(資料があります)
<2倍分賠償、半数以下/岩渕氏「東電は基準を示せ」>
東京電力は、福島第1原発事故による営業損害賠償について原発事故の影響で失われた利益(年間)の2倍分を一括して支払うことになっていますが、実際に避難指示区域外の事業者からの請求に対して2倍分で合意したのは2月5日時点で半数に満たないことを初めて明らかにしました。
岩渕友議員が5日の参院経済産業委員会で賠償の実績をただしたのに対し、東電の小早川智明社長が答えました。
また、東電は「一括賠償後も被害がある限り賠償する」としていますが、追加賠償の支払い合意件数は2月末で1件のみであることも明らかになりました。
岩渕氏は、東電の賠償値切り・打ち切りについて、福島県商工会連合会、旅館、観光事業者の「風評被害はなくなったとされた」「まだ自立していないのかと言われる」などの訴えを示し、「賠償基準はブラックボックス。基準を示すべき」と世耕弘成経産相に迫りました。また、賠償組織の要員が2年前から半減している資料や職員の声を示し、実態を調査し十分な体制をとるよう指導すべきだと求めました。
世耕氏は、賠償組織の体制については「相談件数は減っており、十分」と強弁しつつ、「個別の事情をうかがって丁寧に対応するようしっかりと指導する」と答弁しました。
<風力35基が町に集中/岩渕氏、建設計画中止求める>
岩渕友議員は、5日の参院経済産業委員会で、福島県いわき市遠野町に計画されている大規模な風力発電施設の集中立地について「土砂災害、騒音、飲み水への影響などの懸念があり地元の約9割の世帯が反対している」と事業中止を迫りました。
「三大明神風力発電事業」は、水源かん養保安林に指定されている地域内の土石流危険箇所が分布する山頂に、1基あたりの出力が4200㌔㍗、高さ150㍍の発電用風車を9基も建設する計画です。さらに周辺には「遠野風力発電事業」計画もあり、全体で35基以上が町を取り囲むことになります。
FIT(再エネ固定価格買取制度)対象の発電設備は、地域とのトラブル増加をうけ、事業計画の適切性、実施可能性について経産相の認定を受ける必要があります。
岩渕氏が「市の水道水源保護条例など関係法令順守義務を満たせるのか。認定は瑕疵(かし)があり取り消すべき」とただすと、世耕弘成経産相は「法令違反が確認されれば認定を取り消すが、現時点では確認できない」と強弁しました。
岩渕氏は「原発事故の被害に加え、風力発電でさらに苦しめられるのか」との切実な訴えを示し、住民無視の計画は中止しかないと強く求めました。
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○岩渕友君 日本共産党の岩渕友です。
まず、商工中金の不正問題についてお聞きをいたします。
昨年の五月十八日にこの問題について質問をして以降、昨年十月二十五日に全件調査を踏まえた調査報告書が公表をされて、同日、主務省合同検査と全件調査の結果報告などを受けて、主務大臣による二度目の業務改善命令が発出をされました。商工中金の在り方検討会は、今年の一月十一日に中間取りまとめとして提言を行いました。それによると、不正があった危機対応業務について、商工中金は現行の危機対応業務から災害対応を除き全面撤退するとあります。不正行為が国内百営業店のうち実に九十七店舗に及んでいるということは本当に重大なことであって、とんでもないことです。
しかし、危機対応業務から全面撤退するということでいいのか、商工中金が危機対応業務において果たしてきた役割はどんなものだったのか、中企庁にお聞きします。
○政府参考人(安藤久佳君) 危機対応業務を中心といたしました不正事案の大量発生につきましては、再三申し上げているように、大変申し訳ないことであるというふうに思っております。大臣が御答弁申し上げているように、解体的な出直しを新体制の下で行っていくわけでございます。
他方、今御指摘がございましたように、危機対応業務、かつてどのような実績を残したかということを申し上げたいと思います。
例えば、リーマン・ショックのときでございますけれども、リーマン・ショックの際には約七・三万件、四・九兆円の融資規模でございました。また、東日本大震災の際には三・八万件、二・二兆円ということでございます。全体二十二万件、十二・四兆円の中で、それぞれ大きな経済事象、大きな自然災害に対して、中小企業・小規模事業者の皆様方の緊急の資金繰りにある一定の効果を発揮したというふうに思っております。
ちなみに、民間の金融機関がこの際、この危機に当たってどのようなパフォーマンスを発揮したのかということを一点申し上げますと、リーマン・ショック直後の二〇〇九年でございますけれども、民間金融機関全体の融資残高は前年比で二・〇%の減少になったという、こういうデータがございます。他方、商工中金の融資残高は前年比で三・二%の増加になっておると、このような事実がございます。
以上であります。
○岩渕友君 今紹介をいただいたように、中小・小規模事業者の皆さんの資金繰りを支える重要な役割を果たしてきたということです。
大臣にお伺いをするんですけれども、前回の質問のときに、政府系金融機関が果たしている役割について大臣は、重要性は疑うところがないというふうに答弁をされています。危機対応業務から災害を除いて全面撤退ということなんですけれども、平成二十六年度から平成二十八年度の実績を見ると、災害対応はごくごく僅かなんですよね。この中小企業の資金繰りについて支障が出るということが懸念をされるわけなんですけれども、支障を来すことのないようにどういう対応をするのか、お答えください。
○国務大臣(世耕弘成君) 今回の不正事案は、商工中金が危機対応業務を他の地域の金融機関と競争上優位性のある武器として認識をして利用していると、これが問題でありまして、検討会において危機対応業務の抜本的な見直しについて提言を取りまとめていただきました。この提言を踏まえて、危機対応業務については、足下では災害対応のみを対象とすべく、主務大臣が認定する危機事象のうちデフレ脱却などを今年三月末で終了するなど、大臣告示の規定の整備を行ったところであります。
一方で、この提言において、リーマン・ショックですとかあるいは大規模災害などの真の危機のときには、商工中金が危機対応業務として中小企業に対して流動性供給を行うということとされています。それに加えて、危機のときには、日本政策金融公庫ですとかあるいは信用保証による資金繰り支援も十分に行うことにしています。
特に、信用保証については、昨年の信用保険法改正によって、今年四月から大規模危機時の全国一律一〇〇%保証である危機関連保証制度が施行されました。これによって、大規模危機が発生した際には、この一〇〇%の信用保証が、今までは一つ一つ業種指定が要ったわけですが、これ業種指定なしで全業種で素早く発動されることになりまして、これはまさに民間金融機関のパフォーマンスの大きな向上につながるというふうに思っております。
いずれにしても、公的支援策を総動員することによって、危機が起こったときの中小企業の資金繰りに万全を期してまいりたいと思います。
○岩渕友君 中小企業団体からは、民間金融機関は担保や保証がなければ中小企業への融資に消極的だ、国の中小企業支援制度を手掛ける政府系金融機関は必要だという声が上がっています。
第三者委員会によれば、不正行為について、株式会社として利益追求を要求されるところに危機対応融資を行わせれば、本来これを利益追求の手段とするべきではないという制度趣旨があったとしても、現場がこれを顧客にとって有利な商品の一つとして営業することになること、また支店や課への割当てが営業ノルマとして認識されることは容易に想像できる、こういうふうに分析をしています。
今後のビジネスモデルとして示されている方向が本当に中小企業の求めているものなのかという懸念を持っています。そして、そもそも商工中金は、中小企業の資金繰りを下支えする政策金融として位置付け直すべきだということを求めておきたいと思います。
ここからは、避難指示解除をめぐる問題について聞いていきたいと思います。
東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から七年がたちました。原発事故による避難指示の解除が進められてきましたけれども、戻りたくても戻れない、すぐには判断できないなど、避難指示の解除と住民の皆さんの思い、実態が合っていない、政府によって一方的に避難指示解除が進められているのではないかという指摘をこれまで何度も行ってきました。
二〇一六年十月に、ここ経済産業委員会で国会での初質問を行った際に、解除はゴールではなく、本格復興に向けたスタートだという答弁がありました。では、実態は今どうなっているでしょうか。
資料一を御覧ください。昨年の四月一日以降、避難指示区域がどうなっているかを示しているものです。昨年の三月三十一日と四月一日、浪江町、富岡町、川俣町、飯舘村の帰還困難区域を除く避難指示が解除されました。新聞報道によれば、この四町村の居住率は、二月末から三月一日時点で、浪江町三・五%、富岡町四・九%、川俣町山木屋地区三一・一%、飯舘村一一%となっています。
大臣は所信で、帰還困難区域を除くほぼ全ての地域で避難指示が解除され、周辺住民の方々の帰還が進んでいますと述べましたけれども、帰還が進んでいるとは言えない実態です。改めて、避難指示解除の三つの要件について確認をします。
○政府参考人(松永明君) 避難指示解除の要件でございますけれども、第一番目としまして、空間線量率で推定された年間積算線量が二十ミリシーベルト以下になることが確実であること、第二に、電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信など日常生活に必須なインフラや医療、介護、郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧すること、子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗すること、また、県、市町村、住民との十分な協議が行われること、この三つの要件を踏まえ、原子力災害対策本部が決定することとなっております。
○岩渕友君 避難指示解除から一年たっても、浪江町には生鮮食品を扱う店がありません。住民意向調査では、医療、介護が整っていないことを帰還できない理由に挙げている方も多くいらっしゃいます。インフラ整備、生活関連サービスの復旧など、避難指示解除の要件がそもそも満たされていません。
楢葉町は、全町避難をした自治体として初めて避難指示が解除をされて、解除から二年半余りがたっています。楢葉町の現在の帰還率はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(松永明君) 平成二十七年九月に全町の避難指示が解除されました楢葉町でございますけれども、本年二月末時点の居住率は約三四%であると承知しております。
○岩渕友君 楢葉町は、当初、二〇一七年の春に町民の五割が戻ればいいと思うという認識を示していました。昨年の十二月に発表をされた住民意向調査では、楢葉町には戻らないという方が二七・五%、戻るかどうか今はまだ判断できないという方が一六・八%となっています。その理由として、医療施設の拡充、継続的な健康管理など、放射線に対する不安解消への取組、線量低減対策を挙げる方の割合が高くなっています。戻っている、早期に戻ると回答をした方たちも今後の生活に必要だと感じていることとして医療施設の拡充を挙げて、商業施設の再開、充実、これが上位になっています。
そこで大臣にお伺いするんですけれども、浪江町、飯舘村などを含めて、この間、避難指示が解除をされた町村の住民の皆さんから、政府の都合で避難指示解除が進められてきた、置いてきぼりにされているようだ、こういう声が上がっていますけれども、大臣はこうした声をどう受け止めていますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 避難指示の解除においては、先ほど事務方から答弁させていただいた解除の要件に基づいて、様々な声をいただく場である住民説明会や地元自治体との意見交換を丹念に重ねるなど、地元自治体や住民との十分な協議を行ってきたところであります。
ただ一方で、復興庁、福島県、各市町村が共同で実施している住民意向調査でも出てきているように、医療、介護の環境への不安ですとかあるいは商業施設の不足といった様々な理由から帰還をちゅうちょされている住民の方がいらっしゃるということは十分承知をしております。
避難されている方々が安心して帰還していただけるように、産業やなりわいの再生によって働く場をつくり、医療や学校、買物施設といった環境整備を関係省庁が連携をして全力で取り組んでいくことが重要だと思っております。
○岩渕友君 今大臣も答弁されたように、住民意向調査の結果は、避難指示解除から二年半がたっていても、日常生活に必要なインフラであるとか生活関連サービスの復旧が不十分だということを示しています。
二〇一一年九月三十日、緊急時避難準備区域が解除をされた広野町は、解除から六年半が経過をして、八割の町民が帰還をしています。しんぶん赤旗が行ったアンケートで広野町は、復旧復興の現時点での課題について、事業者の広野以北への移転により徐々に宿舎やホテルに空き室が生じるなど新たな課題に直面をしている、子育て世代の帰還率が相対的に低いと回答をしています。さらに、町はいまだ復興の道半ばであり、特に町民の生活再建や心の復興はこれからが正念場である、国には、避難指示等区域の解除がゴールではなく、そこからの復興が一番重要であることを十分認識いただき、これまで以上に被災地復興や被災者の生活再建に継続して取り組んでいただきたいと述べています。
大臣に伺うんですけれども、こうした声にどう応えていきますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 避難指示の解除というのは、ゴールではなくて、あくまでも復興のスタートだということをまず肝に銘じておかなければいけないと思っています。学校の再開、医療機関の整備など、徐々に帰還等の選択肢が具体化される環境にはなってきていますけれども、いまだに生活再建の途上にある方もおられることを踏まえて、これまで以上に生活再建にしっかりと取り組んでいくことが重要だというふうに思っています。
このため、生活の根幹ともいうべき住まい、就労、そして健康的な暮らしという三つの課題を中心に現地の課題を丁寧にお伺いした上で関係省庁の取組の連携を強化していく、そのために二月七日、関係府省庁による会議も立ち上げたところであります。
政府が一丸となって被災者の皆さんの様々な課題、ニーズをしっかりとお伺いをして、把握をして、県、市町村とも連携をして、支援機関の連携強化など、被災者お一人お一人の生活の再建に向けて全力で取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 避難指示解除から時間が経過をしても、多くの困難がそこにはあるということです。
初質問の当時、解除をしてからもしっかりと復興の支援を国が責任を持って行っていきたいと考えている、こういう答弁があったし、今もあったわけですけれども、被害者が生活となりわいを再建するまで国は責任を持って取り組むべきだということを強く指摘をしておきたいと思います。
ここからは、原発事故による損害賠償の実態についてお聞きをしていきます。
大臣にお聞きするんですけれども、大臣は所信の中で、真に生活を再建するためには産業の復興が要だというふうに述べています。私は、これまで原発事故からのなりわいの再建について、何度もこの委員会で質問をしてきました。大臣は、福島県の商工業の実態、現状についてどのように認識をしているでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 福島では、住民の皆さんの帰還に向けて、昨年春までに、大熊町、双葉町を除いて全ての居住制限区域、避難指示解除準備区域が解除をされて、復興再生に向けた動きがいよいよ本格的に始まっているわけであります。
一方で、ほかの東北地域と比べますと、事業活動の回復には相対的に遅れが見られるというふうに思っています。例えば、鉱工業生産指数は、震災による工場の被災等によって大きく低下をして、震災前、平成二十二年を一〇〇としますと、平成三十年一月時点での東北全体の数値は一〇一・五、ですから震災前を超えるぐらいまでに回復をしているわけですが、福島だけで数値を見ますと七九・七にとどまっているわけであります。
こういった状況を踏まえて、福島全域においてなりわいの再建を強力に支援をしていく必要があるというのが我々の認識でございます。
○岩渕友君 福島県商工会連合会が東京電力福島第一原発の三十キロ圏内にあるか避難指示が出た地域の十四商工会に聞き取りをして、二月二十日現在の再開状況をまとめています。地元で事業を再開した事業者は三割にとどまっています。避難指示解除から一年の、先ほど紹介した四町村の平均は一二・五%で、浪江町は六%にとどまっています。住民が少なく、売上げが見込めるか不安な上、若い従業員の確保が難しい、こうした声が上がっています。
福島県内の観光業がどうなっているか。温泉協会の入湯税は七割から八割、地区によっては六割台。教育旅行は震災前に比べて一六年は五四%、一七年は五九%台、震災前は大学生のスキー合宿で二千人が来ていたが今はゼロ。教育旅行の内容は、県、町の補助金などにより旅行経費の一部助成により誘致した方々がほとんど、一般の教育旅行はゼロなど、こうした実態が県内各地から出されています。
原発事故前に戻ったと言うけれども、ほかの県はもう二倍、三倍と観光客増やしているという話も聞きました。七年たっても商工業の実態はまだまだ厳しい状況にあります。
大臣にお聞きしますが、こうした実態だということを認識して対応をしているのでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 福島県における商工事業者が非常に引き続き厳しい状況にあるという認識は、これはもう私も同じ認識でございます。
私自身、就任以降、福島県に七回訪問しました。被災十二市町村の事業者の方々とそのたびにお話も伺ってきています。そうした中には、これ、福島相双復興官民合同チーム、この合同チームの支援を受けて、事業を再開をしたり新たな販路の拡大に取り組んだりしているところも出てきております。
例えば、二月に訪問した川俣町では、補助金を活用して、今まで手作業で半日ほど掛かっていた加工の工程が三分で完了するレーザー加工機を導入をした。ここの社長さんも、これ夢だったんだと、ようやく入れることができたと言って、非常に前向きな気持ちで頑張っておられました。こういう官民合同チームの支援を受けて、そして即戦力となる人材を新規採用したり新設備を入れるというような事業者など、しっかりと歩みを進めている事業者の方々もいらっしゃるということで、心強い思いを感じました。
ただ一方で、まだまだという面もあろうかというふうに思いますから、一人でも希望を持って進めていただく方を増やすように、今後も被災十二市町村においては官民合同チームにもっと頑張ってもらって、個々の事業者のニーズにきめ細かく対応した事業、なりわいの再建支援に努めていきたいと思いますし、避難指示区域外についても、津波補助金などによる企業立地の支援ですとか、関係省庁と連携した風評対策の推進に取り組みたいと思います。
今御指摘のあった観光については、会津地方でもやっぱり七割ぐらいしか戻っていない、これは完全に風評によるものだというふうに思いますので、これ、全然これと違う枠組みで地域未来牽引企業というのを全国で二千社以上選びましたが、その社長さんたちに今度一堂に集まってもらう地域未来牽引企業サミットを、これ会津で開かせていただくことにしました。このもう各県のリーダー的企業の社長さんが来ることによって、少しでもこの会津地方の風評の払拭に貢献できればというふうに考えています。
○岩渕友君 被害はまだまだ続いているということなんですけれども、商工業の営業損害賠償の実態は、じゃ、どうなっているかと。
東京電力に聞きます。現在の受付件数、合意件数、二倍相当一括賠償の件数は、避難指示区域内と区域外でそれぞれ何件になっているでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問に御回答申し上げます。
二〇一八年二月五日時点における商工一括賠償の受付件数の総数は約一万五千六百件あり、そのうち合意件数の総数は約一万四千四百件となります。
避難指示区域内の受付件数は約七千四百件あり、そのうち合意件数は約七千百件となります。合意いただきました約七千百件につきましては、全て年間逸失利益の二倍相当額での合意となっております。
避難指示区域外の受付件数は約八千二百件あり、そのうち合意件数は約七千三百件となります。合意いただきました約七千三百件のうち、年間逸失利益の二倍相当での合意件数は約三千百件となります。
○岩渕友君 資料二を御覧ください。今の答弁を表にまとめてあります。
東電に聞くんですけれども、避難指示区域内外、それぞれの商工業の営業損害賠償についてどう決めているのか、改めて説明してください。
○参考人(小早川智明君) 御質問に御回答申し上げます。
商工業の営業損害賠償につきましては、事故との相当因果関係のある方を対象に、避難指示区域内につきましては二〇一五年三月以降、避難指示区域外は二〇一五年八月以降、将来にわたる損害として年間逸失利益の二倍相当額を一括してお支払いしております。
その上で、やむを得ない特段の御事情により事故と相当因果関係が認められる損害が一括賠償額を超過した場合につきましては、個別に御事情をお伺いした上で適切に対応させていただくこととしております。
○岩渕友君 二倍相当額を一括して払っているということなんですけれども、この資料二のとおり、避難指示区域外は合意したうちの四二%しか二倍相当額の賠償が行われていません。
事業者の方々からは、三十件請求したけれども十三件に対する回答がない、理由は風評被害はなくなったとされたとか、営業損害賠償について、二倍相当額を一括賠償との方針以降から賠償が厳しくなった、東京電力は相当因果関係があれば賠償すると言うが、それを証明するのは困難、損害がある限り賠償すると言うが、実際にはそんな対応ではないとか、東京電力は観光客は増加していると言うが、例えば新しい道の駅ができれば一時的に県の統計も数値も上がる、近くの温泉駅の乗降客が増えたという数値を示すが、観光客や宿泊客が増えているとは限らないなど、東京電力が様々な理由を付けて損害賠償を行っていないという実態が寄せられています。
東電に聞くんですけれども、二倍相当の賠償がされた事業者の中で、追加的損害の賠償を請求している事業者はどのぐらいあるのか、受付件数と合意件数を答えてください。
○参考人(小早川智明君) 御質問にお答えいたします。
二〇一七年三月以降受付を開始いたしまして、二〇一八年二月末時点で約五百件の御請求をいただいており、そのうち一件合意しております。
○岩渕友君 今答弁あったように、合意は一件しかないんですよね。
福島県商工会連合会から賠償の実態についてお聞きしました。追加賠償の請求書は紙一枚、どう書けばいいのか問い合わせても答えがないので、多くの業者は以前請求したことと同じことを書くしかない。東電からは、原発事故からこれだけ時間がたつのにまだ自立していないのかと言われる。追加賠償をもらっている人はいないのではないかというくらいもらったという話を聞かない。二倍相当を一括で賠償されたが、これは将来分だからと、もう賠償は終わったことになっているのではないか、こういうお話でした。
賠償の実績は、こうした話を裏付ける内容になっています。東京電力による賠償の値切り、打切りが進められているということです。
大臣にお聞きしますけれども、大臣は東京電力による商工業の賠償について、被害者の方々に対して真摯に耳を傾けて、丁寧に実情を確認し、適切かつ公平な対応を行うよう指導するとこれまで言ってきました。東京電力の賠償のやり方、被害者への態度など、こんなことでいいのでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 商工業の営業損害については、東電は、将来にわたる損害として個別事情を確認の上、事故との因果関係がしっかりと確認をされれば、年間逸失利益の二倍相当額を一括で賠償しているわけであります。
経産省としては、被害者の方々の置かれた状況は個々様々でありまして、東京電力が個別の状況をしっかりと踏まえて丁寧に対応するよう指導してきているわけであります。東京電力においても、個別の請求者への電話連絡ですとか訪問を自ら行って直接事情をお伺いすると、この取組を強化しているというふうに認識をしています。
今後とも、こうした取組を通じて、被害者の皆さんに寄り添った取組を東京電力が行うよう指導してまいりたいと思います。
○岩渕友君 丁寧な対応ということだったんですけれども、この賠償の実態はとても丁寧とは言えるような状況ではないわけですよね。
自治体職員の賠償に関わっても、福島県内の自治体から、原発事故に関わる業務に当たっている職員の賠償について訴えがありました。ある自治体では、正職員分の賃金の賠償を東京電力に請求しているが、一度も賠償されたことはないということでした。自治体の正職員の賠償はどのような方針に基づいて行っているのでしょうか。
○参考人(小早川智明君) 御質問に御回答申し上げます。
中間指針に基づきまして、福島第一原子力発電所の事故により地方公共団体が負担を余儀なくされた追加的費用につきましては、必要かつ合理的な範囲でお支払の対象とさせていただいております。
地方公共団体の人件費につきましても、ただいま申し上げた考え方に基づき、福島第一原子力発電所の事故に関する法令や政府指示などに基づき実施を余儀なくされた業務が実施されたことにより追加的な負担として人件費が発生した場合には、必要かつ合理的な範囲でお支払の対象とさせていただいております。
○岩渕友君 追加的な負担ということでしたけれども、原発事故に関わる業務を行っていれば、その超過勤務分については支払われるということなんですよね。だけれども、現場では、何時何分から何時何分までその原発事故に関わる業務を行ったとその都度記録するというのは日常業務の中で非常に難しいということで、請求はできていないということでした。
この自治体では、除染対策課を立ち上げて課の職員の基本給の賠償を請求したわけですけれども、東京電力からは、正職員の人件費は原発事故前からの必要経費だというふうに言われて、支払われておりません。
商工業の損害賠償でも自治体への賠償でも、加害者である東京電力が被害を証明しろと迫り、賠償の主導権を握る、こんなやり方おかしいじゃないかという批判が上がっていますけれども、これ当然のことだと思います。
今年の二月五日、福島県知事、市町村、JA、商工団体など二百を超える団体でつくる福島県原子力損害対策協議会から、原子力損害賠償の完全実施に関する緊急要望書を東京電力は受け取ったと思います。その中で、商工業の営業損害賠償についてどういう基準で賠償を行っているのか基準を示すべきだ、こういう趣旨の要望について、どんな内容だったか読み上げてください。
○参考人(小早川智明君) 本年二月五日に福島県原子力損害対策協議会から頂戴した緊急要望書におきまして、ただいま先生が読み上げてくださいというふうに言われた内容について読み上げさせていただきます。
同様の損害を受けている被害者が請求の方法や時期によって賠償の対応に相違が生じることのないよう、風評被害の相当因果関係の類型、判断根拠、東京電力の運用基準や個別事情に対応した事例を公表、周知するとともに、被害者への分かりやすい丁寧な説明を徹底して行うこととの御要望をいただいております。
○岩渕友君 現場では、何で自分が賠償されないのか、何が根拠になっているのか分からないということで、賠償がブラックボックスになっているという声が上がっています。
これ、大臣にお聞きするんですけれども、大臣も同じ要望書を受け取っていると思います。この要望をどう受け止めていますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 商工業の営業損害については、東京電力は、将来にわたる損害として年間逸失利益の二倍相当額を一括で賠償する、そして、損害が一括の賠償額を超過した場合は、個別事情を確認の上、事故との因果関係が確認されれば追加賠償ということになっています。
相当因果関係の類型については、福島県産が明示をされて広く認知された食料品を取り扱って、他の産品に切り替えることが困難であるなど、一定の類型が東京電力から示されているというふうに承知をしています。
一方で、相当因果関係の確認に当たっては、事業の規模、内容、地域などによって損害の状況が異なるなど、被害者の方々の置かれた状況は様々であることから、一律に示すことは適当ではないため、まずは東電が被害者の皆さんに事情をしっかりと受け止めて寄り添った対応をすることが重要だと思っています。
経産省としては、今後とも、東京電力に対して、被災された事業者の皆さんの相談に対して個別の事情を丁寧に把握をし伺って、公平かつ適切な賠償を行うようしっかりと指導してまいりたいと思います。
○岩渕友君 被害者の皆さんは、公平で適切な賠償が行われているのかがよく分からないというふうに言っているわけなんですよね。
東電に聞くんですけれども、東京電力は、今年の一月十二日に賠償の請求を受け付けている部署で請求者から受け取った書類が紛失したということを発表しました。紛失の経緯について、簡潔に説明をしてください。
○参考人(小早川智明君) 二〇一七年十二月十三日、御請求者様の代理人より原子力損害賠償の御請求に関する対応状況につきまして照会があり、状況を確認しましたところ、同月二十七日、請求書類の一部の所在が不明であることが判明いたしました。その後、直ちに書類の検索を開始いたしましたが、発見に至らなかったため、当該書類の紛失と判断し、本年一月十二日にプレスリリースをさせていただきました。
紛失の原因は、当該書類の社内での受渡しの際に不備があったものと考えております。なお、当該書類につきましては、外部への持ち出し記録がないことから建物内で紛失したものと考えております。また、御迷惑をお掛けしました御請求者様には、当該書類の紛失についておわびするとともに経過を御説明し、御理解をいただいております。
弊社といたしましては、このような事態を繰り返さぬよう、管理表への記録の徹底や管理者が日時で管理表を確認するなどの再発防止策を講じ、書類の厳重かつ適切な管理を徹底してまいります。
○岩渕友君 被害者の大切な請求書が紛失をするというこうした問題について、大臣、どういうふうに受け止めますか。
○国務大臣(世耕弘成君) これは本当に大変遺憾だというふうに思います。今、再発防止策を社長が御説明になりましたけれども、それをしっかり現場まで徹底してほしいというふうに思います。
○岩渕友君 この間、同様のことが何度も繰り返されてきています。
資料三を御覧ください。東京電力の原子力損害賠償組織体制、要員の推移ということで表にしております。要員は、見ていただけばお分かりのとおり、年々減っています。今年三月一日時点の総人数は、二〇一六年三月一日時点の半分以下になっています。
大臣に聞いていただきたいんですが、賠償業務に関わる東京電力の実態について、こんな声が寄せられています。生産性を倍増させるとして徹底的なコストダウンを進める中で、賠償業務でもコストダウンを求められるようになった。ベテランの委託職員が解雇され、ほとんど教育されていない社員が電話対応することでミスが起き、お叱りを受けている。請求書や証憑の枚数確認や授受確認、請求内容の確認を二名での重複チェックをしてきたが、重複チェックや枚数確認をやめさせられ、本人確認や賠償金額算定などの間違いが増加している。その一つが証憑紛失だ。証憑原本の誤廃棄やルールを守らず請求書を移動して行方不明になったり、日常的に起きている。それなのに更なるコストダウンに走っている。こういうものです。
大臣、こんなことでいいのでしょうか。実態を調査するべきではないですか。
○国務大臣(世耕弘成君) 東電における賠償体制については、全体の相談件数が減ってきているという中で、常設の相談窓口三十六か所での対応に加えて、被害者の皆さんと支払内容に関する見解が異なる案件などについて東京電力の担当者が戸別訪問を行うなど、相談対応に必要な体制は確保されているものと承知をしております。また、請求書の受領や支払などの体制についても、全体の請求件数が減少する中でも二千人を超える人員を確保するなど、必要な体制は確保されているというふうに承知をしております。
とはいっても、書類の紛失というのは、これはもうとんでもないことであります。再発防止の取組、先ほどから社長が述べた再発防止の取組をしっかりと行ってほしいというふうに思いますし、こちらからも徹底するよう東京電力をしっかり指導してまいりたいと思います。
○岩渕友君 人員が減る中で先ほどのような重大な問題が起きているということなんですよ。東京電力に対して、十分な体制を整えて被害が続く限り賠償を行うようしっかり指導をするべきです。
東京電力福島第一原発をめぐって損害賠償を求めた集団訴訟の判決が昨年から相次いで出されています。東電が支払うべき賠償範囲などを定めた中間指針では償い得ない損害があるのだと、司法が独自に判断をして認める流れが定着をしてきています。
国の紛争審査会で当事者参加のほとんどないまま賠償の指針が決められ、それを受けた東電が賠償基準を作り、加害者主導の枠組みがつくられてきたことが被害実態とのずれを生んでいます。こんな低い水準の指針は見直すべきだ、加害者である国と東京電力は、ふるさとを返してほしい、元の生活に戻してほしい、原発事故に対応した制度をつくるべき、こうした声が上がっています。こうした声と実態に国と東京電力は向き合うべきだということを厳しく指摘をしておきます。
福島第一原発事故の賠償費用などとして、国が用意をした無利子の貸付枠十三兆五千億円を東京電力が使い切った場合、全額回収するには最長で二〇一七年度から三十四年後の五一年度まで掛かり、この間、国には最大で二千百八十二億円の利息負担が生じることが会計検査院の試算で分かりました。原発事故の処理費用はどこまで膨らむか分かりません。原発再稼働が進められていますが、原発ゼロの決断をして再生可能エネルギーへの転換を進めるべきです。
原発事故後、福島県は原発に依存しない社会を掲げ、二〇四〇年までに再生可能エネルギー一〇〇%を目標に掲げています。大臣、再生可能エネルギーの導入は非常に重要です。特に、地域が主体の地産地消の電力の重要性について、大臣はどのように認識していますか。
○国務大臣(世耕弘成君) 電力システムでは、小型再エネを軸とした分散化が進むなど、分散化が今後のエネルギーの大きな流れの一つであるというふうに認識をしています。
そして、今御指摘のエネルギーの地産地消についても、先ほども答弁しましたが、地域資源を活用し、また地域の中で循環させる、そしてその過程で雇用も生むという意味で重要なものだというふうに考えております。そして、再生可能エネルギーは火力と比較をして分散化が可能でありまして、この導入は分散型エネルギーシステムの構築にもつながるというふうに考えています。
雇用、産業活性化の観点からも、例えば太陽光発電の設置工事を地元の工務店が行う地域産業への波及や連携の事例が見られまして、産業、雇用の活性化に資するというふうに考えております。
○岩渕友君 資料四を御覧ください。
地域が主体の地産地消の電力は重要なんですけれども、実際には大手資本や海外資本の進出が増えて様々な問題が起きています。見ていただいているのは、いわき市遠野町を中心にその周辺に風力発電の集中立地計画がある、その計画の配置想定図なんですけれども、その一つは株式会社ユーラスエナジーが建設を予定している三大明神風力発電事業で、当初は十七基の風力発電設置が予定をされていました。環境影響評価準備書に対して経済産業大臣からは、措置を講じても大規模な土工量が発生をする風力発電設備等については、これらの設置の取りやめや配置等の見直しを行うことという厳しい勧告が出されました。
これを受けてユーラスエナジーは基数を九基に減らすことにしましたけれども、代わりに一基当たりの出力が二千百キロワットから四千二百キロワットと倍になりました。百三十五メートルから百五十メートルの風車が建設をされる計画なんですけれども、この風車が建設をされる予定の山は麓からの高さがおおよそ四百五十メートルほどということで、風車の高さは山の約三分の一にも当たることになります。さらに、この周辺にアカシア・リニューアブルズ株式会社が遠野風力発電事業を計画しています。こちらは最大八万六千七百キロワットで、二十七基が予定をされています。
三月末に地元の住民の方々が三時間以上掛けていわきから国会にいらっしゃって、経済産業省始め省庁との交渉、要望を行いました。そこで深刻な実態や地元住民の皆さんの思いを訴えられています。これだけの規模の風力発電が集中立地するということになれば、災害や騒音、水源、環境などへの影響が大きくなるのではないかと大変心配をされています。
環境省に伺います。風力発電が環境影響評価の対象になった経緯を説明してください。
○政府参考人(中井徳太郎君) お答え申し上げます。
風力発電につきましては、地球温暖化対策の観点からその導入が期待されている一方で、騒音、景観、バードストライクによる猛禽類や渡り鳥への影響などが報告されておりました。また、風力発電事業を行うに当たり、地域における様々な環境影響を評価し、地域住民等の意見を聞いてその理解を得ることが重要でございます。
このことから、平成二十二年二月の中央環境審議会答申におきまして、法の対象事業として追加することを検討すべきと提言されました。この答申を受けて設置されました風力発電設置に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会において検討を行い、その結果等を踏まえまして、平成二十三年十一月に環境影響評価法の対象事業に追加したところでございます。
○岩渕友君 地域住民の皆さんの意見を聞いてその理解を得ることが非常に重要だと、そういう考えに基づいているという答弁でした。
環境省は、二〇一七年五月二十六日に都道府県知事、市長、特別区長宛てに風力発電施設から発生する騒音に関する指針を通知しています。
環境省に聞きます。この指針について説明してください。
○政府参考人(江口博行君) お答え申し上げます。
風力発電施設は静穏な地域に設置されることが多いため、そこから発生する騒音等は、そのレベルが比較的低い場合でありましても周辺地域において聞こえやすいということがございます。また、風力発電施設のブレード、いわゆる羽根の回転により風を切ることに伴う周期的な音でありますとか、一部の施設の内部の増速機や冷却装置などによります特定の周波数が卓越した音が発生することがございまして、これらの音により煩わしさを増加させ、睡眠への影響のリスクを増加させる可能性があることが示唆されてございます。
このため、環境省におきましては、風力発電施設から発生する騒音等を適切に評価するための考え方について検討を進めてきた結果、先生御指摘の平成二十九年五月に風力発電施設から発生する騒音に関する指針を都道府県等に通知しているところでございます。
○岩渕友君 指針が出されるということは、その風力発電施設から発生する騒音がそれだけ問題になっているということを示していると思います。
騒音についてユーラスエナジーは、一基当たりの出力を倍にしても変更前の予測値と同等レベルと想定されるということを地域住民の方々に説明をしているんですけれども、皆さんはとても信用できないと、こういうふうに言っていらっしゃいます。
先ほどの指針値は一基当たり二千キロワットの風車を想定したと聞いていますけれども、風力発電設備が今どんどん大型化をしてきています。ここで計画をされている一基当たり四千キロワット以上の風車を想定した試算はあるでしょうか。
○政府参考人(江口博行君) 御指摘の指針の検討に際しましては、平成二十二年度から二十四年度にかけまして環境研究総合推進費の風力発電等による低周波音の人への影響評価に関する研究におきまして得られた知見を参考にしておりますけれども、当該研究におきましては、風力発電施設周辺百六十四地点で風車騒音の実測測定を行っておりますが、その時点におきましては稼働しておりませんでした一基当たり先生御指摘の出力四千キロワット以上の風力発電施設周辺での測定は行ってございません。
○岩渕友君 指針値の想定の倍の出力となる四千キロワット以上の出力となる風車の騒音がどのぐらいになるのか分からないということです。
環境省に、環境影響評価法に基づく手続を実施した単機出力四千キロワット以上の風力発電事業という資料を出してもらいました。陸上風力だけでも全国で十八事業もあります。風車が今どんどん大型化をしていると。で、大型化に対応した試算をする必要があることを指摘をしておきます。そして、指針ではなくこれ基準にしてほしいという声も寄せられているということも紹介をしておきたいと思います。
これ、一基当たりの出力が大きくなるということは、設備そのものが大きくなって、それだけ多くの木を伐採し深く掘ることになります。この地域は水源涵養保安林に指定をされていて、この地域に住む方々のうち二百二十軒以上が沢水や地下水を飲料水や生活用水に利用しています。地下水にも影響があるんじゃないかということで、この心配の声、大変大きいものがあります。これは生活に直結する問題です。
林野庁に伺いますが、保安林の解除を行わないでほしいというのが地元の要望ですが、どうでしょうか。
○政府参考人(織田央君) お答え申し上げます。
まず、保安林制度でございますけれども、これは、森林法に基づきまして、水源の涵養、災害の防止等の公共目的を達成するために必要のある森林を保安林に指定をいたしまして、一定の伐採、転用規制を課すなどによりその保全を図る、こういう制度でございます。
それで、御質問のありました案件でございますけれども、現時点で保安林の指定の解除が申請されておりませんので、今後の取扱いについてこの場で具体的にお答えすることは難しいところでございます。
今後、本件について保安林の指定の解除が申請された場合には、都道府県知事等の意見を踏まえ、保安林の指定目的の確保の観点から、森林法に基づいて適切かつ厳正に判断していく考えでございます。
○岩渕友君 申請されていないということだったんですけれども、保安林の解除に当たっては、災害のおそれがないように、水源機能が損なわれないように留意をする必要があるんだと聞いています。そして、解除には利害関係者にも話を聞くんだということになっているんですけど、どうですか。
○政府参考人(織田央君) 通知レベルでそのように直接の利害関係者の御意見も伺うようにというようなことの指導をしてございます。
○岩渕友君 地域住民の皆さんというのは、まさに利害関係者そのものです。これ地域の声をよく聞く必要があると思います。
資料の五を御覧ください。いわき市では、東日本大震災だけではなくて、それから一か月後の四月十一日に起きた地震によって土砂災害が発生をしました。土砂災害の多くは、この地震の震源断層と推定をされている井戸沢断層、湯ノ岳断層沿いの阿武隈変成岩地域で発生をしていることが確認をされています。
風力発電の建設予定地は湯ノ岳断層に近く、土砂崩れが起きやすいという調査報告がある阿武隈変成岩の上に建てられる予定になっています。さらに、この場所は、この資料にあるように、土石流危険箇所の分布している地域です。ユーラスエナジーは、住民の方々に課題が少ない土地だというふうに説明していますけれども、課題が少ないどころか、非常に問題が多い土地だと言えます。
この計画は、環境影響評価の対象になった趣旨を全く無視した事業です。同様に、地域住民の意見を無視した巨大な風力発電事業に関わる問題が今全国で起きています。環境、地域を守るためにもゾーニングを進める必要があると思いますが、どうでしょうか。
○政府参考人(中井徳太郎君) お答え申し上げます。
風力発電の導入と環境保全との両立を図るためには、早期の段階から関係者との調整の下で風力発電の導入を促進し得るエリア、環境保全を優先するエリア等を設定いたしますゾーニング手法が有効であると考えております。
このことから、環境省では平成二十八年度から風力発電に係るゾーニング導入可能性検討モデル事業を実施しておりまして、本年三月にはモデル事業の成果を踏まえましたマニュアルを策定、公表し、地方自治体にも周知したところでございます。
こうした取組を始め、より多くの地方自治体にゾーニングに取り組んでいただけるよう、環境省としてしっかり普及に努めてまいります。
○岩渕友君 ゾーニングが有効だと、普及にしっかり努めていきたいという答弁でした。
この計画なんですけれども、後から計画をされた遠野風力発電事業について経産大臣は、計画段階環境配慮書に対して集中立地に伴う累積的な影響を指摘し、他事業者との情報交換等に努めるよう、こういう意見を述べています。
遠野風力発電事業だけではなく、その先に計画されていた三大明神風力発電事業も含めて環境影響を評価するべきではないでしょうか。
○政府参考人(福島洋君) 三大明神風力発電事業につきましては平成二十六年十月から、遠野風力発電事業につきましては平成二十九年七月に環境アセスメントの手続を開始しております。
御指摘のとおり、二つの事業、加えますと三つの事業につきましては、隣接した場所での事業実施が計画されていることから、多数の風力発電設備を建設することにより生じる累積的な影響が懸念をされるところでございます。
このため、環境アセスメント手段の一環として、経済産業省といたしましては、後に環境アセスメント手続を開始した遠野風力発電事業の事業者に対しまして、議員御指摘のような隣接事業に関する情報収集や隣接する他事業者との情報交換などに努め、累積的な影響についても適切な予測及び評価を行った上で風力発電設備等の配置等を検討すべきである旨の経済産業大臣の意見を発出したところでございます。
経済産業省としましては、今後の環境アセスメント手続の中で、事業者が当該意見に対して適切に対応しているか、しっかりと確認してまいりたいと思います。
○岩渕友君 最初か後かということじゃなくて累積的影響ということなので、どっちも含めて環境影響評価をするべきだというふうに思います。
関係省庁から事業者同士がよく話し合うようにというふうに言われているわけですけれども、地元の方々がユーラスエナジーに話合いどうなっているのかというふうに聞いたところ、アカシア・リニューアブルズとはコンタクトを取った、この程度だったということだそうです。さらには、アカシア・リニューアブルズが後から来たからだというふうにも言っていて、住民の方々からは、話合いがちゃんと行われるのかそれが不安だ、話合いちゃんと行う気があるのか心配だ、こういう声が上がっています。二つの風力発電事業が計画をされている地元では、設置に反対をする署名が八六%の世帯から集まっています。中には九六%もの世帯が署名をしている地域もあります。
二〇一六年六月に改定をされたFIT法では、再生可能エネルギー発電事業計画を認定する制度が創設をされました。事業計画策定ガイドラインでは、企画立案の段階から再生可能エネルギー発電事業を円滑かつ確実に実施するためには、発電設備を設置しようとする自治体や地域住民に事業の実施についての理解を求め、地域と共生した形で事業を実施することが重要であるとして、地域との関係構築のために事業計画作成の初期段階から地域住民と適切なコミュニケーションを図るとともに、地域住民に十分配慮して事業を実施するよう努めることというふうにしています。
これ、九割もの世帯が反対の声を上げているということは、地域と共生した形で事業を実施するということがあり得ないということになるんじゃないでしょうか。大臣、お答えください。
○国務大臣(世耕弘成君) 再生可能エネルギーの発電事業というのはかなり長期にわたって行われるものですから、当然、この発電事業を行うに当たっては地域の御理解をいただきながら事業を進めていくことが重要だというふうに思います。
FIT制度の開始以降、地域住民とのトラブルが原因で計画の撤回を余儀なくされている事態というのが発生している、こういったことを踏まえて、去年四月に施行されました改正FIT法では、地域住民への説明会の開催など地域住民との適切なコミュニケーションを図ることについて新たに努力義務として求めておりまして、必要に応じて経済産業省から事業者に指導を行うこととしております。
こうした対策を通じて、事業者が地域との共生を図り、適正に再生可能エネルギー発電事業を行っていくよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。
○岩渕友君 事業策定ガイドラインなんですけれども、今年の四月二日に改訂をされていて、まあつい最近ということですよね。それで、企画の立案における地域との関係構築という部分のその解説の部分が大きく膨らんでいて、今大臣が言ったように、反対運動を受けて計画の修正、撤回を余儀なくされる事態も存在しているんだと。事業計画作成の初期段階から、風力発電事業者からの一方的な説明だけじゃなくて、自治体や地域住民の意見を聞きながら適切なコミュニケーションを図って、地域住民に十分配慮して事業を実施し、誠実に対応することが必要だと、ここの部分が先日大きく膨らんだところなんですよね。これ、九割もの世帯が反対をしていると、努力義務だということで済ませるわけにはいかないと思うんですね。
大臣に更に聞くんですけれども、対象事業実施区域のほぼ全域が森林法に基づく水源涵養保安林等の保安林及びいわき市水道水源保護条例に基づく水道水源保護地域に指定をされていることに加えて、改変区域の一部は山地災害危険地区に指定をされています。企画立案段階で法令遵守事項がクリアできていないということです。
新たなFIT認定制度では、事業計画が円滑かつ確実に事業が実施されると見込まれ、安定的かつ効率的な発電が可能であると見込まれる場合に経済産業省が認定をするとされています。けれども、円滑に安定的に事業が行われるとはとても言えない状況だと思います。これだけ問題がある計画であるにもかかわらず、二〇一七年二月にもう既にFIT認定行われているんです。これ、FIT認定を行ったのは瑕疵があるということじゃないのかと。
三大明神風力発電は、準備書の後に事業変更が行われました。先ほどの出力が倍になるという事業変更を行われています。この段階では、もう住民も知事も意見を言うことができません。環境影響評価とFIT認定は別だということにはならないと思います。FIT認定を行ったことで、この事業に経産省がお墨付きを与えたということになっています。FIT認定を取り消すべきではないでしょうか。
○国務大臣(世耕弘成君) 改正FIT法では、新たに自治体の条例なども含めた関係法令の遵守を認定基準に明確に位置付けていますし、関係法令の遵守違反が確認された場合には認定の取消しをすることになっています。
三大明神風力発電事業については、現時点で自治体や関係省庁から指導や命令等があったとは承知をしておりません。関係法令に違反をしているとは認められません。したがって、本件について現時点でFITの認定取消しを行うことはできないわけであります。
○岩渕友君 法令違反がないというわけなんですけれども、さっきの保安林の解除のときに、申請すら上がってきていないという状況だったわけですよね。だけど、既にFITはもう認定をされていると。何よりも、九割もの住民が反対をしていて、そういうことが全国で問題になっているからこそこのガイドラインが改定をされてそこの部分が膨らむと。こういう状況の中で、今回の事業がとても住民の理解を得ているとは思えないわけなんですよね。
ちょっと大臣に改めて聞くんですけど、この事業を中止にするべきじゃないでしょうか。
○委員長(斎藤嘉隆君) 大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○国務大臣(世耕弘成君) 関係法令に違反が確認されれば認定の取消しを行うことになるわけですが、現時点で認定の取消しを行うような関係法令の違反は認められないということでございます。
○岩渕友君 住民の皆さんからは、原発事故の被害に加えて風力発電で更に苦しめられるのか、先祖代々大切に守ってきた土地、このままでは子供や孫に安心して住める地域を残すことができないという切実な訴えがあります。
この反対九割という声、しっかり受け止めてもらって、住民無視の計画は断固中止するべきだということ、地産地消の再生可能エネルギーへの導入を強く求めて、質問を終わります。