては、やはり保険料の支払が非常に厳しいという声が多かったです。
アンケート取るに当たって御提示していたシミュレーションは、三つのパターンで年齢とか扶養家族の有無で見ていただいていたんですけれども、加入したいというふうに考える方は、現在の国民健康保険の額が高額過ぎてきついですとか、死亡給付、扶養制度、遺族年金、障害年金などがないことが会社員と比べて不公平じゃないかというような声もありました。一方で、加入したいと思わないという人たちの意見の中には、労使折半がないため、労使の両方の分を払うのは今の経済状況から考えると難しいというような声が大半を占めておりました。
もう一つ、何歳まで働きたいか、それから何歳まで働く自信があるかという質問を取っています。
現在、政府の方で、生涯、人生百年時代、長く働くために自営業で、フリーランスでというような文脈でいろいろと御検討いただいていると思うんですけれども、実際、フリーランスであれば定年がなくなるかというと、そうではないのかなということがこのデータから明らかになっています。あくまで働きたいという意向であれば生涯現役と答えている方が三〇%いらっしゃるんですけれども、自信があるかどうかで聞かれると一一%に減っているんですね。なので、収入問わない形で生涯現役で働きたいという方はたくさんいらっしゃいますけれども、フリーランスだからといって自助で全て成り立つということではないのかなと思います。
その希望年齢まで働く場合に感じる不安とその対策というところでも、やはり健康ですとか体力ですとかスキルの陳腐化などなど、いろいろありますけれども、そういった不安と闘いながら年を取っていくというのがフリーランスの今の姿ということになっています。
なので、最後、まとめになりますけれども、御家庭の都合ですとか御自身の健康状態に合わせて長く働き続けるためにフリーランスを選択している方はこれまでも多いですし、今後も増えていくというふうに考えられています。そのための環境整備というのは着実に進めていただいてはいるんですけれども、依然としてライフリスクに関するセーフティーネットは会社員と大きな格差があると。そして、フリーランスの五五%がコロナにより減収していて、その影響度合いは職種やワークスタイルによって大きく異なるものの、デジタル化の成否が一つの分かれ目になっている。
そういった不安を抱えている方々の中で、国民健康保険の保険料負担ですとか、傷病手当金、出産、介護のセーフティーネットのなさ、一階建ての年金などに不安、困難を感じている方が非常に多い状況になっています。働き方の違いにかかわらず社会保障が提供される必要性を大半の方が感じている一方で、労使折半がない形での健康保険、年金の保険料負担増に耐えられない零細企業も多いという状況です。
そして、フリーランスであれば企業にも政府にも頼らず自助で生涯現役というのはあくまで幻想であるということで、コロナの対策という意味での短期的な支援策、給付金なども非常に大事だと思うんですけれども、それに加えて、長期的な視点で全ての働く人が安心して参加できるセーフティーネットの整備が急務ではないかなというふうに考えております。
私からは以上になります。ありがとうございました。
駒澤大学経済学部准教授・井上智洋参考人 意見陳述
○参考人(井上智洋君) 駒澤大学の井上です。改めてどうぞよろしくお願いします。(資料映写)
私は、なぜコロナ危機下でベーシックインカムが注目されるのかというテーマでお話しさせていただきます。
ベーシックインカムというのは、収入の水準によらずに、全ての人に無条件に最低限の生活費を一律に給付する制度ということなんですが、基本的には世帯ごとではなくて個人ごとに給付されるというふうになっています。例えば、最低限の生活費、ちょっとまあ月七万円だと足りないと思うかも分かりませんけれども、七万円が毎月、国から国民全員に給付されるということになります。よく普遍主義的な社会保障制度というふうに言われております。先ほど、平田参考人から、全ての働く人が参加できるセーフティーネットの整備が急務というふうなお話がありましたが、ベーシックインカムはその一つの候補として考えられるかと思います。
この普遍主義的なということなんですが、これまでは、企業でまず働いて、この部分が自助ということになるかと思うんですが、その企業で働けなくなったときに失業保険とか年金保険といったような共助があると。共助でもカバーできない場合には公的扶助によって救済されるというふうな既存の社会保障制度の基本的な仕組みになっているわけなんですが、で、公的扶助の部分が言わば公助ということになるんですが、この生活保護がうまく機能しているかというと、よく捕捉率二割というふうに言われていますけれども、受給されるはずの人で受給されていない人が八割いるというのが今現状になっています。
今後、そのフリーランスの方々が増えたり、あるいはAI、ロボットによって雇用が不安定になるというふうにも言われておりまして、なので、もはや今の時代には既存の社会保障制度は合っていないんじゃないかというふうに言えるかと思うんですが。それで、今注目を集めているのがベーシックインカムということなんですが、ベーシックインカムの場合には、もう何の条件も付けずに全ての人々が救済されるということで、普遍主義的な社会保障制度というふうに言われています。
それで、よく生活保護を拡充すればいいじゃないかという御指摘を受けることが多いんですが、生活保護の欠点を直していくと結局ベーシックインカムになっちゃうんじゃないかというのが私の主張です。
今の生活保護というのを単純化して考えると、これ横軸が当初所得、給料などで得た収入ということになるんですが、縦軸が再分配所得ということになっているんですが。この赤いグラフを見ていただきたいんですけれども、もし年収百万円以下の人に百万円の収入を保障しようとしたら、年収がゼロ円の人には、じゃ、百万円給付しますと、年収が四十万円の人には六十万円給付しますという形で給付をしていくと、年収百万円以下の人は全員再分配所得は百万円になるということなんですが。そうすると、働いても働かなくても再分配所得が変わらないゾーンができてしまって、これを私は平地というふうに呼んでいるんですけれども、これ今の生活保護も大体こんなような形になっていて、働いて収入を得るとその分の給付が大体減らされてしまうということになっていて、よく貧困のわなというふうに言われているんですが、こういう仕組みになっているがゆえになかなか生活保護を受給する状況から脱却できないということが起きています。
それに対して、例えば年収百万円以下の人に一律九十万円給付するという制度にして、それで、一定以上所得のある人は給付しないけど一定以下の人は必ず貧困から脱却できるようにしようというふうな制度というのも考えられます。
この制度、何がまずいかといったときに、これも赤いグラフに注目していただきたいんですが、これが再分配所得ということになるんですけれども、年収百万円の人は九十万円プラスして百九十万円の再分配所得になるんですが、年収百万一円の人はこの九十万円という給付が得られないので、百万円の年収の人と百万一円の年収の人で九十万円近い再分配所得の差が生まれてしまうということなんですが。このような差を崖というふうに私は呼んでいるんですが、この社会保障制度を考えるときに、こういう平地とか崖があるというのは大きな欠陥で、不公平を生むというふうに私は考えておりまして、このような不公平が生まないように修正すると、結局ベーシックインカムになってしまうというお話なんですが。
こちらは、国民全員に一律年間九十万円給付する代わりに所得税を二五%増税した場合の再分配所得を示しているのが赤いグラフということになります。年収三百六十万円の人は二五%増税すると九十万円増税されるわけですから、九十万円の給付を受けるとプラス・マイナス・ゼロということになるので、年収三百六十万円の人は再分配所得も三百六十万円で、特に純受益も純負担もないという状況ですね。年収が三百六十万を超える人は払う方が多くなって、三百六十万以下の人は受益の方が大きくなるということですね。
この赤いグラフ見ていただければ分かるように、平地もなければ崖もない、ずっと傾斜が続いているという状況になっているんですが、こういうふうに社会保障制度をうまく設計しないといけないというふうに思っています。ですので、生活保護が受給できる場合できない場合があるという選別主義的なスタンスを取っているという欠点と、それから、働いても働かなくても一緒という労働のインセンティブが働かないというこの二つの欠点を結局克服するとベーシックインカムになってしまうというのが私の主張です。
なお、こちらのグラフの青いものが再分配額ですね。年収が三百六十万より下の人は、この青いグラフの分だけ受給を受けられて、受給を受けられてというより純受益がこの額になるということですね。三百六十万以上の人はゼロを切っていますけれども、その分の純負担が生じるということなんですが、だったら、初めからその九十万給付して増税してとやらなくて、その差引きだけ考えればいいじゃないかとお考えの人もいるかと思うんですが、最初から差引きだけ計算したというものが負の所得税という制度になります。
よくその負の所得税とベーシックインカム、全然違うんじゃないかと御指摘を受けることもあるんですけれども、基本的には同じものです。もっと正確に言うと、負の所得税と同じ効果を持つようにベーシックインカムというのは制度設計ができるということですね。ベーシックインカムというものは、租税をどうするか、それから社会保障制度をどうするかという、この二点のいかんによっていかようにも制度設計できる、そういうものだと思っていただければいいかと思うんですが、そのため、余りベーシックインカムそのものについて丸ごと賛成とか反対と言っても余り意味がないことで、どういう制度設計のベーシックインカムが望ましいのかということを検討することが大事だと思っています。
それで、九ページなんですが、ベーシックインカム、分類すると、ちゃんとしたベーシックインカムは、ユニバーサルベーシックインカムというふうに全ての人々を対象にしているものは言われているんですけれども、ベーシックインカム的な制度ということで、一部の人々しか対象にしていないんですがベーシックインカムに近いということで、そういうのは限定BI、限定ベーシックインカムというふうに言われています。
それから、全員に給付しているんだけれども最低限の生活費には届いていないという場合には部分BIという言葉がよく使われます。最低限の生活を保障している場合には完全BIということになるんですが、この完全BIには全ての人々にということを含む場合もあります。
それから、ベーシックインカムを、先ほど申し上げましたように、社会保障制度のいかんによって変わってくるという話をしましたが、それで分類すると、代替型、追加型、中間型と三つに分けられると思っています。これらの言葉は私がつくった造語なので気を付けていただきたいんですが、代替型は既存の社会保障制度を全て廃止するという極端なお話ですけれども、追加型の方は既存の社会保障制度を全て残すという制度ですね。
それで、中間型、まあ改革型と言ってもいいかと思うんですが、既存の社会保障制度のうち残すものと廃止するものを取捨選択するということなんですが、私は中間型が理想だというふうに思っておりますけれども、社会保障制度の改革というのはそんな簡単なものではないので、それを待っているといつまでたってもベーシックインカムが導入されないということが起きるかと思いますので、私は、最初は追加型で導入して、徐々に中間型、改革型に変えていくというのがよろしいかと思っています。
代替型に近い主張をすると思われている人がいらっしゃるようなんですけれども、全部廃止するということをよく考えて検討した結果でもやっぱり代替型がいいという人は余りいないと思っています。健康保険制度とか障害者年金とか、そういう制度は残しておいた方がいいと思う人が多いかというふうに思っております。
それから、ベーシックインカムをその財源で分類した場合には、税金が財源である租税BI、国債が財源である国債BI、それから、ちょっと貨幣発行益が財源というのは分かりにくいかと思うんですが、これは後でお話しします。
これに関しても、私は、基本的には最初は国債を発行する以外にないと思っています。政府の借金が増えるので問題だと思う人も多いかと思うんですが、私は基本的には問題ないというふうに思っています。国債を発行することを非現実的だと思う人もいるかと思うんですけれども、特別定額給付金を考えていただければ分かるように、国債を財源にするということで国民に給付するというのはもう既に今、日本ではやられていることなので、そんなとっぴなことではないというふうに思っております。
それから、ベーシックインカム導入に当たって、その副作用があるんじゃないかというふうに考えられるわけですけれども、一つは労働意欲の低下、二つ目はその給付されたお金で過剰消費をしてしまう、三つ目はインフレーションということなんですが、一も二も結局インフレーションという形で現れます。なぜなら、労働意欲が低下すると労働供給が減る、そうすると物を作る人が少なくなるわけですから、需要と供給のバランスを考えたときに供給の方が減ってしまう、そうしたらインフレが起きる。それから、過剰消費の方は消費需要が増えるわけですから、それもインフレを引き起こす原因になるので、逆に言ったらベーシックインカムの給付額を幾らにすればいいかというのは、インフレーションを起こさない程度であれば構わないというふうにも言えるかと思います。
私は、よく月七万円というふうに言っているのは、恐らく月七万円ぐらいの給付ではインフレーションは起きないだろうというふうに思っているからです。ただ、そこに保証はないので、後でお話しするように、月一万円ずつぐらいから給付額を増やしていって、一年目は例えば月一万円、次の年には月二万円、その次の年には月三万円というふうに増やしていくのであれば、いつでも逆戻りできるし、ハイパーインフレになるなんという心配は要らないかというふうに思っております。
ベーシックインカムの現状なんですが、まだ本格的に導入した国はありません。フィンランドは実験が既に終了しておりまして、スイスは二〇一六年に国民投票にかけられましたが、否決されました。イタリア、スペインはベーシックインカム的な制度を導入しているんですが、これは、先ほど申し上げましたように、限定BIということになります。所得制限があるということなので、ユニバーサルでもないですし、完全BIでもないという状況ですね。
それから、フィンランドの実験なんですけれども、失業者二千人に五百六十ユーロ、日本円にして六万八千円程度給付したということなんですが、失業手当の受給者と比較してどうかという、そういう実験だったんですけれども、比較の結果、ベーシックインカムを受給した人の方が生活満足度が高い、それからストレスが低いという結果が出たんですけれども、労働意欲は失業手当の人と余り変わらなかったということで、ここが伸びなかったので、フィンランドではその後、ベーシックインカム導入には余り積極的ではなくなっているという状況です。
今、ベーシックインカムがこのコロナ危機下でかなり注目されているかと思うんですが、各国とも一時的なベーシックインカムとでも呼べるような、そういう政策を実施しています。香港では一万香港ドル給付、アメリカはもう三回目の給付をバイデン政権が決めたところですね。日本では一律十万円給付を一回行ったということなんですが、この特別定額給付金についてちょっとお話ししておきたいと思うんですが、十八ページになります。
私は、特別定額給付金がコロナ危機下において望ましい政策だというふうに思っています。なぜかといいますと、困っている人にだけピンポイントに国が支援するというのはかなり難しいことだと思っておりまして、例えば、特別定額給付金の方は第一次補正予算案で組み込まれたわけですけれども、第二次補正予算案では一人親世帯、母子家庭を中心に給付する、それから学生に対する支援というのもあったんですけれども、シフトを減らしたフリーターの人とか、それから歩合制のタクシーの運転手さん、こういう人たちは収入がかなり減っているわけですけれども、基本的には彼らを対象にしたような支援はなかったということなんですが、ちょっと細かいことを言うと、シフトが減ったフリーターの方も自分で休業手当を直接申請することもできるんですが、その予算額の一割ぐらいしか使われていなくて、そもそもこの制度を知らないとか、どう手続したらいいか分からないという人も多くて、基本的には支援が受けられていないという状況にあります。結局、政府が想定する困窮者しか支援を受けられないというのがピンポイントで支援することの難しさということになります。なので、理由を問わず、全ての困窮者を支援すればいいというふうに私は考えています。
そうすると、お金持ちには給付必要ないじゃないかと思う人も多いかと思うんですが、お金持ちの人からは別に後で税金で取ればよくて、結果として、そうすると貧しい人だけ救済するということになります。コロナによって貧しくなったかどうかというのは、私は問う必要が全くないと思っています。そもそもが政府はあらゆる困窮者を救済する責務があるというふうに思っておりますので、とにかく理由を問う必要がないというのが私の考えです。なので、もう広く給付してしまって、お金持ちの人からは税金を取るという形で、漏れなく救済するということが非常に重要かと思っています。
この給付というものが、特別定額給付金、まあ一回きりだったんですが、理想としては毎月十万円ぐらい給付した方が私はいいと思っているんですが、それが政治的に無理なことは分かっていますので、せめて追加の給付金というものを実施した方がよろしいかというふうに思っています。それが日本がこれからまた長期デフレ不況に陥らないようにするために必要なことだというふうに思っています。
今、自粛要請などによって一次的な不況が起きているという状況ですね。これは、自粛要請でそのまんま人々がお買物に出かけないから消費が減少しているという状況なんですが、これが企業の減収につながり、失業の増大とか給料が減らされるということにつながって、結局家計が減収して、家計が減収したことによって消費を控えるというのが二次的不況ということになるんですが、この一次的不況というものは感染の蔓延を抑制するためには防ぐことができないんですが、二次的不況は政策によって防ぐことができるはずなんですね。この循環がつくられてしまうと、スパイラル的にこれから日本は長期デフレ不況へと突入していってしまうということになります。
なので、減収した企業に対して給付、融資する、それから家計に対して給付、融資するということは、その企業や家計の持続、安定、生活の安定のために必要ということもあるんですが、不況を防ぐためにこれが重要だというふうに思っております。なので、コロナ収束まで月十万円の給付というのが理想だというふうに私は考えています。
失われた三十年という言葉がありますけれども、これが四十年、五十年になるのかならないのかという今、日本は瀬戸際に立たされているというふうに思っております。過剰なぐらいの積極財政を行わないと、この危機を回避することはできないと私は思っております。
済みません、ちょっとまだ資料は続くんですが、時間になってしまいましたので、以上で終わりにさせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
三人の参考人の皆様、今日は貴重な御意見をいただきました。本当にありがとうございます。
まず、山田参考人にお伺いをいたします。
私は東北と北海道を主な活動地域にしていて、先日、青森市の事業者の方々の実態をお聞きする機会があったんです。地域で愛されて三十年間も営業を続けてきた飲食店でさえもこのコロナ禍の中で閉店をせざるを得ないとか、花屋さんは冠婚葬祭がなくなったりそういったものが縮小されたりということで軒並みキャンセルが出たとか、あと、お弁当屋さんなんかは会議やイベントがほとんどなくなってしまって大量発注が行われないといったような深刻な影響が次々出されたんですね。
今、二度目の緊急事態宣言出されていますけれども、宣言が出ていない地域でも同じように影響があるんだというふうに思うんです。その宣言が出ていない地域の実態について教えていただきたいということと、その宣言が出ていない地域にもいろんな支援策が必要だというふうに思うんですけれども、参考人がどのようにお考えか、お聞かせください。
○参考人(山田昇君) ありがとうございます。
今先生お話ございましたように、緊急事態宣言が出ているところと出ていないところ、それによってもいろいろとあるとは思うんですが、実は青森も、私、友人が仕事、青年部時代の友人がまだお店をやっております。やっぱり現状はなかなか厳しいということでございますが、やはり、何といいましょうかね、これからどういうふうな形のものをしていくかというのは大変これ厳しいことは厳しいと思います。
ただやはり、そうはいえ、中では、各県では独自の方法でこのコロナ禍を乗り切ろうというところも大変多いと聞いております。青森はどういうふうな感じかはちょっと分からないんですが、これからはやはりお互いに協力というか情報交換をして、なるべくコロナ禍を何とかやり抜くというか、そういう状況しか取りあえずは私はないような気がします。
個店としての努力というのは、大変小さいんですけど、やはりこれは各県の援助というか、そういうものを強くしていただかないと、なかなかこれ、すぐに改善されるという話ではないような気がいたします。
○岩渕友君 ありがとうございます。
続いて山田参考人にお伺いしたいんですけど、今日参考人からお話をいただいている商店街の役割というのが私も非常に重要だというふうに思うんですね。今日お話をいただいたように、例えば祭りの担い手だったり、防犯や見守りの役割を果たしたり、コミュニティーの場としても重要だし、非常に多様な役割持っているんだと思うんですね。だけど、閉店する店が増えたり、店を閉めた後、チェーン店がそこに代わりに入ってきたりということで、商店街の個性が失われているんじゃないのかというような声も聞こえてくるわけですよね。
ただ、その背景には、お話があったように、消費税増税があったり、災害が相次いだり、大型店やスーパーが進出をしたり、そこにコロナ禍が重なってということで、その持続的発展ということがなかなか困難な実態がずっと続いているということがあるんだと思うんですね。ただ、大型店なんかはその地域の実情と関係なく撤退しちゃうこともあるわけですけど、先ほど参考人が話をされていたように、商店街は地域に根付いていると、根差しているということなので、どんな状況でも地域支えることができるということだと思うんです。
なので、ちょっと改めて商店街の役割についてもう一度教えていただきたいということと、先ほど商店街を支えてほしいという話があったと思うんですけど、この支えるという部分をもうちょっと具体的に教えていただけますでしょうか。
○参考人(山田昇君) まず、一つの例というか、一番人間に対して大切なものというのはやっぱり災害時だと思うんですね、災害時。
皆さんにはもう釈迦に説法かもしれませんが、自助、共助、公助、こういうその三つのあれがあるんですが、人間が生き長らえるためには三日と言われているんですね、三日。それで、阪神大震災のときもそうだったんですが、ほとんどは地域の人たち、要するに商店街の人たちが炊き出しをやったり等々、この三日間というのを何とか頑張って、それで地域の方たちにお役に立ったなという感じがするんです。あと、あそこの、東北震災に関しましても、例えば、洋服屋さんがもうぬれてしまったものを乾かして、それを無料で提供したとか、そういうふうな形で大変に地域としては役立っているとは思うんですが、残念ながら、これがなかなか表に出てこないというところが我々は大変歯がゆく思っているなというところなんですね。
例えば、震災があっても、やっぱり地域の人たち、我々、身近なお客さんですので、ああ、あの人どうなったかな、この人どうなったかなという感じで目は配れるんですよ。ところが、じゃ、コンビニの皆さんはそこまで地域を把握しているかな、スーパーの方はそれだけ把握しているのかなと思うと、これ全然、全然と言っちゃ失礼ですけど、まあかなり薄いと思うんですね。そういうところを我々も一生懸命声を大にはしているんですが、なかなか一般に伝わっていかない。こういう有事なことって、本当にもうまれに起きることでございます。
ただやはり、夜中でも買物ができるとか、雨にぬれなくていいとか、あったかいところで、涼しいところで買物ができるというそっちの方が優先しちゃって、どうしてもやはり我々の商店街というのはなかなかうまく宣伝ができないというか、皆さんに価値を分かっていただけないのは大変歯がゆいなという感じはいたします。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、平田参考人にお伺いをします。
コロナ禍の下で、フリーランスの皆さんが抱える問題点がいろいろ浮き彫りになったというふうに思うんですけど、参考人から今日のまとめのところで、フリーランスであれば企業にも政府にも頼らず自助で生涯現役というのは幻想だということや、全ての働く人が参加できるセーフティーネットの整備が急務だという話あったと思うんですが、そのとおりだというふうに思いました。
今日御説明いただいたフリーランス白書も、いろいろな方の声見ていますと、一番どうにかしてほしいと思っているのが国民健康保険だと、傷病手当が受けられないのが一番のデメリットだというようなこともありました。例えば、その傷病手当の制度はフリーランスや個人事業主にも設ける必要があるというふうに思います。
こうした恒久的な制度の必要性について、参考人、どのように考えるか、お聞かせください。
○参考人(平田麻莉君) ありがとうございます。
おっしゃっていただいた国民健康保険の問題というのは、実は、私たちフリーランス協会設立して以来、一番協会に対して多く寄せられている課題というか期待の声で、何とか国保じゃない形で健康保険組合に入れるようにしてほしいという声が、一番私たちが受け取っている声になります。
その背景として、この中にも書いてありますけれども、その傷病手当金というのは非常に大きくて、やっぱり会社員の方であれば、多少病気とかけがになっても少しは休業という形で給与が出続ける可能性あるんですけれども、フリーランスの場合は、けがをしたり病気をして働けなくなった瞬間に収入がストップしてしまうんですよね。その補償が何もないということになってしまいますので、どっちが大変と言うつもりはないんですけれども、会社員の方よりも収入がゼロに突然なってしまうリスクが高い働き方だと思います。
また、その傷病手当金の問題だけではなく、よく言われることとして保険料の高さというところがあるんですけれども、今の多くの自治体の国民健康保険というのは赤字財政になっていまして、少し前、数年前に、それまで市町村レベルでの運営だったものが都道府県レベルで統合されるなど、その赤字財政どうするかという問題が指摘されているところなんですけれども、その国保の受給者というか加入している方の多くが個人事業主だったり自営業の方ですけれども、それに加えて、お仕事されていない無職の方、ニートの方とかですね、あとは前期高齢者の方とかもいらっしゃる中で、フリーランスの当事者の中ですと、そういうお仕事をされていない方の保険料を自営業者が負担しているというような構造になっていることを問題視している方もいらっしゃると思います。
やっぱり、そういうみんなで支えていかなければいけない人たちというのは一定数いらっしゃると思うんですけれども、それを自営業者だけが同じその保険のプールに入って支えるということではなく、会社員の方も同じように同じプールに入って支えるということが公平性という意味では必要なんじゃないかというような意見もあったりしますので、先ほどの繰り返しにもなりますけれども、やはりこれまでの、企業と個人というのが一対一でつながっていて、そこ経由で税金だったり保険料を徴収するというシステムが少し時代に合わなくなってきていますので、そこを切り離してというか、会社に属していようとしていまいと働く全ての人が同じように負担をして、それで賄い切れない部分、公共的に支えなければいけない部分はまた別途企業からなり税金からなり補填するというような形が望ましいのではないかなというふうに思っております。
○岩渕友君 ありがとうございます。
次に、井上参考人にお伺いするんですけど、コロナ禍の下でこれまで以上に格差が拡大をしている実態があります。この格差拡大についてどのように考えていらっしゃるかということと、それを是正するためにどんなことが必要だと考えるか、お聞かせください。
○参考人(井上智洋君) 日本で格差が開いている要因はコロナ以外にも二つほどあると思っていまして、一つは、日本で長らく続いてきたデフレ不況だと思っております。デフレ不況のせいで、本人が希望しないのにフリーターになってしまうということとか、あるいは失業したり給料が増えなかったりということで格差が開いている部分というのはあろうかと思います。
それから、あともう一つは、これは世界的に見られる現象なんですけれども、AIを含むITの影響で中間所得層の仕事が減りつつあるということなんですが、単純化して考えて、低所得層が主に肉体労働に従事、中間所得層が事務労働に従事、高所得層が高度な頭脳労働に従事というふうに考えた場合に、その中間所得層が主に従事している事務的な労働というものが今減っているという状況ですね。
例えば、これアメリカでは顕著なんですけれども、コールセンターのスタッフとか経理係、それから旅行代理店のスタッフ、こういった事務労働というものが減っているという状況にあります。なので、中間所得層が減って低所得層と高所得層が増えていて、その高所得層の増え方よりも低所得層の増え方の方が大きいというのが現状です。
要するに、そのコールセンターのスタッフが失業したときに、じゃ、高度な例えばIT企業に転職するかというと、する人もいるんですが、多くの人は、例えばこれはアメリカでも清掃員であったり介護士さんであったりそういう職に就く人が多いということなんですが、そうすると、中間所得層がアメリカでは没落しつつあって、低所得層と高所得層に両極分化しているということがアメリカでは見られているというふうに言われていたんですが、日本のデータを見ても実はこの両極分化が起きています。所得分布というのを見ると、山が一つになっているんじゃなくて二つになっていて、フタコブラクダのような形になっていて、しかもその谷の部分、その真ん中の中間所得層の部分の谷がより深くなっているという状況が見られます。
なので、こういった構造的な要因によっても格差は開いているというふうに言えますので、それに更にコロナが加わっているというふうな、三つの要因が合わさって今の日本の格差拡大というのは起きているということを、私はこういう分析を行っております。
以上です。
○岩渕友君 ありがとうございました。以上で終わります。