(ページ下部に資料があります)
日本共産党の岩渕友議員は10日、参院経済産業委員会で生産性向上特別措置法案に盛り込まれている、国や独立行政法人等が保有するデータの提供を認定事業者が要請できる制度について質問しました。岩渕氏は提供されたデータをSNSなどのデータと組みあわせることで、プライバシーの侵害が起こる危険があると指摘しました。
同制度は、主務大臣から認定を受けた事業者が国や独立行政法人などに対して、地図や衛星データなどの産業データや個人情報の提供を要請できます。政府は個人情報を提供する場合は、氏名などをふせ、個人が特定できないようにする「非識別加工」を施して、個人情報を保護するとしています。
岩渕氏は、政府主催の会議を例にあげ、訪日外国人に関する、SNSの利用状況、入国した空港、免税品の購入データなど官庁が保有するデータと、SNSに書き込まれているデータなどを組みあわせて、訪日外国人の観光行動を分析するサービスを提供したいと政府に要望している民間事業者がいることを紹介しました。
SNSは名前や顔写真が公開されているため、「データを組みあわせることで個人情報が明らかになる恐れがある」と指摘し、プライバシーが侵害された場合、誰が責任をとるのか追及しました。
世耕弘成経済産業相は、「あくまでも公的データをしっかり非識別加工していく」とだけ述べ、組みあわせによる個人情報流出の危険について、責任の所在を含め答えませんでした。
(画像をクリックやタップすると、質問資料が別ウィンドウで開きます)
(ボタンをクリックやタップすると議事録が開きます)
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
生産性向上特別措置法案の革新的データ産業活用について質問をしていきます。
二〇一五年に成立をした改正個人情報保護法で新産業の創出が法律の目的に追加をされて、官民データ活用推進基本法、行政機関等個人情報保護法などによって公的なデータを新たに産業に活用しようという仕組みがつくられてきました。公的なデータでも非識別加工すれば民間ビジネスに提供することができるようになりましたけれども、こうした制度は日本にしかないんだということがこれまでの審議を通じて明らかになっています。また、改正個人情報保護法では、匿名加工されていれば本人の同意なく第三者に個人情報を提供できることになっています。
EUでは今月から一般データ保護規則が施行をされますけれども、それに比べて日本の個人情報保護は非常に脆弱だと言わなくてはなりません。こうした中で個人情報が守られるのか、そういう懸念を私は持っております。
本法案は、革新的な事業を行うために収集した情報を産業活動において活用できるように、データ連携、高度利活用を行って新たな付加価値の創出を図る取組を革新的データ産業活用として、革新的データ産業活用を実施しようとする事業者は、主務大臣から認定、確認を受ければ国や独立行政法人等に対してデータ提供を要請できる手続が創設されるということになっております。
大臣にお伺いするんですが、これまでの議論の中で、提供を要請できるデータは、主には産業データなんだけれども、個人情報を法律上排除するものではないというふうに大臣も答弁をしています。改めて、これでいいかどうかを確認したいと思います。
○国務大臣(世耕弘成君) 今回の特措法に基づく公的データ提供制度に基づいて提供されるデータとしては、先ほどおっしゃっていただいたように、主に地図データ、衛星データなど、個人データではない産業データを想定しているわけでありますが、法律上個人データの提供は排除していないというところであります。
ただし、先ほどもお話ありましたが、個人データを提供する場合には、個人の権利利益が保護されることが前提となります。具体的には、個人データの提供が求められた場合には、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする行政機関等個人情報保護法の規律に基づくことを前提としてデータを提供することとなります。
こういった扱いによって個人の権利利益は保護されるものと考えているところでありますから、今回の法案においては、個人データの提供自体を排除するということはしておりません。
○岩渕友君 個人情報については法律上排除するものではないということでした。
それで、お配りしている資料の一を見ていただきたいんですけれども、これは、今年の四月二日に開催をされた知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会で経済産業省商務情報政策局が配付をした、データ利活用、保護に関連する取組に関わる資料です。この資料でも、産業データと非個人情報というのはニアリーイコールでここでは示されています。つまりは、産業データの中に個人情報が含まれているというものです。
資料で本法案に該当するのはこの二の部分、新法による産業データ共有事業の認定制度の創設、この部分になるわけなんですけれども、この二の四角の上のところに基本方針で示す重要分野の協調領域ということで枠が囲ってあるわけなんですけれども、この協調領域の部分も個人情報の部分に掛かっている、こういう今状況になっています。
第二十二条の六項、本法案の二十二条六項では、革新的データ産業活用計画の認定に当たって、個人情報が含まれていた場合、あらかじめ個人情報保護委員会に協議をするというふうになっています。協議の結果、個人情報保護法の規律に反するとか逸脱をするということがあったときに、個人情報保護委員会は認定には問題があるんだといって拒否することができるのか、これを経産省と個人情報保護委員会にお聞きします。
○政府参考人(前田泰宏君) お答えいたします。
御指摘のとおり、革新的データ産業活用計画の認定に当たりましては、主務大臣が特に必要と認める場合に、政令で定める場合に、あらかじめ個人情報保護委員会に協議をするということになっております。
その場合、税制の優遇や公的データ提供の支援措置を講じるに当たり、その事業において万が一にも個人情報保護法の規律から逸脱することがないように事前に確認をすると。さらには、民間事業者の方にしても、個人情報保護法上問題がないんだなということを確認をして安心してできるということでございますので、ここに、個人情報保護法制に違反するということが明確になってまいりましたら、それは問題として主務大臣が判断するということになろうかと思います。
○政府参考人(福浦裕介君) お答えいたします。
個人情報保護委員会としましては、申請された革新的データ産業活用計画の内容について、個人情報保護法に基づいて個人情報の適正な取扱いが確保されているかという観点から確認を行ってまいる所存でございます。
万が一、申請された革新的データ産業活用計画における個人情報の取扱いにつきまして個人情報保護法違反が疑われる内容が含まれている場合においては、その旨を主務大臣に回答し、しかるべき対応を御検討いただくことになろうかというふうに考えております。
○岩渕友君 二十六条で、革新的データ活用を行う認定事業者は、国の機関又は公共機関等の保有するデータの提供を求めることができるというふうにあります。本法案にある国の機関又は公共機関等の対象というのは、行政機関等個人情報保護法の対象である全ての行政機関及び独立行政法人、国立大学法人や日本年金機構なども含まれるということでいいのかを確認したいということと、高速道路株式会社、NEXCO東日本とか西日本といった公益法人も対象となるのか、お聞きします。
○政府参考人(前田泰宏君) お答え申し上げます。
データの提供の求めを行うことができる対象である公共機関等は、御指摘のとおり、独立行政法人に加えてその他これに準ずる者で政令で定めるものとなっておりまして、現在、その範囲につきましては政令事項になっておりますものですから、協議をし、検討しているところでございます。
ただ、その政令を定めるに当たりまして、その範囲についてでございますけれども、政府活動の一環としてみなされ、独立行政法人等個人情報保護法により政府と同等の規律の対象となっているということでございますので、現在のこの独立行政法人等個人情報保護法、この対象を参考にしながら、現在、政令の中で具体的に範囲を決めようということで検討しているところでございます。
○岩渕友君 今の答弁でいうと、私が例示したようなところが入ってくる、入る可能性があるということだというふうに思います。
国や独立行政法人等の保有するデータの提供を受けて事業者がこれをどういうふうに活用しようとしているのかということで、衆議院の議論では、データ提供制度に関わって、データを幅広くオープンにしていろいろな人からのアイデアを発掘することは重要だということで、まだオープン化されていない行政データについても、事業者のこういうデータが欲しいという声を集めながら更に行政データのオープン化を進めるために、オープンデータ官民ラウンドテーブルが紹介をされています。
資料二を見ていただきたいんですけれども、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が今年の一月の二十五日に第一回目となる官民ラウンドテーブルを開催しています。ここでいろんな事業者が提案しているんですけれども、ウイングアーク1stという企業が、訪日外国人の観光行動、どんなふうに移動して、どこで飲食をしているのか、オープンデータを使ってうまく分析、活用できないかということで、具体的にどんなデータがあればより利用価値が上がるか、幾つかの提案が行われています。議事要旨も公開されているんですけれども、議事要旨を見ると、ウイングアーク1stの要望に対して省庁の担当者が次のような回答を行っています。
ウイングアーク1stは、観光庁が公開をしている訪日外国人の消費動向調査データに民泊を加えてほしい、どんなSNSを利用しているのか、また、どの空港、海港から入国をしているのか。国税庁には免税品の購買データの開示、法務省には外国人入出記録紙のデータの公開などを求めています。これに対して国土交通省の担当者は、ソーシャルデータとかビッグデータを活用して旅行者の行動分析や購買分析をするのはホットなテーマだ、できる限り御協力させていただきたいというふうに回答しています。法務省の担当者は、今回提案のあったものについて統計として作成できるのではないかと考えている、もっと活用できる統計の作成について検討をしたいというふうに答えています。
では、その免税品の購買データの開示について国税庁は何と回答をしたのか。
議事要旨を見ると、免税店では、購入をする旅行者に関する情報、購入物品に関する情報を基に購入記録票を作成していて、この購入記録票は二〇二〇年四月以降に行われる免税販売については紙ベースから電子化されるということを紹介しながら、電子化後の対応について述べています。未確定な部分はあるんだけれどもと言いながら、免税販売のデータは、外国人旅行者の個人情報、免税店を経営する営業上の秘密などが含まれているので、外部に漏らさない、税務以外の目的で利用されないことが前提となっている、免税店から送信されたデータをそのまま外部に提供することは許されないのではないか、守秘義務に抵触するのではないかというふうに考えているというふうに述べた後に何と言っているのかなんですけれども、議事要旨の二十一ページの二十五行目に仮に免税販売データを提供する場合にはというくだりがあるんですけれども、今日内閣官房に来てもらっているので、この仮に免税販売のというところからその段落の最後のところまで読み上げて紹介してください。
○政府参考人(山路栄作君) お答えさせていただきます。
仮に免税販売データを提供する場合には、特定の個人や事業者が識別されないような集計加工、匿名化をする等の措置が必要であると考えております。また、その場合におきましても、税務以外の目的で利用することについて納税者の皆様等の理解をいただくためには、法令等において制度的な手当てがされることが必要ではないかと考えております。
以上でございます。
○岩渕友君 最初私が紹介したところでは、守秘義務に抵触するとか許されないのではないかと考えていると言いながら、今読み上げてもらったところには、仮に提供する場合にはというふうに言って、じゃ、どうすれば提供できるのかという立場で回答を行っているわけなんですよね。
この答弁含めて、先ほど紹介した国土交通省や法務省の担当者の回答というのも、いずれも前向きな回答をしています。
資料三を御覧ください。これはウイングアーク1stがラウンドテーブルで提出をした資料を抜き出したものなんですけれども、驚くべきことに、上の②のところを見ていただきたいんですけれども、今後実現したいサービスということで、ソーシャルデータ、ツイッターとかインスタグラムとかこうしたソーシャルデータ、オープンデータ、リアルデータを組み合わせて、その下の緑の枠に囲われているところにあるように、このデータを組み合わせることによって訪日外国人の観光行動を分析したいんだというふうにあります。さらには、下の③の現在公開されているデータの現状というところの七のところにデータ形式に関する変更要望ということで、赤字で書かれている部分には生データの開示が要望として上がっています。
個人情報は非識別加工されている、してあるといっても、SNS、ソーシャルデータで名前や顔写真も明らかになっているわけですよね。そのデータを組み合わせることで、これ個人情報が結局明らかになるおそれがあるんじゃないかと思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 今回の公的データ提供に当たっては、既存の法令に違反しないことが法律上求められているわけであります。このため、行政機関等が保有する個人情報に関しては、行政機関等個人情報保護法に基づいて、個人の権利利益を保護するための規律に服することになるわけであります。
具体的には、行政機関などが保有する個人情報について、特定の個人が識別することができないよう匿名加工を行う非識別加工情報制度が設けられておりまして、その加工とは、個人情報保護委員会規則が定める個人識別符号の削除や特異な記述の削除などの基準に従うこととなっているわけでありまして、非識別加工情報の提供を受けた事業者が他の情報と組み合わせ個人を特定する識別行為が禁止をされているわけでありまして、個人情報保護のための十分な規律が設けられているというふうに認識をしております。
○岩渕友君 今大臣はそういうふうにおっしゃったわけですけれども、内閣官房のIT総合戦略室が二〇一六年九月十六日に行っているIT総合戦略本部データ流通環境整備検討会で配られた資料には、個人に係らないデータであってもほかのデータと組み合わせることによって個人の特定につながる可能性があることに留意が必要だというふうに書かれているんですよね。非識別加工情報だから大丈夫だと、禁止されているから大丈夫だと言うけれども、一回流出しちゃったら、それどこまでも広がっていくわけですよね。
先ほど、革新的データ産業活用計画に個人情報が入っている場合は個人情報保護委員会と協議して、協議の結果、規律に反することがあった場合、個人情報保護委員会は認定に問題があると拒否できるのかと聞いたときに、個人情報保護委員会は主務大臣に意見言うと、で、最終的には主務大臣が判断するということになったわけですよね、そういう答弁でしたよね。こういうことになっちゃうと、もう最終的には主務大臣が判断すればということになるということだと思うんです。
ウイングアーク1stが組み合わせようというふうに考えているデータには、先ほども言ったように、もう名前も顔も出ているソーシャルデータが含まれているわけですよね。既に個人情報は明らかになっている、匿名加工されていても組合せによって個人が特定されかねないと、こういう申請について協議になったときに、個人情報保護委員会は認定には問題があると拒否できるのかどうか、もう一回お聞きします。
○政府参考人(福浦裕介君) 具体的なケースを見て判断させていただくということになろうかと思いますが、私どもの基本的なスタンスは、先ほど申し上げたとおり、個人情報保護法違反が疑われる内容があれば、主務大臣にその旨をしっかりと伝えるということでございます。
○岩渕友君 しっかり伝えると言うんだけれども、最後は主務大臣が判断すると。
二十二条の七項には、この法案の目的というのはそもそもデータの活用促進だというふうになっているわけですよね。しかも、迅速かつ的確な実施を図るためには相互に密接に連絡取ると書かれているわけです。個人情報保護委員会は独立した組織だけれども、独立性を脅かすことになるんじゃないかと思うんですね。
大臣に聞きたいんですけれども、ウイングアーク1stの例では、観光庁、国土交通省ですよね、国税庁、法務省が非識別加工した情報を提供して、そのデータとほかのデータを組み合わせることで個人が特定されてプライバシーが侵害をされると、そんなことがあったときに、じゃ、これ一体誰が責任取るんでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 我々は、これあくまでも公的データについて個人情報保護法では議論しているわけでありますから、非識別加工をしっかりやっていく。公的データの中には別にフェイスブックとかツイッターの情報は、我々は持っていない、政府は持っていないわけでありますから、あくまでも我々は公的データをしっかり非識別加工していくということが極めて重要だと考えています。
○岩渕友君 事業者はそういうソーシャルデータを使って、公的なデータと組み合わせて使いたいと言っているわけですよね。個人データが一回漏れたらやっぱり取り返しが付かないということなんですよ。プライバシーが侵害されるという懸念がいよいよ重大なものになっているということを指摘をして、質問を終わりたいと思います。