2021年2月17日(水) 参議院 国民生活・経済に関する調査会
3年間を通したテーマ「誰もが安心できる社会の実現」のうち、2年目のテーマ「困難を抱える人々への対応」のうち、「外国人をめぐる課題」について 参考人質疑
制度そのものに矛盾
参院国民生活・経済調査会は2月17日、「困難を抱える人々への対応(外国人をめぐる課題)」についての参考人質疑を行い、日本共産党の岩渕友議員が質問に立ちました。
岩渕氏は、外国人技能実習制度は「やめるべきだ」と主張した上で、コロナ禍のもとでの実習生の解雇や賃金未払いなどの問題や問題解決の障害について質問。NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は「全てが管理団体任せになっている」「実習生自身が労働者として権利主張できる制度になっていないという制度そのものの矛盾が起きている」と答えました。
「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」共同代表の指宿(いぶすき)昭一弁護士は、実習生が解雇されても休業手当も支払われず困窮し、救済策も十分でないなど、制度のさまざまな問題点を厳しく指摘しました。
また指宿氏は、政府が今国会に提出した入管法改定案には反対だとして、「本当に外国人の人権が守られるような改正に取り組んでいただきたい」と強調しました。
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NPO法人移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事・鳥井一平参考人 意見陳述
○参考人(鳥井一平君) 鳥井です。ただいま御紹介にあずかりました移住者と連帯する全国ネットワーク、移住連と略称申しますけれども、代表理事をしております鳥井と申します。今日は、このような場所で意見といいますか私の考えを述べさせていただくことを非常に有り難く思います。(資料映写)
私、実は、衆議院の法務委員会では、二〇〇九年の入管法改正以降、その入管法に関わる、あるいは外国人技能実習制度に関わる審議の際に四回ほど参考人として意見陳述させていただいておりますけれども、今回は、二〇一八年の入管法改正以降、ある意味でいいますと、非常に外国人労働者の受入れ拡大に伴う総合的共生政策ということが議論されるようになり、メディアでも多く取り上げられるようになりました。そういった意味でも、本調査会でこのようなヒアリング、私どもに対してしていただけること、重ねて感謝申し上げたいなというふうに思います。
ところで、皆さん、私ちょっと先生方に一言前置きさせていただきますと、ちょっと厄介なスピーカーで、早口で滑舌が悪いと。速記者の本当に悩ませる、通訳者だとか記録者を悩ませてしまうんですね。それで、実は早い段階からこのパワポというのを、もう本当にパワポができたとき、実はその前のOHP時代からそれをカバーするために、これを見ていただくと大体何をしゃべっているのか、ああ、大体あんなことしゃべっているなということが分かっていただけるかなというふうに思っております。
私は研究者や法律家でもありません。そういう意味でいいますと、現場で見聞きし、あるいは交流してきた、経験してきたことを中心にして、そのことを基にしてお話をさせていただいております。ただ、データを軽視することは決してよくありません。経験主義ではいけませんので、データと照らし合わせながら、そのようなことを、活動を三十年やってまいりました。
一九九〇年にニューカマーの人たちと初めて交流し、その課題に取り組んでからやってまいりましたので、この三十年間の思いをどの程度伝えることができるのかちょっと不安はありますけれども、限られた時間、精いっぱいお話をさせていただきたいなと思っています。
では、早速、時間もあれですから。私は、今日、困難を抱える人々の対応の、困難を抱える人々ということでいいますと、外国籍住民、外国人労働者、移民、このようなことになると思いますけれども、全般的なお話を少しさせていただきます。この後、お二人の参考人の方が具体的なことをいろいろお話をしていただけると思いますし、全般的なことについて少しお話しします。
フィクションによる移民政策が社会にゆがみをつくり出す、結構強い言葉言うなという感じだと思いますけれども、このフィクションについて少しお話をしたいと思います。
私ども移住連は、背景ここに書いてあります、皆さんにお配りしております資料にもありますから、ざっと触れていきますけれども、移住連は一九九七年に結成されて、NPO法人、特定非営利活動法人化したのは二〇一五年です。今現在、団体で百五、個人で五百名を超える会員の中で、それに支えられて、あるいは連携して、ネットワークをして活動しています。
ですから、組織は、移住連の組織ですけれども、こういうふうにいわゆるネットワーキングになっておりますから、ネットワーク組織なんですね。で、サブネットワークというのを持っておりまして、例えば生活全般でいいますと社会保障の課題、あるいは女性の問題、DVだとかそういう問題だとか、あるいは教育の問題、あるいは技能実習生の問題だとか、そういうサブネットワークをつくりながらネットワーキング活動をしております。
活動としましては、市民社会からいろんな、市民社会に対する働きかけ、あるいは市民社会からの発信ということで、国会へのロビー活動だとかそういうものをやっておりますし、国際的な連携といいますか、国連を中心としたロビー活動も行っております。そして、様々な地域での取組、こういうものを行っているわけです。
私は、ちょっと自分の宣伝になってしまいますけれども、先ほど申し上げましたように、特にニューカマーの人たちの問題ということでいいますと、一九九〇年からこの問題に取り組み始めて、そして二〇〇〇年から本格的に技能実習生の支援ということをやってまいりました。これまでたくさんの外国籍の労働者、あるいはその家族と一緒になって、今のこの社会における課題と向き合ってやってまいりました。
二〇一三年に、アメリカ国務省が毎年選出しています、人身売買と闘うヒーローというのを選出しているんですけれども、その二〇一三年に選出されました。これはワシントンのアメリカ国務省での表彰式の写真です。そしてまた、先ほど申し上げましたように、今メディアでも多く取り上げられるようになったものですから、NHKの「プロフェッショナル」に私が出演するということで、これをきっかけにしていろんな連帯、ネットワークもまた増えております。
私は、移住連の代表理事と言いましたけれども、労働組合としては個人加盟の労働組合のいわゆるオルグですね、書記長を長くやっておりましたけれども、書記長だとか代表理事というよりも自分ではオルグというふうに言っていますけれども、まあオーガナイザーですね。だから、そういうことをずっと活動をやってきたということだと思っています。
また、人身売買禁止としては、人身売買禁止全国ネットワーク、JNATIPといいますけれども、これ、省庁との円卓会議の中で人身売買の根絶ということを取組をしております。
移住連は、政策提言をこのように出しています。また出版物、ブックレットということで様々な出版物を出しています。
ホームページはこのようになっていますので、是非一度御覧いただければと思います。
そして、昨年はこの新型コロナ移民・難民緊急支援基金と、今日のテーマと直接的に関係していますけれども、コロナ禍の中で定額給付金がやっぱり給付対象から外れてしまう人、こういう人たちが非常に生活困難になるという中でどうしようかということで、とにかく現金給付だということで、一人三万円ずつの現金給付を行うということを行ったわけですね。このことが、個々人一人一人に渡すわけにもいかないので、やっぱりネットワーキングですから、支援団体を通じて、困難な人々に対してそのことが直接的にリーチできないかということで取組を行いました。
結果的には非常に多くの寄附が集められて、五千万円近いお金が集まりました。それをほぼ全額困難な人々に対して給付をするということをやったわけです。全体で四千九百万、支援していただいた人たちは千六百四十五人ということで、たくさんの寄附をしていただきました。
さて、ここから、今日の課題についてのお話をしていきます。
まず、これは当たり前のことのようですけれども、まず皆さんと一緒に確認をさせていただきたいのは、日本における外国人、外国人という言い方をした場合に二つの大きなカテゴリーに分かれると。オールドカマーというカテゴリーとニューカマーというカテゴリーですね。
オールドカマーというカテゴリーについては、旧植民地出身者とその子孫と書きましたけれども、やはり私どもは戦争を経験していますけれども、戦争を前後して無理やり連れてきた、あるいは来ざるを得なかった人たち、今の国籍でいいますと韓国、朝鮮、中国、台湾出身者ということになろうかと思いますが、この方々は、もう第五世代といいますか、非常に長くこの日本社会で生活しているわけですね。
そしてもう一つが、ニューカマーというカテゴリーです。ニューカマーは、一九八〇年代以降、日本のバブル経済を背景にしてダイナミズムをもたらした人たちです。で、現在に至っているわけですよね。このニューカマーの人たち、一九八〇年代から九〇年初頭まではほとんどオーバーステイの人たちです。
オーバーステイというと、何か不法就労どうなんだと、非正規滞在。でも当時は、それは全くお構いなしでした。たまに、気の利いたという言い方をしますけれども、警察官が職務質問をして交番に連れていくと、その外国人労働者が働いていた工場から社長さんが走っていって、今捕まえられると工場止まっちゃうと言ったら、ああそうですかといって戻ったんですよ。そんなこと、当たり前のようにして起きていました。
今、ここ、日本における外国人というところに英語が付いています。マイグランツ・イン・ジャパンと書いておりますよね。フォーリナーとは書いていないんですね。これ、今日本にいる人たちをフォーリナーという言い方をした場合に、非常に英語圏の人たちがその実態をつかみにくいといいますか、私も、だから言葉でごまかしています、マイグランツ・イン・ジャパンと。だから、この外国人という言葉にも少し問題があるというふうに私は認識しております。
皆さんも御案内のとおり、一番直近のところで二百八十八万、一昨年の十二月で二百九十三万人を超えましたが、コロナの関係で二百八十八万五千というのが二〇二〇年六月での数字データが出ております。このグラフ見てもらったら分かりますように、八〇年から、後半からぐぐっと伸びていくんですね。それまではほぼオールドカマーの世界でしたけれども、それ以降、いわゆるニューカマーの人たちがぐっと伸びたということです。
国籍は、中国、韓国、ベトナム。オールドカマーの以前は韓国、朝鮮が一番で中国ということだったんですけれども、ニューカマーの時代から中国が一番になって、直近では、ここのところではベトナムが増えていますよね。フィリピンが第三位だったんですけれども、それを超えてベトナムが第三位になっていると。
外国人労働者といった場合には、移住労働者、外国人労働者といえばどういうことになるかというと、日本の場合には在留資格ごとに分かれるわけですよね。つまり、どういうことを申し上げておりますかといいますと、就労ビザというのは存在しないということです、日本は。いわゆる就労ビザ、労働ビザじゃなくて、就労できる在留資格、つまり職種ごとの在留資格になっているということですね。それで、どんな仕事でもできる人というのは日系労働者、配偶者、永住者という身分に基づく在留資格。そして、技能実習生もやはり職種ごと、まあ非正規滞在、オーバーステイの人たちもいろんな仕事やっています。
そして、日本の場合には労働法が適用されない労働者というのが存在するわけです。それはどういう人かというと、これは括弧付きで研修生と書きました。これ今は違いますから、これ誤解のないようにお願いいたします。以前の研修生ですね、二〇一〇年までの。そして、家事労働者、興行。
日本はILO条約批准しておりませんから、家事労働者には労働法が適用されません。じゃ、家事支援労働者は何か。最近、何か家事支援労働者というのがあるよというふうに御指摘され、あると思いますけれども、家事支援労働者は派遣労働者なんですね。ですから、労働法の適用があります。
そして、悪名高い興行です、エンターテイナー。悪名高いと申し上げているのは、非常に国際社会から厳しい批判を受けました。エンターテイナーということで、シンガー、ダンサーで歓楽街で働かせると、ホステスあるいは性産業で働かせるということをやってきたわけですね。現在、これは、興行は激減していますけど、それでも一定数いますね。
それから、難民、難民申請中。日本の場合は、難民といいましても非常に少ないですから、難民申請中ですね、特定活動という在留資格。
そして、留学です。これ、当たり前のように労働者のカテゴリーに留学というふうに書いておりますけど、変な話なんですね。留学というのが外国人労働者のカテゴリーに入っているということをこの社会はやってしまっているわけです。欧米では、あるいは世界中どこを見ても、留学生が労働者のカテゴリーという考え方はないと思います。これは日本だけだと思いますね。
そして、最近は特定技能一号、二号、そして建設・造船就労者、家事支援労働者、介護ということになろうかと思います。
ですから、全般的には、オーバーステイの容認政策、先ほど申し上げましたけれども、これを取っていたんですね、バブル経済のときには。もうどうしようもない、人手が足りないと、全く足りないと。その後、何を考えたかというと、日系ビザの導入をしたわけです。つまり、帰ってきてもらおうという政策だというふうに当時の入管局長の方が吐露されていますけれども、そういう政策を取った。しかし、それでも定住をしてしまうと。これはまずいなということで、外国人技能実習制度の拡大ということを二〇一〇年で本格的にかじを切りました。そして、今ということになっているわけですね。この技能実習制度でできないところは、その隙間は難民申請や留学、家族滞在で補完してきたわけです。
その技能実習制度については、どうして人身売買、奴隷労働と言われるのか。
これ、外国人技能実習制度については、国際社会から厳しい批判があるわけですね。それはなぜかというと、相次ぐ不正行為、人権侵害。これは後ほど詳しく指摘されると思いますけれども、時給三百円と強制帰国という象徴的な言葉があります。
このことについては、残念ながら、日本の公的な機関ではなくて、国際社会からの指摘なんですね。一番最初の指摘が、アメリカ国務省の人身売買年次報告書の二〇〇七年版で指摘されました。以降、昨年までずっと毎年指摘されていますし、国連の人権を取り扱うところでは、この制度については非常に有名です。
そういうことをやっているのは一体どういうことなのかということですね。これ一つの新聞記事ですけれども、難民申請、働くためというのがありますね。今先ほど申し上げましたように、難民申請中に特定活動ということで働くことができると。指定書というのがあるんですけれども、これによって経営・管理と風俗業以外は働いてもいいよということになっていますけれども、いや、それを偽装して来ているんじゃないかということなんですけど、私から申し上げると、偽装をしているのは誰なのかと、この社会なんではないかと。
なぜかと申し上げますと、これ昨年十月の厚生労働省の外国人労働者雇用状況ですけれども、これ見ていただいたら分かりますように、実は労働者として入国しているのは二〇%しかいないんですね、労働者として入国しているのは二〇%しかいない。そして、技能実習や資格外活動のうちの留学が八二・八%ですから、全体で見ますと技能実習や留学で働いている人が四三%を超えると。
留学生のうち、宿泊業、飲食サービス業、卸売・小売業で働いているのがほとんどだと。これはどういうことかと申し上げますと、技能実習が認められていない職種、ここで留学生を使うということを、まあある意味でいうと政策を補完するという形でやっているわけですね。
技能実習がどれだけおかしな数字かといいますと、これは外国人労働者の中の比率ですけれども、今申し上げましたように全体で二三%ですが、宮崎県ですと七〇%です。五〇%を超える県がこれだけあるんですね。産業別でも、農業や建設業では外国人労働者といったら技能実習生というような数字になっているわけですね。
ですから、これ昨年の新聞記事ですけれども、宮崎県の椎葉村、非常に、ある意味でいうと、今テレビでよく、高視聴率の「ポツンと一軒家」というのがよく出てきたりもしますけれども、私はたまたま友人が椎葉村にいたものですから連絡をしたら、いや、こんなところにも来ているんだなという、そこに技能実習生が犠牲になっているということです。
これ、一つのデータ、グラフ見ていただくと分かりますけれども、二〇一二年に外国籍の方には住民票ができました。外国人登録法が廃止されて住民票ができたんですね。そことの比較でいきますと、二〇一九年の十二月、非常に増えて、八十九万人、九十万人弱増えているんですけれども、その増えている大半が技術、人文国際、技能実習、留学と、ここが非常に多く増えているんですね。
つまり労働者が増えているということです。しかも、その労働者というのは、フィクションによる移民政策が社会にゆがみ、人権侵害をつくり出す。そのフィクションとは、つまり、労働力として来てもらえばいいと、労働力と人間を分離しているわけですね。このフィクションが非常に問題だと。
ですから、例えば、実際は本当は、受入れと共生、職場と地域、労働と生活、これは切り離せない空間なんですよ。これを切り離して政策が論議されてきたんではないかと。
実は、こんなことが起きました。二〇一九年の四月に特定技能が導入されて、すぐに東京電力が原発の廃炉作業に受け入れたいと。これに対して入管庁は、新しい在留資格なら可能ですよと答えました。しかし、一か月少し過ぎたところで、厚生労働省から、ちょっと待ったということになったわけですね。そこで働く労働者は人間ですから、ベトナムではどういうふうな法律になっているか、あるいは、被曝した場合のその後のフォローアップどうしていくのか、そういうことを考えられているだろうかということの指摘があったわけですね。
厚労省は一日の長があったんです。私どもと一九九三年以降、もう三十年近く毎年毎年交渉してきて、例えば粉じん暴露でじん肺ですね、これが帰国してから発症した場合どうするのか、そのときのフォローはどうしていくのか、こういうことを議論してきた経験、積み重ねが厚労省には幾らかあったということではないかなというふうに思っています。
共生ということについて、二つのお話をしたいと思います、時間も限られていますから。
ミラクルさんとンダイキアさんの話です。ミラクルは、これは私と一緒にスキー、一昨年スキーに行った写真ですけれども、今高校生です。日本で生まれました。お父さんとお母さんはガーナから来ました。日本で生まれて、日本の小学校、中学校通って、中学校のときに東日本のバスケットボールのベストファイブメンバーに選ばれました。そのこともあって、彼女は私学の高校から引っ張られて、現在高校二年生です。しかし、彼女には在留資格がありません。どのようにしたらいいんでしょうか。
ン問題です。ン問題は何か。ン問題は何かといいますと、ンダイキアさんというのは、ある建設会社で働いていました。この方、社会保険加入することになりました。社会保険加入をして、一向に健康保険証が来ない。どうしたのかなと思ったら、そこの会社の総務に日本年金事務センターから電話があった。おたくにンダイキアさんという方がいらっしゃいますね。はい、おります。その方の名前の順番変えてもらえませんか。えっ、何ですか、それは。いや、コンピューターのシステム上、Nから入力ができないんですと。いや、それはシステムを変えてもらったらいいんじゃないですか。いや、システムを変えることできないんです、名前の順番変えてください。
で、私のところに相談に来ました。私もやり取りしましたが、一向に変わらない。そこで、国会で質疑をしていただいて、そして半年後にシステムが変わりました。システムを変えるよりも名前の順番を変えてもらおうという発想になってしまうということですね。
そして、現在、日常生活上、外国人労働者、その家族はどんなことが起きるかというと、日本語のみによる通知です。これ見ていただいたら分かりますけど、これ一番最初のものは、還付がされますよというお知らせです。パキスタン人の家族です。これは消費税が上がったときにプレミアム商品券がもらえますよと。そして、これは児童手当のことですよね。
今回、コロナ禍で追加して出されるけれどもということで、そのお知らせで、これを出せば、それはもらわない人は出してくださいということなんですけど、これ出した方がいいんですかと相談に来ました。これはトルコ人の家族ですけれども、彼、それから彼のお連れ合いも言っているんですけれども、電話一本もらえないかなと。これ、文章読んでも分からないと、しかし日本語聞くことは大体分かると。一体どういうお知らせなのかということが分からないわけですね。これ、ちょっと写真が後になりました。
そして、デマやフェイクです。移民に対するデマやフェイクが非常に多い。ですから、それに対するファクトチェックというのが必要だと思います。私たちは事実を直視する力を持たなきゃいけない、この社会は、というふうに考えております。
典型的なものは健康保険問題で、厚労省が調査を行いました。何かただ乗りするんじゃないか、不正があるんじゃないか。その調査をした結果、不正がゼロだったと。このことを、ゼロだったということの報告、発表が余りされていません。
それから、犯罪の温床ですね。これは、この三十年間、どの数字をどこを見ても、警察庁が発表している数字を見ても、犯罪の発生率低いです。
そして、単一民族国家論ですね。これ非常に、アイヌが先住民であるという、もう国会での決議もあります。
そして、雇用競合論です。雇用が競合すると。しかし、これも全くその事実はありません。欧米であるんじゃないか。欧米でも結局なかったということが検証されております。
そういうゆがんだ移民政策というのが、残念ながらヘイトスピーチというのを生み出したわけですね、韓国の話ということで。これ、ようやく川崎市が差別のない人権尊重のまちづくり条例を作りましたけれども、本来は中央政府で考えるべきことなのかもしれません。
ですから、私たちは、事実を直視する力、これをどのようにこの社会につくっていくのか。そして、その事実とは何かというと、既に始まっている多民族・多文化共生社会、移民の存在なくして成り立たないこの社会というわけですね。
顕在化している課題というのはいろいろあります。労働問題があります。その労働問題だけじゃなくて、これは例えばどういう図かといいますと、入国してきて以来、様々な生活課題が起きるわけですね、日常生活で。買物をしたりだとか、ローンをしたりだとか、家を建てたりするときにもいろんな弊害があると。こういう課題があると思います。ですから、そういう様々な課題についての言語、日本語での問題、この問題というのは非常に大きいんですね。読める、読めない、書けない。話はできる。
奴隷時代や主従時代の労働者の移動ではなくて、労使対等、ここで今、私、移動という言葉を使っています、受入れではなくて。コロナ禍でいいますと、このデータだけは見ていただきたいと思います、もう時間がありませんから。海外在留邦人の総数なんですけれども、二〇一九年の十月時点で百四十万人、長期滞在と永住でこれだけの数。今コロナ禍ですから余り移動していませんけれども、三か月未満の移動をしている人だと大変な数になるわけですね。その日本人が、その地域、国において労働基準が守られ、人権が担保されて働きたい、あるいは生活したい、そのように考えるのは至極当然のことではないでしょうか。
そしてまた、この新型コロナウイルスがあらわにさせたことは、外国人労働者、移民の存在ですね。誰一人も取り残さないということを私たちは改めて考える必要があるかなというふうに思います。仮放免者や非正規滞在者を含めて誰一人取り残さない、使い捨てにしない、させない、働く仲間、地域の隣人として考えていくということですよね。
もう時間がありませんので、出稼ぎの歴史的価値ということについて私たちは今議論するときに、出稼ぎがこの社会をつくってきた、人が移動することによって社会がつくられてきたということだろうと思います。労働者が労働者として真っ当な移民政策が求められていると。つまり、社会の担い手だということですね。
労使対等原則が担保された多民族・多文化共生社会。労働問題のときに、外国人労働者を救済するということだけではなくて、外国人労働者が物を言えるようにする、そのためのシステム、制度はどうしていったらいいのかということだろうというふうに思います。その人たちがきっとこの社会を良くしてくれるということだと思います。
終わります。ありがとうございました。
NPO法人青少年自立援助センター定住外国人支援事業部責任者・田中宝紀参考人 意見陳述
○参考人(田中宝紀君) NPO法人青少年自立援助センターの田中宝紀と申します。
皆様のお手元には、当法人の活動紹介のパンフレットとA4横長で刷っていただきました資料をお配りしていただいております。
私たちNPO法人青少年自立援助センターは、元々ニートや引きこもりといった若年無業者の若者の自立・就労支援を中心に手掛けてきた団体なんですけれども、東京都福生市に拠点を設けておりまして、横田基地がある関係等を含めて福生市周辺に外国住民の方々が多数暮らしている、その方々に対して、特に子供たちが支援のないまま放置されているというような状況に対応するために、二〇一〇年度より定住外国人支援事業部を創設しまして、両親又はどちらか一方が外国出身者である海外にルーツを持つ子供たちのための専門家による教育支援事業、YSCグローバル・スクール及び若者のための自立・就労支援事業を運営しております。詳しい活動については、是非お手元のパンフレットを御参照ください。
本日は、外国人の子供の就学問題における現状と課題についてということでお話をさせていただくんですけれども、お話の中で海外にルーツを持つという表現を使わせていただいたときは、日本国籍者を含む、国籍を問わない両親又はどちらかその一方が外国出身者という定義で使っております。また、外国籍の子供というふうに表現をしたときは、国籍を限定した事柄というふうにさせていただきます。
私たちの現場では、年間百二十名以上、六歳以上の子供、若者が支援に通ってきています。約十年間に及ぶ支援現場での経験に加えて、実は今回、この委員会でお話をさせていただくことになりまして、全国各地で活動をしている支援者の方ですとか関係者の方々に改めて最新の状況どうなっていますかということでヒアリングをしてまいりましたので、そうした支援者の皆様の知見も併せて共有をさせていただければと思います。
では、お手元にありますA4横長の配付資料を御覧いただきたいと思います。(資料映写)
表紙には、先ほど最後にも鳥井さんも御言及がありましたとおり、SDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない」というメッセージを記載しています。私たちの法人では、これまでに千人以上の海外ルーツの子供たちや若者たちをサポートしてきましたが、彼らの入所時に、保護者に対して必ず、今後日本以外の国に暮らす予定はありますかということを尋ねています。すると、これまでに約九七%の御家庭が今後出身国への帰国や他国への移住は考えていないというふうに回答するんですね。
つまり、海外にルーツを持つ子供たち、私たちが日々接している子供たちは、いずれ日本の中で成長して自立をして定着していく可能性が高い日本社会の子供であるというふうに言うことができますが、現状ではその多くが教育機会へのアクセスもままならず十分に学べないという、まさに取りこぼされた状況にあるというふうに認識をしています。
そして、そんな状況がこのおよそ三十年間、日系人のお子さんたちが多数日本にやってきて以来ほとんど変化なく横たわっている中で、彼らの教育をめぐる諸課題を解決して、さらに学ぶ権利を真に保障していくためには、外国籍の子供を含め義務教育の対象とすることがやっぱり最も有効なんじゃないかなというような声は支援者から多数あることをまずお伝えをさせていただきます。
では、資料の二ページ目を御覧ください。
全体として、海外にルーツを持つ子供たちの取組については、官民問わずですけれども、外国人住民が多く集まって暮らしている地域と、外国人がゼロではないけれども割合として一%前後しかいないよというような少ない地域との間で、様々な面で格差が存在しているという現状があります。資料には、外国人集住地域と外国人が少ない散在地域、それぞれのメリットやデメリットなどを記載していますので、御確認をお願いいたします。
海外にルーツを持つ子供たちは、日本人の子供たち以上に、どの自治体に住んでいるか、どの地域で生活しているかによって、受けられる支援や置かれた環境が一〇〇となったりゼロとなったりしているような現状です。この傾向は、様々な施策や取組が昨今充実し始めている近年、より顕著になっていると感じています。予算や人材や知識と理解のある地域ではどんどん充実した施策を活用して先に進んでいく一方で、まだ課題認知自体がこれからですよというような地域に暮らしている子供たちはどんどん置いてけぼりになっているということを現場から見ていると感じます。
海外にルーツを持つ子供に関連する施策や取組を検討、推進していく際には、是非、この自治体間格差、地域間格差をどのように是正していくのかということを視点や配慮として必須としていただければというふうに考えております。
続いて、三ページ目に移りたいと思います。
三ページ目に掲載の表は、御存じの方も多いかと思いますが、文部科学省が令和二年三月に公開した外国人の子供の就学状況等調査結果の確定値から作成をしたものです。この調査によって、義務教育年齢相当の外国籍の子供たちのうち不就学又はその可能性がある子供が約二万人いるということで、かなり大きなインパクトをもたらしました。
一方で、この数字を確認する際の注意点については資料に記載をしていますが、加えて、このデータは自治体さんが把握している学齢期のお子さんの数ということなので、例えば短期滞在の在留資格の子供ですとか非正規滞在の子供などは就学状況を把握する前段階、この調査では対象となっていないという点が挙げられます。
続いて、四ページから、子供たちの就学の問題について要因別に五点整理をいたしましたので、御説明をいたします。
第一に、四ページ目ですが、行政の課題になりますけれども、入学、転入時の手続に起因する不就学の発生ですね。就学案内が多言語されていなかったり説明が十分になされていないなど、まだ対応できていない自治体があります。細かな状況については文部科学省の先ほどの表の基にしました就学状況調査でも明らかとなっていますので、詳細はそちらを御参照いただければと思います。
また、それに対して必要な施策や取組については昨年の二月にこの委員会において小島祥美先生が御指摘なさったとおりですが、一点私の方から付け加えさせていただくとすると、例えば小中学校の入学時ですとか自治体への転入手続のときだけ対応していてもカバーできない子供たちがいるというところですね。
例えば、保育園や幼稚園に就園していない未就園の家庭であったり、何らかの理由から外国人コミュニティーからも孤立しているような家庭の場合、情報不足や誤解から就学手続まで至らないというようなケースもあります。こうした孤立リスクの高い家庭に対しては、妊娠、出産時や予防接種のタイミングなど子育て上のタイムラインに沿って、保健、医療、福祉の連携の下、家庭との社会的接点を逃さず丁寧な情報提供を続けていくということが必要と認識しています。
二番目に、タイミングに起因して不就学となるケースがあります。
資料にはよくある事例を記載しましたが、その中でも特にお伝えしたいのが、学校側の都合によって就学待機となっているような状況です。具体的に言えば、例えばその学年の一月に来日した場合、いや、ちょっと年度終了間際で三学期も始まっちゃっているので四月まで待ってくれというふうに言われたりですとか、運動会の練習が始まっちゃって途中から参加することが難しいので、それが終わってからにしてというふうに言われるというようなケースがあります。そして、こうした対応が同じ自治体の中にある学校であっても学校ごとに異なっているというようなケースがあって、問題です。
少なくとも、就学を希望している場合においては一〇〇%学籍を作ること、そして学校とのつながりやその責任の範囲を明確にするということが徹底されるように必要な体制や規定などの整備を行っていくことが重要だというふうに考えています。
三つ目は、受入れ体制の不足や欠如に起因をするものです。
これ、日本国籍のお子さんでもこういった事例があるんですけれども、外国人保護者の方がお子さんの就学を希望して自治体の窓口に行ったところ、学校が、学校側が支援体制が何もないので受入れをためらっていて、どこかで日本語を学んでからある程度できるようになって戻ってきてというふうに言われ、就学手続をしてもらえないというケースです。
これについては、学校内での日本語教育等の受入れ体制の整備を一層いち早く促進していくということが重要なんですが、やっぱりそのための人材や予算を常時確保できるような自治体は限られているんですよね。なので、広域圏によるICTを活用した遠隔教育機会の提供ですとか通訳制度の導入、あるいは学校の先生が恒常的に、どうやって支援したらいいの、これはどうなのというふうに相談ができるようなリソースセンターの設置等によって、もう本当に子供たち、日々直接サポートをする先生方が、ああ、これがあるんだったら受け入れできるよねというような安心感のある体制構築が重要だなというふうに感じています。
あともう一つ、外国人コミュニティーの中で、日本の学校に入ると外人はいじめられるよというような情報が出回っていることがあります。それを耳にして就学を見合わせたというケースが実際にあります。私たちのところにやってくる海外ルーツの子供たちも、その多くが学校の中でいじめを経験します。その情報がコミュニティーで広まった結果、やっぱり、じゃ就学見合わせるわというような判断、引き起こしたりすることがあります。これは、海外にルーツを持つ子供たちだけが幾ら日本語頑張っても、学校になじもうと努力をしても、解決することができない問題なんですよね。マジョリティーである日本人の子供こそが共生社会の一員となっていく上で必要な力を育むことができるような学校教育の中での取組が必要だというふうに感じています。
四つ目に、移動やトラブルに起因をする不就学の発生についてです。
外国籍の子供たちの中で、日本と外国との間を行ったり来たりするような子供がいます。その過程の中で就学や転入のタイミングを逃してしまって学校に通わないままとなるケースもありますので、これについては、出入国ですとか転出入時のタイミングで情報提供を徹底するなどすることで大使館を含め横断的な連携などを推進するということが考えられると思います。
さらにもう一つは、学校側とトラブルになって除籍となる場合です。例えば、公立学校に在籍をしていた外国籍の生徒さんなんですけれども、学校に居場所がなくなったということで、非行ですとか家出を繰り返すような状況になったんですよね。それに対して、学校と保護者との間でコミュニケーションがうまくいかなくて擦れ違いが積み重なった結果、中学校を除籍されてしまったというケースですとか、不登校となった途端に学籍が削除されたというような事例もあります。
さらに、中学校三年学齢の場合は、特に来日時期ですとか出席状況等によっては転入を認められなかったり卒業証書を出してもらえないということが学校長の判断で行われているという現状があります。少なくとも、属人的な判断による対応格差を是正、防止することが必要です。そのためには、原則的な対応基準を定めることですとか、研修による啓発、意識改革などの取組を推進していくべきだと感じます。
最後に、五つ目となりますが、複合的な困難に起因する不就学状況の発生です。
これは、例えば外国人保護者が病気であったり、貧困やネグレクトによるもの、保護者が女子に教育は必要ないと考えるようなケースを含んでいます。これらの困難を有する家庭の場合、幾つもの課題を同時に抱えていることも少なくないんですよね。このような複合的困難の不就学の子供たちって、実は私たちのような教育を中心とするNPOでもなかなか発見ができないんです。なかなかつながってこない。
ただ、こうした子供たちこそ社会から取り残された真に支援を必要としている存在であり、社会全体で手を伸ばしていきたいと思っています。自治体による家庭訪問等、不就学ゼロの取組の実施に加え、地域住民による虐待防止のキャンペーンなんかが参考になるなというふうに思っているんですが、情報提供窓口を設置することですとか啓発キャンペーンの展開など、発見の目を増やす、そうした不就学状態にある困難を抱えた家庭や子供を見付けていくという取組が重要になります。
さらに、やっぱり複合的な困難に十分に対応していくためには、教育と福祉の接合を避けて通ることができないというのは支援者の間で合意されている事項です。資料では、多文化ソーシャルワーカーの導入、育成というふうに記載をしました。外国人の子供や家庭に対する十分な知識ですとかノウハウを持ったソーシャルワーカーを積極的に育てていくこと、必要な施策の創出と予算措置を是非お願いをしたいと思います。
例えば、既にSSW、スクールソーシャルワーカーとして配置されているような方々への研修なども有効かと思います。家庭や子供、保護者の困難に適切に寄り添って、必要な専門性を持つ関係機関との連携を推進できる多文化ソーシャルワーカーの存在は、結果として子供たちの学ぶ権利を保障することにつながります。
続いて、六ページ目の資料を御覧いただきたいんですけど、こちらには海外ルーツの子供たちが、ライフステージごとに幾つかのリスクの高い局面をまとめています。
例えば、日本人家庭と比べて乳幼児年齢の未就園率が一・六倍に上っているという研究があるほか、学齢期で不就学の可能性がある子供が多数いるということ、それから、不登校出現率も実は海外にルーツを持つ子供、かなり高いんじゃないかということが全国の支援者間では指摘をされています。
さらに、海外ルーツの子供の高校進学率の低さ、昨年の八月に日本学術会議が公開した提言書なんかでも、六割強というふうに進学率推計されていましたが、例えば高校進学率が七割だった場合に、端的に残る三割の生徒は進路未決定のまま卒業しているんですよね。その三〇%の子供たちがどこで何をしているのかというのは、自治体さんの方で把握するすべがなくて、実態が全くつかめていないんです。この状況は高校中退した後ですとか進路未決定で卒業した若者についても同様です。
義務教育年齢の子供の場合は、教育の外側にいる海外ルーツの子供たちに対してはボランティアやNPOによる活動が存在しているんですけれども、その量、内容、質共に地域間格差がありますし、セーフティーネットとしての機能は限定的です。
また、十五歳以上の若者の場合、日本人の若者に対しては厚生労働省による地域若者サポートステーションといった自立・就労支援ですとか、自治体による学び直し、居場所支援等のセーフティーネットが存在していますが、日本語力が十分でない若者にとってこれらのセーフティーネットは機能しないという状況です。
こうした課題を解決していくために一つ御提案をさせていただきたいのが、資料の七ページ目に記載をしました社会資源の多文化対応の推進です。
ここで言及している多文化対応とは、外国人も裨益者であるという視点に基づいて行われる必要な配慮や方策のこととしています。福祉、教育等の行政サービスにとどまらず、子供食堂ですとか無料塾、フリースクールといった現存する公益的な活動について、これまで日本人を主たる対象者や受益者としていたところから、外国人、海外にルーツを持つ人も対象者の一部として位置付けていくことで、必要な配慮を行うことが、既存の社会資源へのアクセスを確保していくということが重要だと考えています。
具体的な取組としては、幾つか挙げていますが、さっきの多文化ソーシャルワーカー同様、保育士さんですとか幼稚園教諭、保健師さんなど子供と家庭に関わる資格取得者、実務者について、養成課程や免許更新時に多文化対応スキルの習得のための研修を行っていただいたりですとか、あるいは国や行政が公益活動団体等に委託をする支援事業のうち子供や家庭に対する事業についてはその受益者の多様性に配慮することを求め、通訳や翻訳など配慮に必要な予算を計上できるような仕組みなども併せて実施をしていただくことで、全国へ速やかなセーフティーネットの波及、社会的資源へのアクセスの確保が実現されることが期待されます。
ちょっとそろそろ時間なんですが、最後に一点、新型コロナウイルスの影響について、最後の資料で言及をさせてください。
保護者の方の経済状況が本当に厳しくなっているというのは恐らく指宿先生の御指摘でも出るかと思うんですけれども、特に高校受験や大学進学、専門学校への進学の時期を控えて、中三生、高三生のいる家庭が入学準備金が準備できないというような状況になっているので、何らか緊急の支援が、外国人家庭に限らず、日本人家庭に対しても必要な時期であるというふうに認識をしています。
それから、コロナ禍の中で支援者が本当に直面しているのは、子供たちの健康と安全確保をどういうふうにしたらいいのかということなんですよね。認可外の外国人学校ですとか私たちのようなNPOが運営するフリースクール等で学ぶ不就学の子供については、学校保健の対象外になっています。感染予防策ですとか健康管理は運営者に一任をされていて、クラスター発生時に行政が踏み込みづらいというような課題も指摘されています。
日本で学ぶ全ての子供たちの健康と安全確保の必要性がコロナ禍で高まっているなというふうに思っています。一定の要件下において学校保健安全法を適用するなど、体制整備に御検討をいただきたいと思います。
二〇一八年を境に、海外ルーツの子供や外国人住民の存在の可視化が進んでいます。子供の日本語教育大事だよねとか、不就学の問題大変だよねというような理解を示してくださる方も本当に増えています。この変化の流れを逃さないように、子供たちが本当に誰一人取り残されない環境を実現するために社会全体で歩んでいけるよう、是非皆様の御協力をお願いいたします。
以上です。
弁護士・指宿昭一参考人 意見陳述
○参考人(指宿昭一君) 弁護士の指宿と申します。私からは、外国人労働者の問題について報告をさせていただきます。
私は、弁護士として労働問題、労働事件に取り組んでおります。労働者側の代理人だけをしております。その中でも、外国人労働者の相談を受け、実際受任して裁判をしたり会社と交渉したり、そういうことにかなり力を入れております。日本労働弁護団という労働者側の弁護士の団体の常任幹事をしており、また外国人労働者を支援する二つの弁護士団体の代表もしております。
私の仕事場は裁判所ではありません。裁判所も仕事場の一つでもありますが、労働者、外国人労働者のいる現場にできるだけ赴いて、相談を受けたり実際の状況を見たりしながら仕事をしております。今日は、外国人労働者の現場からの状況を報告させていただきたいと思います。
そして、今日この場で皆さんとお話ができる、報告をさせていただき、質疑に答えさせていただけることを、これは本当にうれしく思っています。これは社交辞令ではありません。なぜかというと、今この国において外国人、外国人労働者をどうやって日本の社会で受け入れていくのか、このことが大きな問題になっており、これは日本社会の分岐点と言ってもいい状況にあると考えているからです。
レジュメを作りましたので、これに沿ってお話をしていきたいと思います。私のレジュメは「外国人労働者受け入れ制度の問題と改革方向」というタイトルで作ってあります、簡単なものですが。
まず第一に、外国人労働者の窮状について、一つ目に、技能実習生の妊娠、出産問題について触れたいと思います。これについては、別添記事として資料を配付していただきました。この資料を見るまでもなく、たくさん報道されていますので、皆さん御存じのことかと思います。
一つ目の記事では、外国人技能実習生、妊娠、出産をめぐるトラブル相次ぐ、国は注意喚起というテーマの報道です。
なぜ妊娠したり出産するとトラブルになるのか、このこと自体が非常に大きな問題です。この記事の方を見ていただくと、第二段落のところで、厚生労働省は、妊娠したら強制的に帰国させられるという間違った認識が実習生の間で広がっていると見ていますと書いてあります。その結果、どういうことが起こるのか。子供を産みたいがために職場から逃げて、まあ逃げるという言い方もおかしいんですけど、離れてどこかに保護される、これは教会だったりお寺だったり支援団体だったりします。そういうところに逃げなければいけない状況に追い詰められる、あるいは、子供を産んでその子供を死なせてしまったり、それから捨ててしまったり、そういう事件が相次いで起こっています。
この厚生労働省の説明では、これが強制的に帰国させられるという間違った認識に基づいているかのようにこの記事では読めます。
そうなんでしょうか。これは単に技能実習生が何か誤解をして、そんなありもしない、あり得ないルールにおびえてそういう行動を取っているんでしょうか。これは全く違います。
実際に、多くの実習生については、妊娠が禁止だということを送り出し国で、例えばベトナム人であればベトナムの送り出し機関というブローカーからきつく言われている。言われているだけではありません、サインをさせられています。妊娠したら帰国だよ、強制的に帰国させるよ、同意しなさい、こういうサインをベトナムや各出身国でされているケースが多いんです。されていないケースにおいても、サインがなくても実際妊娠したら働き続けられない、これは少なくとも現在ベトナム人の実習生の中では常識です。
根も葉もないことじゃないんです。実際そういうことが行われているんです。そして、この記事の次には、妊娠が理由の帰国、数は分からずというふうに書いてあります。調査もちゃんとはされていないんです。
次のページに行くと、法務省の答えとしては、のコメントとしては、受入れ企業の実情によっては、産前産後、産休の取得が難しい可能性もあるとか、それから一番最後のところでは、実習期間中の妊娠や出産は想定しないというふうにコメントしています。
それでいいんでしょうか。実習生も人間です。実習生も労働者です。生きている普通の人間であれば恋愛することもあります。当然、結婚することもあるし、妊娠することもあるし、出産することもあるんです。それはいけないんですか。実習生だから実習だけが仕事だ、労働以外のことはやるな、誰かと付き合ってもいけない、妊娠なんかとんでもない、妊娠したら目的に反するから帰れ、これが現実に行われている。でも、そんなことをして本当にいいんでしょうか。これがこの問題の本質だと思います。
そして、別添記事二を見ていただくと、熊本で双子の乳児の死体を遺棄した事件についての報道です。下の方を見ると、二〇一九年一月に、川崎市で出産した子供を置き去りにしてしまった事件。それから、岡山で堕胎とそれから胎児の死体遺棄の疑いでベトナム人実習生が逮捕された事件。こういうことが報道されています。
こういうことが現実にたくさん起こっているんです。たまたま実習生の一人が物すごいとんでもない思い違いをしてこういう事件が起こっているわけではないんです。この事実を直視する必要があると思います。
次に行きます。
この新型コロナウイルスの感染拡大で、様々な問題が実習生や外国人労働者に起こっています。
次の資料で、別添記事三を見ると、これは性風俗の店が摘発されて、そこで元実習生が働いていたということで、その風俗店の方も実習生の方も摘発されたという、こういう事件です。
これはたまたまではありません。今実習生がコロナで仕事を失う、これは解雇されるケースもあるし、解雇されないで、仕事がなくなって給料がもらえなくなって、本当は休業手当がもらえるはずだし、その企業の方は雇用調整助成金の特例措置を使えばちゃんとお金は填補できるはずなんだけど、私の知っている実習生たちの多くは休業手当ももらっていません。
そういう中で、結局その場を離れて、よく失踪という言葉を使うんですけど、失踪してこういうところで働かざるを得ない状況に追い詰められているんです。誰もこんなことはしたくありません。こんなことをするつもりで日本に来たわけではないんです。なので、本当はやりたくないというコメントが出ているわけです。
別添記事四、なぜ僕は失踪したのか。この方は、なぜか分からないけど、あなたは帰国することになったといきなり告げられて、そして失踪した、そういうケースです。この記事の二ページ目の上の方に大事なことが書いてあります。稼いだお金で、家族のために家を建てることを夢見て、実習生として日本に行く費用、およそ百万円を、借金をして工面して来日しました。
ベトナムから日本への飛行機のチケット代、百万円掛かると思われますか。ベトナムで日本語の勉強などを準備して、その勉強する費用が掛かったとしても、百万円掛かると思われますか。掛かりません。でも、百万円取られているんです。多くの実習生が百万円前後のお金を送り出し機関に払って来ています。
ベトナムから来る実習生、まあ他の国も同じですけど、は貧しい人たちです。農村から来る人が多いと思います。百万円のお金持っているでしょうか。持っていないんですよ。どうやって来るのか。当然借金して来ます。実習生には銀行もお金貸すんです、ベトナムでは。でも、それ借金ですから、返さなければいけない。
ベトナムの平均年収御存じでしょうか。百万円って何年で稼げるお金なんでしょうか。平均年収は大体二十五万円ぐらいだそうです。四年間、四年分の年収分ですよ。それだけの借金をして日本に来ている。そして、技能実習で働いて順調にいけばそれを返して、少し持って帰るお金を稼いで、それで帰る、これが理想的な形です。もちろん、それができているケースもあります。でも、コロナの中でそうならないケースが今増えているし、この事例のように、よく分からないけど帰れと言われたら大変なことになるんですよ。年収四年分の借金だけが残って、そして帰らなければいけない。そうなったら困るので、いわゆる括弧付きですけど失踪して、どこか別のところで働く、これは法律の枠外のやり方ですけど、そういうふうにせざるを得ないところに追い詰められてしまうんです。
次に行きますけど、技能実習生に対する労働基準法違反はもうたくさんあります。これは別添一の資料、厚生労働省が毎年発表している資料に書かれています。
別添の二の方にグラフがありますね。平成三十一年・令和元年のところを見ると、九千四百五十五、これは監督指導を実施した事業数です。そして、その七一・九%の六千七百九十六の事業所で労基法等々の違反が見付かっています。毎年数が増えています。
約四十万人の実習生がいる中で、この数字が必ずしも高いとは思いません。いや、私はもっと違反あると思いますよ、こんなものじゃないと思います。でも、労基署が一生懸命頑張って、毎年どんどん数増えていますけど、一昨年でいうと、これぐらいの調査をしてこれぐらいの違反を見付けたということです。
多くはないと言いましたけど、少なくもないですよね、かなりの数が出ている。これだけの違反があるということは、実習生たちも相当たくさん労基署に相談に行って違反の申告をしていると思われるでしょうか。九千五百も疑わしい事業所があるんです。八千件、いや、もしかしたら一万件ぐらいの申告が実習生からあると考えるのが普通じゃないでしょうか。
その二ページ後をめくってください。ページ数が、二ページというか、二ページぐらいめくっていただくと、申告の状況というのがあります。実習生からの申告数、毎年の申告数が書いてあります。
平成三十一年・令和元年のところ見てください。たったの百七件ですよ。これしか申告していない。どうしてですか。少なくとも違反が見付かったのが六千八百ぐらいあるんですよ。でも、百人しか実習生は申告していない。言葉の問題ですか。ベトナム語では相談できないから、中国語では相談できないからだと思われますか。
確かに、実習生余り日本語できませんけど、熱心に勉強して、ある程度しゃべれる人たちはいます。また、友達とかいろんな形で通訳連れていくことだってできなくはない。それでも百七件なんですよ。言葉の問題じゃありません。言葉の問題もあるけれども、それがメーンじゃありません。
彼ら、彼女らは申告ができないんです。申告したら強制的に帰国させられてしまうから。そういうルールが送り出し機関との間でもう作られているんですよ。労基署に申告してはいけない、弁護士に相談してはいけない、労働組合にも相談してはいけない、加入してはいけない、そういうことが送り出し機関とのルールの中に書いてあります。私は何件もそれ見ていますし、実際に私の事務所に相談に来た中国人実習生たち、四人か五人かいたんですけど、一週間後に帰されてしまいました、中国に。そういうことが起こっている。だから、みんな怖くて申告ができないんです。
物を言えない労働者なんですよ。物を言えない労働者って、本当に労働者ですか。奴隷ではないですか、それは。私は、実習生は奴隷に非常に近い地位にいると思います。
さて、次に行きます。なかなか二十分で話せることが短いというのがだんだん分かってきました。
第二のところで、日本の外国人労働者受入れ制度の概要と問題点と書きましたが、これをきちっと話すと多分無理なので、もう本当にざっくり話します。
日本の政府は、単純労働者を受け入れないということをずっと言ってきました。大体、そうですね、九〇年代から言ってきました。でも、それは実情に合わなかった。だから、別の形で、いわゆる政府の言う単純労働者、私はこの言葉嫌いだし間違っていると思うので、非熟練労働者、熟練していない労働者というふうに呼んでいますけど、それを確保するためにいろんなルートができたんですね。
その一つが技能実習生。それから留学生もあります。留学生がアルバイトという形だけど実際かなり労働に従事している、まあ全ての人ではないですけど、かなり多くの人が労働に従事している。それから、日系人の二世、三世も受け入れて、労働者として働いている。そして、いわゆるオーバーステイ、非正規滞在の人たちも労働者として現実に働いている。そういう形で九〇年代以降ずっと労働力が確保されてきた。とりわけ非熟練の分野、熟練していない労働者の分野で受入れがなされてきました。今でも技能実習と留学は日本の外国人労働者の中でも大きな比率を占めています。
そして、前回の入管法改定で、二〇一九年四月施行の入管法ですけど、特定技能という新しい受入れ制度が始まりました。これは、非熟練労働者の受入れに道を開いたと言っていいと思います。法務省は違うと多分言うと思いますけど、これはもう、何ていうかな、そういう理解が常識だと思います。そういう中で今状況が推移しています。
さっき技能実習生の問題点について触れましたけど、様々問題がありますが、一つだけ言うと、ブローカーが中間搾取をしている。私は、送り出し機関というのはブローカー、しかも多くは悪質なブローカーだと思っています。そこが例えばベトナム人の場合だったら百万円という過大な中間搾取をしているんです。これ、国内でこんなことできないですよね。国内でやったら法律違反になります。でも、国をまたぐとこれができてしまう。
中間搾取だけじゃなくて、人権侵害のルールを押し付けるんです。出産してはいけない、妊娠してはいけない、弁護士に相談してはいけないというような、そういうルールを、これも日本の国内でやったら大変なことになるけど、ベトナムや海外でやることはできてしまっているんですね。それがおかしい。
最後に、ちょっと飛ばして、三ページのあるべき外国人労働者受入れ制度について、少しだけ話させていただきたいと思います。
技能実習制度、物すごく批判されています、国際的にも、国内的にも。恐らく、議員の皆さんの中にも問題を感じていらっしゃる方は多いと思います。政府の中の、まあ政府の中のというかな、政府のいろんな審議会に参加されているような有識者の中でも、もうこの技能実習制度は駄目だという声が私のところにはたくさん聞こえています。
ずばり言います。廃止すべきです。技能実習制度廃止しましょう。もうこの制度やめた方がいいです。
やめたらどうするの、労働力の確保どうするのという声が上がってきます。いや、だったら、特定技能制度をつくったんだから、これを適正化しましょうよ。私は、この制度、特定技能制度というのは理想的な形にはなっていないと思います。ちょっと今日、時間がなくて話せなかったんですけど、様々な課題があります。でも、改革は可能だと思います。
一番やらなきゃいけないのが、ブローカーを排除することです。悪質なブローカーを排除する。ベトナムで、あるいはほかの国で、特定技能の場合、送り出し機関というのは入れなくていいんですけど、いろんなブローカーが百万円も、年収の四年分のお金を取ったりすること、これ、やめさせましょう。そうすれば、何というかな、適正な制度になると思います。
ところが、逆に、今ベトナムとカンボジアについては、特定技能についても送り出し機関を入れることを義務化するということになってしまったんです。今日の資料の中にも入れておいたんですけど、ちょっと詳しいお話ができなくて残念です。
技能実習制度を廃止する、で、特定技能制度を適正化する。そして、これは未熟練分野に限らず外国人労働者の人権と権利が守られる制度をきちっとつくる。例えば、外国人労働者雇用基本法を作る必要があると思いますし、今、旅券、パスポートの取り上げ、外国人労働者から取り上げて、そして意のままに働かせるということがいまだに横行しています。例えば、この基本法でそういうことを禁止する。そして、ブローカーによる中間搾取をきちっと排除する。そういうことをして、本当に外国人労働者の人権と権利が守られる制度をつくる、つくり上げるべきだと思います。
今、そういう意味で、日本がどういう外国人労働者の受入れ制度をつくっていくのか。いや、受け入れるかどうかという、どういう制度をつくるかというだけではなくて、実際に日本社会に来て働いている、そしてまた、これからも働く人はいるし、恐らく増えていく。そういう外国人労働者、外国人住民と我々がどういう関係を結ぶのか。使い捨てにして、要らなくなったら帰ってくれと、こういうやり方なのか、その外国人の人権を守り、共にこの日本社会を構成していく仲間として扱っていくのか。今そういうことが問われていると思います。
短い時間でお話しできませんが、もし、何というか、よく分からないからもっとちゃんと説明してくれという議員の先生いらっしゃいましたら、是非呼び付けてください、説明に行きますから。
私の報告は以上とさせていただきます。
○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
三人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。三人のお話を聞いて、こんなに問題があるのかというふうに思いましたし、特に技能実習制度については問題点が今日この場でも次から次へと指摘をされるということで、私もやめるべきだというふうに思っています。
初めに、鳥井参考人と指宿参考人にお聞きをいたします。
コロナ禍の下で、今日も技能実習生が摘発風俗店で働かざるを得ないような実態があるといった話もありましたけれども、コロナ禍の下で非常に困難な状況になっているのかなというふうに思うんです。お二人も、解雇であるとか賃金の未払なんかも含めて直接相談を受ける場面がおありかなというふうに思うんですね。それで、どんな相談が実際に寄せられているのか具体的に御紹介をいただきたいということと、あと、解決のためにいろいろ御尽力されていると思うんですけれども、解決できないこともあるんだというふうに思うんですね。どんなことがハードルになっているのかということについて、それぞれ教えてください。
○会長(芝博一君) 鳥井参考人と指宿参考人でよろしいですか。
○岩渕友君 はい。
○会長(芝博一君) まず、鳥井参考人、お願いします。
○参考人(鳥井一平君) 御質問ありがとうございます。
一言で言いますと、やはり全てが監理団体任せといいますか、監理団体次第になっているということですね。つまり、コロナ禍において救済策を政府が取っていないわけではないです。救済策ありますよね。例えば、帰れなくなった人に対しては在留資格を付与して、その間滞在できる、あるいは働くことも、就労可能な場合もあると。これ、二十八時間という制限を付けています。
ただ、これも、あるいは移転することもできるとなっていますけれども、監理団体がそのことをやらないと、本人がその手続を取るということはできないわけですよね。ですから、そういう意味でいうと、今いろいろなお寺や教会あるいは市民団体のシェルターに保護されているというのはそういうことなわけですね。行き場所がない、行くところがないと。
例えば、二十八時間以内で働けるという就労可をしたというのは、これ技能実習、ごめんなさい、留学と同じような時間帯になっているんですけど、これで働くところがどれだけあるか、三か月間という在留期間で働ける場所がどれだけあるかというと、やっぱり本人がどこかに求職するといってもこれは難しいです。例えば、建設現場で人手が足りない。ところが、建設現場では社会保険加入が今義務で、これがないと駄目なわけですね。二十八時間で社会保険加入ができるかどうか。そうすると、そのための手続というのは非常に煩雑な手続が必要になってくるんですね。四分の三条項、事項というのがありますから、四十時間に対して三十時間に行っていないわけですから。そうすると、そこに思いが至っていないですよね。二十八時間与えておけばどこか働けるんじゃないかというような発想になってしまっていて、具体的な現場における日本の制度の中での合理的な救済になっていないんですね。
ですから、私どもに相談で来るのは、行く当てがない、生活困窮していると。今現在でも、その二十八時間の在留カードを写真でどんどんメールで送ってきて、どこか働く場所ありませんかと、こういうふうに来るんですけど、じゃ、監理団体どうなっているか。監理団体はどう言っていますかというと、これも答えられない。監理団体がそのことについて手が回っていないといいますか、そういう発想もしない。だから、監理団体の中には頑張っている監理団体も幾つかあるんですけれども、本当にそれはいわゆる当たり外れになってしまうと。これでは救済策にならないわけですね。
これは、やっぱり制度そのものの矛盾が、技能実習生自身が労働者として権利主張できる、あるいは手続を取れるというような制度になっていないというところに、このコロナ禍においても問題が起きてくるということですね。
もう一方、このコロナ禍においては、受け入れている事業主も非常に矛盾にさいなまれていると。労働、技能実習生が来ないと、来なかったら、たちまちローテーションの労働者がいないので仕事が止まってしまうというようなことも起きているということだと思います。
○参考人(指宿昭一君) 技能実習生から、あるいは元技能実習生から、コロナ禍においての相談もう本当にたくさん受けています。もう毎日のように電話が来ます。あるいは、年末年始に大久保公園というところで年越しコロナ相談村というのを開催しました。ここにもたくさんの外国人労働者、技能実習生も含めて来ました。それから、移住連、鳥井さんのところの移住連とキリスト教の団体が一緒に月一回ほどベトナム人の実習生の相談会やっていますけど、ここにもたくさんのコロナの関係の相談が来ています。
一番、一番かどうかは分からないですけど、多いのはやっぱり解雇ですね。それから、解雇されていないけど仕事がないという、つまり仕事させてもらえない、本当は休業手当もらえるはずなんですけど、実際には払われない。で、結局もう生活できないし、それから借金抱えていますから、借金の返済が困る、そういう意味ですごく困窮している。
そして、結局、だからその職場を離れざるを得なくて、どこに行くかというと、そのままオーバーステイになってしまったり、あるいは技能実習の資格のまま別のところで働いてしまう、それで風俗店とかいろんなところが出てくるわけですね。あと、報道されているところからいうと、恐らくウーバーイーツのようなところで働いていたり、様々なケースがあると思います。
本当は、そういうときに監理団体がきちっと支援して、例えば農家で、農家は余りないかもしれないですけど、工場で働いていて仕事がなくなった、そうしたら監理団体が別のところに移してあげなきゃいけないはずなんですよ、制度上。でも、それが実際にはやられていない。監理団体それやってももうからないですからね、面倒くさいだけで。多分それでやられていない。
それで、入管庁は、この状況に対して、解雇された実習生については特定技能に移行する方向で、一度特定活動という資格で一年間その準備をして特定技能一号に移れるようにという制度を用意して、実際これ使っている人もいます。
でも、これ本当に知られていないですね。実習生にも知られていないし、受入れ企業にも知られていない。だから、相談会でたくさん相談を受けて、いや、こういう制度あるんだよ、全く知りませんでした、あるいは、知っているんだけど実際どうやれば手続ができるのかが分からない、そういうことをたくさん相談を受けています。
入管庁がやっているこの制度は、救済策としては悪くないと思っています。いい政策だと思っています。ただ、もう完全に技能実習制度が労働力確保のための制度だということを認めちゃっていますよね、これ。国際貢献も技術移転も関係ないですよね。国際貢献のためだったら、給料が出なくなって生活できなかった実習生に国が生活費全部補償して、借金も払えるように補償すればいいじゃないですか。そこまではできない。だから、労働力のマッチングという形でしか対応できていない。その対応も不十分で、広報が不十分だと思います。
実際、農家とか介護施設では、来る予定だった実習生が来なくて困っているところいっぱいあるんですね。働きたい実習生たちもこっちにいっぱいいる。このマッチングがすごくうまくいっていない。これは残念なことだと思います。
そして、支援する上でのハードルは、何よりも送り出し機関です。日本の法律が及ばないので、送り出し機関との間で弁護士に相談するなとかいろんな約束があって、何というんですかね、言葉は悪いですけど実習生の首根っこをつかまえているわけですよ。それは日本の法律からいって人権侵害だとか、日本の憲法からいって人権侵害だとか強制労働だとか我々言うんですけど、でもベトナムでそれやられちゃ、ベトナムに限らないですけど、ベトナムに特定するとちょっと語弊はあるけど、でも一番多いのベトナムですから。その送り出し機関が例えばベトナムでそういうことをやると、我々がそこまで力を及ぼすことが非常に困難なんです。ここがもう、これはコロナ禍に限らず、いろんなあらゆる実習生の支援でいつも悔しい思いをする難しいところです。
以上です。
○岩渕友君 なるほど。ありがとうございました。
次に、田中参考人にお聞きします。
先ほども文科省の調査で把握の対象になっていない子供たちもいるということでしたけれども、約二万人の子供たちが不就学であると。就学問題が発生する要因についても御紹介がありました。
その中で、複合的困難ということで、貧困など幾つもの課題抱えていることが多いというお話あったんですけれども、例えば労働条件が悪いとか一人親であるとか、その保護者そのものが困難な状況に置かれているということなのかなというふうに思うんですね。
その実態について、参考人が御存じのことがあれば教えていただけますでしょうか。
○参考人(田中宝紀君) そうですね、おっしゃるとおり、複合的な困難を抱えている御家庭の親御さんは、一人親であったり不安定な立場で働いていたりということが比較的多いです。
例えば、日本人男性と結婚をしたある東南アジア出身の女性が、日本人男性によるドメスティック・バイオレンスを受けて、二人の子供を連れて遠くの地域へ国内移動した。その先でうつ病を患い、働くことができなくなり、子供は不登校となり、あるいはその進路未決定のまま形式卒業となり行く先がないというような状況の家庭にも出会うことがあります。
そうした家庭にこれまで対応してきているのは、比較的宗教関係のつながりであったり同郷出身者とのつながりの中で何とか生き延びているというようなケースも多いんですが、やはり同郷出身者のコミュニティーからも孤立しているようなケースも少なくないので、どうやってそうした御家庭を、本当に見えなくなってしまうことがすごく多いので、どうやって見付け出していくかが非常に大きな課題だというふうに思っています。
○岩渕友君 ありがとうございます。
それでは、最後に指宿参考人にお伺いするんですけれども、今国会で入管法の改定案が提出をされる予定になっているんですけれども、この改定案について参考人がお考えのことがあれば教えてください。
○参考人(指宿昭一君) 多分、近日中に提出されるであろう入管法改定案については、私は反対であります。
なぜかというと、今の長期収容とか、特に長期収容で人権侵害が起こっているという状態は、ほかの方法で解決できるからです。どういう方法か。それは、五、六年前までやっていた在留特別許可をきちっと出す、そして仮放免を適正に運用する、これで十分解消できます。
入管自身が基準を勝手に厳しくして、自ら長期収容をつくり出しておいて、そして送還しようとしてもできない人たちがどんどんたまっていく。そういう状況の中で、じゃ、これを力でもって解決しようというふうに考えて送還拒否罪というものをつくり出す。これは誤ったやり方だし、あと、それをやっても本当に帰れない人は帰れないですよ。難民で、国に帰ったら殺されるような人、それから日本に家族がいてもう絶対に帰りたくない人たちはそれをやっても帰りません。刑務所と入管を無限ループで往復することになります。そんなことをやって一体何の意味があるのか。
また、難民申請の今の問題点を解決しないで、何回も難民を申請する難民制度の濫用者がいるから強制送還できるようにしよう。これは難民条約にも反しますし、国際法の原則であるノンルフールマン原則にも反しています。
カナダの難民認定率、御存じでしょうか。五十数%ですよ。日本は何%か。五%ないですよ。四%も三%もない、〇・四か〇・五ぐらい。ちょっとこれ異常じゃないでしょうか。もちろん、難民認定というのは正しく認定すべきで、数値目標みたいなものを設定するべきではないですけど、でも、どう考えても日本だけそんなに難民が来ていないというのはあり得ない。ここを改善しないで、難民申請者が濫用しているから強制送還できるようにしよう、これはもう間違った考え方だと思います。
だから、こういう改正ではなくて、本当に外国人の人権が守られるような改正に取り組んでいただきたいと思います。
以上です。
○岩渕友君 以上です。ありがとうございました。